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損の林(損卦六十四林)

汉 · 焦延寿 · 第50巻 / 71

作盤ガイド: 大衍筮法, 六爻納甲の立卦

姤:種一得十,日益有息。仁政獲民,四國親睦。

萃の卦が姤の卦に変わる。一粒を种下して十粒を收得して、一天に一天として利息を增長す。仁政を施行して民心を得着して、四方の国親近和睦せり。此れ増殖して益を広ぐるの象、農を務め、経営し、惠を施す倶に倍償を得る能し。

升:安子富有,東國不殃。齊鄭和親,顯比以喜。

萃の卦が升の卦に変わる。安子家道富足にして、東方の国災殃に遭わず。齊、鄭両国和親を結成して、親比を顯明にして共に喜慶有り。此れ邦交和洽の象、交好し盟を結ぶ者同じく安寧と富足を享く。

困:九里十山,道仰峻難。牛馬不前,復反來還。

萃の卦が困の卦に変わる。九里の路竟に十座の山有りて、道路仰面にして陡峻、極めて攀登し難し。牛馬倶に肯えて前行せずして、只だ頭を掉して折返するを得たり。此れ路阻みて通ぜざるの象、前程険峻にして越え難し、宜しく退守して以て坦途を待つべし。

井:鳩杖扶老,衣食百口。曾孫壽考,凶惡不起。

萃の卦が井の卦に変わる。漢代の賜る所の高年への鳩頭の手杖を拄りて老人を扶助して、衣食以て上百口の人を供養するに足れり。曾孫の一輩も亦た高寿を享有して、凶惡の事興起せず。此れ老を養い家昌んなるの象、老を尊び長を敬する者は福沢綿延にして災なし。

革:霧露雪霜,日暗不明。陰孽為疾,年穀大傷。

萃の卦が革の卦に変わる。霧気、露水、雪と霜交じて侵襲して、太陽昏暗にして光なし。陰邪の気疾病を釀成して、一年の谷物大いに損傷を受く。此れ陰晦生を傷めるの象、年成佳からず人多く病患を患え、宜しく預め防備すべし。

鼎:迷行數卻,不知西東。陰疆暴逆,道理不通。(疆一作強)

萃の卦が鼎の卦に変わる。路に迷いて乱れ走り、屢々退却して、東西南北を分き得ず。陰気強横暴逆にして、事理と道路倶に通暢せず。此れ迷して據を失うの象、方向明らかならざれば則ち歩を挙ぐる倶に錯なり、宜しく停下して辨明して再び動くべし。旧本の「疆」の字或は「強」と作る。

震:登高上山,見王自言。信理我冤,得職蒙恩。

萃の卦が震の卦に変わる。高きに登り山に上りて、君王に見ゆて親しく陳説す。果して我が冤情を辨明して、職位を得着し恩沢を蒙受せり。此れ冤を申して直を得るの象、上訴、求告、理を伸ぶる者は昭雪して賞を受くるを望む可し。

艮:三世為德,天祚以國。封建少昊,魯侯之福。

萃の卦が艮の卦に変わる。三代倶に徳を積み善を行えば、上天便ち彼等に国土を賜せり。少昊の墟に於て建を分け国を封ずるが如く、彼は正に是れ魯侯の享くる所の福気なり。此れ徳を累ねて封を受くるの象、善を積む家は必ず余慶有りて、世代業を承け継ぐを望む可し。

漸:喬木無息,漢女難得。禱神請佩,反手離汝。

萃の卦が漸の卦に変わる。《詩経・周南・漢廣》の詠ずる「南有喬木、不可休思」、高木の下歇息する處なく、漢水の辺の游女も亦た求め難し。神に祈禱して、彼女に解佩して相贈せんことを求めれば、一轉手の間に彼女便ち汝を離れて去れり。此れ望む可くして即る可からざるの象、慕う所の事終に虚幻と成る、強求すれば益なし。

歸妹:東鄰西家,來即我謀。中告吉誠,使君安寧。

萃の卦が帰妹の卦に変わる。東隣と西舍の人、皆な來りて我と同じく商議謀劃す。中に居りて稟告する倶に誠実吉利の話にして、主君をして安寧无事せしめり。此れ衆の謀助を得るの象、広く忠言を納るる者は平安を保つ可し。

