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乾の林(乾卦六十四林)

汉 · 焦延寿 · 第4巻 / 71

作盤ガイド: 大衍筮法, 六爻納甲の立卦

屯之漸:二人俱東,道路爭訟。意乖不同,使君洶洶。

屯の卦が漸の卦に変わる。二人一同に東行すれど、路上爭吵して訟を興す。心意乖離して各々相同じず、您の心緒洶洶として寧ならざるを弄す。漸は循序漸進を主とし、同行して志向相い異なれば漸進成らず。占うに同伴和を失い、口舌是非を主とし、凶。

屯之歸妹:樹我藿豆,鹿兔為食。君不恤護,秋無收入。

屯の卦が歸妹の卦に変わる。我が豆苗豆葉を種すれど、悉く鹿と兔子に喫し盡さる。主人體恤看護を加えず、秋天に到りて收成名し。歸妹は嫁娶を主とするも位分當たらず。事主る人なくば終に荒廢に歸す。占うに經營照管を失い、勞して收なし。凶。

屯之豐:黃鳥悲鳴,愁不見星。困於鷙鳥,鸇使我驚。

屯の卦が豐の卦に変わる。黄雀悲聲哀鳴し、愁えて星星をも見ず。凶猛の鷙鳥に困せられ、鸇鷹我をして驚懼安んぜしめず。《詩経・小雅・黄鳥》は黄鳥所を失いて故鄉に歸らんと思うを寫す。豐とは盛大なれど、弱小者盛勢の下に處りてかえって欺凌を受く。占うに强者に迫られ、驚恐寧ならず。凶。

屯之旅:雙鳧俱飛,欲歸稻食。經涉萑澤,為矢所射,傷我胸臆。

屯の卦が旅の卦に変わる。二隻の野鴨一同に飛起し、稻田裏に回りて食を覓まんと欲す。途中蘆葦蕩を經過するも、箭に射中せられ、我が胸膛を傷つく。旅外に在りて庇護する所なく、行蹤一たび露れれば卽ち暗算に遭う。占うに中途害に遇い、樂極まりて悲を生ず。大凶。

屯之巽:久客無依,思歸我鄉。雷雨盛溢,道未得通。

屯の卦が巽の卦に変わる。長く客居して依托する所なく、一心に我が家鄉に回到せんと欲す。偏に雷声大作し雨水泛濫して、道路尚ほ通行する能わず。巽は順入で、時勢順ならざれば擧步艱難なり。占うに歸期阻まれ、家有りて回り難し。暫く時を待つべし。

屯之兌:道路僻除,南至東遼。衛子善辭,使國無憂。

屯の卦が兌の卦に変わる。道路既に開闢清除せられ、南に向かい一直に東遼に通ず。衛國の使者言辭體を得て、國家をして憂患を免れしむ。兌は口舌で、言辭を善く用ゐれば以て危難を紓解すべし。占うに言辭に憑りて危機を化解し、出使功あり。吉。

屯之渙:同枕同袍,中年相知。少賈無失,獨居愁思。

屯の卦が渙の卦に変わる。枕を同じく被を共にし袍澤相い親しみ、中年に到りて乃ち知己と成る。年輕の時經商して虧損有らず、如今獨り居處して滿懷愁思なり。渙とは離散で、縱ひ舊交あるも終に寂寞に歸す。占うに聚まること少なく離るること多く、晚境孤單なり。

屯之節:眾神集眾,相與議語。南國虐亂,百姓愁苦。興師征討,更立賢主。

屯の卦が節の卦に変わる。衆位の神明聚まりて衆議し、彼此商量謀劃す。南方の國暴虐動亂して、百姓愁苦堪えず。ここに兵を興して征討し、別に賢明の君主を立つ。節は度あり制あるを主とし、暴を除きて賢を立つるは正に節制の義に合す。占うに亂を撥き正に反し、舊去り新來る。先に凶後に吉。

屯之中孚:北陸閉蜇,隱伏不出。目盲耳聾,道路不通。

屯の卦が中孚の卦に変わる。太陽北陸に運行して嚴冬の時節、蟄蟲閉藏して隱伏して出來ず。眼睛見る能わず耳朵聞く能わず、道路もまた通暢せず。《左傳・昭公四年》に「日北陸に在りて冰を藏る」の語あり。中孚は誠信相い通ずるを貴ぶが、この時上下彼此隔絕す。占うに閉塞不通にして消息斷絕す。宜しく潜藏して自ら守るべし。

