咸の林(咸卦六十四林)
大過:伯虎仲熊,德義淵弘。使布五教,陰陽順序。
蹇の卦が大過の卦に変わる。伯虎、仲熊の此れら八元の才は、徳行道義深厚宏大なり。彼等を派して父義、母慈、兄友、弟恭、子孝の此の五教を推行せしめ、天地陰陽因って各々其の序に順えり。八元八凱は《左伝・文公十八年》に見る、「敬敷五教」は《尚書・舜典》に見る。主とする所は賢才用を得、教化大いに行わるるの象、大吉である。
坎:跛踦相隨,日暮牛罷。陵遲後旅,失利亡雌。
蹇の卦が坎の卦に変わる。瘸腿の人彼此扶携して走るも、天色已に晚くして牛も亦た累垮せり。一路衰頽して隊伍の後頭に落ち、既に利を折り又た母畜を失えり。主とする所は力衰え序を失い、財を損じ口を折るの象、凶である、勉强して路を趕るに宜しからず、宜しく近くに就きて歇止すべし。
離:嬴氏違良,使孟尋兵。老師不已,敗於齊卿。
蹇の卦が離の卦に変わる。嬴姓の秦君蹇叔のごとき賢良の諫に違背し、孟明視を派して兵を興して遠襲せしめり。軍隊久しく労して疲敝するも仍お罷休を肯ぜず、終に敵国卿大夫の手下に敗れり。秦師の鄭を襲い殽に敗れしの事は《左伝・僖公三十二年、三十三年》に見る。主とする所は忠諫を聴かず、師を労して敗を致すの象、大凶である、遠征に宜しからず。
咸:日月並居,常暗且微。高山崩顛,丘陵為溪。
蹇の卦が咸の卦に変わる。日と月倂せて一處に在りて、光亮常に昏暗微弱なり。高山崩塌傾覆して、丘陵陷落して渓谷と成れり。主とする所は天変地異、根本動搖の象、大凶である、上位者失明し、家国傾覆の厄を主とす。
恆:烏鵲食穀,張口受哺。蒙恩被德,長大成就。柔順利貞,君臣相好。
蹇の卦が恒の卦に変わる。烏鵲谷粒を啄食し、雛鳥嘴を張りて哺養を接受す。恩徳の滋養を蒙受して、終に長大成材せり。柔順を以て正を守りて利を得、君臣の間此れによって相親相好せり。主とする所は恩を承け養いを得、上下和洽の象、大吉である、人に依りて事を成し、柔順すれば則ち吉なり。
遯:雖躓復起,不毀牙齒。克免平復,憂除無疾。
蹇の卦が遯の卦に変わる。跟头を跌したりと雖も又た爬起る能く、牙齒も亦た磕壞せざりき。終に禍患を免れて如常に恢復し、憂愁消除して身に疾病なし。主とする所は跌きて復た起つの象、吉である、小挫大礙なく、久病痊る可し。
大壯:草木黃落,歲暮無室。虐政為賊,大人失福。
蹇の卦が大壮の卦に変わる。草木枯黄凋落して、年関將に近づくも家に帰る可きなし。暴虐の政令は人を害するの賊と為りて、大人物を連ねても福沢を失えり。主とする所は時衰え政虐なるの象、大凶である、宜しく蟄伏して冬を過ぎ、政事と相干まるべからず。
晉:避凶東走,反以禍口。制於牙爪,骨為灰土。
蹇の卦が晋の卦に変わる。凶险を避けんとして東に逃走するも、反って禍患の口の中に撞進せり。人家の爪牙に牢牢と制住せられて、骨頭皆な化して灰土と為れり。主とする所は禍を避けて反って禍を招くの象、大凶である、躲閃すれば益なし、東行尤も忌むべし。
明夷:欲飛不能,志苦心勞,福不我來。
蹇の卦が明夷の卦に変わる。翅を振りて高飛せんと欲するも飛び起る能わず、心志苦悶、精神労頓して、福気終に我が身に降臨するを肯ぜず。主とする所は志有りて伸び難きの象、凶である、時運未だ開けず、勉强して進を求むるは只だ徒労のみ。
