噬嗑の林(噬嗑卦六十四林)
中孚 璚英朱草,仁政得道。鳧鷖在渚,福祿來下。
瓊玉の英と朱草のごとき瑞物出現す、仁政大道に合するの應驗なり。野鴨と鷗鳥と水中の小洲の上に棲し、福祿隨い之降下す。此の林《詩・鳧鹥》の義を取る。福を求むるを占問うに、徳至りて福來るを主とす。
小過 陳蔡之厄,從者飢瘦。明德上通,憂不為凶。
孔子陳・蔡の間に困せられ、隨行の弟子餓えて消瘦す。然るに光明の徳行天に上達し、憂患終に凶險を釀成せず。此の林困厄其の徳を損わざるを主とす。困境を占問うに、終に脫出する能くするを主とす。
既濟 春桃生花,季女宜家。受福多年,男為邦君。
春天桃樹開花し、少女正に出嫁成家するに宜し。此の後多年福澤を承受し、生む所の男兒還て一方の國君と做る。此の林《詩・桃夭》の義を取る。婚姻子嗣を占問うに、大吉して後福顯達するを主とす。
未濟 徑邪賊田,政惡傷民。夫婦咒詛,太山覆顛。
歪斜の小路田地を侵占し、政令苛惡にして百姓を傷害す。夫妻すらも暗中咒罵詛咒し、泰山もまた傾覆坍塌せんとするがごとし。此の林苛政民心を失うを主とす。國事時局を占問うに、民怨沸騰して傾覆を致すを主とす。
賁の林(賁卦六十四林)
賁 仁政不暴,鳳凰來舍。四時順節,民安其居。
仁政を推行して暴虐を施さざれば、鳳凰便ち飛來して棲息す。春夏秋冬各々節令に依りて運轉し、百姓安穩として自己の家園に住す。《尚書・益稷》に「簫韶九成、鳳凰來儀」と記す、正に徳有る君の祥禽を感召するの意なり。此の林上下和洽し、家國安寧するを主とし、事を謀れば吉を得。
乾 八口九頭,長舌破家。帝辛沈湎,商滅其墟。
怪物八張の嘴・九個の頭を生出し、長舌是非を搬弄し、家業これによって敗壞す。商紂王帝辛酒色に沉溺し讒言を聽信し、終に國亡び、都城化して廢墟と爲るを致す。此の林怪形を以て衆口交讒に喩へ、占問うに口舌禍を招き、家國傾覆するを主とす、凶。
坤 鬼守我門,呼伯入山。去其室家,舍其兆墓。
鬼魅門口に守住し、家中の長兄を招呼して山に入らしむ。人迫られて屋舍田宅を離れ、祖先の墳地すらも丟下して顧みず。古人墓域を「兆」と稱す、祖墳を棄つるは流亡の極に到るなり。此の林遷徙離散し、所を失いて歸無きを主とす。家宅と出行とを占うに皆凶。
屯 日出阜東,山蔽其明。章甫薦履,箕子佯狂。剝之泰)
太陽東邊の土山より升起すれど、卻って高山に光明を遮住せらる。「章甫」の禮冠を脚下に墊きて鞋と爲す、貴賤倒置す。箕子紂王の無道を眼見して、只だ狂を裝りて禍を避くるを得、《史記・宋微子世家》に其の囚われて佯狂して奴と爲るを載す。此の林賢者蔽を受け、尊卑序を失うを主とし、韬晦して自ら守るに宜し。同辭また「剥の泰」に見ゆ。
蒙 戴盆望天,不見星辰。顧小失大,福逃牆外。
頭上盆子を頂きて天空を仰望す、一顆の星辰も見えず。只だ眼前の小利を顧みて、反つて大處を丢了、福氣牆外より溜走す。司馬遷《報任安書》に「盆を戴きて何以天を望まん」と有り、二事兼ね得る能わざるを喩う。此の林見識蔽を受け、小に因りて大を失うを主とし、占問うに利ならず。
需 兩輪日轉,南上大阪。四馬共轅,無有重難。與語笑言。
車子兩輪整日轉動し、南に向かいて高大の坡坂に翻上す。四匹馬同じく一轅を拉し、再び重き負擔も艱難を覺えず、一路談笑して行く。此の林同心協力の象を取り、人多く助け行程順遂するを主とし、出行・合伙・財を求むるを占うに皆吉。