屯之小過:痴狂妄作,心逛善惑。迷行失路,不知南北。

屯の卦が小過の卦に変わる。癡迷瘋狂して胡亂に行事し、心神恍惚として極めて人の迷惑を受け易し。路に迷いて方向を走り錯へ、南北すらも分かち辨ふ能わず。小過は只だ小事を謹守するに宜しく、妄動すれば愈行くほど愈錯る。占うに心志昏亂にして擧措當を失う。凶。

屯之既濟:棟隆輔強,寵貴日光。福善並作,樂以高明。

屯の卦が既濟の卦に変わる。棟梁高隆にして輔木强固、恩寵尊貴一天天に光大す。福澤と善報と一同に興起し、高明の境に歡樂す。《大過》九四に「棟隆、吉」と曰う。正にその任重き能くする義を取る。既濟は諸事已に成る卦で、之に居りて正を得れば安し。占うに位高く福厚く、家道興隆す。大吉。

屯之未濟:愛我嬰女,牽衣不與。冀幸高貴,反曰下賤。

屯の卦が未濟の卦に変わる。我が小女兒を疼愛し、衣角を拉きて人に許すを捨て難し。本來彼女に高門顯貴に攀らんことを指望するも、反って卑下低賤の境地に落到す。未濟は事情未だ辦成せざる卦で、期望愈高ければ落差愈大なり。婚嫁を問えば願う所遂げず、高より低に轉ず。凶。

蒙の林(蒙卦六十四林)

蒙之蒙:何草不黃,至未盡玄。室家分離,悲愁於心。

蒙の卦が自ら変じても蒙の卦のままである。何れの草か枯黄せざらん、到頭變じて焦黑と成らざるなし。夫妻家室分離して、滿心悲愁す。《詩経・小雅・何草不黄》は征夫行役息まず、人草木と同じく悴るる之苦を寫す。蒙とは昏昧にして未だ明ならず。此のごとき境地に處れば憂思解け難し。占うに別離傷感し、家室安んぜず。凶。

蒙之乾:海為水王,聰聖且明。百流歸德,無有叛逆,常饒優足。

蒙の卦が乾の卦に変わる。大海は衆水の王にして、聰睿聖明なり。百川皆その徳澤に歸向し、背離叛逆する一条もなし。因りて常に豐饒充足を保つ。《莊子・秋水》は百川河に灌ぎ、河伯東面して洋を望みて海の大を歎ずるを寫す。蒙乾卦の剛健光明を得て、昏昧轉じて通達と爲る。占うに衆望の歸する所、財源廣く進む。大吉。

蒙之坤:天之所有,禍不過家。左輔右弼,金玉滿堂。常盈不亡,富如敖倉。

蒙の卦が坤の卦に変わる。上天の賜予する所、災禍この家門に臨まず。左に輔臣右に弼佐あり、金玉廳堂に堆滿す。常に盈滿を保ちて亡失せず、富厚なること敖倉のごとし。敖倉は秦漢の際の國家大糧倉で、《史記・酈生列傳》に見ゆ。坤は厚德にして物を載すを主とし、徳厚ければ財物自ら聚まる。占うに富貴門に盈ち、根基穩固なり。大吉。

蒙之屯:安息康居,異國穹廬。非吾習俗,使我心憂。

蒙の卦が屯の卦に変わる。安息と康居のこれ異域の邦は、住む所は氈帳穹廬なり。そこは我が熟悉する風俗にあらず、我をして心中憂愁せしむ。安息・康居皆西域の古國で、《漢書・西域傳》に見ゆ。屯は初生して通じ難き卦で、人地生疏なれば處處窒礙す。占うに異鄉に客居し、水土服せず。凶。

蒙之需:范公鴟夷,善賈飾資。東之營丘,易字子皮。把珠載金,多得利歸。

蒙の卦が需の卦に変わる。范蠡自ら鴟夷子皮と號し、經商を善くして資財を增殖す。彼東行して營丘一帶に至り、名を改め字を換えて子皮と作す。《史記・貨殖列傳》に范蠡越を辭し經商して、三たび千金を致した事を載す。彼手に珍珠を握り車に黄金を載せ、利を獲ること豐厚にして歸る。需とは時機を待つこと。時を待つを善くすれば貨殖財を生ず。經商財を求むを問えば、大いに獲る所有り。吉。

