乾の林(乾卦六十四林)
訟之損:爭訟不已,更相擊劍。張季弱口,被髮北走。
訟の卦が損の卦に変わる。爭執訴訟盡くることなく、雙方竟に至りて相互に劍を拔き相擊す。張季口才拙弱にして人に説き過ぐる能わず、只だ頭髮を披散して北に逃走す。損とは減損で、爭訟愈久しければ則ち損する所愈多し。占うに官非纏まり、辯して人に過ぐる能わずして挫を受く。凶。
訟之益:延頸望酒,不入我口。初喜後否,得利無有。
訟の卦が益の卦に変わる。頸を伸ばして酒を飲まんことを盼ぐも、酒卻って我が口に入らず。起初歡喜して後來落空し、利を得ると説きて其の實一の獲る所なし。益本來增益を主とするも、望むべくして得る可からざれば益反つて空と成る。占うに期望落空し、名有りて實なし。凶。
訟之夬:被髮傾走,寇逐我後。亡失刀兵,身全不傷。
訟の卦が夬の卦に変わる。頭髮を披散して倉皇として奔逃し、寇賊後ろに緊追して捨てず。刀劍兵器を丢すと雖も、身體卻って保全するを得て傷を受けず。夬は決斷して捨棄するを主とし、物を棄てて身を存るは正に決斷に善し。占うに財を破りて災を免れ、驚ありて險なし。先に凶後に安し。
訟之姤:麒鳳所遊,安樂無憂。君子撫民,世代千秋。
訟の卦が姤の卦に変わる。麒麟と鳳凰と遊息する所、安寧快樂にして憂愁なし。君子百姓を撫育し、世代傳承して千秋萬年。麒麟鳳凰同じく至るは、古人之を以て聖王の瑞と爲す。姤は期せずして遇う。徳行至れば祥瑞自ら遇う。占うに政善く民安し、家世綿長なり。大吉。
訟之萃:褰衣涉河,水深漬疲。賴幸舟子,濟脫無他。
訟の卦が萃の卦に変わる。衣裳を撩起し水を涉りて河を過ぐるも、水深く身を浸して疲憊堪えず。幸いに船夫の相助に遇い、渡りて險を脫するを得て別の意外なし。萃は聚合で、衆力相聚れば險難濟るべし。占うに危中に救を得、凶に逢いて吉に化す。吉。
訟之升:憒憒不悅,憂從中來。喪我金罌,無妄失位。
訟の卦が升の卦に変わる。心中昏亂郁悶にして快活ならず、憂愁內裏より生出す。我が金罂寶器を丢失し、平白無故に位分を失了。升は上進を主とするも、然れど內憂去らざれば升ると雖も安を得ず。占うに物を失い位を失い、心緒郁結す。凶。
訟之困:絆跳不遠,心與言反。尼父望家,萏菡未華。
訟の卦が困の卦に変わる。腿脚絆住せられ、跳ぶこと遠からず、心裏想う所と嘴上説く所と正相い違背す。孔夫子遙かに故鄉を望見すれど、池中の荷花尚未だ開放せず。困は困窮の卦で、心口一ならざれば道行き通らず。占うに進退阻まれ、言衷に由らず、時機未だ至らず。凶。
訟之井:大壯肥牸,惠我諸舅。內外和睦,不憂飢渴。
訟の卦が井の卦に変わる。肥壯の母牛、以て我が各位の舅父に饋贈す。內親外戚皆和睦して相處し、飢餓口渴を憂慮するを須いず。井は人を養いてその源竭きざるを主とし、能く財物を以て親族に惠を施せば家門和洽す。占うに親族和睦し、衣食豐足す。吉。
訟之革:黃帝建元,文德在身。祿若陽春,封為魯君。
訟の卦が革の卦に変わる。黄帝紀元を創建し、文治の徳一身に集まる。福祿和暖の春天のごとく豐潤にして、魯國の君に受封せらる。革は變革鼎新を主とし、徳業既に立てば爵位これに隨いて來る。占うに新業を開創し、封を受け祿を得。大吉。
訟之鼎:虎聚摩牙,以待臀豬。往必傷亡,宜利止居。
