乾の林(乾卦六十四林)
比之遁:早霜晚遁,傷害禾麥。損功棄力,飢無所食。
霜降ること過早にして退くこと太晚く、禾苗麥穗盡く損傷を受く。一年の功夫白費し氣力空抛し、終に糧無く食う可からずに至る。此の林時令乖違し、勞して收を失うを主とす。退避及ばざれば便ち其の害を受く。
比之大壯:適戌失期,患生無聊。懼以發憂,發藏閉塞,邦國騷愁。
前往して戍守するも期限を誤り、禍患此より生じて百聊賴なし。驚懼の下憂中より來り、倉廩府藏盡皆閉塞し、擧國騷動愁苦す。此の林强を逞うし期を誤り、禍を招きて國に及ぶを主とす。凡事時を守り分を守るに宜し。
比之晉:昊天白日,照臨我國。萬民康樂,咸賴嘉福。
蒼天朗日高く懸り、光輝普く我が邦國を照す。萬民安康喜樂にして、人人美好の福澤を沐すを得。此の林大吉。正に晋卦「明地上に出づ」の象に合す。前程光明にして上下同じく慶す。進取して名を求むるに宜し。
比之明夷:元吉無咎,安寧不殆。時行則行,勿之有悔。
至極吉利にして、過錯あることなく、安寧にして危險なし。行動すべき時に便ち行動せよ。悔恨を留下することなかれ。此の林明夷晦暗の世に居ると雖も、能く時を審りて動くに因りて、故に危を轉じて安と爲す。機を見て作すを主とすれば則ち吉なり。
比之家人:懿公淺愚,不深受謀。無援失國,為狄所賊。
衛懿公淺薄愚昧にして、鶴を好みて良謀を接納するを肯んぜず。衆叛れ親離れて相い救う人なく、國破れ身狄人の手に死す。事《左傳・閔公二年》に見ゆ。此の林忠言を聽かず、內治修まらざるを主とす。家と國と皆危境に陷る。
比之睽:城上有烏,自號破家。呼喚鳩毒,為國患災。
城頭に烏鴉棲り、鳴聲自ら號して破家の音と爲す。招來するはまた鴆鳥毒羽にして、國家の災患と成る。此の林凶兆頻に現れ、狼を室に引き入るるを主とす。睽違乖離の下親む所人に非ず。務須く小人を遠離すべし。
比之蹇:長股善走,趨步千里。王良嘉言,伯來在道。申見王母。
長腿の人奔走に善く、一趨一步にして便ち千里を行く可し。御に善き王良嘉言を留下し、長兄已に途中より趕來りて、終に再び西王母に拜見するを得たり。此の林蹇難に處ると雖も、良御有り健足有るに因りて、反つて遠行して見るを得能し。艱難の中別に助力有るを主とす。
比之解:耕石山顛,費種家貧。無聊處作,苗發不生。
山頂石頭の上に耕種し、白白と種子を耗費して家境更に貧し。依託する所なく胡亂に勞作し、苗芽終に出ず。此の林力を用ゐて其の地を得ざるを主とす。困局を解散するの機あると雖も收成なし。地を擇びて後動くに宜し。
比之損:二人異步,東趨西步。千里之行,不相知處。
兩人步調一ならず、一個は東に向かい一個は西に向かう。各々千里の遠を走り、彼此再び對方の身在る何處を知らず。此の林同行志異なり、終に必ず分離するを主とす。合伙と婚配との事皆損有りて益なし。
比之益:純服黃裳,栽土以興。德義茂生,天下歸仁。
身純正の黄色の下裳を著す。《坤》卦六五「黄裳元吉」は、中正の服なり。土を培い基を立てて興起す。徳行仁義蓬勃として生長し、天下仁に歸心す。此の林大吉。中に居り正を守り、徳業日に增すを主とす。人に益すも亦以て己に益す。
比之夬:五銑鐵頤,倉庫空虛。賈市無盈,與利為仇。
器物只だ粗鐵の邊角を剩し、倉庫空空如也。買賣盈餘なく、反つて財利と冤家を結ぶ。此の林耗散決潰し、經營本を折るを主とす。夬決の時須らく錢財外流を防ぐべし。
比之姤:登崑崙,入天門,過糟丘,宿玉泉,問惠觀,見仁君。
崑崙仙山に登り、天門に入り、糟丘を經て、夜玉泉に宿す。一路恩惠の景象を訪求し、終に仁徳の君を見るを得。此の林奇遇際會を主とす。姤とは遇なり。遠行して貴を謁し、遇う所皆善なり。