家人:羔裘豹褎,東與福遇。駕迎吾兄,送我驪黃。
蹇の卦が家人の卦に変わる。羔皮を衣と為し豹皮を袖に鑲めたる礼服を穿きて、東に行きて正に福分と相遇す。車を駕して我が兄長を迎接しに往けば、彼又た我一対の黑馬黄馬を贈れり。「羔裘豹袪」は《詩経・唐風・羔裘》に出る、卿大夫の服を為す。主とする所は衣冠体を得、出行して喜に遇うの象、大吉である。
睽:東耕破犁,西失良妻。災害不避,家貧無資。
蹇の卦が睽の卦に変わる。東に往きて地を耕すも犂具を弄壞し、西に往きて又た賢良の妻子を失えり。災害躲めばも亦た開かず、家裏窮して一点の資財もなし。主とする所は四方損を受け、内外交困するの象、大凶である、農事、婚姻倶に利あらず、宜しく静を守りて運を待つべし。
解:魚陸失所,鳥蠅困苦。澤無萑蒲,晉國以墟。
蹇の卦が解の卦に変わる。魚は陸地の上に抛げられて依る所を失い、飛鳥蚊蠅も亦た困頓受苦せり。沼沢の裏に連れて蘆荻蒲草も生ぜず、晋国此れによって廃墟に淪落せり。「沢之萑蒲」は国の資産を為す、《左伝・昭公二十年》に見る。主とする所は生養の資尽く絶え、国破れ家亡ぶるの象、大凶である。
損:脫兔無蹄,三步五罷。南行不進,後市勞苦。
蹇の卦が損の卦に変わる。逃げ脱げし兎子蹄足を失い、三步を走れば五回歇まねばならず。南に往きて走るも動かず、集市に趕り到れば已に散場して、白白に辛苦一場なり。主とする所は力能く行くこと能わず、時機を錯失するの象、凶である、南行、赶集倶に利あらず、宜しく期を改め向きを改むべし。
益:行役未已,新事復起。姬姜勞苦,不得休止。
蹇の卦が益の卦に変わる。服役出行の差事未だ結束せざるに、新たの事端又た冒出来れり。姫姜のごとき貴家の女子を連ねても跟着労苦奔波して、片刻の歇息を得ず。主とする所は事務身に纏い、労碌休まざるの象、凶である、諸事踵を接し、宜しく力を量りて應付し、更に新事を攬るべからず。
夬:向日揚光,火為正王。消金厭兵,雷車避藏。陰雨不行,民定其鄉。
蹇の卦が夬の卦に変わる。太陽に面向して光焰高揚し、火德令に当たりて正統の主と為れり。金鉄を銷熔し兵革を鎮壓して、雷車を連ねても退避収蔵せしめり。陰雨再び横行せず、百姓因って郷里に安定せり。主とする所は陽德権に当たり、兵戈止息の象、大吉である、禍乱を平定し四境安寧を主とす。
姤:放銜垂轡,奔馬不制。棄法作奸,君失其位。
蹇の卦が姤の卦に変わる。馬嚼子を鬆開し繮繩を放下すれば、狂奔の馬便ち再び控制する能わず。法度を抛開して私を營り奸を作せば、君主終に己が位子を失えり。主とする所は綱紀廢弛、上位守りを失うの象、大凶である、宜しく法度を整粛し、人心を收束すべし。
萃:司命不遊,喜解我憂。皇母緩帶,嬰兒笑喜。
蹇の卦が萃の卦に変わる。人の寿命を掌る司命の神再び四處游走して災を降さず、喜事我が為に憂愁を解开せり。老母亲衣帯を寛松して安然自適にして、懐中の嬰児も亦た笑逐顔開せり。司命は寿を主るの神、《楚辞・九歌》に見る。主とする所は災星退避、闔家安楽の象、大吉である、病愈る可く、憂解く可く、嗣を求むるも成る可し。
