咸の林(咸卦六十四林)
萃:孔鸞鴛雛,鴞鸃鵜鴣,翱翔紫淵。嘉禾之國,君子以說。
晋の卦が萃の卦に変わる。孔雀、鸞鳥、鴛雛、又た鴞鸃、鵜鴣は、一同に紫色の深淵の上に翱翔す。嘉禾を出産する邦国の内に於て、君子此れによって喜悦す。嘉禾は古人の最も重んずる祥瑞の一。この林は群賢畢集、祥瑞並び現れ、君子歓欣するを主とし、大吉である。
升:甘露溫潤,眾來得願。樂易君子,不逢禍亂。
晋の卦が升の卦に変わる。甘露温和滋潤にして、衆人前来するも皆な願の如し。和楽平易の君子は、禍乱に遇わず。楽只君子は《詩経・小雅・南山有台》に出る。この林は恩沢普く沾わり、衆望得て遂い、平和の人は禍患に遠ざかるを主とし、大吉である。
困:東騎墮落,千里獨宿。高岸為谷,陽失其室。
晋の卦が困の卦に変わる。東に往きて馬に騎るも馬上より摔下し、千里を走りて只だ独自投宿するを得ざりき。高き堤岸塌れて深谷と為り、陽気其の居所を失えり。高岸為谷は《詩経・小雅・十月之交》に出る。この林は行途顚仆、地勢劇変し、陽衰えて位を失うを主とし、凶である。
井:入村既登,以成嘉功。尨降庭堅,國無災凶。
晋の卦が井の卦に変わる。村荘に入りて又た高処に登り、美好の功業を成就せり。尨降、庭堅のごとき賢人朝に在りて、国中災禍凶険なし。庭堅は八凱の一、《左伝・文公十八年》に見る。この林は進取成り有り、賢者國を輔け、境内災なきを主とし、大吉である。
革:邯鄲反言,父兄生患。竟涉憂恨,卒死不還。
晋の卦が革の卦に変わる。邯鄲に在りて反覆無常の話を説き、父親兄長此れによって禍患を生出せり。一路跋涉尽く憂愁怨恨にして、最終に外に死して家に帰る能わざりき。この林は言語反覆して禍を招き、尊親を連累し、他郷に客死するを主とし、大凶である。
鼎:玉銳鐵頤,倉庫空虛。賈市無盈,興利為仇。
晋の卦が鼎の卦に変わる。玉の作れる鋒刃、鉄の鋳れる下巴は、皆な中に看るも中に用ゐざるの物なり。倉庫空空蕩蕩として、買売を為すも盈餘なく、本より利を興さんと欲するも反って仇怨を結ぶ。この林は外強く中干き、家資匱乏し、利を謀りて怨を招くを主とし、凶である。
震:白鳥御餌,鳴呼其子。施枝張翅,來從其母。
晋の卦が震の卦に変わる。白鳥食餌を銜みて、鳴叫して己が幼雛を呼ぶ。幼鳥枝を離れ翅膀を張り、飛来りて母親に随う。この林は慈親哺育、子女来りて帰り、家人相聚まるを主とし、吉である。
艮:學靈三年,聖且神明。先見善祥,吉盛福慶。神馬來見,告我無憂。
晋の卦が艮の卦に変わる。靈異の術を学習すること三年にして、聖明にして神に通ずるの地步に達す。能く預め吉祥の徵兆を見、吉慶豊盛、福沢綿長なり。神馬前来りて相見え、我に憂うる勿れと告ぐ。この林は修習成り有り、先先を知り覚り、祥瑞降臨するを主とし、大吉である。
漸:雲孽蒸起,失其道理。傷害年穀,神君之精。
晋の卦が漸の卦に変わる。妖異の雲気蒸騰して起り、応有の常理を失えり。一年の穀物を損傷せるは、此れ神君の気の致す所なり。この林は天象反常、莊稼損を受け、鬼神警を示すを主とし、凶である。
歸妹:春耕有息,利入利福。獻 大豵,以樂成功。(大疑當作私)