比之萃:團團白日,為月所食。損上毀下,鄭昭出走。
圓圓の白日月亮に遮蔽せられて日食と成る。上其の明を損し下其の基を毀し、鄭昭公終に出奔す。事《左傳》に見ゆ。此の林君徳掩を受け、聚りて復た散ずるを主とす。上位に居る者當に陰に掩わるるの禍を防ぐべし。
比之升:倉盈庾億,宜稼黍稷。年歲有息,國家富有。
倉廩盈滿し、露天に積起せる穀堆億を以て計う。正に廣く黍稷を種するに宜し。年成歳歳餘有り、國家因りて富足す。此の林大吉。升卦小を積みて高を成すの義に合す。積累漸々豐かにして家國俱に裕かなり。
比之困:虎狼結謀,相聚為保。伺齧牛羊,道絕不通,傷我商人。
虎狼合謀し、一夥に聚成して相互に庇護し、機を伺い牛羊を咬食し、道路これによって斷絕し、往來の商旅害を受く。此の林群惡道に當たり、途窮りて阻まるるを主とす。行商遠出最も忌諱。暫く止まりて行かざるに宜し。
比之井:木年催折,常恐不活。老賴福慶,光榮輔相。
樹木年久しくして摧折を遭い、常に活きて來る能わざらんを擔心す。年老の人卻って福慶に倚仗して保全を得、還つて輔相の榮を享有す。此の林先に危後に安を主とす。井久しく廢して復た食を得るがごとし。老來福を得、舊業重ねて光るを主とす。
比之革:同載共車,中道分去。喪我元夫,獨為孤苦。
本來同車共載なりしも、半路上卻って道を分かちて去る。我が良人を喪失す。「元夫」卽ち善士・丈夫なり。只だ自己孤苦依る無しを剩す。此の林變革中途變を生じ、伴侶離散するを主とす。孤獨の象なり。
比之鼎:飲酒醉酗,跳躍爭鬥,伯傷叔疆,東家治喪。
飲酒量に過ぎて酒瘋を撒起し、跳踉して相い鬥い、伯傷を受け叔其の强を逞うし、東鄰人家これによって喪事を辦起す。此の林凶。酒禍爭鬥・兄弟相い殘すを主とす。鼎中飲食あると雖も其の節度を失す。酒を戒め爭を慎むに宜し。
比之震:出值凶災,逢五赤頭,跳言死格,扶杖伏聽,不敢動搖。
一たび門を出れば便ち凶災に遇い、五個の赤頭凶煞に撞見し、跳踉喊叫して人を死地に置かんと説く。只だ拐杖を扶けて地に伏し命を聽く、一動も敢えて動かず。此の林大凶。驚懼して制を受くを主とす。震動の下宜しく身を屈して自ら保つべし。
比之艮:狼虎爭強,利義不行。兼吞其國,齊晉無主。
豺狼猛虎强を爭い勝を鬥い、利と義の道皆行き通らず。强者兼并して他國を吞滅し、齊・晋兩國皆其の主を失す。此の林强梁橫行し、綱紀廢墜するを主とす。艮止の義ここに行き通らず。其の鋒芒を避くるに宜し。
比之漸:南國少子,方略美好。求我長女,薄賤不與。反得醜惡,後乃大悔。
南國に年少の男子有り、才略出衆す。彼來りて我が家の長女を求娶すれど、家人其の微賤を嫌みて許配するを肯んぜず。結果女兒別に醜惡の人に嫁し、事後追悔及ばず。此の林偶を擇びて當を失い、貧賤を以て人を取るを主とす。漸進の事宜しく開端に審愼すべし。
比之歸妹:一身兩頭,莫適其軀。亂不可治,孰為湯漢。
一個の身體兩個の頭を長きて、肢体從適する所なし。混亂して整治する能わず、又誰か能く商湯・漢高祖のごとく亂を撥きて正に反らさん。此の林大凶。政多門に出で、名分正ならざるを主とす。歸妹の失此に甚だしき莫し。
比之豐:李耳匯鵲,更相恐怯,偃而以腹,不能距格。
李耳は虎の別名なり。虎群鵲と相遇い、彼此驚懼安んぜず、只だ仰向けに卧して肚腹を翻出し、抵擋對抗する力無し。此の林外强中乾・事に臨みて怯懦するを主とす。豐盛の時に處ると雖も自ら守る能わず。
比之旅:松柏棟樑,相輔為強。八哲五教,王室康寧。