訟 羊驚狼虎,聳耳群聚。行旅稽難,留連愁苦。
羊群狼虎の驚嚇する所と爲り、耳朵を竪起して一團に擠作す。門を出でて外に在る人處處阻留難を受け、他鄉に滯留し、憂愁困苦す。此の林弱畜の猛獸に遇うを以て處境險迫に喩へ、行旅と訴訟とを占問うに多く阻滯有り、凶を主とす。
師 楩生荊山,命制輸班。袍衣剝脫,夏熱冬寒。飢餓枯槁,眾人莫憐。
楩木荆山の中に生す、下令せられて公輸班に交へ砍伐して器を制さしむ。樹皮衣袍のごとく剥去せられ、夏日暴曬し冬日凍を受け、枯槁憔悴して憐惜する人無し。公輸班卽ち魯班なり、最も大木を役使するに善し。此の林良材の戕に遭うを借りて賢者の役せられて苦を受くるに喩へ、占問うに勞役損傷を主とす、凶。
比 鳥飛無翼,兔走折足。不常其德,自為羞辱。
鳥飛ばんと欲するも翅膀無く、兔跑らんと欲するも腿を折斷す。徳行常のごとく一に守る能わざれば、只だ自ら羞辱を取るを得。《論語・子路》に「其の徳を恒にせざれば、或いは之に羞を承けん」と引く、語本《易・恒》の九三爻辭なり。此の林力心に從わず、反覆して成るなきを主とす、占問うに吉ならず。
小畜 條風制氣,萬物出生。明庶長養,花葉壯茂。
東北方の「條風」節氣を調理し、萬物隨い之萌生す。東方の「明庶風」生長を滋養し、花葉因りて壯盛繁茂す。八風の名《淮南子・天文訓》に見ゆ。此の林時序宜を得、生機勃發するを主とし、生養と事業の起步とを占問うに皆吉。
履 坤厚地德,萬物蕃息。平康正直,以綏大福。
大地厚德承載し、萬物其の上に繁衍生息す。人と爲り平和安順・正直にして邪ならず、因りて大福を招來す。「平康正直」は《尚書・洪範》の三德の說に出づ。此の林厚德物を載せ、福禄を安享するを主とし、家宅と子嗣とを占問うに皆吉。
泰 昴畢附耳,將軍乘怒。路徑隔塞,燕雀驚駭。
昴宿・畢宿と附耳星と相い犯す、天象已に兵事を示す。將軍怒に乘じて師を興し、道路阻絕して通ぜず、燕雀すらも驚飛四散す。附耳讒言と邊兵とを主とす、《史記・天官書》に見ゆ。此の林兵戈驟に起り、行路阻を受くるを主とす、出行を占問うに凶。
否 東風啟戶,黔啄翻舞。各樂其類,咸得生處。
東風門戸を吹開し、黑喙の鳥兒翻飛起舞す。各類の生靈同類と相い歡し、皆安身の地を找到す。此の林春氣發動し群生所を得るの象を取り、各々其の位に安んじ和樂して相い親しむを主とし、居處と交友とを占問うに皆吉。
同人 兩足四翼,飛入家國。寧我伯姊,與母相得。
兩足四翅を生じし異禽家門と邦國とに飛進す。它我が長姐を安撫し、彼女をして母親と重ねて融洽に歸らしむ。此の林祥鳥宅に入るを以て吉兆と爲し、親族和睦し久しく隔たりて重ねて合するを主とし、家事と婚姻とを占問うに皆吉。
大有 歲暮花落,陽入陰室。萬物伏匿,歲不可得。
一年將に盡きんとし、花朵凋落し、陽氣幽暗の室に退入す。萬物潜藏隱伏し、此の一年の收成再び指望する能わず。此の林冬閉の象を取り、時機已に過ぎ、求む所落空するを主とし、財を求め事を謀るを占問うに皆利ならず、靜守して來春を待つに宜し。
謙 釋然遠咎,避患高阜。田獲三狐,以貝為寶。君子所在,安寧不殆。
