震の林(震卦六十四林)
明夷 典策法書,藏在蘭臺。雖遭潰亂,獨不遇災。(坤之大畜,大有之恆,中孚之恆)
巽の明夷。国家の典籍・簡策と法令文書は、蘭台の中に蔵せられ、兵禍・潰乱に遇っても、独りこれらだけは損毀に遭わなかった。蘭台は漢代の御史が図籍を掌り蔵する所で、深固慎密の処を喩える。この林は善く蔵守する者は乱世に保全を得ることを主とし、明に傷つきながら根本を失わない象がある。占者は韜晦・收斂に宜しく、要紧の物を妥当に保存すべき。
家人 西誅不服,恃強負力。倍道奔敵,師徒敗覆。(益之同人,需之屯)
巽の家人。西に向かって服さざる部族を誅し、ひたすら強横を恃み膂力を負う。道を倍して奔り敵を襲い、結果、軍隊は疲弊して全軍覆没した。《孫子》の「五十里にして利を争えば、上将軍を蹶く」はまさにこの弊である。この林は強を恃み軽く進み、師を労して敗に致ることを主とし、争競・遠征・急切に功を図る事は皆凶。占者は切に操り過ぐるを忌むべき。
睽 春陽生草,夏長條肄。萬物蕃滋,充實益有。(井之巽)
巽の睽。春は陽気が升発して百草が萌生し、夏は枝條が新枿を抽いて愈長愈茂る。万物は繁衍し滋長し、倉廩は充実し、有る所は愈々豊かになる。この林は時序が順遂で生機が勃発する象を取り、積累が日に増し家道が興旺することを主とする。占者の営む事はその生長の時に逢い、勢に乗じて推進するに宜しく、収穫が期せられる。
蹇 磝磽禿白,不生黍稷。無以供祭,祗靈代祀。
巽の蹇。土地は堅硬で瘠薄、地皮は禿げて白く泛き、黍も稷も生えない。祖先に供える祭品すら出せず、他家に代わりに致祭を請うしかない。この林は地が物を生ぜず家に余糧なき象を取り、貧乏窘迫・力心に及ばざるを主とし、尽くすべき礼数も周全し難い。占者は人に接濟を求め、暫く外力を藉りて日を度るに宜しく、強いて門面を支えてはならない。
解 褰衣涉河,澗流浚多。幸賴舟子,濟脫無他。(坤之萃,蹇之師)
巽の解。衣裳を褰げて徒歩で河を渉り、山澗の水流は深く急で、もとより極めて険な事だった。幸い渡し守の船夫に遇い、安らかに渡り済し、他に意外もなかった。この林は険に処りて援を得ることを主とし、危難が人の相助に遇って化解する。占者の目下は険に渉る憂いがあっても、他人の力を藉るを肯んずれば、終に身を脱して恙なし。先危後安の占である。
損 宜行賈市,所求必倍。載喜抱子,與利為友。(未濟之益,大過之恆)
巽の損。外出して商賈し市をなすに宜しく、求める利は必ず倍する。喜びを満載して帰り、懐に子を抱き、財利が自分と長く友となる。この林は財を求めて大順、行商して利を得ることを主とし、兼ねて丁を添える喜びがある。占者は主動して外に出て営謀するに宜しく、静守すればかえって機を失う。財を求め出行する上吉である。
益 兄征東燕,弟伐遼西。大克勝還,封君河間。
巽の益。兄は東の燕地に出征し、弟は遼西一帯を伐ち、双ならびに大いに克ち勝って帰り、河間の君に封ぜられた。この林は兄弟が協力し内外が併せ挙げて大功を成すことを主とし、戦勝して封を受け名利を兼ね収める象がある。占者が手足・親党と心を同じくすれば、事業は遠く達することを望め、争競・謀職の事は俱に吉。
夬 初雖驚惶,後乃無傷。受其福慶,相孝為王。
巽の夬。初めは驚惶したが、後は毫髪の傷もなく、かえって福沢・慶賞を受け、上下が孝道をもって相待し、これによって一方に君臨できた。この林は先に驚き後に喜び、驚ありて険なしを主とし、かつ孝順仁厚をもって福を得る本とする。占者は事に遇うて縦しく場の虚驚があっても、終に禍を転じて福となす。敦厚をもって人を待ちその慶を固くすべき。