松柏棟梁の材と作るべく、彼此支撐して更に堅固なり。八位の賢哲五常の教を推行し、王室因りて安康寧靜す。此の林賢才共に濟し、羈旅依托する所を得るを主とす。外出して貴に遇い、共に大事を成すを主とす。
比之巽:雀行求食,暮歸孚乳。反其屋室,安寧如故。
麻雀白日外に出でて食を覓め、傍晚巢に歸りて雛鳥を孵育す。己が屋舍に回到し、安寧常のごとし。此の林勞して歸有り、出入順遂するを主とす。巽は入なり。事を謀るに從容たり、家宅平安なり。
比之兌:四尾六頭,為凶作妖。陰不奉陽,上失其明。
四條の尾巴・六個の腦袋、作祟して凶を爲す妖異の形なり。陰陽を承奉せず、上位に居る者明察を失す。此の林怪異叢生し、綱紀倒置するを主とす。兌説の下暗に邪佞を藏む。宜しく先に名分を正すべし。
比之渙:一衣三闋,結緝不便。岐道異路,日暮不到。
一件の衣裳三處裂け、縫補するに極めて手に稱わず。岔路紛歧して各々異途に奔り、天色已に晚くして未だ到達せず。此の林離散破碎・途中迷失するを主とす。渙散の時凡事成り難し。
比之節:牙櫱生齒,室堂啟戶。幽人利貞,鼓翼起舞。
草木萌蘖して新芽を抽き、堂室もまた門戶を敞開す。幽居の人正道を守持して利を得、翅を振い舞い起きて歡欣す。此の林閉極まりて通じ、節を守りて吉を得るを主とす。隱者出でて用ゐられるを見るの象なり。
比之中孚:春鴻飛東,以馬至金。利得十倍,重載歸鄉。
春天鴻雁東に向かいて飛去り、人馬匹を以て黄金に換う。獲利十倍して、滿載して歸る。此の林大吉。中孚は誠信なり。交易信を守り、往來大いに得る所有るを主とす。
比之小過:歡悅以喜,子孫俱在。守發能忍,不見殃咎。
歡欣喜悅して、子孫皆平安にして側に在り。本分を守住し能く忍耐せば、便ち災殃過錯に遭遇せず。此の林小さく過越有りて大害なきを主とす。能く忍讓すれば卽ち保全すべし。
比之既濟:精神消落,形骸醜惡。齬齚頓挫,枯槁腐蠹。
精神衰頹消散し、形體憔悴醜陋なり。牙齒參差して咬合頓挫し、身軀枯槁して朽木蠹蟲に蛀空せらるるがごとし。此の林功成りて氣衰うるを主とす。既濟の後卽ち衰敗なり。疾病を問うに最も忌諱。
比之未濟:登高上山,見王自言。申理我冤,得職夢恩。
高山に登り、君王に面見して自ら陳情す。冤屈申理するを得、還つて職位を獲授し恩澤を蒙る。此の林冤を訴えて伸を得、干謁用を得るを主とす。《未濟》は事猶ほ未成れど前途已に開けり。
小畜の林(小畜卦六十四林)
小畜之小畜:白鳥銜餌,鳴呼其子。斡枝張翅,來從其母。伯仲叔季,尤賀舉手。
白鳥食物を銜え、鳴叫して雛鳥を呼喚す。雛鳥樹枝に攀り翅を張開して、飛來して母親に跟從す。伯仲叔季兄弟幾人手を擧げて稱賀す。此の林哺育人を成し、骨肉團聚するを主とす。小畜積漸の義正に養に在り。家宅丁を添うの喜を主とす。
小畜之乾:東遇虎地,牛馬奔驚。道絕不通,南困無功。
東に向かいて走り入りて虎踞の地に至り、牛馬驚きて奔散す。道路斷絕して通行する能わず、南に往けばまた困を受けて一の成る所なし。此の林行止兩難・東西俱に阻まるを主とす。出行・求財皆相宜ならず。
小畜之坤:子鉏執麟,春秋作元。陰將以終,尼父悲心。
魯哀公十四年、叔孫氏の車夫子鉏商麒麟を獵獲し、孔子これによって《春秋》に絕筆す。陰氣將に盡き、聖道成らず、孔子之がために傷心す。卽ち「西狩獲麟」の典なり。此の林瑞時に逢わず、事業中輟するを主とす。才を懷きて末世に遭逢するを主とす。
小畜之屯:取火泉源,釣魚山顛。魚不可得,火不肯燃。
泉水の源頭に往きて火を取り、山頂の上に往きて魚を釣り、方向全然弄反す。魚既得らず、火も點燃せず。此の林求めて其の所に非ず、勞して功なきを主とす。屯難の中更に須く路徑を愼擇すべし。