心中釋然として災咎に遠ざかり、高地に登上して禍患を躲開す。田獵して三隻の狐狸を捕得し、また寶貨と作る貝幣を得。「田に三狐を獲」は本《易・解》の九二爻辭なり。此の林險を避けて利を得、身安くして危なきを主とし、出行と財を求むるとを占問うに皆吉。
豫 遷延卻縮,不見頭目,日以困急。
一味拖延退縮し、事情の頭緒すらも理出す能わず、處境一天天窘迫危急す。此の林猶豫して機を失い、進退據なきを主とし、事を謀るを占問うに成らず、速かに斷ずるに宜しく再び拖るに宜しからず。
隨 秋隼冬翔,數被嚴霜。雄犬夜鳴,家擾不寧。
隼鳥秋冬に到りて仍ほ空中に盤旋し、屢々嚴霜の侵する所と爲る。公狗夜裏狂吠し、家中騷擾して安寧を得ず。此の林時を失しし禽・夜を警す犬を以て象と爲し、外に寒苦有り內に驚擾有るを主とし、家宅を占問うに安んぜず。
蠱 班馬還師,以息勞疲。役夫嘉喜,入室見妻。
軍馬師を班にして朝に回り、疲憊の士卒をして休息を得せしむ。服役の人歡歡喜喜として、家中に回到して妻子に見着く。「班馬」卽ち師を回らす馬にして、語《左傳》に見ゆ。此の林勞役告終し、久別重逢するを主とし、家に歸ると久事の成を得とを占問うに皆吉。
臨 老楊日衰,條多枯枝。爵級不進,遂至摧隤。
老楊樹一天天衰敗し、枝條多半已に枯死す。官爵品級升遷を得ず、終に頹敗傾倒す。《易・大過》は枯楊を以て衰老將に盡きんとするに喩う。此の林氣數已に衰え、仕途進まざるを主とし、功名と疾病とを占問うに皆凶。
觀 順風吹火,牽騎驥尾。易為功力,因懼受福。
風勢に順いて火を吹き、駿馬の尾に攀附して路を趕り、力を用ゐること少なくして成功易し。心存して戒懼し敢えて自恃せざるに因り、反つて福澤を承受す。「驥尾に附」の喩《史記・伯夷列傳》に見ゆ。此の林勢を借りて事を成し、謙懼して福を得るを主とし、進を求むるを占問うに吉有り。
噬嗑 六人俱行,各遺其囊。黃鵠失珠,無以為明。
六個の人一同に路上し、各々行囊を丟失す。黄鵠口中の明珠を失し、再び前路を照亮する光なし。此の林同行して守を失い、恃む所盡く失うを主とし、出行と財を求むるとを占問うに皆亡失を主とす、凶。
剝 依叔牆隅,志下心勞。楚王晨食,韓子低頭。
叔父家の牆角に依傍して棲身し、志氣低落して心神勞苦す。楚王安然として早膳を享用し、韓國の臣只だ俯首侍立するを得、强弱の勢判然として見る可し。此の林人の籬下に寄るを以て象と爲し、下位に屈居し勞して伸ばざるを主とし、干謁して人を求むるを占問うに多く屈抑を受く。
復 三年生狗,以戌為母。荊夷上侵,姬伯出走。坤之震,需之訟,否之姤)
三年養いし狗、「戌」を以て母と認む、十二支の中戌本犬に配す。南方荆楚の夷北に侵逼し、姬姓の諸侯只だ國を棄てて出走するを得。此の林外患內迫し、位を失いて遠遁するを主とし、土を守ると官に居るとを占問うに皆凶。同辭また「坤の震」「需の訟」「否の姤」に見ゆ。
旡妄 鶴盜我珠,逃於東都。鵠起追求,郭氏之墟。不見蹤跡,反為禍災。
鶴我が明珠を銜走して、東都に逃往す。鵠鳥身を起して追討し、一直に郭氏の廢墟に追到す。蹤跡全無く、反つて災禍を惹上す。郭氏の墟《管子》に見ゆ、善を善して用ゐる能わず以て國を亡ばすの舊地なり。此の林物を失いて尋ね難く、追討して殃を招くを主とし、失脫と爭訟とを占問うに皆凶。
大畜 外與中退,舉事不遂。餔麋毀齒,失其道理。