蒙之訟:老楊日衰,條多枯枝。爵級不進,遂下摧隤。

蒙の卦が訟の卦に変わる。老楊樹一天天に衰敗し、枝條大多枯幹す。官爵等級晉升を得ず、終に一路向下して崩壞傾頹す。訟は爭辯の卦で、爭いて勝たざれば勢必ず日に削らる。占うに仕途蹭蹬し、家業漸々衰ゆ。凶。

蒙之師:小狐渡水,汙濡其尾。利得無幾,與道合契。

蒙の卦が師の卦に変わる。小狐狸水を涉り河を過ぐるに、尾巴を弄し沾濕せり。得る所の好處雖多からず、卻って正道と相合す。《未濟》卦辭に「小狐汔として濟る、其の尾を濡らす」と曰う。正に險を涉りて將に成らんとする意を取る。師は衆を聚むる卦で、力を量りて行えば小さく沾濡する有れど其の正を失わず。占うに小利得るべく、正を守りて咎なし。

蒙之比:豕生魚魴,鼠舞庭堂。奸佞施毒,上下昏荒,君失其國。

蒙の卦が比の卦に変わる。猪魚魴を生出し、老鼠庭堂の上に跳舞し、物類常に反して竟に此の般の地步に至る。奸邪佞人毒害を施放し、上下皆昏亂荒廢し、君主終に國家を丢却す。古人は物妖を以て亡國の徵とす。比は親附を主とし、親しむ所若し小人ならば國危し。占うに小人勢を得、家國傾覆す。大凶。

蒙之小畜:天地配享,六位光明。陰陽順序,以成和平。

蒙の卦が小畜の卦に変わる。天と地と相配して共に祭饗を享け、六爻の位一片光明なり。陰陽依次順行して、從りて太平の世を成就す。《乾・彖》に「六位時成」の説あり。小畜は柔を以て剛を畜え、各々その位を得れば上下和洽す。占うに上下相い諧し、諸事順遂す。吉。

蒙之履:踝踵足傷,右指病癰。失旅後時,利走不來。

蒙の卦が履の卦に変わる。脚踝脚跟皆傷を受け、右手指また毒瘡を生ず。隊伍に跟かずして時辰を誤り、手に到りし好處跑げ去りて再び來らず。履は踐行を主とし、足傷つけば行いその正を得ず。占うに身に傷病あり、良機を錯失す。凶。

蒙之泰:異體殊患,各有所屬。喜鄰孤媼,欲寄我家。王母罵詈,求之不得。

蒙の卦が泰の卦に変わる。形體同じからず憂患各々異なり、各人自ら各々の歸屬あり。鄰家の孤老婦人を喜歡し、彼女をして我が家に寄住せしめんと欲す。家中の老毋親破口して斥罵し、此事終に求めて成らず。泰は通達を主とすると雖も、人情合わざれば事諧わず。占うに家中意見相い左し、求む所阻まる。凶。

蒙之否:操稻鄉畝,折禍稷黍。飲食充口,安利無咎。

蒙の卦が否の卦に変わる。鄉間田畝の裏に稻作を操持し、禳除して黍稷の間の禍害を折斷す。飲食口を充たすに足り、安穩して利を得て過錯有らず。否は閉塞不通なれど、躬耕して自足すれば塞ぐと雖も困まらず。占うに衣食憂なく、平安して利を得。吉。

蒙之同人:所受大喜,福祿重來。樂且日富,蒙慶得財。

蒙の卦が同人の卦に変わる。領受する所は天大の喜事、福と禄と接續して來る。歡樂の中に家道一天天に富裕し、吉慶を蒙りて錢財を獲得す。同人は人と和同するを主とし、同心協力すれば獲利豐厚なり。占うに喜慶門に臨み、財源斷えず。大吉。

蒙之大有:舉杯飲酒,無益溫寒,指直失取,亡利不歡。

蒙の卦が大有の卦に変わる。杯子を擧げて酒を飲むも、寒を禦ぎ暖を取るに補益なし。手指僵直して抓取する能わず、利益を丢して心中快からず。大有は本來富盛を主とするが、用うる所其の法に合わざれば富むと雖も益なし。占うに徒勞功なく、得て復た失う。凶。