姤 隨風乘龍,與利相逢。田獲三倍,商旅有功。憧憧之邑,長安無他。
巽の姤。風の勢いに随い龍に乗って行き、一路財利と相逢う。田猟の獲る所は常の三倍、行商遠賈も大いに収穫あり。あの人の来り往き、熙熙攘攘たる城邑の中、長く安穏で他に意外なし。この林は勢に乗じて利を得、動いて獲る所あるを主とし、行商・出猟・遷居は皆吉。巽の風に相随い、往けば利あらざらざる上占である。
萃 魚擾水濁,寇圍吾邑。城危不安,驚恐狂惑。
巽の萃。魚の群れが攪動して池の水が濁るは、まさに盗寇が我の城邑を囲んだごとき。城池は危急で安からず、人心は惊恐し、慌て乱れてほとんど狂惑する。水が濁り魚が扰れるのは衆乱の兆。この林は外患が囲み逼り、人心が動揺することを主とし、兵盗の驚擾・家宅不寧の凶がある。占者は固く守って援を待つべきで、自ら陣脚を乱すことを切に忌む。
升 雖塞復通,履危不凶。保其明功,以道立宗。
巽の升。道は一度塞がっても、随いて再び通ずる。危の上を履んでも凶に至らない。己の顕明な功業を保つことができ、正道を凭って宗祀家門を立てる。この林は困して後に通じ、危うくして能く安しを主とし、凡事は先に阻まり後に順う。占者はただ正を守り道を持せば、縦し阻碍に遇うても局面を打開し得、功名は保つべきものがある。
困 坤厚地德,庶物蕃植。平康正直,以綏大福。(泰之解,賁之履,渙之解,漸之復)
巽の困。大地の徳は寛厚にあり、これによって万物がその上に繁衍し生長する。《尚書・洪范》の「平康正直」は、世に処り平和で心が正直ならば、安らかに大福を享けられると講ずる。この林は困の名に居るも取象は極めて醇厚で、厚徳をもって物を載せ、正をもって自ら守って安泰を得ることを主とする。占者は地の厚さに效い、争わず躁らずに宜しく、福は自ずから随う。
井 山木暴怒,壞梁折柱。稽難行旅,留連愁苦。(咸之豫)
巽の井。山間の樹木が狂風に摧折され、怒号して倒れ、屋梁を圧壊し廊柱を折る。道路はこれによって阻塞し、行旅の人は阻まれ停留し、外に滞留して愁苦堪え難い。この林は意外の災がその棟梁を壊し、行程が阻まれ帰期が定まらないことを主とする。占者は遠行に宜しからず、居家においても屋宇の修繕を防ぐべきで、静かに険の過ぐるを候すべき。
革 使燕築室,身不庇宿。家無聊賴,織我衣服。
巽の革。燕に差遣して巣を築き室を造らせ、自分はかえって庇ぎ宿る所がない。家の中に頼る所が一つもなく、自ら手を動かして衣裳を織るしかない。この林は人のために嫁を作り、労してその恵を得ないことを主とし、人に代わり営謀して身の帰る所なしの嘆がある。占者の出す力は多く他人に帰し、まず自身の安顿を謀るに宜しく、ひたすら人のために操持してはならない。
鼎 矢石所射,襄公□據。吳子巢門,傷病不治。
巽の鼎。飛矢と礌石に傷つけられる。宋の襄公は泓水の戦で股に箭を受け、物に扶けて支えるしかなかった。呉子諸樊は楚の附庸たる巢邑を攻め、城門の下で箭に中たりて死した。事は《左伝》に見える。この林は兵刃の傷、疾病治り難きを主とし、出戦・争闘・渉険の事は皆身の危の凶がある。占者は切に鋒鏑を親冒することを忌み、争闘を遠く避けるに宜しい。
震 日月運行,一寒一暑。榮寵赫赫,不可得保。顛隕墜墮,更為士伍。(中孚之晉)