晋の卦が帰妹の卦に変わる。春天耕種して収成有り、利益門に入り福気到来す。大小の猪豕を献上し、以て成功を歓慶す。校語に「大」の字は疑うらく「私」と作るべしと、《詩経・豳風・七月》は正に「言私其豵、献豣于公」の句有り。この林は農事獲有り、祭享礼を成し、功を慶して福を得るを主とし、大吉である。
豐:羸豕躑躅,虎來都邑。遮遏左右,國門敕急。
晋の卦が豊の卦に変わる。瘦弱の猪徘徊して前せず、老虎は却って都城に闖入せり。左右皆な堵截せられ、城門令を下して緊急戒厳す。羸豕孚蹢躅は《周易・姤》の初六に出る。この林は弱者其の位に安んぜず、猛悪境に入り、四面急を告ぐるを主とし、凶である。
旅:東行西維,南北善迷。逐旅失群,亡我襦衣。
晋の卦が旅の卦に変わる。東に走りて又た西に纜を繋ぎ、南北方向最も迷失し易し。旅伴に追随するも隊を掉ち、還た我が短衣を失えり。この林は方向定まらず、群を離れ伴を失い、行旅折損するを主とし、凶である。
巽:居室之倫,夫婦和親。小人乘車,車在夫家。碩果失豢,不知孰是。
晋の卦が巽の卦に変わる。一家人の倫常は、夫妻和睦相親するに在り。地位低下の人は車に乗れたりと雖も、而して車は本より丈夫家の所有なり。大きな果実養護を失い、誰が是で誰が非かも亦た弄清楚ず。碩果不食は《周易・剥》の上九に出る。この林は内室本より和順に宜しきも、然れど名分錯乱し是非明らかに難く、吉中に疑を生ず。
兌:東方孟春,乘冰載盆。懼危不安,終身所歡。
晋の卦が兌の卦に変わる。東方孟春の時節、薄冰を踩み又た盆子を頂きて行走す。心中恐懼危険にして安寧を得ざれど、此の戒慎は反って終身歓楽の憑借と為れり。この林は処境危殆を主とし、唯だ常に戒懼を懐くのみ方に平安を長保する能し、懼れて後安んず。
渙:風吹塵起,十地無所。南國年傷,不可安處。
晋の卦が渙の卦に変わる。大風塵土を吹起して、四方の大地倶に容身すべき処なし。南方の邦国年成損を受け、安居する法なし。この林は風塵日を蔽い、歳歉して民流れ、居処寧ならざるを主とし、凶である。
節:重載傷車,婦女無夫。三十不室,獨坐空廬。
晋の卦が節の卦に変わる。裝載太重にして車子を壓壞し、婦人に丈夫なし。三十歳に到るも未だ家を成さず、独自空屋の中に坐す。この林は負荷過重にして器毀れ、婚姻遅滞し、孤身伴なきを主とし、凶である。
中孚:敗牛羸馬,與利為市,不我嘉喜。
晋の卦が中孚の卦に変わる。病牛瘦馬を拿して交易して利を求めるも、我が盼望する歓喜を換え来れず。この林は貨色低劣、交易失利し、求むる所遂わざるを主とし、不吉である。
小過:月出阜東,山蔽其明。章父憂僂,箕子徉狂。
晋の卦が小過の卦に変わる。月亮は東辺の土山より升起するも、山巒却って其の光明を遮住せり。章父は駝背を為に憂愁し、箕子只好く疯狂を假裝せり。箕子の佯狂して禍を避くるは《史記・宋微子世家》に見る。この林は賢者蔽われ、明にして彰らざるを主とし、唯だ痴を裝い自ら晦して以て身を保つのみ。
既濟:出入門所,欲道開通。杞梁之信,不失日中。少季渡江,來歸其邦。疾病危亡。
晋の卦が既済の卦に変わる。自家の門戸に出入し、只だ道路の開通せんことを盼ぐ。杞梁のごとき守信の人は、正午に約せば便ち決して期を失わず。少季大江を渡りて、己が邦国に帰る。只だ身に疾病有りて性命に危る。この林は信を守り期の如くし、遠人帰るを得るを主とし、然れど疾病身に纏い、吉中に大凶を蔵す。
