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乾の林(乾卦六十四林)

汉 · 焦延寿 · 第3巻 / 71

作盤ガイド: 大衍筮法, 六爻納甲の立卦

坤之巽:白駒生芻,猗猗盛姝。赫喧君子,樂以忘憂。

坤の卦が巽の卦に変わる。《詩経・小雅・白駒》は一束の青草をもって白駒に乘りて來る賢人を挽留し、《衛風・淇奧》また「綠竹猗猗」「赫兮咺兮」をもって君子の盛美を形容す。このように顯赫たる君子、快樂して憂愁を忘る。巽は順入で、賢者相い就けば上下和樂す。占うに賢賓來會し、心情舒暢なるを主とし、吉。

坤之兌:車馳人趨,卷甲相仇。齊魯寇戰,敗於犬丘。

坤の卦が兌の卦に変わる。車馬疾馳し人衆奔走し、鎧甲を卷起して彼此仇を為す。齊國と魯國と互相い寇伐交戰し、最後に犬丘にて敗仗を喫す。兌は口舌、毁折である。勝を爭い鬥を好めば終に一敗あり。占うに兵戈相い見え、兵を損し將を折るを主とし、凶。

坤之渙:舉首望城,不見子貞,使我悔生。

坤の卦が渙の卦に変わる。頭を擡げて遠く城池を望むも、子貞の身影を見ず、我をして此生を懊悔せしむ。渙とは離散で、思念する人星散して聚まるを得ず。行人を問えば音信杳然を主とし、會晤を問えば相見ることを得ざるを主とし、凶。

坤之節:龍鬥時門,失理傷賢。內畔外賊,則生禍難。

坤の卦が節の卦に変わる。竜時門の地に相い鬥い、常理に違背して賢良を傷害す。內部叛離し外に寇を成し、ここに禍難を釀成す。節は度を守り制あるを主とし、度を失えば內外交困す。占うに上下相い爭い、內憂外患並び起こるを主とし、大凶。

坤之中孚:安如泰山,福喜屢臻。雖有豹虎,不致危身。

坤の卦が中孚の卦に変わる。安穩なること泰山のごとく、福氣喜事一次次に來至す。縱ひ豹子老虎傍らに在ると雖も、自身を危ふくするに至らず。中孚は內に誠信を懷く卦で、誠信心中に立てば外物相い傷つく能わず。占うに根基穩固にして險に逢いて害なし。大吉。

坤之小過:初憂後喜,與福為市。八佾列陳,飲御嘉友。

坤の卦が小過の卦に変わる。初め憂愁して後に歡喜し、福氣と一筆の交易を做成したがごとし。八佾の舞行列を排列し、酒宴を設けて嘉賓好友を款待す。八佾は本來天子の樂舞で、《論語・八佾》に見ゆ。小過は小事を謀るに宜しく、小心謹慎なれば憂轉じて喜と成るべし。占うに先に難あり後に獲、賓朋歡聚を主とし、吉。

坤之既濟:持刀操肉,對酒不食。夫行從軍,小子入獄,抱膝獨宿。

坤の卦が既濟の卦に変わる。手裏に刀を拿り肉を握るも、酒に面對して喫し下る能わず。丈夫出門して從軍し、兒子また關えられて牢獄に入り、膝を抱きて獨り夜を過すのみ。既濟は事成りて後復た憂患を生ずる卦で、看似完備にして人事離散す。家宅を問えば骨肉分離を主とし、自身を問えば孤苦愁悶を主とし、凶。

坤之未濟:陰衰老極,陽建其德。履離戴光,天下昭明。功業不長,蝦蟆代王。

坤の卦が未濟の卦に変わる。陰氣衰微して極に至り、陽氣重新してその徳用を建立す。足離明を踏み頭頂光輝し、天下一片昭朗光明なり。しかし功業長久なる能わず、蛤蟆竟に君王の位に取代わる。古人は月中の蟾蜍月を蝕むをもって大異の象とした。未濟は事いまだ成らざる卦で、明極まりて復た晦暗に歸す。占うに先に盛んで後に衰え、功敗れて垂成に垂ぶを主とし、宜しく好きを見て收むべし。

屯の林(屯卦六十四林)