巽の震。日月は輪転して停まらず、一寒一暑が交替して来る。人間の赫々たる栄寵も寒暑と同じく、終に長く保つことはできない。いったん跌落すれば、普通の兵卒に淪落する。《周易・繋辞》の「日往けば月来り、寒往けば暑来る」は、まさに盈虚に時あるを講ずる。この林は盛んに極まりて衰え、位高くして墜ち易しを主とする。占者は得意の時に退路を予め留め、驕を戒め満を戒めるべき。
艮 宮門悲鳴,臣圍其君,不得東西。
巽の艮。宮門の内から悲切な哭き声が伝わり、臣下が兵を起して自分の君主を囲み、東にも行けず西にも成らないようにした。この林は内変が肘腋にあり、下が上を犯して進退に路なしを主とし、幽禁され制され、親信に困られる凶がある。占者は身辺の者の反噬を防ぐべく、これに遇えば早めに自ずから脱を図り、決して内に孤立してはならない。
漸 戴盆望天,不見星辰。顧小失大,福逃牆外。(賁之蒙,小過之蠱)
巽の漸。頭に盆を戴いて天を望めば、自ずから星辰は見えない。司馬遷《報任安書》の「盆を戴き何以か天を望まん」は、二事が兼ね得ない喩えである。眼前の小利を顧みるだけで、かえって大処を失い、福気は墻外に逃げ去った。この林は見識が蔽いを受け、小のために大を失うことを主とする。占者はまずその遮蔽を去り眼界を放くべきで、目前の瑣碎なる得を貪ってはならない。
歸妹 天之所明,禍不遇家。反目相逐,終得和美。
巽の帰妹。上天が照臨し明らかに見る家には、禍患は訪ねて来ない。縦しくば夫婦が反目し互いに責め逐うことがあっても、最終的には再び和美に帰る。この林は家の中に口角争いがあっても、根基は損なわれないことを主とし、風波が過ぎた後は和睦に転ずる。占者は婚姻家室の争いに遇っても憂惧する必要はなく、正をもって自ら処るに宜しく、久しき後におのずから解ける。
豐 天陰霖雨,塗行泥潦。商人休止,市無所有。(革之睽,升之困,夬之大過)
巽の豊。天色は陰り、連日の大雨で、道路上は泥濘と水溜まりばかり。行商の人は足を止めるしかなく、市の上は空っぽで、どんな貨物もない。この林は天時が阻隔し交易が停頓することを主とし、豊の名はあれど実は得る所なし。占者の経商・求財は一時通じ難く、暫く歇んで晴を待つに宜しく、強いて路に上れば徒に泥濘を招く。
旅 善門福喜,增累盛熾。日就有得,宜其家國。
巽の旅。善を行い徳を積む家には福慶が門に盈ち、層々に累ね積まれて日に日に興盛し熾んとなる。毎日得る所があり、家門も邦国もこれによって安らかに宜しい。この林は善因が善果を結び福沢が漸く厚くなることを主とし、小を積んで大を成す吉象である。占者はただ善を存じ行い、持続して輟めなければ、家業も前程も俱に日に進む。
兌 南山之陽,華葉將將。嘉樂君子,為國寵光。(革之大有)
巽の兌。終南山の南の日向きの所は、草木の花葉が繁盛して将将たり。そこに嘉く楽しき君子がおり、国家の栄寵と光輝となる。《詩経》は多く南山の草木をもって興とし、賢者が養わるる所を得ることを喩える。この林は賢徳が顕揚され国の倚重を受けることを主とし、占者に上に賞識され名声が光り大きくなる喜びあり。進身して名を求めるに宜しい。
渙 晝龍頭頸,文章未成。甘言美語,詭辭無名。(井之蒙,蒙之噬嗑,家人之賁)
巽の渙。龍を画いて頭と頸だけを画き出し、鱗爪の紋彩はまだ画き成らない。まさに口いっぱいの甘言美語で、言うことは聞きよいが、実は言辞が詭詐で実に落ちず、名を成すことができない。この林は始めあって終わりなく、虚言で実なしを主とし、承諾・合作・文書の事は多く半途で廃する。占者は言を辨じ行を察すべく、巧語に惑わされてはならない。