未濟:邑居衛師,如轉蓬時,居之凶危。
晋の卦が未済の卦に変わる。衛国の軍を駐する城邑に住み、風に随いて打転る蓬草の如く漂泊定まらず、居留するは凶险危殆なり。轉蓬は古人の漂泊無根を形容する常喻。この林は兵戎の地に寄居し、居るに定所なく、処れば必ず危うきを主とし、凶である。
明夷の林(明夷卦六十四林)
明夷:他山之錯,與璆為仇。來攻吾城,傷我肌膚。邦家騷憂。
明夷の卦が自ら変じても明夷の卦のままである。他郷の山より採り来たる粗礪の磨石は、本より美玉を琢磨するに用いるべきに、如今反って美玉と仇敵を結び、来りて我が城邑を攻打し、我が肌膚を划破し、邦国上下をして騒動憂懼せしめたり。《詩経・小雅・鶴鳴》に「他山之石、可以攻玉」の語有り、本より外力を借りて以て己の善を成すを喻うも、此処は反って其の意を用い、本より倚重すべき外援が反って禍患と為るを指す。主とする所は外侮内扰の象、宜しく壁を堅くして自ら守り、軽挙妄動すべからず。
乾:踐履寒冰,十步九尋。惟有苦痛,不為病憂。
明夷の卦が乾の卦に変わる。足は薄薄たる寒冰を踏みて行走し、十歩を走るに九次深浅を探摸し、歩歩小心す。此のごとき走法は苦楚難当と雖も、終に只だ筋骨の労頓なるのみ、疾病の憂を醸成するに至らず。主とする所は険に処りて自ら保つ能くの象、過程辛苦なれど結局傷なし。
坤:太公避紂,七十隱處。卒逢聖文,為王室輔。
明夷の卦が坤の卦に変わる。姜太公呂尚は商紂の暴政を避くるが為に、渭水の濱に隠居して垂釣し、年七十を過ぐも仍お仕に出るを肯ぜず。後に終に聖明の周文王に遇い、師尚父と尊ばれ、周王室の輔弼重臣と為れり。此れは《史記・斉太公世家》の載する所の文王渭濱に呂尚に遇うの事を用う。主とする所は久しく困えりて終に明主に逢うの象、眼下は宜しく隠忍して時を待ち、晩来必ず大用を獲ん。
屯:日月之塗,所行必到,無有患悔。
明夷の卦が屯の卦に変わる。走る所は日月運行のごとき恒常有度の軌道にして、只だ此の路に循りて前行すれば、目的地必定にして到達する能く、途中憂患を生ぜず、事後も懊悔を留めず。主とする所は正道に循りて穏妥にして必ず成るの象、吉である。
蒙:諷德誦功,美風盛隆。旦輔成周,光濟沖人。
明夷の卦が蒙の卦に変わる。人人上に在る者の徳行と功業を傳誦し、美好の風気此れによって昌盛隆厚なり。周公旦は年幼の成王を輔佐し、成周洛邑を営建し、周室を光大して幼主を扶助せり。「沖人」は即ち幼小の君、是れ成王の自ら称する所、《尚書・金縢》諸篇に見る。主とする所は賢臣幼主を佐え、政通じ人和するの象、大吉である。
需:童子無室,未有配合,空坐獨宿。
明夷の卦が需の卦に変わる。年少の男子未だ家を成さず、相配すべき伴侶を尋ね得ず、只だ空しく一室を守り、独自に夜を過ぐすのみ。主とする所は時機未だ至らず、孤单にして偶を待つの象、求むる事眼下に応和する人なく、宜しく安分にして等待し、必ずしも強求する勿れ。
訟:穿鼻繫株,為虎所拘。王母祝祠,禍不成災。遂然脫來。(祠一作詞)