豐:褰衣出戶,心欲奔走。王孫毋驚,使我長生。

萃の卦が豊の卦に変わる。衣襟を提起して門戸を走り出れば、心の裏只だ腿を拔きて奔逃せんと想う。幸いに王孫我に驚慌する勿れと勧めて、反って我をして長久に保全を得しめり。此れ驚いて安を得るの象、変に臨みて能く鎮定する者は反って禍を免る可し。

旅:三日不飲,遠水無酒。晝夜焦喉,使我為咎。

萃の卦が旅の卦に変わる。三天水を喝らずして、水源を離れて又た遠く、更に酒なし。日夜喉嚨焦渇して、終に我に禍咎を招来せしめり。此れ渇乏して援なきの象、資用断絶して補給する處なく、久しく困れば必ず災厄を生ず。

巽:眾口銷金,愆言不驗。腐臭敗兔,入市不售。

萃の卦が巽の卦に変わる。《國語・周語》の説く所の「衆口鑠金」、衆人の口舌金属を熔化する能しと雖も、頭を過ぐる謡言終に應驗する能わず。腐臭敗壞の兎肉は、集市に拿りて去るも亦た肯えて買う人なし。此れ謡諑盛んなりと雖も假物行い難きの象、謗言畏る可しと雖も、実を守り自ら明らかにすれば便ち損なし。

兌:嫗冠應門,與伯爭言。東家失狗,意在不存。爭亂無怠,絕無所歡。

萃の卦が兌の卦に変わる。老婦冠帽を戴きて出でて門に應じて、伯氏と同じく争辯せり。東隣狗を丢了するに、彼女の心思却って全く此の上に在らず。争吵紛乱して肯えて罷休せずして、一点の歓楽もなし。此れ口角休まざるの象、家中和を失し、凡そ事擾攘して一の獲もなし。

渙:祚加明德,與我周國。公劉文母,福流子孫。

萃の卦が渙の卦に変わる。福祚明徳有るの人に加えられて、我に周室の邦を賜れり。公劉のごとき先祖、太姒のごとき文母有りて、福気子子孫孫に流傳せり。此れ徳厚く祚を承ぐるの象、祖徳深厚の者は後代必ず昌んなり。

節:針頭刺手,百病瘳愈。抑按捫灸,死人復起。

萃の卦が節の卦に変わる。針尖を以て手上の穴位に刺入せば、各種の疾病倶に痊癒せり。更に按摩推拿と艾灸を加えれば、垂死の人を連ねても新たに起身する能し。此れ良医廃を起すの象、疾病を問う者は症に対する治を得る可く、危轉じて安と為す可し。

中孚:元龜象齒,大賂為寶。稽疑當否,衰微復起。

萃の卦が中孚の卦に変わる。大きの龜甲と象牙は、是れ厚重の饋贈、貴重の宝物なり。《尚書・洪範》の説く所の「稽疑」の法を依りて卜問して当否すれば、衰微の勢新たに振起する可し。此れ疑を決して助を得るの象、疑に遇い而て卜に問えば、頽局復す可し。

小過:故室舊廬,消散無餘。不如新創,可以樂居。

萃の卦が小過の卦に変わる。旧日の房舍と老屋は、已に消散して一の余有りと為らず。倒れに別に新居を起せば不如く、以て安楽に住み下る可し。此れ旧を棄て新を圖るの象、殘を守り缺を抱くは別に規劃を作るに如かず、遷改すれば則ち吉なり。

既濟:老狐多態,行為蠱恠。為魅為妖,驚我王母。終無咎悔。

萃の卦が既済の卦に変わる。老狐狸變幻多端にして、行為怪異にして人を惑わす。神を装い鬼を弄して、魅を化して妖を成して、我が王母を驚嚇せり。然れど終に過錯悔恨なし。此れ妖異虚驚の象、看て怪駭するが如くして実に真の害なし、安心して処る可し。

