咸の林(咸卦六十四林)
咸:雌單獨居,歸其本巢。毛羽憔悴,志如死灰。
咸の卦が自ら変じても咸の卦のままである。雌鳥が孤单独処して、元の己の巣に帰る。羽毛は枯敗憔悴し、心志は死灰のごとく冷寂する。この林は孤独して偶を失い意気が消沉することを主とし、帰宿あれど毫も生気なし、不吉である。
乾:小窗多明,道里利通。仁賢君子,國安不僵。
咸の卦が乾の卦に変わる。小さな窓から多くの光亮が透し入り、道路里巷は畅通して利あり。仁徳賢能の君子が位に在れば、国家は安定して僵滞せず。この林は狭小の地に処るも前程が明朗で、賢人の相助を得て家国が平安なることを主とし、吉である。
坤:心惡來恠,沖沖何懼。顏淵子騫,尼父聖誨。
咸の卦が坤の卦に変わる。心に怪異の事が門に来るを厭い、憂心忡忡なれど亦畏るるに足らず。顔淵と閔子騫は徳行が高潔で、孔夫子の聖人の教誨に依った。この林は怪異に遇うも、孔門弟子のごとく徳を修め自ら守れば、懼るべきなし、凶より安に転ずることを主とする。
屯:鳥鳴呼子,哺以酒脯。高棲水起,來歸其母。
咸の卦が屯の卦に変わる。鳥が鳴いて幼雛を呼び、酒と肉脯を取りて養う。高き処に栖まりて水勢が漲れば、幼鳥は即ち母の辺に帰る。この林は慈親の抚育と子女の来帰を主とし、縱え水患に遇うも団聚を得、吉である。
蒙:國馬生角,陰孽萌作。變易常服,君失於宅。
咸の卦が蒙の卦に変わる。国中の馬の頭に角が生え、陰邪の妖孽が萌動を始める。人々は平素の服色を改め換え、君主はこれによって居宅を失う。馬に角生ずるは漢人の《五行志》の類の書に記す災異である。この林は怪異が警を示し礼制が紊乱し、上に居る者が位を失うことを主とし、凶である。
需:入年多悔,耕石不富。衡門屢空,使士失意。
咸の卦が需の卦に変わる。この一年に入れば悔事多く、石の地に耕しても家を発すること能わず。简陋の柴門の家は屡々糧を断ち、読書人はこれによって失意する。衡門は《詩経・陳風・衡門》に出て、隠者の寒素の居を指す。この林は年運が佳からず労して収穫なく、寒士が困頓することを主とし、凶である。
訟:諸孺行賈,遠涉山阻。與旅為市,不危不殆。利得十倍。
咸の卦が訟の卦に変わる。一班の年軽人が外出して経商し、山川の険阻を遠く渉る。同行の旅人と売買して、危にも遇わず険にも遭わず、十倍の利を得る。この林は遠行して経商し、艱阻を歴るも終に厚利を獲ることを主とし、吉である。
師:梁破橋壞,水深多畏。陳鄭之間,絕不得前。
咸の卦が師の卦に変わる。橋梁は破損坍壊し、水は深くて人を畏れしむ。陳国と鄭国の間に阻まれ、隔絶して前に行くこと能わず。孔子が陳蔡に厄したは、まさにこの一帯の旧事である。この林は道路が断絶し進退両難で、行人が困を受けることを主とし、凶である。
比:雙鳧俱飛,以歸稻池。經涉萑澤,為矢所傷。損我胸臆。
咸の卦が比の卦に変わる。一対の野鴨がともに飛び起こり、稻田水池に帰らんとす。途中葦葦の沼沢を経て、箭に射中されて我が胸口を傷つく。この林は行途に暗く埋伏を蔵し、楽極まりて災を生じ、傷を受け血を見ることを主とし、凶である。
小畜:謾誕不成,佶梁滅文。許人買牛,三夫爭之。失利後時,公孫懷憂。
咸の卦が小畜の卦に変わる。満口の謊話は終に事を辦らず、梁木は壮なれど文采は尽く失わる。許国人が牛を買いに来り、三人が一斉に争搶す。利益を錯過しまた時機を誤りて、公孫は心に憂愁を懐く。この林は誑語に信なく多人が争奪し、利を失い期を誤ることを主とし、凶である。
履:南國飢凶,民食糟糠。少子困捕,利無所得。