訟の卦が鼎の卦に変わる。老虎一處に聚まりて牙齒を磨き、肥臀の野猪の自ら門に送上するを待つ。往けば必ず傷亡し、止まりて安居するに宜し。鼎は賢を養い新を成すを主とするも、然れど險地輕く入るべからず。占うに前に埋伏あり、前往すべからず。步を止めて自ら守るに宜し。凶。
訟之震:天地配享,六位光明。陰陽順序,以成和平。
訟の卦が震の卦に変わる。天と地と相配し共に祭饗を受け、六爻の位一片光明なり。陰陽依次に行い、從つて太平の治を成就す。震は動にして其の法則あるなり。動きて天序に合すれば上下和洽す。占うに上下相い應じ、局面轉じて和す。吉。
訟之艮:猿墮高木,不踒手足。保我金玉,還歸其室。
訟の卦が艮の卦に変わる。猿猴高樹より跌落すれど、手脚卻って扭傷せず。我が金玉財物を保住し、安然として己が屋裏に回到す。艮は止なり。止まるを知りて妄動せざれば跌くとも傷つかず。占うに險を涉りて全うすを得、財物損なし。吉。
訟之漸:營室紫宮,堅不可攻。明神建德,君受大福。
訟の卦が漸の卦に変わる。營室の宿と紫微宮、堅固にして攻破する能わず。聖明の神靈徳業を樹立し、君主大福を領受す。營室は二十八宿の一で、古人宮室を營建するに其の昏中の時を依りて準と爲す。漸は循序して進むを主とし、險に據りて正を守れば外力犯す可からず。占うに根基堅固にして、天の福を受く。大吉。
訟之歸妹:孤翁寡婦,獨宿悲苦。目張耳鳴,無與笑語。
訟の卦が歸妹の卦に変わる。孤單の老翁と守寡の婦人、各々獨宿して悲傷困苦す。眼睜きて睡る能わず、耳中嗡嗡響き、談笑すべき一個人もなし。歸妹は嫁娶を主とするも位分當たらず。孤陰孤陽なれば配偶する所なし。占うに孤獨凄凉にして、鰥寡依る無し。凶。
訟之豐:低頭窺視,有所畏避。行者不利,酒酸魚敗,眾莫貪嗜。
訟の卦が豐の卦に変わる。頭を低めて偷偷に窺探し、心裏畏懼躲避する所有り。出行する人順利ならず、酒變じて酸となり魚も腐壞し、衆人皆肯んじて貪食せず。豐とは盛大で、物其の盛に過ぎて時を失せば敗壞す。占うに行藏疑を見、貨物變質し、問津する人なし。凶。
訟之旅:載金販狗,利棄我走。藏匿淵底,悔折為咎。
訟の卦が旅の卦に変わる。黄金を帶びて狗只を販賣するも、利益卻って我を抛下して跑去る。錢を深淵の底下に藏匿し、悔恨折損して過咎と成る。旅外に居りて經營する所本行にあらず、此に因りて利を失す。占うに經營當を失い、財を藏する所を失い、追悔及ばず。凶。
訟之巽:行觸大忌,與司命牾,執囚束縛,拘制於吏。
訟の卦が巽の卦に変わる。行事大忌諱に觸犯し、司命の神と相い抵牾す。抓起來られ囚禁捆綁せられ、官吏の拘管制約を受く。司命は人間の壽夭を主司する神なり。巽は順入で、逆いて順ならざれば刑罰を招致す。占うに忌を犯して禍を招き、身官司に陷る。大凶。
訟之兌:執玉歡喜,配之解攣。危詳及安,使我無患。
訟の卦が兌の卦に変わる。美玉を手執して心生歡喜し、佩帶すれば便ち拘攣の疾を解開す。危險より轉じて詳審を經て安穩に至り、我をして禍患無からしむ。兌は和悦で、心中喜悅すれば則ち周身舒泰す。占うに病痛解除し、危を轉じて安と爲す。吉。
訟之渙:機杼紛擾,女功不成。長妹許嫁,衣無襦絝。聞禍不成,凶惡消去。
訟の卦が渙の卦に変わる。織機と梭子と亂作一團と成り、女紅成さず。大妹妹已に人に許嫁すれど、短襖褲子すら置辦する能わず。所幸聽説する禍事並に釀成せず、凶險邪惡皆消散離去す。渙とは離散で、散亂の中終に轉機あり。占うに家貧しく事亂るれど禍災を成さず。先に憂後に安し。