明夷の卦が訟の卦に変わる。牛は鼻縄を穿たれて樹樁に拴られて動く能わず、又た猛虎に圍困せられたり。幸いに西王母之が為に祝禱祠祭し、凶禍終に災殃を釀成せず、最後に竟に安然として脱身して帰れり。主とする所は身拘系に陷りて神霊の護佑を得るの象、初めは凶险にして制せらるも、終に危を轉じて安と為す能し。夾注に「祠」は一本に「詞」と作ると称す、即ち祝禱の辞。
師:黃帝神明,八子聖聰。佚受大福,天下平康。
明夷の卦が師の卦に変わる。黄帝英明神武にして、其の衆多の子嗣個個に聖哲聡睿なり。天下此れによって大福を安享し、四海平定康寧す。伝えて黄帝二十五子、姓を得る者十四人、《國語・晋語》に見る。主とする所は上に明主有り、下に賢嗣有り、国安泰を挙ぐの象、大吉である。
比:深谷為陵,衰者復興。亂傾之國,民德安息。中婦病困,遂入冥室。
明夷の卦が比の卦に変わる。深深たる山谷隆起して丘陵と変じ、本已に衰敗せるは重新に振興す。原先動乱傾覆せし國家も、百姓も亦た徳政に因りて安息を得たり。「高岸為谷、深谷為陵」は《詩経・小雅・十月之交》に出る、世事の翻覆を喻う。只だ家中の主婦病重困頓にして、終に挺り過ぐる能わず、幽冥の墓室に入れり。主とする所は国運転じて吉に向かい私門に喪有るの象、公事成る可し、家中は須らく疾病を防ぐべし。
小畜:道遠遼絕,路宿多悔。頑嚚相聚,生我畏忌。
明夷の卦が小畜の卦に変わる。前路遥遠にして阻絶し、途中投宿する處處に人をして懊悔せしむ。一路上遇う所は又た尽く頑劣愚妄の徒が一處に聚まり、人をして心に畏懼顧忌を生ぜしむ。「頑嚚」は《尚書・堯典》の「父頑母嚚」に出る、事理を明らめず信義を講ぜざる人を指す。主とする所は遠行利あらず、交る所其の人に非ざるの象、門を出でて遠く渉るに宜しからず。
履:旦樹菽豆,暮成藿羹。心之所樂,志快心歡。
明夷の卦が履の卦に変わる。早晨に豆苗を種え、傍晚に就いて豆葉を摘みて菜羹に煮る、収成の来ること又た快く又た実在り。此れ本より己が心の喜び好む所の事を為すにして、因って志気舒暢にして、歓喜心に満つ。主とする所は謀るに速効を求め、心に称い意に如くの象、吉である。
泰:切切之患,凶憂不成。虎不敢囓,利當我身。
明夷の卦が泰の卦に変わる。彼の眉睫に迫る切身の憂患は、最終に並びに真の凶险を釀成せず。猛虎を連ねても敢えて口を下し噬咬せず、好処は反って我が身に落ち着く。主とする所は驚有りて険なし、憂を轉じて利と為すの象、虚驚一場して終に実恵を得。
否:王伯遠宿,長婦在室。異庖待食,所求不得。
明夷の卦が否の卦に変わる。王侯の長は遠行して外に投宿し、家中の長婦は独り空房を守る。両處各々竈爨を起し、分かれて飯の開くを待つも、欲する団聚は終に求めて得ず。主とする所は人事離析、求むる所落空するの象、凶である、事を謀るは宜しく緩く、合を求めて成り難し。
同人:寒燠失時,陽旱為災,雖耗無憂。
明夷の卦が同人の卦に変わる。寒冷と温暖顛倒して序を失い、節候正ならず、烈日久旱して災荒を釀成す。此れに因って折損耗費有ると雖も、却って大なる憂患を招来するに至らず。主とする所は小損にして大害なきの象、財を破りて災を消し、平安を保つ可し。
大有:雖窮復通,履危不凶,得其明功。
