咸の林(咸卦六十四林)
巽:怨重被燒,忿怒生禍。褊心作事,意如為亂。
恒の卦が巽の卦に変わる。怨を積むこと太だ深くして焚焼の殃に遭い、忿怒の下に禍端を生ず。心胸を狭窄にして事を辦し、意気に任せば即ち禍乱を成す。褊心は《詩経・魏風・葛屨》に出る。この林は怨を積み怒を動かし器量が狭小にして、自ら災禍を招くことを主とし、凶である。
兌:張狂妄行,竊食稻粱。狗吠非主,囓傷我足。
恒の卦が兌の卦に変わる。張狂妄為して胡乱に事を行い、人の稻米粱谷を偷食す。狗は主人ならざる人に對して狂吠し、また我が足を咬傷す。この林は行止に檢なく小さな利を貪竊して、かえって其の害を受くることを主とし、凶である。
渙:驚蹕式道,先驅除咎。王后親桑,以率群功。安我祖宗。
恒の卦が渙の卦に変わる。道を清め戒厳して車駕が出行し、前駆が路を開き先に災咎を除く。王后は自ら桑を采り、衆人を率いて女功を操持せんがためなり。かくすれば我が祖宗の基業を安定せり。天子が警を出し蹕を入れ、王后が自ら蚕を行うは、皆古礼なり。この林は上下が各おの其の職を守り内外を並び挙げて、宗祧が安を得ることを主とし、大吉である。
節:門戶乏食,困死誰告。對門不通,安所歸急。積藏五穀,一花千葉,市賈有息。
恒の卦が節の卦に変わる。家里に糧が断えて、困死してまた誰に訴えん。対門さえ行き通わず、緊急の時は投奔すべき処なし。後に五穀を積儲せば、一朵の花が千片の葉を開き、売買を為せば即ち贏利あり。この林は先に飢困して援なき厄を受け、後に積蓄に因りて豊に転じ、商賈が息を獲ることを主とし、先凶後吉である。
中孚:破敝復完,危者得安。鄉善無損,商人有息。利來入門。
恒の卦が中孚の卦に変わる。破損したるは復た完好し、危険なるは転じて安定す。一心に善に向えば虧損なく、商人にも利息あり、財利は自ら門に送られ来る。この林は破より成に転じ危より安に転じ、善に向えば福を得、経営に利あることを主とし、吉である。
小過:迭迭累累,如岐之室。一息十子,古公治邑。
恒の卦が小過の卦に変わる。一重又一重、一層又一層、岐山の下の周家の屋宇のごとく綿密なり。一胎に十人の兒子を生養し、古公亶父は其の城邑を治理す。古公亶父が岐山に遷居したは、周室が基を開いた始めである。この林は基業が穩固で子孫が衆多く、家門が蕃盛なることを主とし、大吉である。
既濟:三嫗治民,不勝其任。兩馬爭車,敗壞家室。
恒の卦が既済の卦に変わる。三人の老婦人が百姓を治理に往くも、此の職任を担うに堪えず。両匹の馬が一輛の車を争搶して、家室を皆弄り壊す。この林は人を用いるに当たらず内部に争奪あり、家業が敗落することを主とし、凶である。
未濟:蔽鏡無光,不見文章。少女不市,棄於相望。
恒の卦が未済の卦に変わる。塵を蒙った鏡は光亮を失い、紋理文采を照し出さず。年少の女子は市に赶集せず、人に抛て一旁に置かれて遥遥に相望むのみ。この林は明鑑が彰れず才華が埋もれ、人は冷落して棄てられるを見ることを主とし、凶である。
遯の林(遯卦六十四林)
遯:三塗五嶽,陽城太室。神明所住,獨無兵革。
遯の卦が自ら変じても遯の卦のままである。三塗山と五嶽、陽城と太室山は、いずれも神明の居住する所であり、独り兵戈戦乱なし。太室は即ち嵩山の主峰である。この林は神霊の護佑する地に処り、兵禍侵されざることを主とし、大吉である。
乾:軟弱無輔,不能自理。意在外野,心懷勞苦。雖憂不殆。