未濟:愛子多材,起跡空虛。避害如神,水不能濡。

萃の卦が未済の卦に変わる。心愛の兒子才幹有ると雖も、是れ白手に家を起し、空虚の處より發跡せしなり。禍害を躲避すること神の助有るが如く、水を連ねても彼を沾湿す能わず。此れ才高く害を避くるの象、才有りて機を知る者は身を全うし禍を遠くして、終に興起を得ん。

升の林(升卦六十四林)

升:禹鑿龍門,通利水源。東注滄海,人民得安。

升の卦が自ら変じても升の卦のままである。大禹龍門を開凿して、水源を疏通して之を暢行せしむ。河水東流して滄海に注入して、百姓此れによって安居を得たり。此れ疏導成功の象、壅を除き滞を通ずる能くの者は大功を建てて衆人益を受く。

乾:白鹿鳴呦,呼其老少。喜彼茂草,樂我君子。

升の卦が乾の卦に変わる。白鹿呦呦として鳴叫して、同群の老幼を呼喚す。彼の茂密の青草を歓喜して、我が此の君子をも歓楽せり、正に《詩経・小雅・鹿鳴》の詠ずる賓を宴するの樂の如し。此れ同類相召の象、聚會、宴請、賢を招く倶に吉利なり。

坤:百里南行,雖微復明。去虞適秦,為穆國卿。

升の卦が坤の卦に変わる。百里奚南行して秦に入り、一度微賤に淪したりと雖も而して後重新に顯達せり。虞国を離れて秦国に投奔して、秦穆公の国の上卿を做れり。此れ暗を去りて明に投ずるの象、才を懐くる人門庭を改換すれば大用を望む可し。

屯:王孫宜家,張名益有。龍子善行,西得大壽。

升の卦が屯の卦に変わる。王孫家を成し室を立つるに宜しくて、名声を張揚して財貨日に增す。龍子遠行を善くして、西に行きて高寿を獲得せり。此れ業を立て名を揚ぐるの象、家を成し、遠行し、名を求むる倶に增益有り。

蒙:畫龍頭頸,文章不成。甘言善語,譎辭無名。

升の卦が蒙の卦に変わる。只だ龍の頭と頸を畫出して、整幅の紋彩終に畫成る能わず。甜言蜜語説きて動聽するも、詭詐の辞名声を成就する能わず。此れ始有りて終なき、虚言実なきの象、虚を務めて実を務めざる者は其の事を成すこと難し。

需:商子無良,相怨一方。引斗交爭,咎以自當。

升の卦が需の卦に変わる。経商の人善念を存せずして、一方に於て彼此怨を結べり。争鬪を招引して交相争奪して、禍咎只好く自ら承擔するのみ。此れ怨を構えて自ら招くの象、争鬪を興して狠なる者は自ら其の果を食む、宜しく和順退讓すべし。

訟:衰老困極,無齒不食。痔病痏瘵,就陰為室。

升の卦が訟の卦に変わる。衰朽年老して困頓極に到りて、牙歯掉光して物を吃る能わず。又た痔瘡、瘡傷と癆瘵を患えて、只だ陰處に挨りて身を安んずるのみ。此れ老病交侵の象、疾を問い寿を問う倶に利あらず、宜しく静養して労する勿れ。

師:鴛生會稽,稍巨能飛。翱翔桂林,為眾鳥雄。

升の卦が師の卦に変わる。鴛鳥會稽に生れて、身量漸く大きくなれば便ち飛翔する能し。桂林の上空に翱翔して、群鳥の中の雄杰と成れり。此れ漸く長じて雄と成るの象、出身微なりと雖も終に類を抜き萃を出ずる能し、宜しく序に循りて培養すべし。

比:安平不傾,載福長生,君子以寧。

升の卦が比の卦に変わる。安穩平正にして傾覆せずして、福気を承載して長久に生息を得て、君子此れによって安寧せり。此れ平を持し正を守るの象、家に居り、職に任じ、業を守る倶に平安にして虞なし。