明夷の卦が大有の卦に変わる。眼下困窘阻塞と雖も、隨後重新に通達す。危険の地に踏み入るも凶禍を招致せず、反って顕赫の功業を成就する能し。主とする所は先に困えりて後に亨り、険を履みて夷の如しの象、吉である。
謙:狼虎所宅,不可以居,為我患憂。
明夷の卦が謙の卦に変わる。彼処は豺狼猛虎の盤踞する巢穴にして、決して人の安身すべき地方に非ず、勉强して住み下すれば只だ自らに憂患を招来せん。主とする所は地に処ること当ならず、居を擇ぶに宜を失せしの象、凶である、宜しく速やかに遷避し、久しく留まるべからず。
豫:喋囁處耀,明昧相傳。多言少實,語無成事。
明夷の卦が豫の卦に変わる。頭を交え耳を接し、窃窃と私議する人は四處に張揚し、真話假話展転相伝し、明暗混雑す。話の多きこと実事の極めて少なきにして、終に一件の事も办成る能わず。主とする所は口舌紛紜、虚言事を誤るの象、宜しく言を慎み默を守り、伝聞を軽信すべからず。
隨:履冰蹈凌,雖困不窮。播鼓登巖,卒無憂凶。
明夷の卦が随の卦に変わる。足は薄冰を踏み、堅硬の冰凌の上を行走す。処境困頓と雖も走頭无路に至らず。鼓を撃ちて道を開き高岩に攀登して、最終も亦た憂患凶险に遇わざりき。主とする所は険を渉りて自ら全うする能くの象、艱難の中に自ずから護持有りて、終に平安に帰す。
蠱:文墨且墨,禍福相雜。南北失志,東西不得。(一云:文墨且黑,禍福相雜。)
明夷の卦が蠱の卦に変わる。文書筆墨昏暗不明にして、吉凶禍福一處に混雑して分辨し難し。南に往き北に往きても倶に心願に合わず、東に向かい西に向かうも一物の獲もなし。主とする所は進退両難、吉凶未だ定まらざるの象、事を謀るに宜しく静守して明を待ち、四出奔走すべからず。夾注に一本を載せて「文墨且黑」と作り、字異なれど義同じとす。
臨:爭訟不已,更相談詢。張季弱口,被髮北走。
明夷の卦が臨の卦に変わる。官司争執休まず、両造反覆して対質盤問す。張季口拙く辞窮まりて、答辩及ばず、最後に披頭散髪して北に逃走せり。主とする所は詞訟利あらざるの象、人と争競すれば必ず敗訴受辱に致る、宜しく早く訟を息め和を求むべし。
觀:德積逢時,宜其美才。相明輔聖,拜受福休。長女不嫁,後為大悔。
明夷の卦が観の卦に変わる。徳行積累深厚にして又た恰好其の時に逢い、正に其の美好の才具に配するに足る。明君を輔相し聖主を佐助して、官爵と美好の福禄を拜受す。只だ家中の長女遅遅として嫁するを肯ぜず、日后必ず大憾と成らん。主とする所は仕途大吉にして婚嫁宜しく早きの象、功名就る可し、兒女の婚事は拖延すべからず。
噬嗑:江水沱汜,思附君子。仲氏愛歸,不我肯顧。侄娣恨悔。
明夷の卦が噬嗑の卦に変わる。大江は沱・汜の两條の支流を分かち、終に還た主流に匯り帰る、正に女子の一心に君子に依附せんと思念するが如し。「江有汜」は《詩経・召南・江有汜》に出る、本より媵妾の被弃の怨を詠ず。仲氏寵愛を承けて帰ると雖も、肯えて回頭して我を照看せず、随嫁の侄娣は只だ満懐の怨恨懊悔を落とすのみ。主とする所は情縁偏薄、人に見弃せらるるの象、凶である。
賁:光禮春成,陳室雞鳴。師明失道,不能自守。消亡為咎。