節 嬰兒孩子,未有知識。彼童而角,亂我政事。
巽の節。年幼の嬰孩はまだ見識というべきものがない。《詩経・大雅・抑》は「彼の童にして角あり」と譏り、角のない小牛をわざわざ角が生えたと言うのは虚妄不実の比である。このような人を攪り入れれば、我の政事を乱すことになる。この林は人を用いること当たらず、稚弱が権を当たることを主とし、政令がこれによって紊乱する。占者は重任を無識の輩に託すべきでなく、事を謀るには老成を択ばねばならない。
中孚 陰作大奸,欲君勿言。鴻鵠利口,發其禍亂。荊季懷憂,張伯被患。
巽の中孚。暗に大奸大悪を醸し、なおかつ国君に緘口して言わざらしめんとする。偏って鴻鵠のごとき利口の人がそれを掲発し、これによって禍乱が驟かに起こり、荊季はこれを憂い、張伯はこれによって殃に遭う。この林は陰謀が敗露し無辜に牽連することを主とし、口舌が禍を招き暗事が外に揚がる凶がある。占者は身を持すること端正なるべく、陰謀に参与せず、また軽々しく人の短を掲げてはならない。
小過 德之流行,利之四鄉。雨師灑道,風伯逐殃。巡狩封禪,以告成功。(萃之比,益之復)
巽の小過。徳沢が流布し、利益が四方の郷に遍く及ぶ。雨師は前に道を洒掃し、風伯は後に災殃を駆逐する。天子は四方を巡行し泰山に封禅して、もって天地に功業の成就を告げる。この林は極めて吉で、徳威が並び行い天人が相助することを主とし、大功が告成し栄顕を賀される象がある。占者の謀る事は順遂通達し、隆重の慶を望める。
既濟 禹將為君,裝入崑崙。稍進陽光,登見溫湯。功德昭明。
巽の既済。大禹が天下の君とならんとして、装いを整え遠く崑崙に入る。一路陽光は漸く明るくなり、登臨する所に温泉の湧き流れるを見、彼の功徳はこれによって昭顕し明らかとなる。この林は禹が水を治め成功し、終に禅譲を受けた象をもって、険艱を歴尽して終に大業を成すことを主とする。占者の目下は跋涉の中にあれど、前程は漸く光明に入り、功名が期せられる。
未濟 五嶽四瀆,含潤為德。行不失理,民賴恩福。(恆之井,頤之明夷,離之恆)
巽の未済。五岳と四涜は万物を潤す水気を含み、これがすなわちそれらの徳である。山川の運行は常理に違わず、百姓はこれによってその恩沢・福佑を仰ぎ頼む。四涜とは江・河・淮・済の四大水を指す。この林は徳恵が広く被り理に循って行うことを主とし、安穏して福を受ける象である。占者はただ正を守り矩を踰えなければ、自ずから衆人に擁戴され恩沢が身に及ぶ。
兌の林(兌卦六十四林)
兌 班馬還師,以息勞疲。役夫嘉言,入戶見妻。(觀之既濟,賁之蠱,剝之復)
兌の兌。戦馬が列をなし回旋し、師を班して国に返り、疲労した士卒を休ませる。役に服す人から佳い便りが伝わり、ついに家門に入って自分の妻子に見える。この林は遠役が終わり久別が再逢することを主とし、帰家して団らんし労苦が釈かれる喜びがある。占者の外に奔走する者は帰るを望め、音信を待ち人の帰返を盼む事は皆吉。
乾 踐履危難,脫去厄患。入福嘉門,見誨大君。(震之家人,豐之中孚)
兌の乾。一路危険艱難を踏み踐めて、ついに厄運と禍患を脱し去った。福気の盈ちた佳い人家に入り、なお大人君子の教誨を得る。この林は先に険あり後に安く、難に遇って祥を成すことを主とし、かつ名師・貴人の指点あり。占者の眼下は困境にあれど、熬え忍びさえすれば佳境に転じ得、徳ある長者に多く親近して教益を承るに宜しい。