屯之屯:兵征大宛,北出玉關。與胡寇戰,平城道西,七日絕糧,身幾不全。

屯の卦が自ら変じても屯の卦のままである。兵を發して大宛を征討し、北に玉門關を出る。胡人の寇兵と交戰し、平城道西に圍まれ、七日糧を斷たれ、性命ほとんど保たず。漢武帝が李廣利に命じて大宛を伐たしめ、漢高祖匈奴に平城白登山に圍まれて七日なるは、皆《史記》に見ゆ。屯は萬物初生して艱難未だ通ぜざる卦で、正に師老いたり兵疲れたる象に合す。出行を問い兵事を問うに、困厄危殆を主とし、大凶。

屯之乾:泛泛柏舟,流行不休。耿耿寤寐,心懷大憂。仁不逢時,身隱窮居。

屯の卦が乾の卦に変わる。柏木の小舟漂蕩として、水流に隨い漂行して停まらず。心裏耿耿として安んぜず、睡るも睡る能わず、深重の憂愁を懷く。《詩経・邶風・柏舟》は寫す所まさに賢者遇わず、讒を憂え譏を畏るる之情。仁人生に時に逢わず、窮困の中に隱居するよりほかなし。占うに才を懷きて遇わず、漂泊して依る所なし。宜しく韜光養晦して時を待つべし。

屯之坤:采薪得麟,大命隕顛。豪雄爭名,天下四分。

屯の卦が坤の卦に変わる。山に上り柴を打つに卻って一隻の麒麟を捉う。天命これによって傾覆墜落す。《春秋》哀公十四年に「西狩して麟を獲」と記し、孔子聞訊して絕筆し、以て亂世の兆と為す。此の後豪傑梟雄名を爭い利を奪い、天下分裂して四と為る。屯は草創して難多き時で、聖瑞時に非ざるに出づればかえって凶兆と成る。占うに時局大亂し、群雄割據するを主とし、凶。

屯之蒙:山崩谷絕,天福盡竭。涇渭失紀,玉曆盡已。

屯の卦が蒙の卦に変わる。高山崩塌し深谷斷絕し、上天の賜う所の福澤全部枯竭す。涇水渭水常軌を亂り、天子の曆數もまた盡頭に走り至る。《詩経・小雅・十月之交》に「百川沸騰、山冢崒崩」の句あり、寫す所まさにこの等の災異。蒙とは昏昧にして明らかならず。天地序を失いて人事これに隨いて亂る。占うに氣數將に終らんとし、大廈傾覆するを主とし、大凶。

屯之需:夏臺羑里,湯文所厄。鬼侯俞賄,商王解舍。

屯の卦が需の卦に変わる。夏臺と羑里とは、商湯と周文王とがかつて受困せし所である。鬼侯財貨を進獻して賄賂し、商王乃ち文王を釋放す。《史記・殷本紀》《周本紀》に湯夏臺に囚われ、文王羑里に囚われて後獲釋せし事を載す。需とは時機を待つこと。聖人尚且忍辱して待つを須いとす。占うに困厄の中終に解脱を得、先に凶後に吉。

屯之訟:泥津汙辱,棄捐溝瀆。所共笑哭,終不顯錄。

屯の卦が訟の卦に変わる。泥濘の渡口に陷りて汚辱を蒙り、人に拋棄せられて溝渠の中に在り。衆人一同に譏笑哭罵する對象と成り、終に顯揚錄用せられず。訟は爭辯の卦で、爭いて棄てられんば名聲地に掃く。占うに辱を受け位を失い、終身顯達を得ざるを主とし、凶。

屯之師:李梅冬實,國多盜賊。擾亂並作,君不能息。

屯の卦が師の卦に変わる。李樹梅樹冬天に結果し、物候顛倒して國中これによって盜賊眾多なり。擾亂の事一齊に發作し、君主も平息する能わず。古人は草木時令に按せず實るをもって災異の兆とした。師は兵を用うるを主とし、亂起りて止む能わざれば兵連禍結ぶ。占うに時局動蕩し、盜賊四起するを主とし、凶。

屯之比:獐鹿逐牧,飽歸其居。反還次舍,無有疾故。

屯の卦が比の卦に変わる。獐子と鹿と追逐して到る處食を覓、飽食すれば便ち己が窩裏に回る。住處に返回して安歇し、疾病なく變故なし。比は親附相輔の卦で、各々その所得れば安然恙なし。占うに出入平安にして衣食缺なきを主とし、吉。