遯の卦が乾の卦に変わる。自ら軟弱にして辅助する人なく、己が事を料治する能わず。心思は外面の曠野に飄び、胸中に労苦満つ。憂愁と雖も、尚お危殆に至らず。この林は孤弱無援、心志外に馳し、憂労多しと雖も大害なきことを主とす。
坤:周成之隆,刑措無凶。大眾贊佑,君子作仁。
遯の卦が坤の卦に変わる。周成王の時代に隆興し、刑罰措置して用いずして凶事なし。万众称頌して佑助し、君子仁政を行う。成康の世は刑措四十余年用いず、《史記・周本紀》に見る。この林は政清人和、刑罰施さず、众望の帰する所を主とし、大吉である。
屯:穴有狐烏,坎生蝦蟆。象去萬里,不可得捕。
遯の卦が屯の卦に変わる。洞穴に狐狸と烏鴉が住み、坑坎に蝦蟆が生ず。大象は既に万里の外に走出して、再び捕捉する能わず。この林は身辺に尽く小物にして、求むる大きな者は遠く遁れ、志大きくして力及ばざることを主とし、不吉である。
蒙:俱為天民,雲過吾面。治民嫉妒,與我無恩。(民一作門)
遯の卦が蒙の卦に変わる。みな同じく天の生みたる百姓なるに、雲彩は只だ我が面前を飄過するのみ。百姓を治むる者は嫉妒の心を存し、我に毫も恩惠なし。「民」の字は一本に「門」と作る。この林は上加恩せず、人の妒忌に遭い、孤立無援を主とし、不吉である。
需:三首六目,政多煩惑。皋陶瘖聾,亂不可從。
遯の卦が需の卦に変わる。三つの頭に六つの眼、政令繁多にして人を迷惑せしむ。皐陶のごとき賢明なる法官も又た瘂聾となり、乱局に依循すべきものなし。皐陶は虞舜の時に刑罰を掌る官。この林は政出多門、賢者失声、綱紀紊乱を主とし、凶である。
訟:德積不輕,辭王釣耕。三媒不已,大福來成。
遯の卦が訟の卦に変わる。積徳深厚にして軽浅ならず、王命を辞謝して垂釣耕田に往く。説合に来る者再三不断にして、大福終に成就す。呂尚は渭濱に釣り、伊尹は有莘に耕せり、皆待時して起つ旧り事。この林は積徳隠居、三聘乃ち出で、終に大福を獲るを主とし、大吉である。
師:堅固相親,日用自完。六體不易,孰為安全。雨師駕西,濡我轂輪。張伯李季,各噬關門。
遯の卦が師の卦に変わる。彼此堅固に親近し、日常の用度は自給自足す。六体曽て変換せず、尚お安不安全を談ずべきあらんや。雨師車を駕して西に去り、我が車轂車輪を淋湿せり。張伯と李季は各々関門を把守す。この林は内部牢固自足、風雨阻隔と人各一方に拠るに遭うも、尚お自守する可し、平にして滞を帯ぶ。
比:方內不行,輻摧輪傷。馬禁堤與,愛子閔時。
遯の卦が比の卦に変わる。境内でも亦た行き通る能わず、輻条摧折して車輪損壊す。馬は堤辺に拦まれて過ぎる能わず、疼愛の子は只だ時運を感傷するのみ。この林は車馬受損、去路阻まるを主とし、子女の為に憂傷す、凶である。
小畜:畜牝無駒,養雞不雛。群羊三歲,不生兩頭。
遯の卦が小畜の卦に変わる。母馬を養いても馬駒を生まず、鶏を養いても雛を孵さず。一群の羊三年を養うも、連れて兩匹の小羊も添えず。この林は孳生成らず、畜養蕃せず、家中の子息と財産は毫も増益なし、凶である。
履:老耄罷極,無取中直。懸輿致仕,得歸鄉國。
遯の卦が履の卦に変わる。年老い力衰え疲憊極に至り、事を行いて中正の道を取る能わず。是において車を懸けて官を辞し退休し、故郷に帰るを得たり。懸車致仕は漢人の告老の常語。この林は年高退位、功名止むべし、安らかに還郷する能し、知止の吉に属す。
泰:縮緒亂絲,手與為災。越畝逐兔,斷其褌襦。