小畜之蒙:機關不便,不能出言。精誠不通,為人所冤。
機括靈便ならず、話嘴邊に到りて説き出せず。一片の精誠上達する能わず、反つて人に誣枉せらる。此の林蒙昧壅塞し、辯白門無きを主とす。暫く沈黙して天明を守候するに宜し。
小畜之需:故室舊廬,稍弊且徐。不如新巢,可治樂居。
舊屋老宅日に就て破敗遲緩し、別に新巢を築き、收拾整齊して安樂に居住すべきに如かず。此の林更新して居を易うるを宜とす。需とは待なり。遷改して後安を得るを主とす。
小畜之訟:蛇循流,東求大魚。預且舉網,庖人歌謳。
蛇水に順いて行き、東に往きて大魚を尋覓す。漁人豫且大網を撒下して其を捕獲す。《史記・龜策列傳》は神龜の豫且に網せらるるを載す。正に此の意なり。厨人歡歌して厨に下る。此の林大を圖りて反つて人に得られるを主とす。爭訟の中宜しく他人のために嫁を作るを防ぐべし。
小畜之師:鑿山通道,南至嘉國。周公祝祖,襄適荊楚。
山を開き路を鑿り、南に直ちに美好の邦に通ず。周公祖先に祝禱し、使者遠く荆楚の地に赴く。此の林開闢して通途と爲し、命を奉じて遠行するを主とす。師出でて名有れば南行吉を得。
小畜之比:鵲近卻縮,不見頭目。日以困急,不能自復。
喜鵲將に靠近せんとして卻って退縮回り、頭臉を看不見ず。處境一天比一天窘迫にして、自ら恢復する力無し。此の林親しまんと欲して親しむを得ず、進退據を失うを主とす。比附の志願を遂げ難し。
小畜之履:五舌啄難,各自有言。異國殊俗,使心迷惑,所求不得。
五張の嘴爭りて啄辯し、各々一詞を執す。異國他鄉風俗相同じからず、人をして心生迷惑せしめ、求む所終に得る能わず。此の林衆口紛紜・一是を衷する莫し。履道明らかならざれば寸步も行き難し。
小畜之泰:天門開闢,牢戶寥闊。桎梏解脫,拘囚縱釋。
天門洞開し、牢門大いに敞開す。手銬脚鐐盡皆解除し、被囚の人釋放を獲得す。此の林大吉。困厄頓に解け、天地交通するを主とす。刑獄を問い疾病を問うに最も吉利。
小畜之否:堅冰黃鳥,常哀悲愁。數驚鷙鳥,雛為我憂。
嚴冬堅氷の中の黄雀、終日哀鳴悲愁す。屢々猛禽に驚擾せられ、巢中の雛鳥人をして憂心せしむ。此の林弱くして寒に勝えず、屢々欺凌を遭うを主とす。否塞の時宜しく深く藏れて露せざれ。
小畜之同人:日走月步,娶不同舍。夫妻反目,主君失居。
日行月走り、各々其の軌道有り、婚配を成すと雖も同じく一室に居らず。夫妻反目相い爭い、主君もまた安居の所を失了。此の林同牀異夢・內外俱に失うを主とす。婚姻の事最も忌諱。
小畜之大有:金牙鐵齒,西王母子。無有患殃。扶舍徙道,到來不久。
金牙鐵齒を生ずるは、西王母の子なり。彼の護佑有れば便ち災殃なし。舍館を扶助し其道を移徙し、不久便ち到達すべし。此の林神靈の庇佑を得、遷徙順遂するを主とす。大有の得依托する所有るに在り。
小畜之謙:式微式微,憂禍相半。隔以巖山,室家分散。
「式微式微、胡爲ぞ歸らざる」、語《詩経・邶風・式微》に出づ。衰微の歎にして、憂と禍と各々一半を占む。中間險峻の山岩を隔て、家室離散して各處す。此の林日に就て衰落し、親人分居するを主とす。謙退するも其の憂を免れ難し。
小畜之豫:眾神集聚,相與議語。南國虛亂,百姓勞苦。興師征伐,更立賢主。
衆神會集し、共同に議論す。南方の國空虛動亂にして、百姓勞苦堪えず。ここに兵を興して征討し、別に賢明の君を立つ。此の林亂を撥きて更に始まるを主とす。豫とは備なり。先に謀りて後動き、終に更新を得るを主とす。
小畜之隨:狼虎爭食,禮義不行。兼吞其國,齊魯無主。