外面の應接と裏面の支撐と一齊に後退し、辦事因りて成就する能わず。粥糜を吃するは本來牙を省くの事なるに、反つて牙齒を弄壞し、做法全く道理を失了。此の林內外援無く、擧措方に乖るを主とし、事を謀るを占問うに成らず。
頤 鴻鵠高飛,鳴求其雌。雌來在戶,雄哺嘻嘻。甚獨勞苦,炮鱉膾鯉。
鴻鵠長空を高飛し、鳴叫して配偶を尋求す。雌鳥門前に來到し、雄鳥歡歡喜喜として食を銜みて彼女に喂す。獨り十分勞苦すると雖も、終に鼈を炮き鯉を切して佳肴を享用する能くす。此の林偶を求めて應を得、辛勤して報有るを主とし、婚姻と財を求むるとを占問うに皆吉。
大過 褰衣涉河,水深漬衣。幸賴舟子,濟脫無他。觀之渙,剝之賁)
衣裳を提起して徒步して河を過ぐるも、水太だ深く、衣裳全く浸濕せらる。幸いに船夫の相渡するに遇上して、纔に平安して險を脫し、別の禍事なし。此の林險を涉りて救に遇い、驚有りて險なきを主とし、出行と危難とを占問うに人の相助けを得れば則ち吉。同辭また「觀の渙」「剥の賁」に見ゆ。
坎 虎齧龍指,泰山之崖。天命不佑,不見其雌。
老虎泰山の崖畔に龍爪を啃咬す。天命庇佑を加えず、雌者始終曾て相見ず。此の林龍虎の相い搏つを以て强敵の交爭に喩へ、孤立して助無く、求む所遇わざるを主とし、婚姻と事を謀るとを占問うに皆凶。
離 明不處暗,智不履危。終年卒歲,樂以笑歌。
明白の人暗處に待つを肯んぜず、智慧有る人險地に踏上するを去らず。此のごとく一年到頭、皆歡笑歌唱して日を度る能くす。此の林機を見て害に遠ざかり、平安して歲を終るを主とし、身家安泰を占問うに、吉。
咸 三足俱行,傾危善僵。六指不便,慁累弟兄。樹柱閡車,失其正當。車一作居)
三隻の脚一齊に路を走り、重心偏倚して跌倒し易し。手上指を多生すれば反つて不便にして、還て兄弟を連累す。柱子を竪起して車道を擋し、處置全く正當を失う。此の林形體正ならず、行事礙難するを主とし、出行と合作とを占問うに多く滯礙有り。「車」一本「居」と作る。
恆 含車而徒,亡其駁牛。雖喪白頭,酒以療憂。
車子を舍てて步行す、あの雜色の牛すらも丢了。老に託する憑借を失了と雖も、還て酒を借りて憂愁を消解する能くす。此の林車畜俱に失い、損耗免れ難きを主とし、憂暫く紓る可し、財を求むるを占問うに利ならずして身大害なし。
遯 析薪熾酒,使媒求婦。和合齊宋,姜子悅喜。
柴を劈き酒を溫めて禮席を備下し、媒人を派して前去して親を求めしむ。齊國と宋國と婚好を結成し、姜姓の女子歡喜して出嫁す。《詩經》屢々「薪を析」を以て婚姻の事に喩う。此の林媒妁成を得、兩姓和合するを主とし、婚嫁を占問うに大吉。
大壯 夜視無明,不離商賈。子反笑歡,與市為仇。
夜裏物を視れば亮光を見ず、然れど仍ほ經商賣買を舍下げ能わず。子反只だ飲酒歡笑を顧みて、反つて市井と怨仇を結下す。《左傳》楚將子反酒を嗜みて國を誤るを載す。此の林時勢に昧く、利を逐いて怨を招くを主とし、經商を占問うに利ならず。
晉 徒行離車,□厭泥塗,利以休居。
車子を舍てて徒步して行き、深深此の一路の泥濘を厭惡す。眼下停下して歇息安居するに宜し。此の林行程阻を受け、勉强して前進すべからざるを主とし、出行を占問うに利ならず、靜を守れば則ち安し。
明夷 作室山根,人以為安。一夕崩巔,破我□飧。