小畜:牛驥同槽,郭氏以亡。國破為墟,君奔走逃。

升の卦が小畜の卦に変わる。耕牛と駿馬同一の食槽に在りて、賢愚分かたずして、郭氏の国此れによって滅亡せり。国土破敗して廢墟に淪して、国君只だ奔走逃亡せり。此れ賢愚混雑の象、人を用ゐるに辨えざれば則ち基業傾覆せん。

履:日中明德,兩國盛興。仁聖會遇,君受其福。臣多榮祿。

升の卦が履の卦に変わる。日正に中に当たりて徳行昭明にして、両国一同に興盛せり。仁厚聖明の人相會遇合して、君主此の福気を領受して、臣下も亦た多く榮顯俸禄を得たり。此れ明君賢に遇うの象、上下倶に榮して、仕を求め名を求むる倶に吉なり。

泰:公劉之居,太王所業。可以長生,拜受福爵。

升の卦が泰の卦に変わる。公劉の定居せし豳の地、太王古公亶父の開創せし岐山の基業なり。此に在りて長久に生息する可く、拜謝して福気と爵位を領受せり。此れ祖業を承けて安を得るの象、居処、業を立て、承襲する倶に吉なり。

否:時凋歲寂,君子疾病。宋女無辜,鄭受其殃。

升の卦が否の卦に変わる。時節凋敝、年歲蕭索にして、君子疾病に染上せり。宋国の女子本より罪過なくして、鄭国却って此れによって禍殃に遭受せり。此れ衰時に累を受くるの象、辜なくして連坐に遭えば、疾を問い事を問う倶に利あらず。

同人:濟河踰厄,脫母怵惕。四序為衛,使惠不廢。

升の卦が同人の卦に変わる。大河を渡り険厄を越えて、母親をして驚懼を脱出せしむ。四时の次序之が為に護衛して、恩惠中廃に至らず。此れ険を渉りて全うを得るの象、難を救い親を護る者は終に庇佑を受けて、恩沢断えず。

大有:缺破不完,殘際側偏。公孫幽遏,跛倚後門。

升の卦が大有の卦に変わる。器物殘缺破損して完整ならずして、邊角殘破して歪斜偏側なり。公孫氏幽禁阻遏せられて、只だ脚を跛りて後門に倚れるのみ。此れ殘缺して勢を失うの象、身偏側に処りて伸展を得ず、宜しく分を守りて争う勿れ。

謙:延頸遠望,昧為目病。不見叔姬,使伯心憂。

升の卦が謙の卦に変わる。脖子を伸長して遠處に眺望すれば、望みて昏花して眼病と成れり。始終叔姬の身影を見ずして、伯氏をして憂愁を満心せしめり。此れ望みて見えざるの象、待つ所の人來らず、行人を問い音信を問う倶に遲滯を主とす。

豫:上無飛鳥,下無走獸。擾亂未清,民勞於事。

升の卦が豫の卦に変わる。天上飛鳥なく、地上走獣なし。擾乱未だ肅清せざるに、百姓差事の為に労苦せり。此れ荒殘未だ定まらざるの象、世局動蕩、民力凋敝にして、大事を興挙するに宜しからず。

隨:久陰霖雨,塗行泥潦。民人休止,市空無有。

升の卦が随の卦に変わる。長久陰霾して霪雨連綿して、路上行走するに尽く泥濘積水なり。百姓活計を停下して、集市空空として貨物なし。此れ雨阻みて業を停むるの象、出行と買売倶に停滞に陷れり、宜しく天晴を待ちて再び動くべし。

蠱:盲者目張,跛倚起行。瞻望日月,與主相迎。

升の卦が蠱の卦に変わる。瞎子の眼睛新たに開きて、跛子物を扶けても亦た起身行走する能し。頭を擡げて日月の光明を瞻望して、前に往きて主上と相迎えり。此れ廢疾復を得るの象、久しく困る人は復明して起行を望む可く、貴に逢いて遇合を得ん。

臨:據斗運樞,順天無憂。與樂並居,萬代歡慶。

升の卦が臨の卦に変わる。北斗を依據として樞機を運轉して、天道に順應すれば便ち憂患なし。歓楽と一處に同処して、萬代倶に喜慶有り。此れ天に順いて安を得るの象、時に依りて動く者は長く福樂を享く。