升:黃帝出遊,駕龍乘馬。東上泰山,南過齊魯。郡國咸喜。
蹇の卦が升の卦に変わる。黄帝出巡遠游して、神竜を駕し駿馬に乘り、東に泰山に登り、南に斉魯の地を経過して、到る所の郡国歓喜せざるなし。黄帝の鬼神を泰山に合するの説は《韓非子・十過》に見る。主とする所は尊者巡行、四方沢を蒙るの象、大吉である、出行、上進倶に宜し。
困:既往不說,憂來禍結。比戶為患,無所申冤。
蹇の卦が困の卦に変わる。過去の事已に辯説すべき由なく、憂患踵を接して至り禍結びて解け難し。家家户户皆な其の害を受くるも、申訴冤屈すべき地方なし。主とする所は群其の困を受け、冤有りて訴へる處なきの象、大凶である、訴訟成らず、宜しく隱忍して変を待つべし。
井:荷蕢隱居,以避亂傾。終身不仕,遂其潔清。
蹇の卦が井の卦に変わる。彼の草筐を背負う隱者は隠居を選擇して、以て乱世の傾覆を避く。一生官を為りて出るを肯ぜず、終に己が高潔清白を成全せり。荷蕢者の孔氏の門を過ぐるは《論語・憲問》に事見る。主とする所は退隱して節を全うするの象、出仕して名を求むるに宜しからず、拙を守れば反って清吉を得。
革:折梃舂稷,君不得食。頭癢搔跟,無益於疾。
蹇の卦が革の卦に変わる。一根の木棒を折りて谷子を舂くるも、主人終に飯を吃上ぐる能わず。頭上痒きに却って脚後跟を撓むは、病症に於いて毫も益処なし。主とする所は力を用るること当ならず、轅を南にして辙を北にするの象、凶である、施す所の法路に對せず、宜しく別に正途を尋ねるべし。
鼎:植根不固,華葉落去,便為枯樹。
蹇の卦が鼎の卦に変わる。根基扎めたること牢からず、花朵葉子紛紛として凋落して、転眼の間に便ち一棵の枯樹と成れり。主とする所は根本立たず、終に枯敗に帰するの象、凶である、宜しく先ず本を固くし、只だ枝葉の浮華を務むべからず。
震:凶門生意,牢戶多冤。沙陁禿齒,使我困窮。
蹇の卦が震の卦に変わる。凶险の門の裏に營生を做起して、牢獄の中冤屈に満ち満てり。沙磧荒灘、牙齒脱落して、我を弄して困頓窮乏ならしめり。主とする所は營謀して険を渉り、身冤獄に陷るの象、大凶である、宜しく刑名を遠避し、改めて正業に就くべし。
艮:登山履谷,與虎相觸。蝟為功曹,班奴奔北。脫之喜國。
蹇の卦が艮の卦に変わる。山に登り谷を越ゆるの間、迎面して猛虎に撞上せり。幸いに満身尖刺の刺猬功曹を充て相助する有りて、虎奴倉皇として北に奔逃せり。終に険を脱して、可喜の国に回り帰れり。主とする所は険に遇いて異助を得て脱身するの象、凶中に吉を蔵し、小き者も亦た大難を済す可し。
漸:麟鳳所翔,國無咎殃。賈市十倍,復歸惠裡。
蹇の卦が漸の卦に変わる。麒麟と鳳凰の翱翔する処は、国中過錯災殃有ることなし。買売を為して十倍の利を獲て、満載して帰りて寛厚の郷里に回る。主とする所は祥瑞並び至り、経商大いに獲るの象、大吉である。
歸妹:路險道難,水過我前。進往不利,回車復還。
蹇の卦が帰妹の卦に変わる。道路険峻艱難にして、大水又た我が前に横たわる。再び前に往けば好処なく、只好く車頭を掉轉して返回するのみ。主とする所は前途阻まるるの象、凶である、難を知りて退くを方に計を得と為し、強行すれば必ず陷らん。