屯之小畜:夾河為婚,期至無船。搖心失望,不見所歡。

屯の卦が小畜の卦に変わる。一条の河を隔てて婚事を議定すも、約期至りて渡船なし。心神搖蕩して大いに望を失い、己が喜歡する人を見る能わず。小畜は蓄うる所尚小さく力事を濟すに足らざる卦。婚姻を問えば中途阻まれ、佳期踐約し難し。凶。

屯之履:百足俱行,相福為強。三聖翼事,王室寵光。

屯の卦が履の卦に変わる。百足の蟲衆足齊動して行き、彼此相助けて乃ち强健を顯す。三位の聖賢國事を輔翼し、王室これによって寵榮光曜を蒙る。履は禮を踐みて行うを主とし、同心協力すれば勢自ら强盛す。占うに衆を合して力を得、上の恩寵を受くるを主とし、吉。

屯之泰:坐位失處,不能自居。賊破王邑,陰陽顛倒。

屯の卦が泰の卦に変わる。座位本來の位置を失い、自らも身を安んずる能わず。盜賊王城を攻破し、陰陽倒錯して上下序を失う。泰は本來上下交通を主とするが、ここでは名分紊亂の象。占うに位を失い所を離れ、時局倒置するを主とし、凶。

屯之否:登几上輿,駕駟南遊。合縱散橫,燕齊以強。

屯の卦が否の卦に変わる。小几を踏みて車輿に登り、四馬の車に駕して南行遊歷す。合縱を主張して連横の謀を離散し、燕國と齊國これによって强盛す。戰國時蘇秦合縱を倡め張儀連横を主とす。事《史記・蘇秦列傳》に見ゆ。否は閉塞不通なれど、善辯の士かえって閉塞の中に通を求むる能し。占うに口舌游說に憑りて志を得るを主とし、吉。

屯之同人:三孫荷弩,無益於輔。城弱不守,邦君受討。

屯の卦が同人の卦に変わる。三人の孫輩弓弩を扛ぐも、輔弼國事に補益絲毫なし。城防薄弱にして守る能わず、邦國の君因りて討伐を遭う。同人は同心を貴ぶ。人衆なれどその力を得ざれば用なし。占うに外强中乾にして兵有りて敵を禦ぐ能わざるを主とし、凶。

屯之大有:河伯大呼,津不得渡。船空無人,往來亦難。

屯の卦が大有の卦に変わる。河伯水中に大聲呼喝し、渡口過ぐる能わず。船隻空しく船夫なく、來來往往みな艱難なり。河伯は古代の黄河水神で、その事《莊子・秋水》に見ゆ。大有は本來富盛を主とするが、接引する人なくば擁有多しと雖も施展し得ず。占うに行程阻まれ、事人の助けなきを主とし、凶。

屯之謙:甘露醴泉,太平機關。仁德感應,歲樂民安。

屯の卦が謙の卦に変わる。甘露降下し醴泉涌出す。これ太平盛世啟動の樞機なり。仁徳至る所にして天人相い感じ、年成歡樂にして百姓安寧す。《禮記・禮運》は天降甘露、地出醴泉を以て大同の瑞とす。謙とは益を受くること。徳行謙下なれば祥瑞自ら至る。占うに時和し年豊かにして上下俱に安し。大吉。

屯之豫:重茵厚席,循皋采藿。雖躓不懼,反覆其宅。

屯の卦が豫の卦に変わる。層層の褥墊、厚厚の坐席を鋪くも、仍ほ水邊に沿いて豆葉野菜を采りに往く。縱ひ跤を跌すと雖も害怕せず、來回皆己が家に回る能し。豫は和樂の卦で、安に居りて儉素を忘れず、ゆえに驚ありて險なし。占うに家道安穩にして小挫ありと雖も碍げなし。吉。

屯之隨:太乙駕騮,從天上來。徵我叔季,封為魯侯。

屯の卦が隨の卦に変わる。太乙神赤色の駿馬に駕し、天上より降臨す。我が家の叔季の子を徵召し、彼を封じて魯國の諸侯と為す。太乙は古代尊神の名で、命祿を主司す。隨とは相い從うこと。天命の召す所なれば貴擋るべからず。占うに徵擢を受け用ゐられ、官を加え爵を晉めるを主とし、大吉。