訟之節:金人鐵距,火燒左右。雖俱不恐,獨得全處。
訟の卦が節の卦に変わる。金鑄の人・鐵打の足距、大火左右に燃燒す。身火中に處ると雖も毫不畏懼し、唯だ彼獨り保全するを得。節は度を守り自ら固くするを主とし、質地堅實にして節を守る能くば外患傷つく能わず。占うに險に處りて驚かず、獨り其身を善くす。吉。
訟之中孚:謝恩拜德,東歸吾國。舞蹈欣悅,歡樂受福。
訟の卦が中孚の卦に変わる。恩情を答謝し徳惠に叩拜し、東に我が國家に回る。手舞足蹈して心中欣悦し、歡歡樂樂として福澤を承受す。中孚は誠信相通ずるを貴ぶ。恩を知り本に報いれば福澤自ら隨う。占うに恩を受けて歸を得、家を擧げて歡慶す。吉。
訟之小過:青牛白咽,呼我俱田,歷山之下,可以多耕。歲樂時節,人民安寧。
訟の卦が小過の卦に変わる。青色の牛白脖子を長きて、我を招呼して一同に田を耕さんとす。歷山の脚下に在りて、多く開墾耕種すべし。傳うる所に虞舜曾て歷山に耕し、《史記・五帝本紀》に見ゆ。年成歡樂し節候時に適い、百姓安寧す。小過は小事を謀るに宜しく、躬耕自足正に其の宜に合す。占うに農を務めて利を得、歳稔れて民安し。吉。
訟之既濟:白雉群雎,慕德朝貢。湛露之恩,使我得歡。
訟の卦が既濟の卦に変わる。白色の野雉と成群の雎鳩、徳政を仰慕して前來して朝貢す。天子《湛露》燕饗の恩を以て相待し、我をして歡樂を得しむ。傳うる所に周公攝政の時越裳氏重譯して白雉を獻ず、《尚書大傳》に見ゆ。既濟は諸事已に成れる卦で、徳澤遠人に被れば四方來りて歸す。占うに遠人歸附し、恩を蒙り賞を受く。大吉。
訟之未濟:避患東西,反入禍門。糟糠不足,憂愁我心。
訟の卦が未濟の卦に変わる。東に躲り西に藏れて禍患を躲避するも、反つて自ら禍事の門に投ず。糟糠すら喫い飽くる能わず、憂愁我が心に充滿す。未濟は事情尚未だ辦成せざる卦で、趨避據を失せば愈躲るほど愈險し。占うに禍を避けて反つて禍を得、饑困して心を憂う。大凶。
師の林(師卦六十四林)
師之師:烏鳴呼子,哺以酒脯。高樓之處,子來歸母。穡人成功,年歲大有,妒婦無子。
師の卦が自ら変じても師の卦のままである。烏鴉鳴叫して幼子を呼喚し、酒と乾肉とを以て彼らを喂養す。高樓の上に在りて、孩子母親の身邊に回る。烏鴉反哺するは、古人之を以て孝義の鳥と爲す。農人耕作成あり、年成大豐收なり。只だ善妬の婦人兒子なし。師は衆を聚めて統屬あるを主とし、母子團聚すれば家道內和す。占うに家人團聚し、五谷豐登す。唯だ妒忌の和を傷るを忌む。吉中に礙を帶ぶを主とす。
師之乾:一簧兩舌,佞言諂語。三奸成虎,曾母投杼。
師の卦が乾の卦に変わる。一張の口裏に兩條の舌頭を含み、奸佞諂媚の辭に滿つ。三個の奸人反復して相い告げば便ち憑空に一隻の老虎を造出し、曾參の母親すらも終に織梭を抛下して逃走す。「三人虎を成す」は《戰國策・魏策》に見え、「曾母杼を投ぐ」は《戰國策・秦策》に見ゆ。師は衆を興すを主とし、衆口金を鑠かすれば賢者誣を受く。占うに讒言衆を惑わし、親信疑を見る。凶。
師之坤:春桃生花,季女宜家。受福且多,在師中吉,男為封君。