蒙之謙:日月指望,光明盛昌。三聖茂承,功德大隆。

蒙の卦が謙の卦に変わる。太陽と月亮と遥遥と相い望み、光明盛大昌隆なり。三位の聖人先後相い承けて徳業繁茂し、功德極めて隆盛す。謙とは益を受くること。謙徳愈厚ければ光輝愈顯れり。占うに徳業昌盛し、聲名遠く揚がる。大吉。

蒙之豫:猾夫爭強,民去其鄉。公孫叔子,戰於城南。

蒙の卦が豫の卦に変わる。狡猾の徒强を爭い勝を鬥い、百姓迫られて家鄉を離る。公孫氏と叔子氏と城南に交戰す。豫は本來和樂を主とするが、安樂怠惰して防を設けざれば禍亂驟然と起る。占うに兵爭民を擾し、鄉を離れ井を背く。凶。

蒙之隨:猿墮高木,不踒手足。還歸其室,保我金玉。

蒙の卦が隨の卦に変わる。猿猴高樹より跌落して下るも、手脚扭傷することなし。平安に己が窩裏に回り、我が金玉財物を保住す。隨とは時に隨いて動く。勢に順い下れば險なれど傷つかず。占うに險に逢いて恙なく、財物保つを得。吉。

蒙之蠱:逐狐東山,水遏我前。深不可涉,失利後便。

蒙の卦が蠱の卦に変わる。東山に到りて狐狸を追捕するも、河水我が前面に擋る。水深く涉渡する能わず、手に到りし利益を丢して便宜を錯過す。蠱は積弊を整治するを主とし、弊未だ治まらず阻碍當前に在れば、圖る所便ち成る能わず。占うに中途阻まれ、坐して其の利を失う。凶。

蒙之臨:鑿井求玉,非卞氏寶。名困身辱,勞無所得。

蒙の卦が臨の卦に変わる。井を挖きて美玉を求美するも、得る所は卞和のごとき至寶にあらず。名聲困に受け自身辱を蒙り、勞苦して一の獲る所なし。《韓非子・和氏》に卞和三たび璞を獻じ、兩たび刖足に遭いし事を載す。臨は上に居りて下に臨むを主とし、求む所其の法を得ざれば終に徒勞に歸す。占うに力を用うること當たらず、名利兩空なり。凶。

蒙之觀:黃玉溫厚,君子所服。甘露溽暑,萬物生茂。

蒙の卦が觀の卦に変わる。黄色の玉温潤厚實にして、君子の佩戴する所なり。甘露悶熱の暑天に降り、萬物これによって生長茂盛す。黄は中央の色、玉は君子の徳を喩う。觀は觀仰して天下を化育するを主とし、徳澤人を潤すは正に甘露の物を潤すがごとし。占うに徳厚く尊を受け、生機勃發す。吉。

蒙之噬嗑:畫龍頭頸,文章不成。甘言善語,說辭無名。

蒙の卦が噬嗑の卦に変わる。竜を畫きて只だ頭と脖頸とを畫き出し、紋采終に畫き成らず。滿口甜言好話するも、游說の辭成名を成る能わず。噬嗑は嚙合して梗阻を去るを主とし、半途にして廢すれば梗阻去らず。占うに始ありて終なく、言ありて實なし。凶。

蒙之賁:招禍致凶,來弊我邦。病在手足,不得安息。

蒙の卦が賁の卦に変わる。禍事を招引し凶險を招致し、前來して我が邦國を敗壞す。病痛苦難手足の上に落ち、安寧休息を得ず。賁は文飾を主とするが、外表の修飾は內裏の禍患を遮る能わず。國事を問えば敗象あり、身體を問えば肢體の疾あり。凶。

蒙之剝:履位乘勢,靡有絕斃。替為隸圉,與眾庶伍。

蒙の卦が剥の卦に変わる。元來身その位に居り勢に乘じて行うも、斷絶敗亡の虞なしとせず。後來卻って廢黜せられて奴隸馬夫に淪し、普通百姓と伍を爲す。剥は剥落の卦で、位高くして徳相い稱わざれば終に墜落せん。占うに貴より賤に轉じ、位を失い職を降る。凶。