屯之蠱:南巴六安,石解戟天。所指不已,耊老復丁。弊室舊噓,更為新家。

屯の卦が蠱の卦に変わる。南巴と六安の地、山石戟のごとく裂けて天を刺し、指す所連綿として絶えず。年邁の老人竟に返老還童して壯丁のごとくなり、破敗の屋子・荒廢の舊墟、重ねて整治して嶄新の宅院と成す。蠱は積弊を整治するを主とし、弊去れば百事更新す。占うに老いて復た壯になり、舊業重ねて興るを主とし、吉。

屯之臨:家給人足,頌聲並作。四夷賓伏,干戈韜閣。

屯の卦が臨の卦に変わる。家家豐足し人人飽暖し、頌揚の聲一齊に興起す。四方夷族皆賓服歸順し、兵器收起さら戰事擱置す。臨は上に居りて下に臨む卦で、徳澤下に達すれば遠人自ら服す。占うに國泰民安にして干戈止息す。大吉。

屯之觀:東鄰嫁女,為王妃后。莊公築館,以尊王母。歸於京師,季姜悅喜。

屯の卦が觀の卦に変わる。東邊鄰家女を嫁せしめ、天子の妃后と為す。魯莊公彼女のために館舍を修筑し、以て王姬の母を尊崇す。彼女遠く京師に嫁ぎ、季姜心中歡喜す。《春秋・桓公九年》に「紀季姜京師に歸す」と記す。説く所まさに此事。觀は觀仰して化を示すを主とし、禮數完備なれば婚事成るを得る。婚姻を問えば高きに攀じ顯貴、美事を成就す。大吉。

屯之噬嗑:陳妻敬仲,兆興齊姜。營丘是適,八世大昌。

屯の卦が噬嗑の卦に変わる。陳國の懿氏女を敬仲に嫁せしめ、卜兆彼の後裔將に齊姜の國に興盛せんと預示す。敬仲後に營丘に奔り定居し、八代の後果たして大いに昌盛す。《左傳・莊公二十二年》に陳完齊に奔る及び卜妻の辭を載せ、その後田氏果たして齊を代ふ。噬嗑は嚙合して梗阻を去るを主とし、梗阻既に去れば前途大いに開く。占うに他鄉に客居して後世發達するを主とし、吉。

屯之賁:路多枳棘,步刺我足。不利旅客,為心作毒。

屯の卦が賁の卦に変わる。路上枳樹荆棘滿ち、一歩走れば我が足を扎傷す。旅行外に在る人に甚だ利ならず、心頭の一樁苦事と成る。賁は文飾を主とするが、外表の修飾は脚下の荆棘を救う能わず。出行を問えば阻多く傷多し。暫く止まりて行かざるべし。凶。

屯之剝:天官列宿,五神共舍。宮闕光堅,君安所居。

屯の卦が剥の卦に変わる。天上の星官衆宿排布序あり、五方の神一舍に共處す。宮殿樓闕光潔にして堅固、君主其中に安居す。剥は剥落の卦なれど、上天神の護持あれば傾危に至らず。占うに居處穩固にして神明の庇佑あり。吉。

屯之復:牧羊稻園,聞虎呻喧。懼畏惕息,終無禍患。

屯の卦が復の卦に変わる。稻田園圃の裏に羊を放ち、老虎低吼喧鬧するを聞く。嚇かされて呼吸を屏し戰戰兢兢とするも、最終に禍患に遭うことなし。復は一陽來復の卦で、心戒懼を存せば險象自ら消ゆ。占うに虛驚一場にして備あれば患なし。先に危後に安し。

屯之無妄:鳴條之圖,北奔犬胡。左衽為長,國號匈奴。主君旄頭,立尊單于。

屯の卦が无妄の卦に変わる。鳴條の戰敗亡の圖謀、夏后氏の遺族をして北に犬戎胡地に投奔せしむ。彼ら左衽を以て俗とし首領を推擧し、國號匈奴と作し、君主旄頭の衆を執掌して單于を尊立す。《史記・匈奴列傳》に匈奴を夏后氏の苗裔と稱す。《无妄》は人に妄動すべからずを誡む。敗亡の餘別に門戶を立つるは、亦た無可奈何の數なり。占うに流離遷徙し、別に基業を立つるを主とす。