遯の卦が泰の卦に変わる。乱糸の頭緒を抽理するに、手は反って纏われて災となす。田壟を越えて兎を追い、褲子と短衣を扯断す。この林は頭緒紛乱して理すること能わず、小利を貪逐して反って衣物を損し、徒労して害を受くるを主とし、凶である。
否:海老水乾,魚鱉蕭索。高落無澗,獨有沙石。
遯の卦が否の卦に変わる。大海衰老して水皆乾き、魚鱉零落蕭条たり。高処塌陷して渓澗を成さず、残るは沙子石头のみ。この林は源枯本竭、生物凋零、依るべき一物なし、大凶である。
同人:入市求鹿,不見頓足。終日至夜,竟無所得。
遯の卦が同人の卦に変わる。市集に鹿を求めに行くも、蹄印さえ見えず。白昼より夜に至るまで探すも、終に一物も得ることなし。この林は求むる所其処に在らず、方向根本より誤りて、労して獲なし、凶である。
大有:築門壅戶,虎臥當道。驚我驊騮,不利出處。
遯の卦が大有の卦に変わる。門は堵せられ戸は塞がれ、老虎は又た路の当央に卧す。我が駿馬を驚かし、出門と居家と倶に利あらず。驊騮は周穆王八駿の一。この林は前路壅塞、猛獣道に当たり、進退倶に合宜ならざるを主とし、凶である。
謙:陶朱白圭,善賈息資。公子王孫,富貴不貧。
遯の卦が謙の卦に変わる。陶朱公范蠡と白圭は、倶に経商を善くして本銭をして息を生ぜしめたり。公子王孫は此れによって富貴にして貧窮せず。范蠡は三たび千金を致し、白圭は時変を楽観す、《史記・貨殖列伝》に見る。この林は理財を善くし、貨殖息を生ずるを主とし、家道富厚、大吉である。
豫:王良善御,伯樂知馬。周旋步驟,行中規矩。止息有前,延命壽考。
遯の卦が豫の卦に変わる。王良は車を駕るを善くし、伯楽は馬を相するを善くす。車馬周旋緩急、進退倶に規矩に合う。行止倶に法度有りて、因って延年長寿す。この林は良御良相の助を得、挙措度に合い、事順い寿永きことを主とし、大吉である。
隨:堯問大舜,聖德增益。使民不懼,安無怵惕。
遯の卦が随の卦に変わる。堯は大舜に咨詢請教し、聖人の徳は此れによって一層增益せり。百姓をして畏懼せざるに至らしめ、安寧にして驚惕なし。この林は虚心に賢を問い、徳業日に進み、衆庶安泰を主とし、大吉である。
蠱:昭公失常,季氏悖狂。遊齊處鄆,喪其寵身。
遯の卦が蠱の卦に変わる。魯昭公は常度を失い、季氏は悖逆狂妄せり。昭公は出奔して斉国に流落し、鄆地に寄居して、その尊寵の身位を喪失せり。事は《左伝・昭公二十五年》に見る。この林は君弱臣強、位を失って出奔し、尊貴の人流離するを主とし、大凶である。
臨:昏暮不行,候旦待明。復住止後,未得相從。
遯の卦が臨の卦に変わる。黄昏の時、出発を肯ぜず、天亮を待って行かんとす。後にまた停下して後に留まり、終に同伴に及ばざりき。この林は行動遅疑、時機錯過を主とし、人と交りを失う、不吉である。
觀:安止宜官,一日九遷。升擢超等,牧養常山。
遯の卦が観の卦に変わる。安穏に位を守りて居官に宜しく、一日の内に九遷す。提拔は常等を超越し、常山の地を治むるに出づ。一日九遷は拔擢の速きを形容す。この林は仕途驟進、位望日に隆れ、一方を牧守するを得るを主とし、大吉である。
噬嗑:去惡就凶,東西多訟,行者無功。
遯の卦が噬嗑の卦に変わる。悪を避けんと欲するも反って凶に撞き、東も西も皆官司なり。出門の人は白忙一場なり。この林は趨避当を失い、四処に争訟し、事を行いて功なし、凶である。
賁:老馬垂耳,不見百里。君子弗恃,商人莫取。無與為市。
遯の卦が賁の卦に変わる。老馬は耳を垂れて、百里にも満たず走る。君子は之に依るを肯ぜず、商人も之を買うを肯ぜず、之と交易せんとする者なし。この林は力衰えて用なく、人の取る所と為らず、售らんと欲して門なし、凶である。
