中孚之林(中孚卦六十四林)
震 反孽難步,留不及舍。露宿澤陂,亡其襦褲。
既済の震。禍孽反復して、歩を挙げるに維艱なり。止まれば又宿處に趕き着かず。只好く露天に池塘の岸坡の上に睡りて、還た己が短衣長袴を丟失せり。この林は行程狼狽して所を失し物を失うを主とする。占う者は門を出でて外に在りて多く躭擱と損失と有らん。提前に食宿を安排するに宜しく、切に夜行して野宿することなかれ。
艮 狼虎結謀,相聚為保。伺候牛羊,病我商人。
既済の艮。豺狼と虎とは同謀を結成して、聚まりて互いに屏障を為す。窺伺する所は牛羊にして、亦た我が商旅を危害す。この林は悪人党を成して共に侵害を謀るを主とする。占う者の處する境に团伙の悪を為す有り。凡そ販運往來は須らく隊を結びて行き多く防護を加うべし。獨行すれば必ず其の害に遭わん。
漸 明德克敏,乘興貢舉。故(一作放)勳御用,人(一作乂)哲蒙佑。
既済の漸。徳行光明にして又勤勉敏捷なれば、因りて時に乘じて薦挙任用せられん。帝堯の名は放勲にして、其の人は重用を得、明智の士も亦た庇佑を蒙受す。「放勲」は堯の名にして、《尚書・堯典》に見ゆ。この林は大吉にして賢能が挙を受け明主が賢を任ずるを主とする。占う者は徳業を勤修するに宜しく、身を進むるの路正しく開けり。
歸妹 貧鬼守門,日破我盆。□罌破甕,空虛無子。(損之剝)
既済の帰妹。窮鬼は門口に守りて、天天我が盆子を打破す。瓶罌壇瓮は尽く破損して、家中空空蕩蕩として、孩子一個を連れても無し。この林は家計において大凶にして、貧困身に纏わり器毀れ人稀なるを主とする。占う者の眼下は入るは出に敷かず損耗止まず。節儉して日を度り且つ外助を求むるに宜しく、更に大の開銷有るに宜からず。
豐 天命赤烏,與兵徼期。征伐無道,箕子遨遊。
既済の豐。上天は赤烏の瑞を降下せり。《史記・周本紀》は武王の紂を伐つ時に火流して烏と為るの兆有りを載す。兵事と時期を約定して、無道の君を討伐して、箕子因りて從容として遠游するを得べし。この林は天を奉じて罪を討ち賢者難を脱するを主とする。占う者の行う事は天時の助有りて、悪を除きて成る可く、賢良も亦た自由を得べし。
旅 威約拘囚,為人所誣。皋陶平理,剖械出牢,脫歸家閭。
既済の旅。威勢に逼迫せられて拘禁囚繫せらるるは、実は人の誣陷に遭えり。幸いに皋陶の如き公正の法官の持平審理を得て、刑具を剖き開き牢門を走出して、身を脱して己が家郷に歸れり。この林は冤を蒙りて終に昭雪を得るを主とする。占う者は縦え牢獄の厄有るとも、ただ實に據りて申辯せば、自ずから能く平反して家に歸るべし。
巽 羊驚虎狼,聳耳群聚。無益威僵,為齒所傷。
既済の巽。羊群は虎狼に驚動せられて、耳を竪てて一団に擠れり。此の如く聚まりて既に威勢を挡ぐ能わず又僵立して策無く、終に利齒に咬傷せられたり。この林は弱者聚まりて策無く終に吞噬を遭うを主とする。占う者が若し実力無ければ、僅かに人多しを以て自ら保つ能わず。別に強援を求め或いは早く遠く避くるに宜し。
兌 初雖啼號,後必慶笑。光明照耀,百嘉如意。
既済の兌。起初は雖も哭泣號叫すれども、後來は必ず慶賀歓笑に轉ずるべし。光明は四方を照耀して、百樣の美好の事は皆意に称う。この林は先ず苦して後に甜く否極まりて泰來るを主とする。占う者の眼下の哭泣は正しく喜事の前奏なり。ただ須らく此の時を忍過せば、随後に諸事順遂せん。
渙 馬服長股,宜行善市。蒙佑諧耦,獲金五倍。