蒙之復:獐鹿雉兔,群聚東囿。廬黃白脊,俱往趨逐。九齚十得,君子有喜。

蒙の卦が復の卦に変わる。獐子・鹿・野鷄・兔子群を成して東邊の園囿裏に聚まる。廬黄と白脊のこのごとき名犬一齊に撲上して追逐し、九たび咬めば十隻を得、君子これによって歡喜す。復は一陽來復の卦で、生機既に動けば獵する所必ず豐なり。田獵を問い財を求むを問うに、大いに獲る所有り。吉。

蒙之無妄:治金未成,緯畫無名。長子逐兔,鹿起失路。後利不得,因無所據。

蒙の卦が无妄の卦に変わる。金屬を冶煉するも未だ器を成さず、經緯の謀劃にも名目なし。長子兔子を追うに、鹿卻って先に竄起し、反って道路を迷失す。到る後來利益得る能わざるは、只だ本來憑據依るべきなきが故なり。《无妄》は人に妄動すべからずを誡む。本なくして妄りに求めば終に成る所なし。占うに事を謀る未だ定まらずして妄動し、終に落空す。凶。

蒙之大畜:天厭周德,命與仁國。以禮靖民,兵革休息。

蒙の卦が大畜の卦に変わる。上天周室の徳運を厭棄し、天命を仁政を施行する國家に交す。新主禮制を以て百姓を安定し、兵戈甲胄皆收藏休止す。大畜は徳を蓄えて後大用するを主とし、徳厚き者のみ能く命を受く。占うに朝を改め主を易えて天下安を得る。先に危後に吉。

蒙之頤:重譯賀芝,來除我憂。善說逐良,與喜相求。

蒙の卦が頤の卦に変わる。遠方の國輾轉幾重の通譯を經て前來して道賀し、靈芝を進獻して、我のために憂愁を除去す。善言勸說して賢良を進擧し、喜慶の事と互相い招引す。《漢書》屢々「重譯して朝に來る」を以て盛世の象を記す。頤は正を養うを主とし、賢を得て自ら養えば憂愁自ら解く。占うに遠方に喜信あり、賢を得て困を解く。吉。

蒙之大過:膏澤肥壤,人民孔樂。宜利俱止,長安富貴。

蒙の卦が大過の卦に変わる。雨露滋潤して土壤肥沃、百姓非常に快樂なり。適宜と利益と皆ここに聚集し、長く富貴を安享す。大過は負重の卦なれど、根基深厚なれば任重くして折れず。占うに居處宜を得、富貴長久なり。大吉。

蒙之坎:白龍黑虎,起鬐暴怒。戰於涿鹿,蚩尤敗走。居止不殆,君安其所。

蒙の卦が坎の卦に変わる。白竜と黑虎と鬃鬣竪起して暴跳發怒し、涿鹿の野に交戰して、蚩尤終に敗逃す。《史記・五帝本紀》に黄帝と蚩尤と涿鹿に戰い、遂に蚩尤を擒え殺したと載す。坎は險陷なれど、正邪に勝てば險難自ら平ぐ。此の後居處安止して危殆ならず、君主己が位置に安居す。占うに爭鬥獲勝し、危を轉じて安と爲す。吉。

蒙之離:抱關傳語,聾跛摧殆。眾賤無下,災殃所在。

蒙の卦が離の卦に変わる。門を守る小吏人のために話を傳えるも、自ら又聾にして跛にして困頓危殆なり。卑賤なること復た加ふる無きに至りて、災殃便ちここに落つ。離は附麗で、附く所卑下なれば以て自ら立つ無し。占うに地位低微にして身に殘疾あり、禍患頭に臨む。凶。

蒙之咸:憂禍解除,喜至慶來。坐立歡門,與樂為鄰。

蒙の卦が咸の卦に変わる。憂愁と禍患と皆已に解除せられ、喜事到來して吉慶之に隨う。坐るも立つも皆歡喜の門裏に在り、快樂と鄰を結ぶ。咸は交感の卦で、氣機相い通ずれば憂去りて喜來る。占うに否極まりて泰來り、家門吉慶なり。大吉。

蒙之恆:折鋒載殳,輿馬放休。狩軍依營,天下安寧。

蒙の卦が恒の卦に変わる。兵刃を折斷し殳杖を收起し、車輛馬匹皆放歸休息せしむ。出征の軍隊營に回り駐守し、天下これによって安寧す。《尚書・武成》に周武王「武を偃め文を修め、馬を華山之陽に歸す」と載す。恒とは常久で、兵戈止息すれば治平久しかるべし。占うに戰事平息し、四方安定す。大吉。