豐:延頸望邑,思歸我室。臺榭不成,未得安息。
蹇の卦が豊の卦に変わる。脖子を伸長して故邑を遠望し、一心に己が家中に回らんことを想う。然るに楼臺亭榭未だ修成せず、暫く還た安身歇息の処を得ず。主とする所は帰心切なれど時未だ至らざるの象、盼む所終に実現する可し、但だ眼下須らく再び等待すべし。
旅:蒙生株瞿,棘掛我須。小人嫉妒,使恩不遂。
蹇の卦が旅の卦に変わる。荒草叢生、枯株叢立して、荊棘我が鬚鬚を勾住せり。小人旁に在りて嫉妒して梗を作り、恩沢をして施行し下る能わざらしむ。主とする所は小人阻橈するの象、凶である、好意行くこと難し、宜しく是非の人を避開すべし。
巽:南至隱域,深潛處匿。聰明閉塞,與死為伍。
蹇の卦が巽の卦に変わる。南に往きて幽隱の地に走りて、深深として潜蔵躲め起れり。耳目閉塞、聰明用ゐず、直ちに死人と伍を為す。主とする所は退蔵し過度して自棄に近きの象、凶である、晦を韜くは禍を避くる可しと雖も、久しく蔵れば則ち志気消尽せん。
兌:機餌設張,計暴子良。範叔不廉,凶害及身。
蹇の卦が兌の卦に変わる。機関と誘餌倶に布置停当せられたりしも、算計賢良の人の面前に暴露せり。范叔操行清白ならず、凶禍終に己が身上に落着せり。范叔は即ち范雎、其の須賈の譖に遭いて幾ほどなく死せしは、《史記・范雎蔡沢列伝》に事見る。主とする所は機を設けて人を害し反って噬を返るるの象、大凶である、宜しく事を行いて光明にし、切に暗算を忌むべし。
渙:從騎出谷,遊戲苦域。坡高不進,利無所得。
蹇の卦が渙の卦に変わる。随従を帯びて馬に騎りて谷を出で、困苦の地の裏に游荡玩耍す。山坡太陡にして上る能わず、一点の好処も亦た撈え得ざりき。主とする所は游荡功なきの象、凶である、出行して嬉游すれば徒らに財力を耗す、安守するに如かず。
節:西國強梁,為虎作狼。東吞齊楚,並有其王。
蹇の卦が節の卦に変わる。西辺の国家強横霸道にして、虎狼よりも凶なり。東に向かい斉・楚等の国を吞并して、彼等の君王を連ねても一倂に收服せり。此れ秦の六国を并するの勢を指す。主とする所は強者兼并の象、強者に於いては吉なり、弱者に於いては大凶なり、弱勢に処る者は宜しく早く之が為に圖るべし。
中孚:登山伐輻,虎在我側。王孫無懼,仁不見賊。
蹇の卦が中孚の卦に変わる。山に登りて木材を砍伐して車輻を做れば、猛虎即ち身の旁に在り。王孫却って毫も懼怕せず、仁心を懐くる人は残害せられざるが故なり。主とする所は徳足りて物を服するの象、吉である、心に仁厚を存すれば則ち険境も亦た恙なき可し。
小過:六目睽睽,各欲有至。後來未壯,候待明旦。
蹇の卦が小過の卦に変わる。六隻の眼睛瞪りて大きくして相互に盯着し、各々皆な先を搶りて到達せんと欲す。後到の一方力量還た壮大ならずして、只だ第二天の天亮を待って再び説くのみ。主とする所は先を争い未だ決せざるの象、眼下宜しく兵を按じて動かず、時機成熟するを待ちて行くべし。
既濟:道涉多阪,牛馬蛇蟺。車不利載,請求不得。