既済の渙。駿馬は腿長くして善く走り、門を出でて買賣を做すに適宜なり。庇佑を蒙りて配合當を得て、利を獲ること五倍に達すべし。この林は商において大吉にして、脚力便捷にして遇合人を得るを主とする。占う者は主動して外に出でて経営するに宜しく、且つ対の搭档を找るべし。得る所は本銭を遥かに超えん。
節 應門內崩,誅賢殺暴。上下咸愜,景公失位。長歸元恆(一作「洹」),望妻不來。
既済の節。應門の内は崩塌して、賢良を誅戮して又凶暴の徒を殺掉す。上下一時に皆称快を覺ゆるも、斉景公は却って因りて君位を失掉せり。遠く元恒の地に歸りて、妻子を盼望するも始終來らず。この林は内變して禍を致し位を去り家を離るるを主とする。占う者は門内の乱を防ぐべく、一時の快意を以て根本を傷ることなかれ。
中孚 執斧破薪,使媒求婦。好合二姓,親御斯酒。色比毛嬙,姑悅公喜。(小過之益)
既済の中孚。手に斧頭を執りて柴薪を劈き開き、媒人を遣わして妻室を求娶せしむ。《詩経・斉風・南山》は正しく薪を析ることと妻を求むるとを並挙す。两姓は和好結合して、自ら車を駕して此の酒を共飲す。新婦の容貌は古の美人毛嬙に比すべく、婆婆と公公と皆歓喜す。この林は婚において大吉にして、佳偶成るを得て翁姑心に称うを主とする。
小過 兩輪日轉,南上大阪。四馬共轅,無有險難,與禹笑言。(賁之需)
既済の小過。二隻の車輪は整日轉動して、南に向かいて高大の坡坂に攀上す。四匹の馬は一轅を共駕して、一路険阻艱難無く、大禹と談笑して行けり。この林は大吉にして、行程順利にして力を同じくして共に済るを主とする。占う者は出行して南方順遂碍無く、凡そ力を合せ事を共にするの挙は皆軽く難関を渡り得べし。
未濟 千柱百梁,終不傾僵,周家寧康。
既済の未済。千根の立柱・百道の横樑は屋宇を支撑して、終究傾倒垮塌せず。周王室因りて安寧康泰す。この林は大吉にして、根基牢固にして支撑衆多なるを主とする。占う者の立つる業は結構穏當にして、縦え風雨有るとも動揺せず。広く支柱を置くに宜しく、長久保つべし。
未済之林(未済卦六十四林)
未濟 志慢未習,單酒糗脯。數至神前,欲求所願,反得大患。
未済の未済。心志怠慢にして又礼數に熟悉せず。只だ薄酒と干粮肉脯とを備うるのみ。屢次神前に跑りて、所願を求め得んと想うも、反って大禍を招来す。この林は礼薄く心慢くして祈求が咎を招くを主とする。占う者が若し心誠ならず備周ならざれば、神を求め事を問うは非但だ益無きのみならず、還た禍を惹かん。先ず自身を端正するに宜し。
乾 且生夕死,名曰嬰鬼,不可得祀。(渙之大過,震之坤,小過之升)
未済の乾。早上に剛に出生して傍晚に便ち死去せば、只好く嬰鬼と称するに、祭祀を連れても擧行する無し。この林は大凶にして、生機短促にして成りて復た毀るを主とする。凡そ新立の人事は皆存續し難し。占う者の謀る業は根基太も薄し。切に倉促に發動することなかれ。家中の幼小の者は尤も須らく照護に留意すべし。
坤 大步上車,南至喜家。送我狐裘,與福喜來。(節之觀,大過之困,中孚之泰)
未済の坤。大步を邁開して車子に登上して、南に往きて喜事を辦ずる人家に到る。主人は我に狐皮の裘衣を贈りて、福氣と喜慶と一同に到来す。この林は喜に赴き贈を受け南に往きて福を得るを主とする。占う者は主動して走動して交際するに宜しく、凡そ宴に赴き友を訪い南行する事は皆収獲有らん。
屯 西多小星,三五在東。早夜晨行,勞苦無功。(大過之夬)
未済の屯。西邊に小星は密布して、三三五五として還た東方に挂る。《詩経・召南・小星》に「嘒かなる彼の小星、三五東に在り」と曰う。正しく小吏の星を披き月を戴くの労を寫す。早起して夜行して天の亮まらざるに路を趕きて、到頭に辛苦して功無し。この林は奔波して徒労するを主とする。占う者は勤なりと雖も其の報を得ず。法を改むるに宜しく力を加うるに非ず。