蒙之遁:至德之君,仁政且溫。伊呂股肱,國富民安。

蒙の卦が遯の卦に変わる。徳行至高の君主、仁政を施行してまた温厚なり。伊尹・呂尚のごとき賢臣ありて臂膀を充當し、國家富强にして百姓安定す。伊尹は商湯を輔佐し、呂尚は周武王を輔佐す。皆開國の名相なり。遯は本來退避を主とするが、君明く臣賢ければ退を言うを須いとせず。占うに上下相い得、國富み家安し。大吉。

蒙之大壯:千里望城,不見山青。老兔蝦蟆,遠絕無家。

蒙の卦が大壯の卦に変わる。千里相隔てて遥遥に城池を望むも、青山をも望見えず。月中の老兔と蛤蟆とは、遠く歸路を斷絕して歸る家なし。古神話は玉兔と蟾蜍と月中に居ると以す。大壯は正を守るに宜しく妄行すべからず。遠出して據なければその歸る所を失う。占うに故土を遠く離れ、孤懸して依る所なし。凶。

蒙之晉:有莘季女,為夏妃后。貴夫壽子,母字四海。

蒙の卦が晋の卦に変わる。有莘國の小女兒、夏后氏の妃后と爲る。夫婿顯貴にして兒子長壽、彼女慈母の心を以て四海の民を撫育す。《史記・殷本紀》に有莘氏の女出嫁して伊尹媵臣と爲りし事を載す。晋は上進して福を受くるを主とし、女子貴を得れば一家俱に榮す。婚嫁を問えば貴婿に攀るを得、子孫昌盛す。大吉。

蒙之明夷:不虞之患,禍至無門。奄忽暴卒,痛傷我心。

蒙の卦が明夷の卦に変わる。意料し得ざる禍患、來る時防ぐべき門徑なし。忽然の間暴病して身亡び、我が心を痛傷す。明夷は光明地中に陷る卦で、暗中に生ずる禍患最も提防し難し。疾病を問えば暴亡を主とし、家宅を問えば喪事あり。大凶。

蒙之家人:飛鷹退去,不食鄰鳥。憂患解除,君主安居。

蒙の卦が家人の卦に変わる。飛來の老鹰退走し、鄰家の小鳥を喫わず。憂愁禍患此より解除せられ、主人安然として居住す。家人は內治に法度あるを主とし、家に防範あれば外來の害自ら退く。占うに虛驚化解し、閤家平安なり。吉。

蒙之睽:跮蹉側跌,申酉為祟。亥戌滅明,顏子隱藏。

蒙の卦が睽の卦に変わる。脚步踉蹌して側身跌倒し、申・酉兩個の時辰上に邪祟作怪を爲す。亥・戌の時光に到りて光明熄滅し、顔子隱藏するのみ得たり。地支の値う所各々吉凶あり、古人之に據りて時日方位を推占す。睽とは乖離で、時運利ならざれば賢者退藏す。占うに時辰利あらず、行動跌蹉す。避くべくして進むべからず。凶。

蒙之蹇:司錄憑怒,謀議無道。商民失政,殷人乏祀。

蒙の卦が蹇の卦に変わる。司錄の神大いに雷霆を發し、人間の謀議全く道理なし。商朝の百姓善政を失い、殷人の宗廟もまた祭祀を斷つ。《尚書・牧誓》に紂王の罪を歷數し、其中便ち祭祀を廢棄する一条あり。蹇は跛足にして行き難し。政令昏亂すれば國步維艱なり。占うに政令當を失い、宗祀繼がず。大凶。

蒙之解:望雞得雉,冀馬獲駒。大德生少,有廖從居。

蒙の卦が解の卦に変わる。一隻の鷄を得んと盼ぐも野雉を得、一匹の冀北良馬を指望するも馬駒を得る。大徳の人生養する子嗣雖少なきも、廖氏の人ありて相い從いて居る。解は險難消散を主とし、得る所雖原望に合せずも終に獲あり。占うに意外の喜、人の相助を得るを主とし、吉。