明夷の卦が賁の卦に変わる。春天の典礼光彩隆重に办められ、陳国の宮室には暁を報ずる鶏鳴の声声不断に絶えず、「鶏鳴」は《詩経・斉風・鶏鳴》の賢妃夫を警めて政に勤むの意を用う。惜しむらくは軍旅精明を顕すと雖も正道に背離し、己が本分を守る能わず、終に消亡して大咎と成るに至れり。主とする所は始め盛んにして終に敗るるの象、外表光鮮にして内其の守りを失う、凶である。
剝:驚虎無患,虞為我言,賴得以安。
明夷の卦が剥の卦に変わる。途中猛虎の驚嚇を受けたれど禍患を釀成せず、山沢を掌る虞人我が為に通報指點し、其の助けに頼って始めて平安を得たり。「虞」は《周礼》の載する所の山林川沢を守る官。主とする所は険に遇いて貴人の相救を得るの象、驚有りて険なし、終に安寧を獲。
復:偽言妄語,轉為詿誤,不知狼虎。
明夷の卦が復の卦に変わる。虚假の言辞、荒誕の伝聞展転相伝し、最後に牽連貽誤を釀成して、人をして渾然として覚らざる中に豺狼虎豹に撞上せしむ。主とする所は謡言を軽信し、誤りて険地に入るの象、凶である、凡事宜しく自ら査証し、人に任せて擺布せらるるべからず。
旡妄:履□自敵,凶憂來到,痛不死哭。
明夷の卦が旡妄の卦に変わる。行い履む所は自ら己と為敵して、凶险憂患随いて来れり、痛み極処に至るも連れて哭を哭するに声なし。原文此処に闕字有り、「□」を以て疑を存して臆補せず。主とする所は自ら災咎を招くの象、大凶である、禍は己より作す、宜しく躬を反し省みて、行止を收斂すべし。
大畜:牽尾不前,逆理失臣,惠朔以奔。
明夷の卦が大畜の卦に変わる。牛尾を牽きて前に拉くも紋絲も動かず、事事常理に違背し、因って臣属の擁戴を失う。衛惠公朔は終に迫られて他国に出奔せり。此れは《左伝》の載する所の衛宣公の子公子朔(衛惠公)国人に逐われて斉に出奔せしの事を用う。主とする所は理に悖り衆を失い、迫られて出走するの象、凶である。
頤:三狸捕鼠,遮遏我後。死於還城,不得脫走。(還一作環)
明夷の卦が頤の卦に変わる。三匹の野猫圍を合わせて鼠を捕え、背後より退路を死死に堵住す。老鼠は環城の処に於いて逮えられ咬死せられ、終に逃脱する能わざりき。主とする所は四面制を受け、進退路なきの象、大凶である、宜しく早く鋒芒を避け、恋戦すべからず。夾注に「還」は一本に「環」と作ると称す、環城は即ち城を繞るの地。
大過:言笑未畢,憂來暴卒。身墨丹索,檻內裝米。
明夷の卦が大過の卦に変わる。談笑未だ說き終らざるに、憂患已に猝然として降臨せり。身上に墨刑刺字せられ、紅縄を以て捆縛せられ、囚籠に裝められて米を裝むが如く押解し去れり。「墨」は五刑の中の黥面の刑、《尚書・呂刑》に見る。主とする所は楽極まりて悲を生じ、禍天より降るの象、大凶である、眼下歓会の中に已に刑獄の災を伏せたり、宜しく謹慎して自ら守るべし。
坎:陰積不已,雲作淫雨。傷害平陸,民無室屋。
明夷の卦が坎の卦に変わる。陰気断えず積聚し、濃雲化して綿綿として止まざる暴雨と為り、平坦の陸地を沖し狼藉一片と為し、百姓連れて棲身の屋舎もなし。主とする所は陰盛んにして災を為し、水患民を傷めるの象、凶である、宜しく早く防備を為し、低下の地に安居すべからず。
離:山林麓藪,非人所處。鳥獸無禮,使我心苦。