蒙 北陸藏冰,君子心悲。困於粒食,鬼驚我門。
未済の蒙。日は北陸を行くの時に始めて氷を蔵る。《左傳・昭公四年》は「古者日は北陸に在りて氷を蔵る」を記す。君子は却って心中悲涼なり。一粒の米を連れても求め難く、鬼魅は還た來りて我が門戸を驚擾す。この林は厳冬に食を乏しく内外寧ならざるを主とする。占う者は冬を過ぐるの資を預儲して、并せて家宅を安定すべく、人心を浮動せしむることなかれ。
需 山泉暴怒,壞梁折柱。稽難行旅,留連愁苦。
未済の需。山中の泉水は暴漲怒發して、屋樑を衝壊し廊柱を折断す。行旅の人は因りて阻を受けて、外に滞留して、愁苦堪え難し。この林は水患が屋を壊り行程困を受くるを主とする。占う者は遠行に宜からず。居處も亦た須らく漏を防ぎ塌を防ぐべし。静かに水の退くを候するに宜しく、勉强して路に上がれば徒らに愁苦を増せん。
訟 比目四翼,來安吾國。福喜上堂,與我同床。(損之隨,同人之兌,比之離)
未済の訟。比目魚は双を成し比翼鳥は四翅相並びて、前來して我が邦国を安定す。福氣と喜慶とは堂に登りて入りて、我と榻を同じくして共處す。この林は大吉にして、佳偶相得して福喜門に臨むを主とする。爭訟の名に居ると雖も実は和合を主とす。占う者の爭う事は以て化解して、轉じて好合と成るべし。
師 狡兔趯趯,良犬逐咋。雄雌爰爰,為鷹所獲。
未済の師。狡兎は跳躍奔逃して、良犬は追い上げて撕咬す。雌雄双兎は本より悠然自得なりしも、《詩経・王風・兎爰》に「兎爰爰たり有り」と曰う。終究鷹隼に捕獲せられたり。この林は逃るるも亦た免れ難く終に擒獲を遭うを主とする。占う者が若し追わるるの列に在れば速かに庇护を求むるに宜しく、若し追捕の人と為れば則ち成功を期すべし。
比 增祿益福,喜來入室,解除憂惑。
未済の比。俸禄増加して福氣加厚して、喜事は家門に進入して、憂愁と疑惑とは一併に解除せらる。この林は大吉にして、禄を進め福を添えて心結頓に開くを主とする。占う者の憂う事は自然消散して、且つ実恵手に到る有らん。安然として承受するに宜しく、凡そ財を求め安を求むる事は皆遂げん。
小畜 騎龍乘鳳,上見神公。彭祖受制,王喬贊通。巫咸就位,拜福無窮。(家人之剝)
未済の小畜。龍に騎し鳳に乗りて、天に上りて神明を拜見す。彭祖は敕命を承受して、王子喬は之が為に引薦通達して、巫咸は位に就きて主持す。拜求して得來の福氣は無窮無尽なり。三人は皆古の長生の神仙にして、《列仙傳》に見ゆ。この林は大吉にして、天聴に上達して福を得て長寿するを主とする。占う者の求むる所は神の佑を邀ぐるを望み得べし。
履 天火卒起,燒我旁裡。延及吾家,空盡己財。
未済の履。天火は突然焼き起こりて、先ず我が隣近の里巷を焚き、接いで蔓延して我が家に到りて、己が財産を焼きて精光とせり。この林は火において大凶にして、隣火延焼して家財尽く毀るるを主とする。占う者は務めて須らく火燭を厳防すべく、且つ左隣右舎の隠患に留意すべし。早く退路と救急の資とを備うるに宜し。
泰 金帛黃寶,宜與我市。嫁娶有息,利得萬倍。
未済の泰。黄金・繒帛と各色の珍宝とは、正しく我と交易するに宜し。嫁娶の事は又子息を添えて、利を獲ること万倍に達すべし。この林は大吉にして、財貨流通して婚嗣両旺するを主とする。占う者は大胆に商を経じ貨を置くに宜しく、兼ねて家を成し丁を添うの喜有り。財丁両全の上上の占なり。