蒙之損:忉忉怛怛,如將不活。黍稷之恩,靈輒以存。

蒙の卦が損の卦に変わる。憂心忡忡にして悲傷慘怛し、活きて下らんとせずとするがごとし。全く一頓の黍稷飯食の恩情に頼り、靈輒乃ち性命を保全するを得たり。《左傳・宣公二年》に趙盾翳桑に於て餓人靈輒を賑濟し、後來靈輒戟を倒して相い救い以て此の恩に報いたるを載す。損とは己を減じて人を益す。一飯の施し竟に人の一命を救う能し。占うに困厄の中人の接濟を得る。先に凶後に吉。

蒙之益:莫莫輯輯,夜作晝匿。謀議我資,來攻我室。空盡我財,幾無以食。

蒙の卦が益の卦に変わる。一伙の人悄悄地に聚集して群を成し、夜裏出て行動し白天躲藏す。彼ら我が資財を圖謀し、前來して我が家室を侵犯す。我が錢財を掏き盡して精光にし、ほとんど喫う所なし。益は本來增益を主とするが、ここではかえって剝奪を遭う。家宅を問えば盜竊を遭うを主とし、財物を問えば耗散殆ど盡きるを主とし、大凶。

蒙之夬:天之所壞,不可強支。眾口指笑,雖貴必危。

蒙の卦が夬の卦に変わる。上天の毁壞せんとする物は、人力勉强して支撐する能わず。衆人指指点点して紛紛と譏笑し、縱ひ身顯貴に居るも必ず危殆なり。夬は決し去る卦で、天意と人心と俱に已に去れば大勢挽回すべからず。占うに大勢已に去り、位高くして險し。凶。

蒙之姤:目動睫瞤,喜來加身。舉家蒙歡,吉利無殃。

蒙の卦が姤の卦に変わる。眼睛跳動し睫毛抽動す。古人これを以て喜事身に加わる先兆と爲す。全家皆歡樂を蒙り、吉利にして災殃なし。姤は期せず遇う。喜慶外より自ら來る。占うに意外の喜あり、閤家歡慶す。吉。

蒙之萃:黿羹芬香,染指弗嘗。口飢於手,子公恨饞。

蒙の卦が萃の卦に変わる。黿魚の羹は香氣鼻を撲つも、手指沾りつきて嘗めることを得ず。嘴巴飢えて只だ手指に頼りて饞を解すのみ。子公これによって恨みを懷き心在り。《左傳・宣公四年》に鄭國の公子宋食指大いに動き、靈公黿羹を賜うも偏偏彼に與えず、子公便ち鼎に染指し、終に弑君の禍を釀成するに至るを載す。萃は聚合で、聚まりて分配均しからざれば怨を生ず。占うに待遇公ならず、小に因りて大を失いて怨を結ぶ。凶。

蒙之升:天福所豐,兆如飛龍。成子得志,六三以興。

蒙の卦が升の卦に変わる。上天の賜う所の福澤豐厚にして、卜兆好比飛竜天に在り。田成子其の志願を實現し、累世の後大いに興盛す。《史記・田敬仲完世家》に田氏世々齊に徳を施し、終に齊を代えて立つを載す。升とは上進で、積累既に久しくして後驟然騰達す。占うに漸進して志を得、後世昌大なり。吉。

蒙之困:氓伯以婚,抱布自媒。棄禮急情,卒罹悔憂。

蒙の卦が困の卦に変わる。あの氓と呼ぶ男子前來して婚を議し、布匹を抱きて自ら媒を爲す。禮法を抛開して成せることを急ぎ、終に悔恨と憂愁とを招來す。《詩経・衛風・氓》は正に此の女棄てられし痛を寫す。困は困窮の卦で、苟合して禮を失すれば終に必ず困を受く。婚姻を問えば始め亂りて終に棄てられ、後日悔を生ず。凶。

蒙之井:夏姬親附,心聽悅喜。利以搏取,無言不許。

蒙の卦が井の卦に変わる。夏姬前來して親附依從し、心中樂意に聽從して歡喜す。勢に乘じて求取するに宜しく、應允せられざる一句もなし。夏姬は鄭穆公の女で、美色を以て列國を傾動す。事《左傳・成公二年》に見ゆ。井は人を養いてその源竭きざるを主とし、求む所皆應あり。占うに人を求めて允を得、願う所多く遂げる。吉。然れど色欲の累を防ぐを須いとす。

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