師の卦が坤の卦に変わる。春天の桃樹花朵を開出し、年少の女子家を成すに宜し。《詩経・周南・桃夭》に「此の子歸するに、其の室家に宜しからん」の詠あり。受くる所の福澤既に厚く且つ多し。正に《師》九二爻辭の説く「師中に在りて吉」のごとく、中に居りて正を得て吉を獲す。生下した男孩將來君に受封せん。婚嫁を問えば美滿、子嗣を問えば顯貴を主とす。大吉。
師之屯:殊類異路,心不相慕。牝牛牡猳,獨無家室。
師の卦が屯の卦に変わる。種類相同じからず道路各異にして、彼此心中並に相い慕わず。母牛と公猪と對を配成せず、只だ孤零零として家室なし。屯は初生通じ難きの卦で、類相同じからざれば終に一處に合する能わず。婚姻を問えば諧わず、合伙を問えば志異なるを主とす。凶。
師之蒙:折葉蔽目,不見稚叔。三足孤鳥,遠其元夫。
師の卦が蒙の卦に変わる。樹葉を折下して眼睛を遮住し、年幼の叔弟を看不見ず。三隻脚の孤鳥、遙かに其の元配を離る。蒙とは昏昧不明で、眼目外物に遮蔽せられれば至親をもも看不見ず。占うに耳目蒙蔽を受け、骨肉疏離し、夫婦分張す。凶。
師之需:雀東求粒,誤入網域。賴逢君子,脫復歸息。
師の卦が需の卦に変わる。麻雀東に往きて穀粒を覓め喫わんとすれど、誤りて張網の地界に入る。幸いに仁厚の君子に遇い其を放走せしめ、身を脫して巢に回り安歇するを得。《史記・殷本紀》は成湯網を開くこと三面なるを載す。正に此の般の仁心なり。需とは時機を待つこと。仁人に遇えば險境解くべし。占うに小さく驚險ありて貴に遇いて救を得。先に凶後に吉。
師之訟:王孫季子,相與孝友。明允篤誠,升擢薦舉,為國乾輔。
師の卦が訟の卦に変わる。王孫と季子、彼此孝順友愛す。彼ら明察誠信・篤實忠厚にして、因りて提拔薦擧せられ、國家の棟梁輔佐と成る。《左傳・文公十八年》は高陽氏の才子を「齊聖廣淵・明允篤誠」と稱す。師は衆を興すを主とし、賢を得て將と爲せば國勢强盛なり。占うに品行賞を受け、進用位を得。大吉。
師之比:削樹無枝,與子分離。飢寒莫食,獨泣哀悲。
師の卦が比の卦に変わる。樹削られて光秃禿として一枝條をも剩さず、父母孩子と分離す。饑寒交迫して喫ふべき東西なく、獨自哭泣哀傷悲切す。比は親附で、依るべき枝なければ孤苦告ぐる無し。占うに骨肉離散し、衣食着く所なし。大凶。
師之小畜:舜生大禹,石夷之野。徵詣玉闋,拜理水土。
師の卦が小畜の卦に変わる。虞舜石夷の原野に大禹を擧拔し、彼を召して玉闕王庭に至らしめ、命を拜して水土を治理せしむ。《尚書・舜典》は舜禹に命じて司空と爲り水土を平治せし事を載す。小畜は柔を以て剛を畜う。賢を任じて人を得れば功業漸々成る。占うに命を受け職に任じ、職專らに司る所有り。吉。
師之履:義不勝情,以欲自營。見利危寵,滅君令名。
師の卦が履の卦に変わる。道義私情に壓倒する能わず、只だ一己の私欲のために奔走經營す。利益を見れば便ち恩寵を喪失の危險を甘冒し、君子の美名を毀掉す。履は禮に循いて行うを主とし、私に徇りて禮を失せば名節盡く毀る。占うに利を貪りて徳を敗り、聲名地に掃く。凶。
師之泰:三人北行,六位光明。道逢淑女,與我驥子。
師の卦が泰の卦に変わる。三個人一同に北行し、六爻の位一片光明なり。路上賢淑の女子に遇い、我に千里駒のごとき好兒郎を贈る。泰とは通なり。行きて遇合する所有れば願う所償うを得。婚姻を問えば佳偶に遇い、子嗣を問えば貴子を得。大吉。
師之否:弈張烏號,彀射天狼。柱國雄勇,鬥死滎陽。