咸の卦が履の卦に変わる。南方の邦国に飢荒が鬧ぎ、百姓はただ酒糟米糠を食らう。小兒子は捕獵に困して一無所得なり。この林は歳歉して糧絶え、漁猟に功なく、家中に食が乏しいことを主とし、凶である。
泰:狗吠非主,狼虎夜擾。驚我東西,不為家咎。
咸の卦が泰の卦に変わる。狗は主人ならざる来客に向かい狂吠し、狼虎は夜に来りて搅擾す。東西両辺が皆驚動せられたれど、幸いに家中の禍事を醸さず。この林は夜に驚擾あり外物が侵犯するも、虚驚一場にして実害なきことを主とする。
否:望龍無目,不見手足。入水求玉,失其所欲。
咸の卦が否の卦に変わる。望み見た龍には眼睛なく、また手脚も見えず。水の中に下りて美玉を求めしに、果して欲する所の物を失う。この林は見る所が真ならず求むる所が実ならず、徒労一場たることを主とし、凶である。
同人:以鹿為馬,欺誤其主。聞言不信,三口為咎。黃龍三子,中樂不殆。
咸の卦が同人の卦に変わる。鹿を指して馬と為して、其の君主を欺瞞誤導す。実話を聴きても肯んじて信ぜず、三つの嘴が凑れば即ち災咎を成す。指鹿為馬は趙高が秦二世を愚弄した旧事である。黄龍は三人の兒子を生み、中に居りて安楽にして危殆ならず。この林は奸佞が蒙蔽し讒口が交攻するを主とすれど、中を守りて自ら処る者は無虞を保つべし。
大有:養幼新婚,未能出門。登宋望齊,不見太師。
咸の卦が大有の卦に変わる。幼兒を養育しまた新たに成婚したばかりで、一時門を出て遠行する能わず。宋国の高き処に登りて斉国を遥望するも、あの太師に見えず。この林は家事の牽絆があり行止が限られ、見たき人は終に相見ること難し、不吉である。
謙:王孫貴子,相與為友。明允篤誠,升擢薦舉。
咸の卦が謙の卦に変わる。王孫公子が彼此朋友と結び、明察誠信・篤厚真摯なるを以て、これによって提拔薦挙を得る。明允篤誠はもと《左伝・文公十八年》に八元八愷を称賛した言葉である。この林は貴人と結交し誠を以て立身し、仕途に進用することを主とし、大吉である。
豫:山水暴怒,壞梁折柱。稽旅難行,留連愁苦。
咸の卦が豫の卦に変わる。山洪が暴発して勢い震怒のごとく、橋梁を冲壊し屋柱を折断す。旅人は阻滞して前に行き難く、滞留して外に在り愁苦に堪えず。この林は水患が災を成し行程が阻まるるを主とし、羈旅は憂困す、凶である。
隨:鸇鳩徙巢,西至平州。遭逢雷電,碎我苕蘆。室家飢寒,思吾故初。
咸の卦が隨の卦に変わる。鸇鳥と斑鳩が巢穴を遷移し、西に往きて平州に到る。途中雷電に遭遇し、我が葦稈蘆草の窝を撃ち碎く。一家人は飢寒交迫して、ただ当初の旧居を懐うのみ。この林は遷徙して所を失い天災に遭いて家を破られ、飢寒にして旧を思うことを主とし、凶である。
蠱:登高傷軸,土阪棄粟。販鹽不利,市賈折角。
咸の卦が蠱の卦に変わる。高き坡に上れば車軸を壓傷し、土坡に在りて穀子を落し去る。鹽を販るに利潤なく、市上に在りて売買すれば本を折る。この林は運載が損を受け経商が亏折して、営む所皆利を得ざるを主とし、凶である。
臨:祝鮀王孫,能事鬼神。節用綏民,衛國以存。眉壽多年。
咸の卦が臨の卦に変わる。衛国の祝鮀と王孫賈は、鬼神に奉事するに善し。用度を節省し百姓を安撫せば、衛国はこれによって保全を得、君臣は長寿多年なり。《論語・憲問》に孔子が衛靈公は道なきも亡びざるを論ずるは、正に祝鮀が宗廟を治め王孫賈が軍旅を治めたに依る。この林は賢臣が職を分かち神を敬い民を愛して、国存んで人壽なることを主とし、大吉である。
觀:九里十山,道卻峻難。牛馬不前,復反來還。(還又作道)