觀:稼穡不偏,重適不傾。巧言賊忠,傷我申生。

升の卦が観の卦に変わる。耕種収穫倶に偏廢せずして、重を負うこと当を得れば便ち傾覆せず。可なりしも巧言讒語忠良を殘害して、晋国の太子申生を害死せしめり。此れ忠にして謗を被るの象、縦い事を行うに中を得ると雖も、仍お須らく讒口の身を傷るを防ぐべし。

噬嗑:金城鐵郭,上下同力。政平民歡,寇不敢賊。

升の卦が噬嗑の卦に変わる。城牆金の如く外郭鐵の如くして、上下斉心して力を合す。政令公平にして百姓歓悦して、盗寇敢えて前に來りて侵害せず。此れ固く守りて安を得るの象、内和せば則ち外侮侵せず、守御と事を治むる倶に吉なり。

賁:日鏡不明,冬災大傷。盜花失實,十年消亡。

升の卦が賁の卦に変わる。太陽鏡子の如くして昏暗不明にして、冬天の災害大きの損傷を造成せり。花偷去せられ果実落空して、十年の間消耗殆盡せり。此れ長期損耗の象、華にして実ならざる者は終に敗亡に帰す、宜しく本を務め実を固くすべし。

剝:鰥寡孤獨,命祿苦薄。入室無妻,武子悲哀。

升の卦が剥の卦に変わる。鰥夫、寡婦、孤兒、獨老は、命数と禄分倶に苦薄なり。屋子に進み入るも妻子相伴するなくして、武子此れによって悲哀せり。此れ孤苦無依の象、婚姻を問い家室を問う倶に利あらず。

復:飲酒醉飽,跳起爭鬥。伯傷叔僵,東家治喪。

升の卦が復の卦に変わる。酒を飲んで大いに醉い飽足するに到りて、跳び起きて打鬪を動かせり。伯氏傷を受け叔氏僵仆して地に倒れ、東隣の人家是れに於て喪事を办起せり。此れ醉後に禍を生ずるの象、宴飲度を失えば必ず凶事を釀す、宜しく節制して自ら持すべし。

旡妄:介召微子,使君不殆。二國合歡,燕齊以安。

升の卦が旡妄の卦に変わる。間に居りて引介して、微子のごとき賢人を召請して、国君をして危殆に陷らざらしむ。両国歓好を結為して、燕、斉此れによって安定せり。此れ賢を薦め邦を和ぐの象、人を得て中より斡旋せば便ち険を化して安と為す可し。

大畜:牽頸繫尾,詘折幾死。雕世無仁,不知所比。

升の卦が大畜の卦に変わる。脖子牽住せられ尾巴繫緊せられて、屈曲折磨して幾に命を喪わんとせり。澆薄の世道仁徳なくして、誰に親附すべきかを知らず。此れ困を受けて依なきの象、世風古ならずして身拘系に遭えば、宜しく隱忍して以て時の変を待つべし。

頤:東龍究毒,不知所觸。南北困窮,王子危急。

升の卦が頤の卦に変わる。東方の龍毒を発し尽くして、却って何を触犯せしを知らず。南北両頭倶に困窮に陷入して、王子处境危急なり。此れ四面受困の象、禍何の処より來るかを知らず、唯だ宜しく謹慎して身を防ぐべし。

大過:疾貧王孫,北極無輝。祿命苦薄,兩守孤門。

升の卦が大過の卦に変わる。王孫貧病に苦しみて、北極星の光輝を失せるが如し。禄分と命数倶に苦薄にして、両個人一扇の孤零零たる門を守れり。此れ貴にして勢を失うの象、福禄以て継ぐべきなく、宜しく貧に安んじ自ら守るべし。

坎:公孫駕驪,載遊東齊。延陵故產,遺季紵衣。

升の卦が坎の卦に変わる。公孫黑色の駿馬を駕して、人を載せて東に斉国に游せり。延陵季子故郷の物産を把きて、子産に紵麻の縫製する衣裳を贈りしは、正に是れ《左伝》の記する所の呉季札の贈答の事なり。此れ出游して贈答するの象、遠行して友を交わる者は礼を以て相結びて、深厚の情誼を得る可し。