屯之大畜:克身潔吉,逢禹巡狩,錫我玄圭,拜受福佑。

屯の卦が大畜の卦に変わる。自身を克制し身を潔くして吉を守るに、正に大禹外に出て巡狩するに逢う。我に一枚の玄色玉圭を賜い、叩拜して福祐を領受す。《尚書・禹貢》に「禹玄圭を錫り、厥の成功を告ぐ」と載す。大畜は徳を蓄えて用を待つを主とし、徳行積厚なれば賞賜自ら來る。占うに身を修めて賞を得、上恩を蒙るを主とし、大吉。

屯之頤:冬華不實,國多盜賊。疾病難醫,鬼哭其室。

屯の卦が頤の卦に変わる。冬天に開花するも果實を結ぶ能わず、國中盜賊眾多なり。疾病醫治し難く、鬼屋裏に哭泣す。草木時令に按せず開花するは、古人之大凶の異と視る所なり。頤は頤養を主とし、養い其道を失えば病生じ祟起る。疾病を問えば危重を主とし、家宅を問えば寧ならざるを主とし、大凶。

屯之大過:襄送季女,至於蕩道。齊子旦夕,留連久處。

屯の卦が大過の卦に変わる。小女兒を護送して出嫁せしめ、一直に平坦の大道に送る。齊國の女子早晚往來し、流連徘徊して久留して去らず。《詩経・齊風・載驅》に「魯道蕩有り、齊子夕を發く」とあり、文姜私通の事を譏刺す。大過は過甚の卦で、行止過度なれば人の譏議を招く。占うに男女檢を失い、久留して事を生ずるを主とし、凶。

屯之坎:朽根倒樹,花葉落去。卒逢火焱,隨風偃仆。

屯の卦が坎の卦に変わる。樹根朽爛して大樹傾倒し、花と葉と皆零落す。忽然また烈火に遇い、風勢に隨いて地に倒伏す。坎は重なる險陷で、根本既に壞れて外患また至る。占うに根基敗壞し、禍單行せざるを主とし、大凶。

屯之離:陰變為陽,女化作男。治道得通,君臣相承。

屯の卦が離の卦に変わる。陰氣轉變して陽氣と為り、女子化して男子と成る。治國之道これによって通達し、君と臣上下相承す。離は附麗して重明なり。柔轉じて剛と為れば事勢これに隨いて順に轉ず。占うに弱を轉じて強と為し、時來りて運轉す。吉。

屯之咸:炎絕續光,火滅復明。簡易理得,以成乾功。

屯の卦が咸の卦に変わる。火焰將に熄んとすれど重新して光亮を續ぎ、火滅びて復た明るくなり。簡易の理を把握し、因りて乾道の功業を成就す。《周易・繫辭上》に「乾は易を以て知り、坤は簡を以て能くす」と曰う。咸は交感の卦で、絶えて復た續けば生機再起す。占うに絶處生に逢い、舊業復興するを主とし、吉。

屯之恆:多載重負,捐棄於野。予母誰子,但自勞苦。

屯の卦が恒の卦に変わる。裝載し過ぎて負擔重く、東西を荒野に丟棄するよりほかなし。養い給はれど何れの家の兒子かを知らず、白白と自ら勞苦を受く。恒とは常久で、負荷常度を失えば持久し難し。占うに多を貪り重きを失い、勞して功なし。凶。

屯之遁:江河海澤,眾利安宅,可以富有,飲御嘉客。

屯の卦が遯の卦に変わる。長江大河・海洋湖澤は衆多利益安んじて匯聚する所在で、これによって富足し、酒宴を設けて貴客を款待すべし。遯は本來退避を主とするが、水澤の鄉に退居すればかえって廣くその利を收む能し。占うに退守して財を得、賓主歡を盡す。吉。

屯之大壯:冬采薇蘭,地凍堅坼。利走室北,暮無所得。

屯の卦が大壯の卦に変わる。冬天薇菜蘭草を采りに往くに、地凍りて堅硬開裂す。急々として屋子北邊に奔向するも、天黑くなるまで一の獲る所なし。大壯は正を守るに宜しく妄動すべからず。時令に違逆して强く求めば徒労なり。占うに時機對せず、勞して獲なし。凶。