咸の卦が觀の卦に変わる。九里の路を行くに十座の山を翻え、道路は陡峭にして行き難し。牛馬は皆前に進まんとせず、ただ頭を掉して折り返すのみ。末句の「還」の字は、一本に「道」と作る。この林は道途が険峻にして寸步行き難く、出行して成ることなし、退くに宜しく進むべからず。
噬嗑:枯樹不花,空淵無魚。舊鳥飛翔,利棄我去。
咸の卦が噬嗑の卦に変わる。枯死の樹は再び花を開かず、空蕩の深潭には魚なし。旧日の鳥さえ飛び去りて、利益は我を抛て去る。この林は生機が断絶し旧好が离散し、財利が尽く失わるることを主とし、凶である。
賁:雄狐綏遺,登山崔嵬。昭告顯功,大福允興。
咸の卦が賁の卦に変わる。雄狐が長尾を拖きて従容と行き、高峻の山巔に登る。上に昭告し功績を顕揚すれば、大福はこれによって確たる興起あり。崔嵬は《詩経・周南・巻耳》に出る。この林は高きに登り遠きに致し功業が彰明にして、福を受け興旺することを主とし、大吉である。
剝:啞啞笑言,與歡飲酒。長樂行觴,千秋起舞。拜受大福。
咸の卦が剝の卦に変わる。笑語が啞啞として断えず、人と歓聚して酒を飲む。長楽の中で盃を傳え令を行い、千秋を祝して起舞し、跪拜して大福を領受す。この林は宴楽が融洽で喜慶が門に臨み、福と賜を受くることを主とし、大吉である。
復:大推破轂,長舌亂國。床笫之言,三世不安。
咸の卦が復の卦に変わる。力を用い猛く推して車轂を撞破し、長舌の婦人の讒言が国家を搅乱す。枕席の間の私語が外に傳わり、三代を害して安寧を得しめず。長舌の喩は《詩経・大雅・瞻卬》の「婦に長舌有り、厲の階なり」に出る。この林は内言が外に泄れ閨門が政を干すを主とし、禍が数世に延びて、大凶である。
旡妄:男女合室,三姓同食。婚姻孔云,宜我孝孫。(三疑作二)
咸の卦が无妄の卦に変わる。男女が成婚して同室に居り、三姓の人家が同じく飯を食う。婚姻の事は十分に和洽して、正に我が家の孝順の子孫に宜し。校語に「三」の字は疑わしく「二」と作るべしという。この林は婚配が和美し家族が融洽し、子孫が昌盛することを主とし、大吉である。
大畜:千仞之牆,不得入門。金籠鐵疏,利以避兵。欲上南阪,軸方不轉,還車復反。
咸の卦が大畜の卦に変わる。千仞の高き城牆が前に挡えて門に入る能わず。金籠鐵柵のごとく堅固な所は、正に兵禍を避けるに利あれど、南の山坡に上らんと欲するに車軸が卡して轉動せず、ただ車頭を掉せて折り返すのみ。この林は外に入るべき門路なく、堅壁を固守して兵災を避くるに宜しく、妄りに進めば阻まれて返ることを主とする。
頤:華言風語,自相詿誤。終無凶事,安寧如故。
咸の卦が頤の卦に変わる。浮夸の言辞と捕風捉影の傳聞は、彼此牽累して貽誤すれど、到頭に凶事なかりき。仍として安宁で常のごとし。この林は流言が紛擾するも実に其の事なく、虚驚が過ぎた後に平安に帰することを主とする。
大過:泛泛柏舟,流行不休。耽耽寐寐,公懷大憂。仁不遇時,退隱窮居。
咸の卦が大過の卦に変わる。柏木の小舟が水面に漂浮して流れに隨いて歇まず。輾轉反側して夜に寐を成さず、公は心に深重の憂愁を懐く。《詩経・邶風・柏舟》はまさに仁人が遇われず憂心悄悄の情を詠ず。この林は漂泊して依る所なく憂思が解け難く、賢者が生まれて時に逢わず、ただ退隱して窮を守るのみ、不吉である。
坎:大尾小頭,重不可搖。上弱下強,陰制其雄。
咸の卦が坎の卦に変わる。尾は大にして頭は小、沈重にして搖撼せる能わず。上に居る者は衰弱し下に在る者は強横で、陰柔の一方が雄強を壓制したり。尾大不掉は《左伝・昭公十一年》に出る。この林は枝強く干弱く、下が上を凌ぎ替えて、主事する者が制を受くることを主とし、凶である。