坤 子鉏執麟,春秋作經。元聖將終,尼父悲心。(訟之同人,豫之大有,革之震)
兌の坤。魯の哀公十四年、西の狩りで叔孫氏の車夫たる子鉏商が麒麟を獲し、孔子は《春秋》を作ってここに絶筆した。この大聖人は自ら終わらんとすることを知り、麟を撫でて悲しみ、仁獣がその時に非ずして出たことを感傷した。この林は賢者が遇わず、大徳が将に窮まらんとすることを主とし、物がその類を傷む、時我に与せずの嘆がある。占者は光を韜め晦を養うに宜しく、乱世に強いて頭を出してはならない。
屯 夾河為婚,期至無船。淫心失望,不見所歡。(屯之小畜)
兌の屯。一条の大河を隔てて婚約を締び、約期が至ったのに渡船がない。心意は切迫して希望は空しくなり、終に愛する人に見えない。この林は中間に阻みあり、望んでも即かないことを主とし、婚姻・合作・約会の事は皆隔て断たれる。占者はまず中間に横たわる障碍を解決すべきで、さもなくば空しく期待を懐き徒に惆悵を増す。
蒙 天孫帝子,與日月處。光榮於世,福祿繁祉。(解之臨)
兌の蒙。天帝の孫、上帝の子嗣が、日月と同じく天の上に処る。彼らは世に栄光赫々とし、福禄と吉祥が層出して窮まらない。この林は貴くして言うべからず、光華が人を照らす象を取り、出身あるいは際遇が尊顕で、名声と実恵を兼ね得ることを主とする。占者は貴人に攀附し提携を蒙るを望め、名を求め禄を求める上吉の林である。
需 三年爭妻,相隨奔馳。終日不食,精氣勞疲。(乾之大畜,坎之家人。「年」一作「羊」)
兌の需。三年の久しきにわたり一つの妻室を争って互いに譲らず、彼此追逐し奔走する。終日食に顧みる暇なく、精神気力は皆消耗し尽くした。この林は久しく争って果なく、両敗して俱に傷つくことを主とし、婚訟・財産の争いは皆拖延して神を耗する。占者は早めに手を罷め和を求めるべきで、久しく纏えばただ元気を耗し尽くすのみで、事に補いなし。末注は「年」の字が一は「羊」と作ることを載せる。
訟 禹召諸神,會稽南山。執玉萬國,天下安寧。(姤之臨,鼎之艮,損之旅)
兌の訟。大禹が群神を召集し、会稽の南山で会盟し、万国の諸侯は玉帛を手執して朝会に来り、天下はこれによって安寧した。《国語》に禹が「諸侯を会稽に会す」と載せ、防風氏は後れ至って誅された。この林は号令が厳明で衆望の帰する所であることを主とし、訟の名に居るも実は争いて治を得ることを主とする。占者がもし主導の位に居れば、衆を服して事を成すを望める。
師 早霜晚雪,傷害禾麥。損功棄力,飢無所食。
兌の師。霜が降りるのが早く、雪が下るのが遅く、禾苗と麦は皆凍え傷ついた。一年の功夫は徒に費やされ、気力は全て抛擲され、到頭飢えて食べる粮もない。この林は天時が順でなく、労して功なしを主とし、耕作・投入・長線の経営の事は皆収成があり難い。占者は余粮を留めて匱乏に備えるに宜しく、一擲に孤注してはならない。
比 嵩融持戟,杜伯荷弩。降觀下國,誅逐無道。憂商之季,失福逃走。(比之遯,豐之離,需之咸)
兌の比。祝融の神は手に長戟を持ち、冤を含んで死んだ杜伯は強弩を負い、一同に降臨して下界の諸国を察看し、あの無道の君を誅戮し駆逐する。《墨子・明鬼》に杜伯が厲鬼と化して周の宣王を射殺したことを記す。商代の末世に至り、君徳は敗壊し、福気もこれを棄てて逃げた。この林は天罰が身に及び悪政が禍を招くことを主とする。占者は自ら行事を省みて、無道の轍を蹈まないようにすべき。