屯之晉:烏鳴嘻嘻,天火將起。燔我室屋,災及姬後。

屯の卦が晋の卦に変わる。烏鴉嘻嘻と怪鳴し、天火將に燒き起こらんとす。我が屋舍を燒掉し、災禍還た姬姓の后妃に波及す。古人は烏鴉の異鳴を以て火災の兆とす。晋は上進して大明に附麗するを主とするが、明盛んなり過ぐればかえって焚燒と成る。占うに火厄門に臨み、內眷に殃及ぶ。大凶。

屯之明夷:蠆室蜂戶,螯我手足。不可進取,為身害速。

屯の卦が明夷の卦に変わる。蝎子窩を做し馬蜂戶を結び、我が手と足を蜇傷す。更に前進して取るべからず。然らざれば傷害を招くこと極めて速し。明夷は光明傷つく卦で、暗處に毒物潜伏す。占うに暗中害あり、動けば輙ち傷つく。止步して自ら守るべし。凶。

屯之家人:崔嵬北嶽,天神貴客。溫仁正直,主布恩德。閔哀不已,蒙受大福。

屯の卦が家人の卦に変わる。高峻の北岳恒山は、天神と貴客との居る所である。そこらの神明温厚仁愛にして公正剛直、布施恩徳を主司す。悲憫哀憐の心絶えず、因りて大福を蒙る。家人は內治に恩あるを主とし、恩徳人に及べば福自ら身に歸す。占うに神佑人助を得、家門福を蒙る。大吉。

屯之睽:伯蹇叔盲,莫與守床。失我衣裘,伐民除鄉。

屯の卦が睽の卦に変わる。伯氏跛脚にして叔氏眼盲、病床邊に守る能う人なし。我が衣服皮裘を丢し、また征伐を遭いて鄉里より遷出せらる。睽とは乖離で、親人殘廢離散すれば依靠する所なし。占うに親眷助けを失い、財を失い鄉を離るるを主とし、凶。

屯之蹇:為季求婦,家在東海。水長無船,不見所歡。

屯の卦が蹇の卦に変わる。小兒子のために媳婦を求娶するも、女家遠く東海の濱に在り。水路漫長にして渡船なく、心中喜ぶ所の人を見る能わず。蹇は跛足にして行き難い卦で、路遠く舟なければ心願遂げ難し。婚姻を問えば路遠く成り難く、隔阻して通ぜず。凶。

屯之解:山陵丘墓,魂魄失舍,精神盡竭,長寢不覺。

屯の卦が解の卦に変わる。山陵の間盡く墳丘墓塚なり。魂魄歸宿を失い、精神耗竭して長眠して醒めず。解は本來險難消散を主とするが、解き開く所若し形神相繫の結ならば、それ便ち死亡の象なり。疾病を問えば起き難し。家宅を問えば喪事あり。大凶。

屯之損:踦牛失角,下山傷軸,失其利祿。

屯の卦が損の卦に変わる。跛脚の牛角を折り、山を下るにまた車軸を壓傷し、因りて應得の利祿を丢す。損とは減損で、器具損壞し氣力衰微なれば得る所もまた隨いて減損す。占うに財を折り位を失い、求む所遂げず。凶。

屯之益:水載船舟,無根以浮。往來溶溶,心勞且憂。

屯の卦が益の卦に変わる。水面上船隻を載せ、根柢なくして只だ漂浮するのみ。來來往往蕩漾して定まらず、心裏勞苦にして憂愁す。益は本來增益を主とするが、根基立たざれば得て復た失う。占うに漂泊して定まらず、心神寧ならず。宜しく先ず根本を立定すべし。

屯之夬:有鳥來飛,集於古樹。鳴聲可惡,主將出去。

屯の卦が夬の卦に変わる。鳥飛來りて、古樹に停落す。叫聲難聽刺耳にして、主人將に家を離れ外出せんことを預示す。古人は惡鳥宅に棲み鳴叫するを以て不祥の兆とす。夬は決断除去を主とし、凶兆既に現るれば宜しく早く決断を作すべし。占うに家宅變あり、主人遠行す。凶。