離:一身三口,語無所主。東西南北,迷惑失道。
咸の卦が離の卦に変わる。一つの身に三張の嘴を生やして、言葉に一定の主見なし。東西南北に四処乱走して、迷惑して正路を失う。この林は政が多門より出て心に定見なく、方向を迷失することを主とし、凶である。
恆:南行求福,與喜相得。封受上賞,鼎足輔國。(晉之謙同)
咸の卦が恒の卦に変わる。南辺に往きて福を求めば、正好く喜事と相遇う。封を受けて上等の賞賜を領し、鼎の三足のごとく国家を輔佐す。校語にこの条は「晋之謙」の林と同じと指摘す。この林は南行して喜を得て爵を進め賞を受け、位は輔弼に列することを主とし、大吉である。
遯:過時不歸,雌雄苦悲。徘徊外國,與母分離。
咸の卦が遯の卦に変わる。約定の時を過ぎても仍として帰らず、雌雄一対が苦しみて悲鳴す。外邦に徘徊して、母と分離す。この林は期を踰えて帰らず異郷に羈留し、骨肉が离散することを主とし、凶である。
大壯:堯舜在國,陰陽和德。涿聚衣裳,晉人無殃。
咸の卦が大壯の卦に変わる。堯舜のごとき聖君が位に在り、陰陽は調和して徳沢は相済す。衣冠の士は一処に聚集し、晋国人に災殃なし。この林は聖主が上に在り賢才が雲集して、境内に災なきことを主とし、大吉である。
晉:周公之隆,越裳夷通。疾病多祟,鬼哭其公。狼子野心,客宿不同。
咸の卦が晋の卦に変わる。周公が世を治めて興隆し、南方越裳氏のごとき遠夷さえ來りて通好す。然れど疾病に鬼祟の作乱多く、鬼が公府の中に哀哭す。また狼子野心の徒が其の間に混在り、彼と共に宿するは終竟可ならず。越裳の雉を献ずるは《尚書大伝》に記する周公の盛徳の事である。この林は外邦の帰附は盛なれど、内に邪祟と異心の人あり、吉の中に凶を蔵す。
明夷:申酉脫服,牛馬休息。君子以安,勞者得歡。
咸の卦が明夷の卦に変わる。申時酉時に到れば労作の衣裳を脱ぎ、牛馬も一並びに歇息する。君子はこれによって安を得、労苦の人も歓楽を得た。この林は作息に度あり時に及んで休止し、人畜ともに安んずることを主とし、吉である。
家人:凱風無母,何恃何怙。幼孤弱子,為人所苦。
咸の卦が家人の卦に変わる。《詩経・邶風・凱風》は孝子が母を思うを詠ず。今母は在らず、なお誰を依頼し誰を仰仗せん。年幼孤弱の子は、人に欺凌され苦を喫す。父なきを無怙・母なきを無恃というは、《詩経・小雅・蓼莪》に本づく。この林は恃を失い孤苦して依托する所なく、人の欺凌を受くることを主とし、凶である。
睽:出門上堂,從容牖房。不失其常,天牢地戶。勞者憂苦。
咸の卦が睽の卦に変わる。門を出てまた厅堂に登り、窗下の房中に在りて従容として自ら処る。其の常度を失わざれば、即ち天牢地戸のごとく本位を固守せん。ただ操労する人は仍として憂苦を免れず。この林は常を守り自ら保てば失なかるべきを主とすれど、身に労役を当たる者は依りて辛苦す、平の中に憂いを帯ぶ。
蹇:天厭周德,命與南國。以禮靜民,兵革休息。
咸の卦が蹇の卦に変わる。上天が周朝の徳運を厭棄し、天命を南方の国に交わす。彼処は礼を以て百姓を安んじ、兵戈甲冑は皆収蔵して休止す。この林は旧運が終を告げ新主が命を承け、礼を以て兵を息め、乱の後に安を得ることを主とし、吉である。
解:堂桑折衡,佐斗者傷。暴臣反國,良臣被殃。
咸の卦が解の卦に変わる。堂前の桑樹が車衡を壓折し、人の打架を助ける者は自ら傷を受く。暴虐の臣は反逆して乱を為し、賢良の臣はかえって禍殃に遭う。この林は他人の争闘に巻き入れば必ず連累を受け、忠良が害を見ることを主とし、凶である。
損:合歡之國,嘉喜我福。東嶽西山,朝齊成思。