否 鬼魅之居,凶不可舍。
未済の否。此は鬼怪魍魎の盤踞する地にして、凶険にして此に居留する能わず。この林は居處祥ならずして必ず速かに離るべきを主とする。占う者の在る所或いは往かんと欲する處は暗に凶患を蔵す。當機立斷して遷走するに宜しく、一刻も亦た停留するに宜からず。棧に恋れば必ず其の害を受けん。
同人 飛鳥逐兔,各有畏惡。鵰鷹為賊,亂我室舍。
未済の同人。飛鳥は野兎を追赶して、彼此各々畏懼厭悪する處有り。雕と鷹とは害物と成りて、我が屋舎を攪乱す。この林は異類相擾して強禽患を為すを主とする。占う者の身辺に凶悍の者の局を攪す有りて、家宅寧ならず。先ず害源を駆除せば、方に能く居を安んずべし。
大有 初雖驚惶,後乃無傷,受其福慶。
未済の大有。起初は雖も驚慌失措すれども、後來は却って毫髮無傷にして、反って福沢と慶賞とを承受せり。この林は虚驚轉じて喜となり驚有りて険無きを主とする。占う者の眼前の憂懼は並びて実禍にあらず。鎮靜して應對すれば便ち能く関を過ぐべく、随後に還た意外の福有らん。
謙 兩金相擊,勇氣均敵。日月鬥戰,不破不缺。
未済の謙。两塊の金属は互相撞撃して、勇氣と力量と勢均力敵す。日と月との相爭うに同じくして、誰も甞て破損缺失せず。この林は两強對峙して勢均して勝負無きを主とする。占う者の爭う事は一時に高下を分かち出だす能わず。暫く相持し或いは退譲して和を求むるに宜しく、硬く拼するは益無し。
豫 曳綸河海,掛釣魴鯉。王孫利德,以享仲發。(一作「友」)
未済の豫。江河大海の中に釣絲を拖きて、魴魚と鯉魚とを釣上せり。王孫は此を以て徳恵の利と為して、以て仲發に供奉す。この林は垂釣して獲有りて以て得る所を親に奉ずるを主とする。占う者の営む事は収成有るを望み得べく、且つ得る所を家人尊長と共享するに宜しく、福氣因りて更に厚からん。
隨 犬畏虎狼,依人作輔。三夫執戟,伏不敢起,身安無咎。
未済の随。狗は虎狼を害怕して、便ち主人に依附して倚靠と為す。三名の武士は手に長戟を執りて護衛すれば、虎狼は只好く地に伏して敢えて起身せず。因りて自身平安にして、災禍無し。この林は強者に依附して以て自ら保つを主とする。占う者が若し勢単にして力薄ければ、可靠の靠山を找るに宜しく、人に随いて行けば則ち安然として恙無し。
蠱 蜘蛛作網,以伺行旅。青蠅嚵聚,觸我羅域。為網所得,死於網羅。
未済の蠱。蜘蛛は羅網を結起して、往來過去の行人を等候す。青蠅は食を貪りて聚まり來りて、我が網域に撞入して、終に網に住められて、羅網の中に死せり。この林は食を貪りて陷に入り自ら羅網に投ずるを主とする。占う者の眼前の便宜は正しく圈套なり。切に小の利を貪るに因りて他人の預設する局に落入ることなかれ。
臨 所望在外,鼎命方來。拭爵滌罍,炊食待之,不為季憂。
未済の臨。盼望する所は外面に在りて、鼎重の任命は正しく到来せんとす。酒爵を擦淨し酒罍を洗好して、飯食を做好して彼を等候す。小弟の為に担憂するに及ばず。この林は大吉にして、喜訊将に至らんとして貴命門に臨むを主とする。占う者の待つ事は落着有りて、整備して迎候するに宜しく、家人も亦た挂慮するに及ばず。
觀 日月並居,常暗匪明。高山崩顛,丘陵為溪。(蹇之咸)
未済の観。日と月とは一處に同處して、反って常常昏暗にして明亮ならず。高山は崩塌墜落して、丘陵は溪谷に陷成せり。《詩経・小雅・十月之交》は「高き岸は谷と為り、深き谷は陵と為る」を以て世世變を寫す。この林は明が反って晦と成り地覆して天翻るを主とする。占う者の處する局は将に劇變有らん。早く之が備を為すに宜しく、旧勢に恃ることなかれ。