剝:蟙螺生子,深自黑丑。似類其母,雖或相就。眾人莫取。(一雲蝸螺自疑當作目)
遯の卦が剥の卦に変わる。蝙蝠と螺蛳は子を生じて、深黒にして醜陋たり。其の母に似ると雖も、偶に之と親しむ人あれど、衆人は皆之を要せず。校語に「蝸螺」句の「自」の字は疑うらく「目」と作るべしと。この林は形陋質卑、人の取る所と為らず、縦い同類相親しむも終に用いられ難し、不吉である。
復:百足俱行,相輔為強。三聖翼事,王室寵光。
遯の卦が復の卦に変わる。百足の虫、衆足斉しく行動し、互相扶持して強健を顕す。三位の聖人は共同で国事を輔翼し、王室は此れによって栄寵光耀を得たり。この林は衆力協同、賢者政を輔け、門庭光を増すを主とし、大吉である。
旡妄:容民蓄眾,履德有信。大人受福,童蒙憂惑。利無所得。
遯の卦が旡妄の卦に変わる。百姓を包容し衆人を蓄養し、徳行を践み信用を講ず。大人は此れによって福を受くれど、蒙昧の幼童は仍お憂愁迷惑の中に在りて、利益を得ず。容民畜衆は《周易・師》の大象辞に出る。この林は上位に居る者は寛厚にして福を得、无知无位の者は仍お利を獲難し、吉凶は人に因って異なる。
大畜:左跌右僵,前躓觸桑。其稽據石,傷其弟兄。老蠶不作,家無織帛。貴貨賤身,久留連客。
遯の卦が大畜の卦に変わる。左に跌き右に僵仆し、前に往きて又た桑樹に绊つ。停下して石頭に倚りて歇くも、自ら其の兄弟を傷す。老蚕は絲を吐かず、家に絹帛を織る能わず。貨物を看重して自身を軽賤し、長久滞在して外に客たり。この林は行止顚躓、手足受傷、生業蕭条、財を重んじて身を累い羈旅となるを主とし、凶である。
頤:昏人旦明,賣食老昌。國祚東表,號稱太公。
遯の卦が頤の卦に変わる。昏昧の人は天亮の時に終に明白となり、喫食を売るに倚りて老いて昌盛す。国運は東海の表に延伸し、尊称して太公と曰わる。呂尚は曾て朝歌の屠肆、棘津で食を売って困窮せり、後に斉に封じられ太公と称す。この林は困頓の人終に開明発達の日有り、晩歳貴盛を主とし、大吉である。
大過:敝笱在梁,魴逸不禁。漁父勞苦,焦喉乾口。虛空無有。
遯の卦が大過の卦に変わる。破れた魚簍を魚梁に擺せば、魴魚は溜走して攔む能わず。漁翁は忙しく辛苦して喉焦げ口乾き、到頭空しく一物も得ず。敝笱在梁は《詩経・斉風・敝笱》に出る。この林は器具敗壊、防範厳ならず、労して獲なし、凶である。
坎:盛中後跌,衰者復掇。盈滿或毀,疾羸肥腯。鄭昭失國,重耳興立。
遯の卦が坎の卦に変わる。中途に盛んにして後に跌落し、衰敗の者は反って重新に收拾す。盈満の者は時に傾毀し、瘦弱の者は転じて肥壮す。鄭国の昭公は国家を失い、晋公子重耳は興起して立てり。この林は盛衰互いに易え、消長循環し、盛に処る者は跌落を防ぐべく、衰に居る者は復興を望む可し。
離:折亡破甕,使我困貧。與母生分,別離異門。
遯の卦が離の卦に変わる。折損喪亡して瓮を打破し、我をして困頓貧窮に陷入せしむ。母親と生生に分かれ、別離して各々一門に在り。この林は財を破り器を損じ、骨肉分離し、貧困交加するを主とし、凶である。
咸:野有積庾,嗇人駕取。不逢狼虎,暮歸其宇。
遯の卦が咸の卦に変わる。野外に露天の谷囤を堆き、農人は車を駕して装取に往く。一路狼虎に遭わず、傍晚安然として自屋に帰る。嗇人は即ち農夫。この林は野に収穫有り、運載順利にして、往復平安を主とし、吉である。