咸の卦が損の卦に変わる。歓洽和合の邦国に在りて、美好の喜慶が我が福気を成就す。東辺の岳・西辺の山が、ともに斉地に朝向して心意が相聚まる。この林は上下が和合し四方が心を帰し、福慶が並び至ることを主とし、吉である。
益:耕石不生,棄禮無名。縫衣失針,襦褲不成。
咸の卦が益の卦に変わる。石の地に耕しても苗を生ぜず、礼法を抛棄すれば名声を留めず。衣裳を縫うに針を失えば、短衣長褲も皆成らず。この林は根本が宜ならず器具が備わらずして、凡事が始有りて終なきことを主とし、凶である。
夬:聾瞢闇盲,跛倚不行。坐戶孚骸,身被大災。困其多憂。
咸の卦が夬の卦に変わる。聾にして昏、暗にして瞎、足を瘸めて物に倚るも行く能わず。ただ門口に坐して空しく一副の身骨を守るのみ、身上に大災を遭い、困頓の中に憂愁重々なり。この林は身に残疾あり行動が無能で、災患が身に纏わるることを主とし、大凶である。
姤:生長太平,仁政流行。四方歸德,社稷康榮。
咸の卦が姤の卦に変わる。太平盛世に生長し、仁政が天下に推行す。四方は皆其の徳に帰附して、社稷は安康繁栄なり。この林は時に治世に逢い徳化が広く被り、家国が康寧なることを主とし、大吉である。
萃:桀蹠並處,民人愁苦。捕兵荷糧,戰於齊魯。合巹得牢,姬姜並居。
咸の卦が萃の卦に変わる。夏桀と盗跖のごとき凶人が一世に同処し、百姓は愁苦す。兵を徴し役を派し糧草を背負いて、斉魯の一帯に往きて戦う。幸いに成婚合巹は牲牢を備えるに足りて、姫姓姜姓の女子が同じく門を過ぐ。この林は時世が凶乱で兵役が煩重なるを主とすれど、ただ婚姻の一事は成るべし、凶の中に喜びあり。
升:南與凶俱,破車失襦。西行無褲,亡其寶賂。
咸の卦が升の卦に変わる。南に行けば凶険と相伴い、車は撞壊して短衣も失う。西に行けば褲子さえなく、宝物財貨は全部喪失す。この林は出行の方位が利ならず財を破り物を失い、狼狽極まることを主とし、凶である。
困:空曹注器,豚彘不至。張弓祝雞,雄父飛去。
咸の卦が困の卦に変わる。空槽に對して器皿の中に傾倒するも、小猪も大猪も肯んじて來らず。一辺弓を張りて一辺鶏に向かい祷祝するも、公鶏は早くに飛び去った。この林は招くも来らず挙措が自相矛盾して、畜養が成らざることを主とし、凶である。
井:望尚阿衡,太宰周公。藩屏湯武,立為王侯。
咸の卦が井の卦に変わる。呂尚と阿衡と号する伊尹、また太宰を為した周公を仰望す。彼らは商湯・周武の屏障輔弼を作し、自身も立ちて王侯と為った。阿衡は伊尹の官号である。この林は輔弼の位を得て君を佐え業を成し、進んで封ぜられ顕貴となることを主とし、大吉である。
革:朝鮮之地,姬伯所保。宜家宜人,業處子孫。
咸の卦が革の卦に変わる。朝鮮のあの一片の土地は、周室姫姓の伯によって保守せしめられた。家室に宜しく人衆に宜しくして、子孫に世代安居して業を立てしむべし。この林は地を擇ぶに宜を得て家業が久しからんことを主とし、沢は後代に及ぶ、吉である。
鼎:息憂解笑,故貧今富。載樂履善,與福俱憂。(下憂字疑當作優)
咸の卦が鼎の卦に変わる。憂愁は止息して愁容は笑顔と化し、従前は貧窮なりしが今は富足す。心に歓楽を懐き足に善道を踏みて、福気とともに優游す。校語に下の「憂」の字は疑わしく「優」と作るべしという。この林は貧より富に転じ憂去り楽来たるを主とし、善を行いて福を得る、大吉である。
震:叔迎伯兄,遇巷在陽。君子季姬,並坐鼓簧。
咸の卦が震の卦に変わる。叔弟が伯兄を迎えに往き、陽に向かう巷子の中で相遇う。君子は季姬と肩を並べて坐し、笙簧を吹奏す。この林は兄弟が相迎い男女が和楽して、宴飲に歓ありとすることを主とし、吉である。