小畜 生有聖德,上配太極。皇靈建中,受我以福。(家人之需,歸妹之需)
兌の小畜。生まれながらにして聖人の徳行を備え、上は太極の道と相配し得る。皇天の神霊が中正の則を建て、福沢を我に授ける。「建中」は《尚書・仲虺之誥》の「王が大徳を懋昭にし、中を民に建つ」に出る。この林は大吉で、徳が天に合し命を受けて福あることを主とする。占者は中道を秉持して行えば、自ずから神明の護佑があり、求める所は皆遂う。
履 下田陸黍,萬華生齒。大雨霖集,波病漬腐。
兌の履。低窪の下田と高所の陸地にいずれも黍を植え、万千の花穂が齒のごとく抽発した。ところが意に反し連綿たる大雨が傾注し、積水が波を成して、庄稼を泡だて病み腐らせた。この林は眼の前に成らんとするに横加の害に遭うことを主とし、喜びの中に憂いが生ずる。占者は収穫が即ち在る時に特に意外を防備すべく、早めに排涝・防患の計を作るに宜しい。
泰 子畏於匡,困厄陳蔡。明德不危,竟克免害。(渙之坎,大過之晉)
兌の泰。孔子は匡の地に囲まれて険に遭い、また陳・蔡の間で粮を絶たれ困を受けた。しかし彼の徳行は光明で、終に傾危に至らず、最後に禍害を免れ得た。二事は並び《論語》《史記・孔子世家》に見える。この林は困厄は深けれど正気は恃むべきを主とし、占者は縦し険境に陥るも、徳義を持守しさえすれば、終に安らかに身を脱せる。
否 有兩赤頭,從五嶽遊。淫言無佑,趍爾之林。俯伏聽命,不敢動搖。
兌の否。二つの赤色の頭の神怪があり、五岳の神に随いて四方を巡游する。あの邪妄の言は神明の保佑を得られず、ただ奔逃して汝の山林に入るしかない。神威を見れば地に俯伏して命を聴き、更に絲毫の動揺を敢えてしない。この林は邪が正に勝たず、妄言する者は終に懾服されることを主とする。占者がもし正位に身を居すれば、宵小を鎮めるに足り、もし心に詭詐を存すれば、制裁を逃れ難い。
同人 當得自知,不逢凶災。衰來復興,終得福來。
兌の同人。得るべきものは自ずから心の中に数あり、これによって凶災に遇わない。衰敗が過ぎて再び振興し、終に福気が門に臨むを待つ。この林は分を知り己を守り、進退に明るいことを主とし、ゆえに能く害を避く。かつ運勢は落から起に転じ、先衰後盛の象である。占者の眼下は縦し低谷にあっても、分を安んじて時を待てば、転機は自ずから至る。
大有 朽根枯樹,華葉落去。卒降火焱,隨風僵仆。(屯之坎,噬嗑之否,艮之需,夬之恆)
兌の大有。樹根はすでに朽ち枝幹は枯れ乾き、花葉は尽く凋落した。忽然として烈火の飛焔が降り、枯木は風に随いて地に倒れ僵れ臥す。この林は根本がすでに壊れ禍は単行せずを主とし、衰敗の上に更に焚劫に遭う。占者の依託する人事はすでに生機なし。切に再び心力を投入することを忌み、早めに身を抽き別に根本を謀るに宜しく、特に火燭と突発の災を防ぐべし。
謙 葛生衍蔓,絺綌為願。家道篤厚,父兄悅喜。
兌の謙。葛藤が蔓延して生長し、割き取って細葛布と粗葛衣を織り成し、正しく心願に合う。《詩経・周南・葛覃》はこれをもって家室の労を詠う。この林は家道が篤厚で、父兄が悦び喜ぶことを主とし、家人和楽・勤労して功ある象。占者の居家・営織の事は皆順で、倹を守り勤めれば福は自ずから至る。
豫 東行求玉,反得弊石。名曰「無直」,字曰「醜惡」。眾所賤薄。(家人之否)