山脚下に屋を造れば、人人皆以て穩當と爲す。不料一夜の間山頂崩塌し、一頓の飯すらも吃成せず。此の林險地に安處し、禍測らざるに生ずるを主とし、居宅と營造とを占問うに皆凶、早く遷避するに宜し。
家人 東山西山,各自言安。雖相登望,竟未同堂。
東邊一座の山、西邊一座の山、各々皆自家安穩と說す。高に登りて相互に眺望する能くすると雖も、終に一堂に同處する能わず。此の林兩地分居し、親しくして合せざるを主とし、合伙と團聚とを占問うに成り難し。
睽 君子在朝,凶言消去。驚駭逐狼,不見雄英。
君子朝堂に立てば、惡言凶語自然に消散す。衆人驚駭の下惡狼を驅趕するも、卻って眞正の英傑の出面を見ず。此の林正人位に當たれば則ち邪祟自ら退くを主とすれど、事に臨みて才に乏し、朝局を占問うに安んずる可し然れど人を用ゐるに闕有り。
蹇 □慎慎,一作□墳墳)火燒山根。不潤我鄰,獨不蒙恩。
火勢隱隱騰騰として、一直に山脚下に燒到す。此の場の火並びに我が鄰里を潤澤せず、唯だ我が一家恩惠を得ず。此の林災己身に及び、恩澤均しからざるを主とし、恩を求め助を借るを占問うに皆得る所なし。「愼愼」一本「墳墳」と作る。
解 南山之蹊,真人所遊。德配唐虞,天命為子。保佑歆享,身受大慶。復之比,否之豫)
南山の小徑、道を得たる眞人の往來の處なり。其の徳唐堯虞舜と相配する可く、天命を受けて天子と爲る。神明保佑して祭祀を歆享し、自身大福慶を承受す。此の林徳高くして位尊く、福祿綿長を主とし、功名と福を求むるとを占問うに大吉。同辭また「復の比」「否の豫」に見ゆ。
損 龍蛇所聚,大小來處。泱泱霈霈,淡淡磕磕。使我無賴。
龍蛇聚集の地、大小の物皆來りて棲止す。水勢浩蕩して雨聲滂沱し、波光蕩漾して石聲磕碰し、我をして依託する所無からしむ。此の林環境雜亂し、群邪幷び至るを主とし、居處を占問うに安んぜず、心主とする所なし。
益 旃裘若闔,慕德獻服。邊鄙不悚,以安王國。
氈裘を穿つ外族門を關し戸に歸るがごとく紛紛として來附し、徳化を仰慕して貢服を獻上す。邊地再び驚恐せず、王朝これによって安定す。此の林遠人心を歸し、邊境警なきを主とし、國事と遠行とを占問うに皆吉。
夬 光體春成,陳倉雞鳴。陽明失道,不能自守。消亡為咎。大有之井)
光華の體春日に生成し、陳倉の寶鷄夜半啼鳴す。《史記・封禪書》秦文公の陳寶を得るを載す、鷄鳴祥と爲す。然るに陽明の氣其の常道を失い、自ら守る能わず、終に消亡して災咎と成るに至る。此の林始め盛んにして終に衰え、吉兆保ち難きを主とし、成を守るを占問うに利ならず。同辭また「大有の井」に見ゆ。
姤 下泉苞稂,十年無王。荀伯遇時,憂念周京。無一作九蠱之歸妹)
低窪處の泉水成叢の莠草を浸壞し、十年の間王者出でて事を主する無し。《詩經・曹風・下泉》正に周室の衰微を傷む、荀伯時に適逢し、日夜周室京師を憂念す。此の林王綱振わず、忠臣獨り憂うるを主とし、時局を占問うに艱難にして心志嘉むべし。「無」一本「九」と作る、同辭また「蠱の歸妹」に見ゆ。
萃 仁德不暴,五精就舍。四序允釐,民安其居。
仁徳を施行して暴虐を用ゐざれば、五方精氣皆來りて歸依す。四時次序治理を得、百姓安居樂業す。此の林「賁の賁」と意同じ、徳政感召し時和して歲稔るを主とし、家國を占問うに皆吉。
升 隋和重寶,眾所貪有。相如睨柱,趙王危殆。