艮:順風縱火,艾芝俱亡。三官集房,一子中傷。(剝之坤,作三害集房,十子中傷)
咸の卦が艮の卦に変わる。風勢に順いて火を放てば、艾草と霊芝がともに焼き尽くさる。三様の官祟が房中に聚集して、一人の兒子がこれによって傷を受く。「剝之坤」の林には「三害房に集まり、十子傷を中れる」と作る。この林は玉石ともに焚かれ良秀ともに尽きて、家中の人口が害を受くることを主とし、凶である。
漸:駕車八里,求鮮魴鯉。非吾肆居,自令失布。君子所在,安無危殆。
咸の卦が漸の卦に変わる。車を駕して八里を行き、新鮮の魴魚鯉魚を求めに往く。彼処は我が平日攤を設くる所にあらず、白白に錢幣を落す。しかし君子が傍に在るのみあれば、安穏にして危険なし。この林は熟地を離れて経営すれば必ず本を折るに至り、君子に依附すれば平安を得ることを主とし、先に失い後に安んず。
歸妹:拔劍傷手,見敵不起。良臣無佐,困辱為苦。
咸の卦が歸妹の卦に変わる。劍を抜く時に自らの手を傷つけ、敵人に見えても奮い起つ能わず。賢良の臣は輔助を得られず、困頓して辱を受け苦言に堪えず。この林は自ら其の力を傷つけ事に臨んで援なし、困に遭い辱を受くることを主とし、凶である。
豐:亂君之門,佐鬥傷跟。營私貪祿,身為悔殘。東下泰山,見我所歡。
咸の卦が豐の卦に変わる。昏乱の君主の門下に出入して、人の争闘を助けて脚跟を傷つく。私を営み弊を舞い俸禄を貪れば、自身は悔恨残傷に落ちる。後に東に泰山に下りて、ようやく己の好む所の人に見ゆ。この林は乱主に依附して争闘に巻き入れば必ず傷損を受けるを主とすれど、ただ東行すれば歓ぶ所に遇うべし、凶の中に転あり。
旅:慈母望子,遙思不已。久客外野,使我心苦。
咸の卦が旅の卦に変わる。慈母は兒子の帰るを盼望し、遥かに思念して歇まず。游子は久しく外の荒野に客居して、我が心を苦楚ならしむ。この林は母子が分隔し久しく客居して帰らず、思念が苦と成ることを主とし、不吉である。
巽:魴生淮郄,一轉為百。周流四海,無有患惡。淮郄又作江雒)
咸の卦が巽の卦に変わる。魴魚は淮水の曲隈に生まれ、瞬く間に一条が上百条と変じる。四海を周游して、禍患と凶悪とを遇わず。校語に「淮郄」は一本に「江雒」と作るという。この林は生息が繁盛で財貨が倍加し、四方を行きて皆平安を得ることを主とし、大吉である。
兌:甘露醴泉,太平機關。仁德感應,歲樂民安。
咸の卦が兌の卦に変わる。天は甘露を降し地は醴泉を湧かす、これは太平盛世の枢機の在る所である。君上の仁徳と天意とが相感応して、年成は歓楽、百姓は安宁。甘露醴泉は皆漢代に常に挙げられた祥瑞である。この林は上の徳と下の応とが時和し歳豊かなることを主とし、大吉である。
渙:采薇出車,魚麗思初。上下役急,君子免憂。
咸の卦が渙の卦に変わる。《詩経・小雅》に《采薇》《出車》《魚麗》の諸篇あり、将士が出征して辺を戍り、帰りて飲至するを写して、人に当初を追念せしむ。上下皆徭役に逼られて緊急なるも、君子は独り憂患を免るることを得。この林は時に征役が煩重なるに逢い、ただ正を守る者のみが脱して咎なきを得ることを主とする。
節:豕生魚魴,鼠舞庭堂。雄佞施毒,上下昏荒。君失其邦。
咸の卦が節の卦に変わる。猪が魴魚を生み、老鼠が庭堂の上に起舞す。強横の佞臣が毒害を施放し、上下は昏乱荒廃して、君主は其の邦国を失う。これらは皆漢人のいわゆる物妖災異である。この林は怪異が叢生し奸邪が権に当たり、家国が傾覆することを主とし、大凶である。