兌の豫。東へ行き美玉を求めたのに、かえって一塊の破石を得た。この石の名は「無直」、字は「醜悪」といい、衆人に軽賤し鄙薄される。「無直」は一銭の値もないことを言う。この林は求める所が得る所に非ず、労して羞を蒙ることを主とし、賢を訪い物を求め親を議る事は皆偽劣に遇い易い。占者はまずその実を験すべく、虚名・遠途に誘われてはならない。
隨 瞻白用弦,駑孱恐怯。任力隨身,如蝟見鵲。偃視怒腸,不敢拒格。
兌の随。張り望みて弓弦を搭えようとするも、性が駑鈍孱弱で心に怯えあり。ただ一身の蛮力を凭って事を行い、まさに刺猬が喜鵲に遇うがごとく。古人は鵲が猬を制し得、猬はすなわち蜷伏して動かぬと言う。それは身を翻して仰視し、満腹に恼怒するも、終に抵抗し格闘を敢えてしない。この林は外は強く中は怯え、剋に遇えば即ち伏することを主とする。占者は人と硬く拼すべきでなく、勢を審らかに己を量り、忍譲を上とすべし。
蠱 瘡痍多病,宋公危殆。吳子巢門,無命失所。
兌の蠱。身上に瘡傷が累々とし疾病に纏われる。宋の襄公は泓水の戦で股を傷つけ危かった。呉子諸樊は巢邑の城門の下で箭に中たり、性命を保たずその帰る所を失った。二事は《左伝》に見える。この林は創傷いまだ愈えずして禍が再び至ることを主とし、疾病・兵刃の凶がある。占者は静かに養い険を避けるに宜しく、争闘・好勝を忌み、特に病を帯びて危に渉るを忌む。
臨 東山西嶽,會合俱食。為吳從送,以成恩福。
兌の臨。東の山と西の岳が一か所に会合し、ともに祭祀の血食を享ける。また呉国のために送り護従し、これによって恩義と福沢を成した。この林は両方が相合し、共にその事を襄ることを主とし、聨姻・結盟し彼此が相成する象がある。占者は遠方または異地の人と手を携えるに宜しく、合すれば同じくその利を得る。聚合して福を成す占である。
觀 舞非其處,失節多悔,不合我意。
兌の観。舞うべきでない場合に舞い、挙止が節度を失し、これによって悔恨が多く、事も我の意に合わない。この林は行事が場合を失し進退に節なく、懊悔を招くことを主とする。占者は時を審らかに勢を度り、言行は身份と場面に合うべきで、強いて表現すれば巧を弄して拙を成すに過ぎない。
噬嗑 南循汝水,伐樹斬枝。過時不遇,惄如周飢。
兌の噬嗑。汝水に沿い南へ行き、樹木を伐り枝を斫る。《詩経・周南・汝墳》の「いまだ君子を見ず、惄として調饥のごとし」は、妻子が薪を伐り夫を待つもその帰るを見ず、心の憂愁は朝の飢えのごとくと写す。この林は苦しく候して人至らず、時機を錯過することを主とする。占者の望む人事は一時に合し難く、耐え忍んで守候するに宜しく、焦燥してはならない。
賁 公孫駕驪,載遊東齊。延陵說產,遺季紵衣。(艮之未濟)
兌の賁。公孫は黒い駿馬に駕して、人を載せ東の斉国に遊ぶ。呉の延陵季子と鄭の子産は一見して故のごとく互いに欣賞し、臨別に季子に纻麻の衣裳を贈った。事は《左伝・襄公二十九年》に見える。この林は遠游して友を得、意気が相投ずることを主とし、占者の外出は知己・貴人に遇い、兼ねて贈を受け物を得る喜びあり。
剝 乘輿八百,以明文德。踐土葵丘,齊魯受福。(巽之大壯)
兌の剝。八百乘の車馬で諸侯と会盟し、もって礼楽文徳を彰明した。晋の文公は践土に盟し、斉の桓公は葵丘に盟し、斉・魯はこれによって福沢を蒙った。この林は剥落の名に居るも、取象は威徳で人を服し諸侯が賓服することを主とする。占者は縦し削損の時にあっても、徳をもって衆を服し四隣と好を結べば、なお庇佑を転得できる。
復 雄處弱水,雌在海邊。別離將食,哀悲於心。