豺狼猛虎食物を爭奪し、禮義の道施行するに從なし。强者他國を吞幷し、齊・魯兩國君主を失す。此の林强者弱を凌ぎ、勢相い隨い追うて道義存せざるを主とす。强を避けて自ら守るに宜し。
小畜之蠱:寄生無根,如過浮雲。本立不固,斯須落去,更為枯樹。
寄生の物根柢なく、飄過の浮云のごとし。根本立てること牢ならざれば、頃刻の間便ち脫落し、反つて枯樹と變成す。此の林依附して根なく、盛んにして能く久しからざるを主とす。蠱壞の象宜しく根本より整治すべし。
小畜之臨:子啼索哺,母行求食。反見空巢,長息訾弋。
雛鳥啼叫して食を索め、母鳥外出して食を覓む。回來すれど卻って空巣を見るのみ、長く嘆息一聲して、彼の射獵の人を怨恨す。此の林養育中斷し、骨肉害を遭うを主とす。事に臨みて宜しく外患の親む所に傷るを防ぐべし。
小畜之觀:駕駟逐狐,輪掛荊棘。車不結轍,公子無得。
四馬の車に駕して狐狸を追逐するも、車輪卻って荆棘に挂上る。車轍すら壓成する能わず、公子一の獲る所なし。此の林成を急ぎて反つて牽絆を受くるを主とす。觀望して勢を審らかにせば方に失誤を免るべし。
小畜之噬嗑:方喙廣口,仁智聖厚。釋解倒懸,唐國太安。
方口濶嘴の相、主人仁徳智慧・聖明寛厚なり。百姓を倒懸の苦より解救し、唐堯の國大いに安定す。此の林賢者政に當たり、危難解を得るを主とす。噬嗑梗阻を去除して後通達す。
小畜之賁:駕福乘西,來至家國。戴慶南行,離我安居。
福氣を載せて西に向かいて車を駕し、己が家國に回る。頭喜慶を頂きてまた南に往き行き、我が安穩の居所を離る。此の林吉中に動あり。賁飾の下先に福を得て後遷徙するを主とす。成を守るに宜しくして再び遠行を作すべからず。
小畜之剝:孔鯉伯魚,北至高奴,木馬金車,駕遊大都,王母送我,來牝字駒。
孔子の子孔鯉字は伯魚、北行して高奴に至り、木馬金車に乘りて大都に遊歴す。西王母相い送り、母馬を贈來して良駒を產下す。此の林剥落の世に在ると雖も、貴人の相送を得るに因りて遠遊獲あり。行旅助を得、後嗣繼有るを主とす。
小畜之復:三足無頭,不知所之。心狂精傷,莫使為明,不見日光。
三隻の脚あるも頭なく、何の處に往くべきかを知らず。心神狂亂し精氣損を受け、人彼を明白ならしむる能わず、終日天日を見ず。此の林主を失い向を迷い、神志昏惑するを主とす。返復の路尋ね難し。
小畜之無妄:來牝龍身,日馭三千,南止蒼梧,與福為婚。道里夷易,安全無忌。
竜身の母馬一匹來り、一日三千里を行く能く、南に苍梧に止まり、福氣と婚姻を結ぶ。道路平坦にして、一路安全にして忌諱なし。此の林大吉。妄なくして得。遠行順遂し、姻緣天成するを主とす。
小畜之大畜:辰次降婁,王駕巡時。廣佑施惠,安國無憂。
歳星運行して降婁の次に至る、十二次の一なり。君王時に依りて天下を巡行す。佑助恩惠を廣施し、國家安定して憂なし。此の林徳を積みて廣く被らし、時に按じて動くを主とす。大畜の富施與する能くするに在り。
小畜之頤:望幸不到,文章來就。王子逐走,馬騎銜傷。昳跡不得,曷其有常。
君王の臨幸を盼望するも來るを見ず、倒れては文書辭章眼前に送到す。王子馬を驅りて奔逐し、人馬皆銜勒の傷を受く。蹤跡散亂して尋ね難く、何處にか還つて常度言うべき有らん。此の林望む所落空し、動きて傷を受くるを主とす。頤養節を失うの象なり。
小畜之大過:中原有菽,以待饔食。飲御諸友,所求大得。
原野の中豆菽を長せ、正に早晚の飯食に備うべし。語《詩経・小雅・小宛》の「中原に菽有り、庶民之を采る」に本づく。酒を設けて諸位の朋友を宴請し、求む所大いに得あり。此の林吉。素朴自足し、賓主歡を盡すを主とす。大過の世に當たると雖も其の養を失わず。