離:王良善御,伯樂知馬。文王東獵,獲嘉賢士。開福佑周,發且興起。

升の卦が離の卦に変わる。王良車を駕すること善く、伯楽馬を相するに善し。周文王東に出でて獵して、呂尚のごとき賢良の士を得着せり。此れより福運を開啓して周室を庇佑して、事業勃然として興起せり。此れ賢を得て邦を興すの象、才を求め、賢を訪ね、出行する倶に大吉なり。

咸:日月不居,重耳趨舍。遊燕入秦,晉國是霸。

升の卦が咸の卦に変わる。日月肯えて停留せずして、重耳各處の館舍に奔走せり。先に燕地を游し後に秦国に入りて、終に晋国をして諸侯に称霸せしめり。此れ流亡して而して後に興るの象、久しく艱難を歴る者は終に大業を成さん。

恆:假文翰翼,隨風背北。至虞夏國,與舜相得。年歲大樂,邑無盜賊。

升の卦が恒の卦に変わる。華美の羽翼を借りて、風に順いて北を背いて飛び去れり。虞、夏の邦に到りて、虞舜と情意相合せり。年歲大いに歓楽して、城邑の中盗賊なし。此れ明主に遇いて志を得るの象、遷徙して投奔する者は安樂を得て、境内太平せん。

遯:南行北走,延頸望食。舉口失利,累我子孫。

升の卦が遯の卦に変わる。一會兒南に行き一會兒北に走りて、脖子を伸長して吃食を盼望す。一たび口を開けば便ち利益を失して、還た我が子孫に連累せり。此れ奔波無獲の象、妄言妄動の者は不但ただ徒労、還た後人に患を貽さん。

大壯:開市作喜,建造利事。平準貨寶,海內殷富。

升の卦が大壮の卦に変わる。集市を開設して喜事と成りて、興建營造事業に利有り。漢時の平準の法を以て貨物宝贝の価格を調平すれば、海内因って殷實富足せり。此れ商を興して富を致すの象、開業、營建、貿易倶に吉利なり。

晉:三犬俱走,斗於谷口。白者不勝,死於坂下。

升の卦が晋の卦に変わる。三條の狗一斉に奔跑して、谷口に於て厮鬪せり。白色の彼隻未だ勝を取らずして、山坡の下に死せり。此れ争鬪して傷を致すの象、力弱き者は人と相争えば必ず敗る、宜しく避讓して争わざるべし。

明夷:驕滷火形,造惡作凶。無所能成,還自滅身。

升の卦が明夷の卦に変わる。驕横粗魯、性情火の如くして、惡事を造作し凶を興風せり。結果何も亦た成就する能わずして、反って自身を毀滅せり。此れ暴を逞して自ら敗るの象、強を恃みて惡を行う者は終に自ら滅亡を取らん。

家人:拜跪讚辭,無益於尤。大夫頑嚚,使我心憂。

升の卦が家人の卦に変わる。下拜跪求して好話を説き尽くすも、已に成るの過咎に於て毫も補益なし。大夫頑劣愚妄にして、我をして憂愁を満心せしめり。此れ求告して門なきの象、頑固の人に遇上せば則ち辯解用なし、宜しく別に出路を謀るべし。

睽:辰次降婁,王嘉巡狩。廣佑施惠,萬國咸喜。子孫榮品,長安不殆。

升の卦が睽の卦に変わる。歲星の次舍降婁の位に行きて、君王欣然として天下を巡行せり。庇佑と恩惠を広施して、万邦倶に之が為に歓喜せり。子孫榮顯にして品位有りて、長久安寧にして危殆なし。此れ徳沢広く被るの象、出巡、惠を施し、業を承ぐる倶に大吉なり。

蹇:牽瑜上樓,與福俱遊。勞躬治國,安樂無憂。

升の卦が蹇の卦に変わる。美玉を牽携して高樓に登上して、福気と同じく游賞せり。親しく操労して国家を治理して、安樂にして憂患なし。此れ宝を持して高きに居るの象、事に任ずるを勤むる者は身安んじて福随わん。

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