蹇の卦が既済の卦に変わる。行く所の路須らく許多の山坡を跋涉すべく、牛馬蜿蜒盤繞して蛇の如く艱難に前行す。車子物を載せ動く能わず、請求する事も亦た办成る能わず。主とする所は道阻みて事滞るの象、凶である、運輸、請託倶に利あらず、宜しく暫く其の行を緩むべし。
未濟:一口三舌,相妨無益。群羊百牂,不為威強。亡馬失駒,家耗於時。
蹇の卦が未済の卦に変わる。一張の嘴の裏に三條の舌頭長じて、彼此妨礙して毫も益処なし。成群の公羊母羊多しと雖も、亦た何の威勢強盛を算えんや。馬失い駒子も亦た走失して、家業便ち此の時に耗損して下去せり。主とする所は言多くして相妨げ、虚に其の衆有るの象、凶である、口舌損を招き、牲畜財物倶に宜しく看緊すべし。
解の林(解卦六十四林)
解:駕言出遊,鳥斗車前。更相捽滅,兵馬且來。回車亟還,可以無憂。
解の卦が自ら変じても解の卦のままである。車を駕して門を出でて游歴すれば、飛鳥車の前に於いて相互に争鬪し、彼此揪扯廝殺して、是れ兵馬將に至らんとするの凶兆なり。「駕言出游」は《詩経・邶風・泉水》に出る。此の時趕緊に車頭を掉轉して家に回れば、憂患を免るる以て可なり。主とする所は兆を見て早く避ければ則ち吉の象、出行して異に遇えば当機立断して返るべし。
乾:大都之居,無物不具。抱布貿絲,所求必得。
解の卦が乾の卦に変わる。繁華の大都会の裏に住めば、何の物件も斉備せり。布匹を抱きて絲線を換えに往けば、欲する必定にして得る能し。「抱布貿絲」は《詩経・衛風・氓》に出る。主とする所は百物豊備、交易心に称うの象、大吉である、買売、物を求むる皆な遂う。
坤:膠著木連,不出牢關,家室相安。
解の卦が坤の卦に変わる。膠を以て木料を牢牢と粘接し一處に合わせ、堅固にして散脱することなく、彼の緊閉せる関門を出ずるも及ばず。一家人此れによって彼此安寧せり。主とする所は固く守りて動かざれば則ち安んずるの象、吉である、宜しく安居して成を守り、遠出に宜しからず。
屯:孟伯食長,懼其畏王。賴四蒙五,抱福歸房。
解の卦が屯の卦に変わる。孟伯長者の位に居りて俸禄を享用するも、心の裏却って君王の威厳を畏懼す。幸いに四方五方の庇蔭護佑を得て、最終に福分を抱きて己が房中に回れり。主とする所は身高位に処りて畏を知りて全うを得るの象、吉である、謹慎して畏を存すれば則ち福自ら身に随う。
蒙:朽輿瘦駟,不任銜轡。君子服之,談何容易。
解の卦が蒙の卦に変わる。朽壞の車子に瘦弱の駟馬を配せば、連れて嚼子繮繩も受持つ能わず。君子此のごとき車馬を駕して路に上らんとす、談ずること何の易きや。主とする所は器用に堪えず、任重くして行くこと難きの象、凶である、憑る所の資太だ薄し、宜しく先ず根本を更換すべし。
需:許嫁既婚,利福在身。適惠生桓,為我魯君。
解の卦が需の卦に変わる。許した婚約已に礼を成し婚を完して、利益と福沢倶に自身に帰せり。正に魯惠公の桓公を生み、我らの魯国の国君と成りしが如し。魯惠公、桓公の事は《左伝・隱公元年》に見る。主とする所は婚成りて後嗣貴を得るの象、大吉である、嫁娶、嗣を求むる倶に宜し。
訟:入門大喜,上堂見母。妻子俱在,兄弟饒有。
解の卦が訟の卦に変わる。一たび家門に進めば即ち天大の喜事にして、堂に登りて母親を拜見す。妻子兒女皆な在りて、兄弟們も各々富足せり。主とする所は家に帰りて團聚し、闔門興旺の象、大吉である、外に出づる者帰る可く、家中喜有り。