兌の復。雄鳥は遥かな弱水のほとりに棲み、雌鳥は海辺に留まる。それぞれ別れ離れて食を求め、心中に哀悲が満ちる。弱水は伝説に遥かにして渡り得ず、相隔たることの遠さを喩える。この林は夫婦が離散し天の一方おのおのに在ることを主とし、別離して懐を傷む象がある。占者は親しき人と一時に聚り難く、音信もまた稀なり。心を寛くして自ら守り、時を待って合するに宜しい。
旡妄 結網得鮮,受福安坐,終無患禍。
兌の旡妄。漁網を結べば鮮魚を得、家に安坐して福沢を受け、終始禍患はない。この林は労せずして獲、坐してその成を享くことを主とし、運勢は自然に通順である。占者の営む事は順遂如意で、強求の需なく、分を安んじ常を守れば便ち利を得る。平穏にして安吉の林である。
大畜 秋南春北,隨時休息。處和履中,無有憂凶。
兌の大畜。候鳥は秋に南へ飛び春に北へ返り、時令に順い来り往きして作息する。人がもし世に処り平和で、中正の道を履めば、同じく憂愁と凶険はない。この林は時に順いて動き中を守って和を致すことを主とし、身を修め泰を保つ要である。占者は凡事時に逆らい強いて為すべからず、分に随い時に随えば、自然に平安で咎なし。
頤 啟戶閉門,巡狩釋冤。夏臺羑里,湯文喜悅。
兌の頤。門戸を啓き閉じる間に、天子は四方を巡行し、人のために冤屈を洗雪する。商の湯はかつて夏の桀に夏台に囚えられ、周の文王はかつて商の紂に羑里に囚えられ、後にいずれも釈かれて大いに喜んだ。二事は《史記・夏本紀》《周本紀》に見える。この林は冤屈が伸び幽囚が釈かれることを主とし、占者に困して復た出で沈冤が昭雪する喜びあり。
大過 符左契右,相與合屬。乾坤利貞,乳生六子。長大成就,夙言如母。
兌の大過。符信は左右の两半に分かれ、契券も各々一辺を執り、両下が合さえば厳絲合縫となる。乾坤の二卦は正を守るに利あり、交感して六つの子卦を生ず。子女は長じて成人し、早くから言葉を能くし、声口は母のごとし。この林は陰陽が配合し家道が綿延することを主とし、婚配の和順・子嗣の蕃昌の吉あり、合伙・締約の事もまた成る。
坎 飢蠶作室,絲多亂緒,端不可得。
兌の坎。飢えた蚕が強いて絲を吐き繭を作るも、絲は多いのに頭緒が紛乱し、抽引すべき線頭が見つからない。この林は事が繁雑で手を下すに由なく、見れば用いるべき物あるも、実は条理を理出せないことを主とする。占者の面前の局面は千頭万緒で、まず根本を補足し元気を養足してから整理を談ずべきで、急げば愈々乱れる。
離 東壁餘光,數暗不明。主母嫉妒,亂我事業。(革之謙,大壯之恆,謙之屯)
兌の離。東壁から透して来る一点の余光は、屡々昏暗で明らかでない。主母は心に妒忌を懐き、我の事業を攪乱する。東壁はもと文章の星を主とし、光が微弱ならば文運は昌ならず。この林は内助が賢からず、家事が外務に牽累し、事業がこれによって阻まれることを主とする。占者はまず内を安んずべく、門内の是非が正務を牽動せしめてはならない。末注は同文が《革》の《謙》、《大壮》の《恒》、《謙》の《屯》に見えることを示す。
咸 白茅漉酒,靈巫拜禱。神嗜飲食,使君壽考。
兌の咸。白く潔い茅草をもって清酒を濾し、霊験ある巫祝が地に伏して祈禱する。神明はこの酒食を飲食することを嗜み、これによって君主に長寿を賜う。《周易・大過》に「白茅を藉き用る」とあり、その潔敬を取る。この林は誠敬が神に感じ祈福に応あることを主とし、占者の禱する事は福佑を獲すべく、特に祭祀・祈寿・消災の挙に利あり。