恆:襁褓孩孤,冠帶成家。出門如賓,父母何憂。
遯の卦が恒の卦に変わる。襁褓中の孤児は、長成して冠を戴き帯を束ね、成家立業す。出門して人に接すること恭敬して賓客を接待する如くなれば、父母尚お何の憂愁かあらん。出門如賓は《左伝・僖公三十三年》に出る。この林は孤幼終に自立成人する能く、恭謹有禮にして、家門憂なし、吉である。
大壯:陳力就列,官職無廢。手不勝盆,失其寵門。
遯の卦が大壮の卦に変わる。力を量りて事に任じ各々其の位に就けば、官職は荒廃に至らず。しかれども手は盆を托する能わず、終に得寵の門路を失う。陳力就列は《論語・季氏》に出る。この林は職に称う者は其の位を保つ能く、力任に勝えざる者は必ず恩寵を失うを主とし、吉凶は全く自量に在り。
晉:積雪大寒,萬物不生。陰制庶士,時本寒貧。
遯の卦が晋の卦に変わる。積雪深厚にして天気酷寒、万物皆生長せず。陰気は衆人を圧制し、時運本より寒苦貧薄なり。この林は時令厳寒、生機発さず、衆人制せられ、貧困免れ難し、凶である。
明夷:龍鬥海門,失理傷賢。內畔生賊,自為心疾。
遯の卦が明夷の卦に変わる。群竜は海門に相鬪い、常理に違背して賢者を傷害す。内部に叛乱生じ禍賊を出し、自ら己が心腹の患と為れり。畔は即ち叛。この林は上層争鬪、賢良害を受け、禍蕭墻に起るを主とし、大凶である。
家人:不畏猛虎,依人為輔。三夫執獸,伏不敢起。身安無咎。
遯の卦が家人の卦に変わる。猛虎を害怕せず、衆人に倚りて帮手を為す。三個の壮漢は野獣を制伏して、之を伏せ地にして敢えて起たざらしむ。自身平安にして過咎なし。この林は衆を合わせて自ら壮め、協力して凶を制し、身家保たるるを主とし、吉である。
睽:南山高岡,回隤難登。道路遼遠,行者無功。憂不改凶,惡亦消去。
遯の卦が睽の卦に変わる。南山の高岡は盤曲険陡にして、攀登し難し。道路遥遠にして、行人白く跑一趟するのみ。憂愁未だ解せず凶象未だ改らざると雖も、悪事は到底消散せり。この林は道途艱難、行う所功なし、然れど災禍終に散去るを主とし、凶中より平に転ず。
蹇:逢時陽遂,富且尊貴。
遯の卦が蹇の卦に変わる。恰好時運に趕え付き、陽気順遂通達して、因って既に富にして又た貴し。この林は時運亨通、諸事心に遂うを主とし、財位双の全きを得、大吉である。
解:求我所欲,得其利福。終身不辱,盈盛之門。高屋光覆,君先其固。
遯の卦が解の卦に変わる。己が欲する所を求取すれば、即ち利益と福気を得。終身屈辱を受けず、門戸豊盈興盛す。高大の房屋は光華罩籠し、主人は先ず根基を築きて牢固ならしむ。この林は求むる所願の如く、家門昌盛を主とし、根本先に立てて後に能く久し、大吉である。
損:安坐至暮,禍災不到。利詰妒姝,皇宥不赦。
遯の卦が損の卦に変わる。安安稳稳として天黑まで坐しても、禍災も門に上らず。宜しく嫉妒の美人を責問すべし、君上寛宥と雖も之等を赦免すること肯ぜず。この林は静守すれば則ち災なく、対内に当たり妒忌争寵の人を整粛すべく、処置は厳よりすれば則ち吉。
益:膠車駕東,與雨相逢。五楘(一作婺)解墮,頓斬獨宿。憂為身福。
遯の卦が益の卦に変わる。膠で粘接せる車を以て東に行くも、偏に下雨に遇う。車轅の上の五道の皮束は散脱落ち、頓住停下して独自投宿するを得ざりき。此の一場の憂患は反って自身の福気と為れり。「五楘」は一本に「五婺」と作る、五楘梁輈は《詩経・秦風・小戎》に出る。この林は車器堅ならず、途に風雨に遇い阻まるるも、然れど禍に因って福を得、先凶後吉。