師:推車上山,力不能任。顛蹶蹉跌,傷我中心。
解の卦が師の卦に変わる。車を推して山上に往くも、力気実に承け担う能わず。連連として跟头を栽え足を失し跌倒して、我が心を傷透せり。主とする所は力小さくして任重きの象、凶である、能力を超出する事を勉强して承担すべからず。
比:鷹飛退去,不食其雛。禽尚如此,何況人乎。
解の卦が比の卦に変わる。蒼鷹飛び回りて又た退開して、終に己が雛鳥を吃掉するを肯ぜず。禽鳥尚お此の如く骨肉を顧念するに、況んや人をや。主とする所は親情棄て可からざるの象、吉である、骨肉の間は当に慈愛を以て相待し、人心恃む可し。
小畜:福棄我走,利不可得。幽人利貞,終無怨慝。
解の卦が小畜の卦に変わる。福気我を抛きて去り、利益も亦た手に求め得ず。然れど幽居して静を守る人は只だ正を持して移さざれば、終に怨恨と邪悪の身に纏う有ることなし。「幽人貞吉」は《周易・履》の九二爻辞に出る。主とする所は利なきも守有るの象、財禄薄しと雖も、正を守れば心安く咎なきを保つ可し。
履:夫妻反目,不能正室。公雲子南,姬言還北。並後匹嫡,二政亂國。
解の卦が履の卦に変わる。夫妻顔を翻して相惡み、家室端正する能わず。丈夫は南に往かんと説き、妻子偏に北に回らんと説いて、各々一詞を執す。妾媵と正后并立し、庶子と嫡子相匹して、两套の政令并行して、国家此れによって大乱せり。「并后匹嫡、両政耦国」は《左伝・桓公十八年》に出る。主とする所は名分正ならず、内乱將に起らんとするの象、大凶である。
泰:陽衰伏匿,陰淫為賊。幸賴王孫,遂至家國。
解の卦が泰の卦に変わる。陽気衰微して潜伏隠匿し、陰気泛濫して害を為し賊を成せり。所幸王孫の類の賢者の扶持有りて、終に安然として家国に回れり。主とする所は陰盛の世賢に賴りて自ら全うするの象、時局悪しと雖も、人の相助を得れば則ち虞なき可し。
否:入水求玉,不見和璞。終日至暮,勞無所得。
解の卦が否の卦に変わる。水の裏に下りて美玉を尋ねんも、和氏の璞の影子を連ねても見ず。早より天黑まで尋ねて、白く辛苦一場して毫も獲る所なし。和氏璧の事は《韓非子・和氏》に見る。主とする所は求むるに其の道に非ざるの象、凶である、尋ねる所此処に在らず、宜しく弦を改め張を更うべし。
同人:鳴鸞四牡,駕出行狩。合格有獲,獻公飲酒。
解の卦が同人の卦に変わる。車上の鸞鈴叮噹として響き、四匹の雄馬車を拉きて城を出でて行獵す。礼法に合して大いに斬獲有りて、獵物を國君に献じて酒を挙げて慶賀す。「四牡騑騑」「鸞声將將」は倶に《詩経・小雅》の田狩の篇に見る。主とする所は出行獲有り、進献して賞を得るの象、大吉である。
大有:覆手齊犢,易為功力。正月元日,承平致福。
解の卦が大有の卦に変わる。掌を翻すの間に便ち牛犢を料理して齊整し、事を办して力を省きて功を見易し。正月初一元日の時、太平を承接して福沢を招来す。主とする所は手を挙げるの労にして事成るの象、大吉である、新歳開端して、諸事順遂す。
謙:三火起明,雨滅其光。高位疾顛,驕恣誅傷。