噬嗑 春服既成,載華復生。莖葉茂盛,實穗泥泥。
未済の噬嗑。春の衣服は已に做成せり。《論語・先進》に「春服既に成れり」有り。草木は又花を開きて再生す。莖葉は繁茂して、果実と穀穂とは潤沢豊美なり。この林は大吉にして、時序順暢にして生機重ねて發すを主とする。占う者の営む事は其の復蘇の期に逢う。春氣に趁いて作すに宜しく、収成期すべし。
賁 華首山頭,仙道所遊。利以居止,長無咎憂。
未済の賁。華首山の峰頂は、仙を修め道を得る人の游息する地方なり。此に居住停留するに宜しく、長久に過失と憂愁と無し。この林は勝を択びて居り清靜にして安を得るを主とする。占う者は一處の清幽の地を尋ねて身を安んじ命を立つるに宜しく、其の中に久しく居れば自ずから災咎無からん。
剝 三狐嗥哭,自悲孤獨。野無所由,死於丘室。
未済の剝。三隻の狐狸は嗥叫悲鳴して、自ら形単影只なるを傷る。曠野の中に走るべき路無く、終に土丘の洞穴の裏に死せり。この林は大凶にして、孤立援無く投ずるに路無きを主とする。占う者は早く援手を結交し退路を留好すべし。荒僻の境に獨行すれば必ず絶境に致らん。
復 火中暑退,求藿其食。商人不至,市空無有。
未済の復。大火星は昏に中天に見えて、暑氣退去す。只好く豆葉を些か采りて饑を充つ。行商の人は來らず、市面は空空蕩蕩として何も無し。《詩経・豳風・七月》に「七月に火流る」有り。この林は時令寒に轉じて物資匱乏するを主とする。占う者の待つ人は至らず需む物は求め難し。自ら儲備を謀るに宜し。
旡妄 獨立山巔,求麋耕田。草木不闢,秋飢無年。
未済の无妄。獨り山頂の上に立ちて、彼の地に在りて麋鹿を捕え田地を種えんと想う。草木は未だ開闢せず、秋に到るも仍ほ饑荒にして、収成無し。この林は地を択ぶに當らずして勞して獲無きを主とする。占う者の選ぶ路経と處する位置とは根本に生を謀るに適合せず。山を下りて別に沃土を択ぶに宜し。
大畜 火雖熾,在吾後。寇雖近,在吾右。身安吉,不危殆。(歸妹之震)
未済の大畜。火勢は雖も熾烈なれども、却って我が身後に在り。盜寇は雖も逼近するも、却って我が右邊に在り。因りて自身平安吉利にして、危殆に陷入するに至らず。この林は険は身外に在りて避くるに宜を得るを主とする。占う者は凶険に環繞せらるると雖も、ただ迎えて上に走らざれば、便ち保全すべし。鎮定して位を守るに宜し。
頤 □□,貧鬼相賁。無有歡怡,一日九結。(豐之晉)
未済の頤。愁苦の状は言い尽くし難く、窮鬼は彼此裝點作勢して門に找來す。毫も歓欣愉悅と言う可き無く、一天の内心中に九個の結を打てり。この林は貧困相逼りて憂結解き難きを主とする。占う者の眼下は愁緒身に纏わり進項斷絶す。基本の用度を穏住し、慢慢として心中の結を解くに宜し。
大過 追亡逐北,呼還幼叔。至山而得,反歸其室。(渙之臨,需之渙)
未済の大過。逃亡を追赶し敗兵を追撃して、一路呼唤して年幼の叔弟を叫び歸らせんと欲す。山中に追い到りて終に彼を尋着して、一同に家中に返回せり。この林は失いて復た得、離れて復た合するを主とする。占う者の走失する人或いは物は尋回の望有り。凡そ追索・招還の事は成るべし。
坎 銜命辱使,不堪厥事。遂墮落去,更為欺吏。
未済の坎。命を奉じて使を出だすも使命を辱めて、受けたる差事を擔當し起れず。于是一路堕落下去して、反って欺上瞞下の小吏を做せり。この林は才職に稱わず正より邪に轉ずるを主とする。占う者は力を量りて任を受くべし。勉强して承當すれば既に事を辦成せず、又其の中に悪習に沾染し易し。