師の卦が否の卦に変わる。烏號のごとき良弓を張開し、弦を拉滿して天狼星を射んとす。國家の柱石雄壯勇武なるも、滎陽に戰死す。烏號は傳うる所に黄帝の弓と爲し、《淮南子・原道訓》に見ゆ。天狼は侵掠を主司する惡星なり。楚漢相い爭うの際紀信・周苛皆滎陽に死難す。否は閉塞通ぜず。勇ありと雖も時之を與せざれば終に身を殞するに至る。占うに忠勇命を效くれど善終を得ず。凶。
師之同人:季姬躑躅,結衿待時。終日至暮,百兩不來。
師の卦が同人の卦に変わる。季姬徘徊して進まず、衣襟を繫好して時機を等待す。早より天黑くなるまで等すれど、親迎の百輛の車子始終來らず。《詩経・召南・鵲巢》に「此の子歸するに、百兩之を禦ぐ」の句あり。同人は人と和同するを主とし、相い期して遇わざれば空しく守候す。婚姻を問えば佳期落空し、久候して成る無し。凶。
師之大有:鴻雁翩翩,始怨勞苦。災疫病民,鰥寡愁憂。
師の卦が大有の卦に変わる。鴻雁翩翩と飛行し、行役の勞苦を怨恨し始む。災荒疫病百姓をして病ましめ、鰥夫寡婦愁憂に滿懷す。《詩経・小雅・鴻雁》は正に流民哀鴻の苦を寫す。大有本來富盛を主とするも、然れど民力困竭すれば國用もまた虛し。占うに勞役疫病あり、孤苦依る無し。凶。
師之謙:穿胸狗邦,僵離旁舂。天地易紀,日月更始。
師の卦が謙の卦に変わる。穿胸の國と狗國、僵尸形を離れ旁舂臂を反し、盡く遠方の異人異俗なり。《山海經》と《淮南子・墬形訓》と皆貫胸民・犬封國のごとき海外の國を記す。天地綱紀を更換し、日月重新して運行を始む。謙とは卑下して益を受くること。天地更に始まれば舊有の秩序盡く變ず。占うに時局劇變し、舊貌觀を改む。謙退して時に順うに宜し。
師之豫:北山有棗,使叔壽考。東岑多栗,宜行賈市,陸梁雌雉,所至利喜。
師の卦が豫の卦に変わる。北山の上棗樹を長せ、叔氏をして高壽を得享せしむ。東邊の山嶺栗子を多産し、外出して經商販賣するに宜し。雌野鷄陸上に跳躍奔走し、至る所皆利益喜慶あり。豫は順動和樂で、地に因りて宜を制し以て利を取れば處處源に逢う。占うに長壽し、經商して利を獲、出行して喜あり。大吉。
師之隨:干旄旌旗,撫幟在郊。雖有寶玉,無路致之。
師の卦が隨の卦に変わる。牛尾裝飾の干旄と各色の旌旗、旗幟を扶けて郊外に立つ。《詩経・鄘風・干旄》は大夫車に乘り旌を建てて以て賢者を招納するを寫す。寶玉を懷有すと雖も、以て送到する路徑なし。隨とは相い隨いて從う。道路通ぜざれば賢才至らず。占うに心有りて門なく、良材薦め難し。凶。
師之蠱:精潔淵塞,為饞所言。證訊詰請,繫於枳溫。甘棠聽斷,怡然蒙恩。
師の卦が蠱の卦に変わる。人と爲り精純潔淨・深沈篤實なるも、讒人に誣告せらる。取證訊問・詰責求實を經て、一度牢獄の中に拘係せらる。所幸召伯の甘棠樹下に訟を聽くがごとき明察の官長に遇い、《詩経・召南・甘棠》の詠う所正に此の徳なり。ここに欣然として恩釋を蒙る。蠱は積弊を整治するを主とし、積弊既に清ければ冤情自ら白し。占うに冤を蒙りて後昭雪す。先に凶後に吉。
師之臨:玄黃虺隤,行者勞疲。役夫憔悴,逾時不歸。
師の卦が臨の卦に変わる。馬兒病みて毛色晦暗・腿脚發軟し、路を趕る人疲憊堪えず。服役する人形容憔悴し、期限を超過しても家に回る能わず。《詩経・周南・巻耳》に「我が馬虺隤たり」「我が馬玄黄たり」の句あり。臨は上に居りて下に臨む。役使度なければ在下の者疲敝す。行人を問えば外に淹留す。身體を問えば勞累病を成す。凶。