隋侯の珠と和氏の璧とは絕世の重寶にして、人人皆己が有と據せんと想う。藺相如怒視して庭柱を睨み身を以て璧を護れば、趙王の處境其の實已に十分危險なり。事《史記・廉頗藺相如列傳》に見ゆ。此の林璧を懷きて其の罪と爲り、寶に因りて危を致すを主とし、財を守るを占問うに慎むに宜し。
困 鳳生五雛,長於南郭。君子康寧,悅樂身榮。
鳳凰五隻の雛鳥を生下し、南面の城郭に養育す。君子これによって安康寧泰にして、歡悦快樂して身榮顯に居る。此の林鳳の五雛を育るを以て子孫衆多、門第昌盛に喩へ、子嗣と家運とを占問うに皆吉。
井 二人為旅,俱歸北海。入門上堂,拜謁王母。勞賜我酒,女功不喜。
兩人伴を結びて遠行し、一同に北海に回る。門に進み堂に登り、王母を拜見し、彼女の慰勞して酒を賜うを蒙る。只だ女子の紡織の功着落無く、喜と爲すに足らず。此の林行旅して貴人に遇うを主とし、然れど內事成らず、出行を占問うに吉、婦功平平なり。
革 逐憂除殃,洿泥生粱,下田為王。
憂愁を驅走し災殃を除去し、污泥の裏すらも好糧を長出し、低窪田反つて第一等の好田と成る。此の林否極まりて泰來り、賤地貴を生ずるを主とし、禍を轉じて福と爲すを占問うに、田産と農事と皆吉。
鼎 東門之墠,茹藘在阪。禮義不行,與我心反。
東門外の平坦祭場、茜草坡上に長す。《詩經・鄭風・東門之墠》本來男女の相思を詠んで禮防行はれず、如今禮義廢弛し、我が心意と全然相い違す。此の林情禮相い乖るを主とし、願う所諧わざるを占問うに、婚姻多く阻隔有り。
震 鳧遇稻蘆,甘樂□,雖驅不去。
野鴨稻田と蘆蕩とに遇上し、甘美して自ら其の樂を得、人の怎樣驅趕するを任せども離るるを肯んぜず。此の林其の安んずる所を得、戀いて返るを忘るるを主とし、居處を占問うに安穩なり、亦た貪戀して移らざるの虞有り。
艮 清人高子,久屯外野。逍遙不歸,思我君母。公子謁請,王孫嘉許。
清邑の將士と主帥高克、長久城外の曠野に屯駐す。彼ら河上に逍遥して師を回らすを肯んぜず、心裏國君と母親とを思念す、《詩經・鄭風・清人》正に此の事を詠む。後來公子出面して命を請い、王孫之に嘉許を予以す。此の林久しく外に役して終に召還を得るを主とし、遠行して軍に從うを占問うに先に困にして後に通ず。
漸 讒□所言,語不成全。虎狼之患,不為我殘。
讒人の說く所の話支離破碎して、前後理を成す能わず。縱ほ虎狼のごとき禍患有ると雖も、我に傷害到らず。此の林讒言自ら破り、身害を免るるを主とし、占問うに是非に纏はるると雖も終に咎無きを得。
歸妹 張羅捕鳩,鳥麗其災。雌雄俱得,為網所賊。剝之歸妹)
羅網を張開して斑鳩を捕捉す、鳥兒正に此の場の災禍に落進す。雌雄一齊に擒せられ、皆羅網の殘害に遭う。此の林羅網に陷入し、夫婦同じく其の難を罹るを主とし、出行と事を謀るとを占問うに皆凶。同辭また「剥の歸妹」に見ゆ。
豐 安仁尚德,東鄰慕義,來安吾國。
仁厚に安んじ徳行を崇尚し、東邊の鄰邦此の道義を仰慕し、前來して我が國家をして安寧を得せしむ。此の林徳鄰邦を感じ、敵を化して友と爲すを主とし、外交と人事の和合とを占問うに皆吉。
旅 猾丑假誠,前後相違。言如鱉咳,語不可知。
奸猾醜惡の人誠懇を假裝し、前言と後語と自相違背す。彼說話すること鼈の咳嗽するに同じく、含糊して聽明白ならず。此の林小人詐を飾り、言信に足らざるを主とし、交易と合謀とを占問うに欺誑を防ぐに宜し。