屯之姤:東徙不時,觸患離憂。井泥無濡,思叔舊居。

屯の卦が姤の卦に変わる。東に遷徙するは時宜に合せず、禍患に觸犯して憂愁に遭遇す。井底泥を積みて水汲むなく、只だ叔氏の舊宅を思念するのみ。《井》初六に「井泥食せず」と曰う。正に廢井用なき象なり。姤は期せず遇うを主とするが、遇うこと其の時に非ざればその害を受く。占うに遷移利あらず、舊を思うも返り難し。凶。

屯之萃:黃帝所生,伏羲之宇。兵刃不至,利以居止。

屯の卦が萃の卦に変わる。これ黄帝誕生の地、伏羲居住の屋なり。兵器刀刃ここに到る能わず、安居止息するに宜しい。黄帝と伏羲皆上古の聖王で、その居る所即是福地なり。萃は聚合で、吉地に聚まれば長安なるべし。占うに地を擇びて宜を得、兵災を免る。吉。

屯之升:東山救亂,處婦思夫。勞我君子,役無休已。

屯の卦が升の卦に変わる。東山に到りて叛亂を平定す。家中に留まる婦人丈夫を思念す。我が君子を勞苦せしめ、兵役休止の時なし。《詩経・豳風・東山》は周公東征三年、征夫歸を懷く情を寫す。升は上進を主とするが、久しく外に役すれば家室怨曠す。占うに勞役息まず、夫妻分離す。凶。

屯之困:跛躓未起,先利後市,不得鹿子。

屯の卦が困の卦に変わる。脚を跛まして地に絆倒し、未だ起身せず。先にその利を謀取して後市集に趨赴するも、終に小鹿を得る能わず。困は困窮の卦で、脚力濟わざれば利に趨るも及ばず。占うに行動挫折を受け、財を求めて落空す。凶。

屯之井:大蛇當路,使季畏懼。湯火之災,切近我膚。賴其天幸,趨於王廬。

屯の卦が井の卦に変わる。一条の大蛇路上に擋り、季氏をして心に畏懼を生ぜしむ。滾湯烈火のごとき災禍、我が肌膚に緊貼して逼り來る。全く上天の僥幸眷顧に頼り、君王の居所に奔入して難を避くるを得たり。井は人を養いてその徳常あるを主とし、險に遇いて庇護を得れば虞れなし。占うに險象環生するも終に救助を獲。先に凶後に吉。

屯之革:從容長閒,遊戲南山。拜祠禱神,神使無患。

屯の卦が革の卦に変わる。從容悠閒、長日事なく、南山に游玩嬉戱す。祠廟に到り拜祭して神明を禱告すれば、神明彼をして禍患を免れしむ。革は變革を主とし、安閒の中に祭祀の禮を廢せざれば、變ずと雖も驚かず。占うに身心安泰にして神の護佑あり。吉。

屯之鼎:區脫康居,慕義入朝。湛露之歡,三爵畢恩。復歸野廬,與母相扶。

屯の卦が鼎の卦に変わる。匈奴辺地の區脱と西域の康居とは、中原の禮義を仰慕して入朝進見す。天子《湛露》の宴を設けて以て歡洽を示し、三爵の酒罷めて恩意周備なり。《詩経・小雅・湛露》は天子の諸侯を燕饗する詩で、《禮記・玉藻》に「三爵にして油油として退く」の禮あり。此の後鄕野の廬舍に返回し、母親と相い扶持す。鼎は賢を養うを主とし、遠人來り歸すれば國盛んに家安し。占うに遠行して禮遇を受け、家に歸りて團聚を得るを主とし、吉。

屯之震:龜鱉列市,河海饒有。長錢山賈,商李悅喜。

屯の卦が震の卦に変わる。烏龜と鱉と排を成して市に擺せられ、河海の出產豐饒にして餘りあり。錢串長長として貨山のごとく堆み、行商李氏心中歡喜す。震は動である。貨殖流通すれば財自ら生ず。經商を問い財を求むを問うに、大いにその利を得るを主とし、吉。

屯之艮:年常蒙慶,今歲受福。三夫採葩,出必有得。

屯の卦が艮の卦に変わる。年年吉慶を蒙り、今年また福澤を領受す。三人出門して花草を采摘し、一たび去れば必ず收穫有らん。艮は止まるなり。分に安んじ常を守れば福澤長く在り。占うに成を守りて利を得、出行して獲あるを主とし、吉。

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