夬:擇日高飛,遠至東齊。見孔聖師,徒我相諧。
遯の卦が夬の卦に変わる。好日を選んで高飛遠挙し、一直して東方の斉国に至る。孔子のごとき聖人の師に見え、門徒は我と相処して和諧なり。この林は時を擇びて遠行し、明師良友に遇うを得るを主とし、志同道合、大吉である。
姤:陳媯敬仲,兆興齊姜。乃適營丘,八世大昌。
遯の卦が姤の卦に変わる。陳国の妫姓の公子敬仲は、卜兆に彼が斉国に興起せんことを预示せり。是に営丘に奔往し、八世之後大いに昌盛せり。《左伝・荘公二十二年》に陳敬仲の斉に奔るを記す、占辞に「八世之后、莫之與京」と。この林は遠く異国に遷りて卜兆吉利なり、子孫数世昌隆、大吉である。
萃:缺將無憚,難從東西。毀破我盆,泛棄酒食。
遯の卦が萃の卦に変わる。主将を欠けば人人忌憚する所なく、東も西も依従し難し。我が盆を打破して、酒食皆潑洒拋棄せり。この林は群竜首なく、進退拠を失い、器毀れ食廃るるを主とし、凶である。
升:中夜狗吠,盜在廬外。神光佐助,消散歸去。
遯の卦が升の卦に変わる。夜半に狗叫び、盗賊屋の外に在り。神明の光輝の旁より相助する有りて、盗賊消散退去せり。この林は夜に盗警有るも、神助に賴りて化解し、驚有りて険なし。
困:雷車不藏,隱隱西行。霖雨三旬,流為河江。使我憂心。
遯の卦が困の卦に変わる。雷声は車の如くにして収蔵を肯ぜず、隠隠として西に滚り往く。綿綿たる大雨三十日降りて、積水汇りて江河を成し、我をして憂心忡忡ならしむ。この林は陰雨澇を成し、水勢遏め難く、憂患身に纏うを主とし、凶である。
井:老河空虛,舊井無魚。利得不饒,避患東鄰。福來入門,使我悔存。
遯の卦が井の卦に変わる。老河道は干涸空虚にして、旧井に魚なし。所得の利益は並びに豊厚ならず、東辺の隣家に避禍しに往く他なし。後に福気門に入りて、始めて我をして悔恨を身後に留めしむ。この林は旧業枯竭、獲利微薄、禍を避けて他処に往きて終に福を得、先困後に転ず。
革:福德之士,歡悅日喜。夷吾相國,三歸為臣。貴流子孫。
遯の卦が革の卦に変わる。福徳有る人は、歓欣喜悅して一日に一日勝る。管夷吾は斉国の相を為し、三歸の富を享有するも仍お臣位に居り。富貴は子孫に流伝す。管仲に三帰有り、《論語・八佾》に見る。この林は徳厚位隆、富貴継ぐ可きを主とし、沢後代に被す、大吉である。
鼎:清人高子,久屯外野。逍遙不歸,思我慈母。
遯の卦が鼎の卦に変わる。《詩経・鄭風・清人》に高克が兵を領して河上に久駐するを詠ず、将士長期に野外に屯守す。逍遥閑散と雖も家に帰る能わず、只だ己が慈母を思念するのみ。この林は久しく外に戍し、帰期定まらず、親を思いて憂を成すを主とし、不吉である。
震:驄 (音葛)黑 ,東歸高鄉。白虎推輪,蒼龍把衡。朱雀導引,靈鳥載遊。遠扣天門,入見真君。馬全人安。
遯の卦が震の卦に変わる。青白雑毛と黑色の良馬を駕して、東に高郷に帰る。白虎は後に車輪を推し、蒼竜は車衡を把持し、朱雀は前に路を引き、霊鳥は遨遊を載せる。遠行して天門を叩き、入りて真君に朝見す。馬匹斉備にして人也平安なり。四靈導從は漢人の想像する神行の儀仗。この林は神霊護衛、遠行天に通ずるを主とし、人馬倶に安し、大吉である。
艮:路多枳棘,前刺我足。不利旅客,為心作毒。
遯の卦が艮の卦に変わる。路上に枳樹荊棘満ち、前に往けば我が足を扎傷す。出門の旅客に利あらず、心頭の毒害と為れり。この林は前途に荊棘叢生し、歩を挙げて傷を受くるを主とし、行旅宜しからず、凶である。