解の卦が謙の卦に変わる。三堆の火燃起して光明するも、一場の雨便ち之を澆滅せり。身高位に居る人迅速に傾覆して、驕横放縱に因りて誅戮傷害に遭えり。主とする所は盛極まりて驟に衰え、驕る者禍を取るの象、大凶である、宜しく自ら抑えて謙退し、勢を恃みて強を逞しゅうすべからず。
豫:裹糗荷糧,與利相逢。高飛有得,君子獲福。
解の卦が豫の卦に変わる。乾糧を包好し口糧を背負いて路に上れば、一路上倶に利益と相遇す。高飛遠挙して獲有りて、君子福沢を獲得せり。主とする所は備有りて遠行し、進取して利を得るの象、大吉である、出行、遷升倶に宜し。
隨:水土相得,萬物蕃殖。膏澤優渥,君子有得。
解の卦が随の卦に変わる。水と土彼此相配相宜して、万物因って繁衍生長す。肥美の雨露豊厚充足して、君子中より大いに獲る所有り。主とする所は條件和洽、生養繁盛の象、大吉である、農事、置業、生育倶に宜し。
蠱:道理和得,人不相賊。君子往之,樂有利福。
解の卦が蠱の卦に変わる。道理講じて通じ彼此和順して、人と人の間再び相互に残害せず。君子彼処に到りて、歓歓喜喜として利益と福沢を享有す。主とする所は風俗淳和の象、大吉である、遷居、出仕、結交倶に宜し。
臨:天孫帝子,與日月處。光榮於世,福祿繁祉。
解の卦が臨の卦に変わる。天孫織女と天帝の子は、日月と同じく天上に居処す。彼等の光榮人世を照耀して、福禄と吉祥繁盛豊厚なり。主とする所は身份尊貴、榮寵身に加わるの象、大吉である、名を求め貴を求め倶に遂う。
觀:布衣在位,乘非其器。折足覆餗,毀傷我玉。
解の卦が観の卦に変わる。平民百姓高位を占據して、乘る所用る所皆な彼の用うべき器物に非ず。結果即ち鼎の足を折断して其の中の美食を一地に傾覆せしが如く、還た我が美玉を毁壞せり。「鼎折足、覆公餗」は《周易・鼎》の九四爻辞に出る。主とする所は徳位に称わず、必ず事を敗るに致るの象、大凶である、宜しく才を量りて任を受け、分を越すべからず。
噬嗑:鷁飛中退,舉事不遂。且守仁德,猶恐失墜。
解の卦が噬嗑の卦に変わる。鷁鳥半空に飛びて風に逼られて倒退し、事を办起して順遂する能わず。此の時姑く仁徳を守住して、還た失落墜敗有らんことを唯恐す。六鷁退飛の異は《春秋》の僖公十六年に見る。主とする所は勢に逆らい進み難きの象、凶である、宜しく退きて本分を守り、之を慎みに慎むべし。
賁:經棗整冠,意盈不厭。桀紂迷惑,讒佞傷賢。使國亂傾。
解の卦が賁の卦に変わる。棗樹の下を經過するも還た手を伸べて帽子を整え、人を惹きて疑心して棗を偷むと疑わしめ、心の裏志得意満にして收斂を知らず。夏桀と商紂迷惑せられて、讒佞の徒賢良を残害して、終に国家をして動乱傾覆せしめり。「瓜田不納履、李下不整冠」は古の嫌を避くるの訓。主とする所は嫌を避くるを知らず、邪に任せて正を害するの象、大凶である、宜しく嫌疑を謹守し、小人を遠斥すべし。
剝:申酉退跌,陰雨前作。柯條花枝,復泥不白。
解の卦が剥の卦に変わる。申酉の時分に到りて節節に倒退跌落し、陰雨前頭に於いて下り起れり。樹枝花條泥水に濺えられて汚濁し、再び潔白なる能わず。主とする所は時衰え運降り、清白汚を受くるの象、凶である、名声損し易し、宜しく身を守りて自ら潔くすべし。