師之觀:膚敏之德,發憤忘食。虜豹禽說,以成主德。
師の卦が觀の卦に変わる。敏捷通達の徳行有り、發憤用功して喫飯を忘る。豹子のごとき勇士を擒獲し、傅説のごとき賢臣を擧拔し、以て君主の徳業を成就す。《論語・述而》は孔子の「憤を發して食を忘る」を記し、《尚書・説命》は武丁の傅説を版築の間に擧ぐるを載す。觀は觀仰化育を主とし、人を得れば徳業成るべし。占うに勤學用を得、賢を擧げて主を佐く。大吉。
師之噬嗑:采唐沫鄉,要我桑中。失信不會,憂思約帶。
師の卦が噬嗑の卦に変わる。沬邑の鄕に往きて女蘿を採り、我と桑林の中に相會せんことを約す。《詩経・鄘風・桑中》の詠う所正に此の事なり。對方失約して前來せず、憂思度を過して腰帶すら鬆むに至る。噬嗑は嚙合相い就くを主とし、相い約して合する能わざれば相思病を成す。婚姻を問い約會を問うに、失約して遇わず、徒らに愁思を增す。凶。
師之賁:伯寧子福,惠我邦國。蠲除苛殘,使季無患。
師の卦が賁の卦に変わる。伯氏安寧にして子嗣福あり、恩惠我が邦國に施及す。苛刻殘暴の政令を清除し、季氏一家をして禍患を免れしむ。賁は文飾を主とし、文徳を以て政事を修飾すれば百姓安定す。占うに政令寛和にして、家國虞なし。吉。
師之剝:饞父佞雄,賊亂邦國。生雖忠孝,敗恩不福。
師の卦が剥の卦に変わる。讒を進ませる老者・奸佞の梟雄、邦國を殘害擾亂す。縱ほ生れて忠誠孝順の人も、恩情を敗壞せられて福澤を得ず。剥は陰陽を剥する卦で、小人勢を得れば君子殃を遭う。占うに小人道に當たり、忠良害を受く。大凶。
師之復:淵泉堤防,水道通利。順注湖海,邦國富有。
師の卦が復の卦に変わる。深泉堤防を築起し、水道疏通して暢達す。流れに順いて湖海に注入し、邦國これによって富足す。《周禮・稻人》に防を以て水を止め、溝を以て水を蕩すの職あり。復は一陽來復で、勢に因りて導けば利源大いに興る。占うに水利成あり、財源廣く進む。吉。
師之無妄:江南多蝮,螫我手足。冤繁詰屈,痛徹心腹。
師の卦が无妄の卦に変わる。江南一帶蝮蛇多く、我が手と脚とを蜇傷す。冤屈繁多にして曲折辨え難く、疼痛直ちに心腹に透る。《无妄》は人に妄行すべからずを告誡す。誤りて險地に入れば其の毒害を受く。占うに身毒害を遭い、冤を含みて白く莫し。大凶。
師之大畜:三人俱行,別離獨食。一身五心,反覆迷惑,亂無所得。
師の卦が大畜の卦に変わる。三個人一同に出行し、中途卻って手を分かち各々喫す。一個の身體五種の心思を懷き、反反復復として疑惑し、紛亂の中一の得る所なし。大畜は蓄聚固守を主とし、心志專ならざれば聚めて復た散ず。占うに同伴心を離れ、棋を擧げて定まらず、終に歸して成る無し。凶。
師之頤:鴉鳴庭中,以戒災凶。重門擊柝,備不速客。
師の卦が頤の卦に変わる。烏鴉庭院の中に鳴叫し、以て災禍凶險を警戒す。ここに重重の門戶を設置し木梆を敲きて夜を巡り、請わざりて自ら來る客を防備す。《周易・繫辭下》に「門を重ね柝を撃ちて、以て暴客を待つ」と曰う。頤は正を養うを主とし、警戒する所を知りて豫め防備すれば養う所安を得。占うに警あり先んじて、患を未然に防ぐ。先に危後に安し。
師之大過:功成事就,拱手安居。立德有言,坐飾貢賦。