離 被珠銜玉,沐浴仁德。應聘唐國,四門穆穆。蟊賊不作,凶惡伏匿。
未済の離。身に珠飾を披き口に美玉を銜みて、仁厚の徳沢の中に沐浴す。聘に應じて唐堯の国に到れば、四門の賓客は肅穆有序なり。《尚書・舜典》に「四門に賓すれば、四門穆穆たり」有り。苗を害する蟊賊は起らず、凶悪の徒は潛蔵して出でず。この林は大吉にして、聘を受けて位を得て徳威并せて著るを主とする。
咸 機關不便,不能出言。精誠適通,為人所冤。
未済の咸。喉舌機関は便ならずして、話を説き出だす能わず。縦え一片の精誠恰好通達すべき有るも、還た是れ人に冤枉せらる。この林は口有りて辯い難く誠にして誣を見るを主とする。占う者の眼下は辯解門無し。実拠を留存して時日を静待するに宜しく、急切に自ら明らめれば反って疑を招かん。
恆 甕破缶缺,南行凶失。
未済の恒。瓮は已に破裂し缶は已に残缺して、南に出行すれば則ち凶険損失有り。この林は器物残損して行止宜からざるを主とする。占う者の家中の用う物は多く破敗して、及時に更換を需す。凡そ南行の議有れば、一概に擱置すべし。動けば則ち失有り。
遯 唇亡齒寒,積日凌根。朽不可用,為身災患。
未済の遯。嘴唇は歯を没せば便ち寒を發す。《左傳・僖公五年》は宮之奇が「唇亡びて歯寒し」を以て虞公に諫めるを記す。日子一久しくなれば、寒氣は根部に侵到して、朽壊して再び用う能わず、自身の災患と為る。この林は唇歯相依する者は一失せば則ち己危しを主とする。占う者は己と相依する一方を護住すべく、其の亡ぶを坐視することなかれ。
大壯 蒙惑憧憧,不知西東。魁罡指南,告我失中。利以宜止,去國憂患。
未済の大壯。心神昏惑して往來定まらず、東西南北を分清し得ざらん。北斗の魁罡は南方を指向して、我に已に中道を偏離せりを告ぐ。此の時は停下して動かざるに利あり。若し本国を離れれば便ち憂患有らん。この林は方向迷失して静守に宜しきを主とする。占う者は遠行して国を去るを切忌すべく、本地に安處すれば方に憂を免るべし。
晉 烏鴟搏翼,以避陰賊。盜伺二女,賴厥生福。旱災為疾,君無黍稷。
未済の晋。烏鴉と鴟鳥とは翅膀を拍打して、以て陰毒の害物を躲避す。盜賊は二名の女子を窺伺するも、幸いに賴みて躲过して反って福氣を生ぜり。只是旱災患を成して、君家は黍稷を収む可き無し。この林は害を避けて福を得て年成歡薄なるを主とする。占う者は防ぐ能くば則ち身安し。惟だ田産収成の上に須らく早く打算を作すべし。
明夷 名成德就,項領不試。景公耄□,尼父避去。
未済の明夷。名声は已に成り徳業は已に就くも、肥頸の駿馬の如く起用せられず。《詩経・小雅・節南山》は「四牡項領」を譏る。斉景公は年老昏聵して、孔子は只好く斉国を離去す。事は《史記・孔子世家》に見ゆ。この林は賢にして用いられず明主已に衰うるを主とする。占う者は早く引退して別に謀るに宜し。
家人 言與心詭,西行東望。鯀湮洪水,佞賊為禍。
未済の家人。嘴上の説くと心里の想うとは相違背して、人は西に往きて眼睛は却って東辺を望む。正しく鯀が堵塞の法を用いて洪水を治むるに如く、《尚書・洪範》に「鯀洪水を堙む」と曰う。終に失敗を致して、姦佞の徒因りて禍を成せり。この林は言行一ならず方法反に用るを主とする。占う者は表裏如一にして勢に因りて導くべし。堵塞すれば必ず潰せん。
睽 獫狁匪度,治兵焦穫。伐鎬及方,與周爭疆。元戎其駕,衰及夷王。(一作「以安我王」)