師の卦が大過の卦に変わる。功業已に成り事情辦妥し、手を拱きて安然と居家す。徳行を樹立し嘉言を留下し、安坐して貢賦の事を整飭す。《左傳・襄公二十四年》は徳を立て・功を立て・言を立つるを以て三不朽と爲す。大過は負重を主とすると雖も、功成りて退くを知れば折損に至らず。占うに功を成し名を遂げ、安んじて清福を享く。大吉。
師之坎:國亂不安,兵革為患。掠我妻子,家中飢寒。
師の卦が坎の卦に変わる。國家動亂して安寧を得ず、兵戈甲冑禍患と成る。妻子兒女擄掠されて去り、家中饑寒交迫す。坎は重重の險陷で、亂世に逢えば險上に險を加う。占うに兵災身に及び、家破れて人離る。大凶。
師之離:戴堯扶禹,從喬彭祖。西遇王母,道路夷宜,無敢難者。
師の卦が離の卦に変わる。頭唐堯を頂き大禹を扶助し、王子喬と彭祖とのごとき長生の士に追隨す。西に向かいて西王母に遇い、道路平坦にして適宜、敢えて來りて阻難する者なし。離は附麗で、附く所皆聖賢仙眞なれば通行礙なし。占うに高人の提携を得、前程坦蕩なり。大吉。
師之咸:長尾委蛇,畫地成河。深不可涉。絕無以比,惆悵會息。
師の卦が咸の卦に変わる。長長の尾巴曲折蜿蜒として、地上に一道の河を劃出す。水深くして涉渡する能わず、これと相比すべきもの更になく、只だ惆悵として止まり歇息す。咸は交感の卦で、中間阻隔を橫亘すれば感じて通ぜず。占うに前路阻まれ、志有りて達し難し。凶。
師之恆:乘龍從蜺,徵詣北闋。乃見宣室。拜守東城。鎮慰黎元,舉家蒙富。
師の卦が恒の卦に変わる。飛竜に乘り云霓に駕し、應徵して北面の宮闕に來る。ここに宣室に召見を得、命を拜して東城に鎮守に往く。漢文帝曾て宣室に賈誼を召見し、《史記・屈原賈生列傳》に見ゆ。此の後百姓を安撫し、全家これによって富足す。恒とは常久で、位を得て常を守れば福澤長遠なり。占うに召を受け官に任じ、家道殷實なり。大吉。
師之遁:土與山連,終身無患。天地高明,萬歲長安。
師の卦が遁の卦に変わる。土地と山巒と相連なり、終身禍患なし。天地高遠光明にして、萬年長久安寧す。遁本來退避を主とするも、厚土の上に退居すれば根基穩固なり。占うに居處其の所を得、一生平安なり。大吉。
師之大壯:久旱水涸,枯槁無澤。虛修其德,未有所獲。
師の卦が大壯の卦に変わる。長久乾旱にして水源枯竭し、草木枯槁して潤澤毫もなし。空しく徳行を修飭するも、得る所何もなし。大壯は正を守るに宜しく妄進すべからず。時機至らざれば徳修むと雖も功效顯れず。占うに時運濟わず、修為効を見見難し。靜守して時を待つに宜し。
師之晉:依天倚地,凶危不至。上清下淨,受福大明,君受其利。
師の卦が晋の卦に変わる。上蒼天に依り下大地に靠すれば、凶險危難皆到來せず。在上の者清明にして在下の者潔淨なり、大明の福を承受して君主其中の利益を得。晋は上進して大明に附麗するを主とし、上下皆其の正を得れば福澤自ら至る。占うに根基穩固にして、上下清明、福を受け利を得。大吉。
師之明夷:火烈不去,必殪僵仆。燔我衣裾,福不可悔。
師の卦が明夷の卦に変わる。烈火燃燒して退去するを肯んぜず、必ず人をして倒斃僵卧せしむ。我が衣襟下擺を燒着き、福氣喪盡して追悔及ばず。明夷は光明傷つくの卦で、火勢炎に過ぐれば反つて焚毀の患と成る。占うに火厄身を傷め、悔やむも及ばず。大凶。