未済の睽。獫狁は法度を守らず、焦獲の一帯に兵馬を整治して、鎬地と方地とを進犯して、周室と疆土を爭奪す。大型の兵車は駕起して敵に迎えたり。《詩経・小雅・六月》は正しく此の事を詠ず。周室の衰微は一直に夷王の世に延續す。この林は外寇境に壓りて王室漸々衰うるを主とする。占う者は辺防に意を加うべく、強鄰をして坐りて大なるを致さしむることなかれ。
蹇 三火起明,雨滅其光。高位疾顛,驕恣誅傷。
未済の蹇。三處の火光は剛に燃起するに、一場の雨便ち其の光亮を澆滅せり。身は高位に居りて急速に傾覆して、驕横放縦終に誅戮傷害を遭う。この林は盛りて驟に衰え驕は必ず禍を致すを主とする。占う者は縦え高位を得るとも須らく謙抑して自ら守るべし。一旦恣意妄為せば、傾覆は只だ旦夕に在らん。
解 陰涿川決,水為吾祟。使我潰心,毋樹枲麻,居止凶殆。
未済の解。陰雨連綿して、河川決口して、大水は我が禍祟と成れり。我をして心神潰乱せしめて、田里は枲麻を種成せず、居住の地は凶険危殆なり。この林は水において大凶にして、水患が田を毀り居を傷るを主とする。占う者は洪涝を防ぐべく、早く高高處に遷往するに宜しく、田事も亦た須らく別に打算を作すべし。
損 厭浥晨夜,道多湛露。沾我襦褲,重難以步。
未済の損。清晨と夜間と地上潮濕す。《詩経・召南・行露》に「厭浥たる行露」と曰う。路上は濃重の露水に満ちて、我が短衣長袴を打湿して、衣服重く變じて、歩を挙げるに艱難なり。この林は行途沾濡して重負して行き難きを主とする。占う者は門を出でて多く阻滯を受けん。軽裝して緩行するに宜しく、或いは索性天晴を待ちて再び身を動かさん。
益 宜行賈市,所求必倍。載喜抱子,與利為友。(大過之恆,巽之損)
未済の益。外に出でて商を経じ買賣を做すに適宜なり。求むる所の利潤は必ず倍成すべし。喜慶を満載して歸りて、懐裏に孩子を抱きて、財利は己と長く相伴を為す。この林は財において大吉にして、商を経じて大に獲、兼ねて丁を添うの喜有るを主とする。占う者は主動して外に出でて営謀するに宜しく、静守すれば反って其の利を失わん。
夬 陰變為陽,女化為男。治道得通,君臣相承。(煥之旅,豐之節,屯之離)
未済の夬。陰氣は陽氣に轉成して、女子は男身に化作せり。治国の道は此に由りて通達して、君臣上下相承相續す。この林は局面翻轉して柔より剛に轉ずるを主とする。占う者の眼下の弱勢は将に根本の改観有らん。其の時には上下相得して、凡そ決斷して弊を除くの挙は皆推行すべし。
姤 淵蔽杜荊,生蘙山旁。仇敵皆憎,孰肯相迎。
未済の姤。深淵は杜梨と荊棘とに遮蔽せられて、草木は蔭翳叢生して山旁に在り。仇敵は人人憎惡して、誰か還た肯んじて出来て迎接せんや。この林は蔽塞孤立して四面に敵を樹るを主とする。占う者の眼下は人縁佳からず去路遮られり。先ず旧怨を清理して関係を修好するに宜しく、さもなくば處處に壁に碰壁せん。
萃 坐茵乘軒,握德宰臣。虞叔受命,六合和親。
未済の萃。錦墊に坐し高車に乗ずるは、徳望を掌握する宰輔の臣なり。虞叔は任命を承受して、天地四方因りて和睦親善す。この林は大吉にして、命を受けて顕位に居り四方心を歸すを主とする。占う者は要職に膺任するを望み得べく、且つ能く各方面を協調せん。衆を聚めて事を成すの上吉の占なり。
升 雲興蔽日,雨集草木,年茂歲熟。
未済の升。雲氣升騰して日頭を遮住して、雨水汇聚して草木を滋潤して、因りて年成茂盛にして穀物成熟す。この林は農において大吉にして、雲行き雨施して万物養を得るを主とする。占う者の営む事は正しく滋潤生長の時に逢う。時に順じて培育するに宜しく、収成自ずから豊厚ならん。