明夷の卦が離の卦に変わる。深山老林、山脚草沢は、本より人の安居すべき去処に非ず。彼処は鳥獣横行して礼数を知らず、我が心中をして愁苦堪え難からしむ。主とする所は身僻陋に処り、情理に通ぜざる者と事を共にするの象、凶である、在る所其の位に非ず、宜しく遷改を謀るべし。
咸:新作初陵,踰陷難登。三駒推車,跌損傷頤。(陷一作險)
明夷の卦が咸の卦に変わる。剛わずかに堆筑し起されたる高陵は、坡陡く坑深くして、攀登し上ること甚だ難し。三匹の小馬力を合わせて車を推すも、仍お足を失し跌倒して、下巴を摔傷せり。主とする所は力小さくして任重きの象、凶である、新たに起る事根基未だ固からず、勉强して力を用いれば反って損傷を受く。夾注に「陷」は一本に「險」と作ると称す。
恆:魂微惙惙,屬纊聽絕。擴然大通,復更生活。
明夷の卦が恒の卦に変わる。魂魄微弱、気息奄奄として、家人已に新綿を口鼻の上に放して探試するも、幾ほどなく呼吸を聞き得ず。「属纊」は古人の気絶を験するの礼節、《礼記・喪大記》に見る。忽然として胸中豁然として通暢し、竟に又た活転して来れり。主とする所は絶処に生に逢うの象、危困極点に到りて反って轉機を得、久病愈る可し。
遯:欒子作殃,伯氏誅傷。州籲奔楚,去其邑鄉。
明夷の卦が遯の卦に変わる。欒氏の子風浪を興して禍殃を釀成し、伯氏此れによって誅戮傷害に遭えり。衛国の公子州吁は楚地に出奔して、己が城邑郷里を抛下せり。州吁兄を弑して自立するも終に誅せらる、事は《左伝・隠公四年》に見る。主とする所は禍蕭墻に起り、身放逐に遭うの象、大凶である、宜しく是非に遠ざかり、争権に参与すべからず。
大壯:驕滷奇形,造惡作凶。無所能成,還自滅身。
明夷の卦が大壮の卦に変わる。驕横粗魯、模様を裝い樣子を作る人は、一味に悪を造り凶を行い、結果何事も办成る能わず、反って自らを毀し去れり。主とする所は強を逞しゅうして禍を肇め、自ら滅亡を取るの象、大凶である、宜しく驕気を收斂し、行を改め正を守るべし。
晉:陳辭達情,使安不傾。增榮益譽,以成功名。
明夷の卦が晋の卦に変わる。辞令を陳述して実情を説き透す能く、局面をして安定して傾覆に致らざらしむ。此れにより聲望日に増え榮譽日に厚くして、終に功名を成就せり。主とする所は言を善くして用を得るの象、吉である、宜しく言を進め策を献ずべし、主上必ず納れん。
家人:三杞無棗,家無積莠。使鳩求婦,頑不我許。
明夷の卦が家人の卦に変わる。三株の杞樹は棗子を結ばず、家裏に連れて一堆の雑草も積み得ず、一貧如洗たり。笨拙の鳩鳥を派して己が為に親を求めしむるも、対方頑固として肯諾せず。主とする所は家貧にして偶を求めて成らざるの象、凶である、托する所其の人に非ず、婚事諧ること難し。
睽:慎禍重患,顏子為尤,乃能安存。牢戶繫羊,乃能受福。
明夷の卦が睽の卦に変わる。謹慎に禍を防ぎ後患を重んじ、顔回の如く己を克して礼を復るを最も要緊の事と為して、始めて平安長存を保つを得。羊を圈の内に拴牢して走失せしめずして、始めて福沢を承受する能し。顔子の事は《論語・顔淵》に見る、孔子其の「三月仁に違わず」を許せり。主とする所は慎守自持すれば則ち吉の象、謹慎すれば則ち安んじ、疏忽すれば則ち失う。
蹇:鹿得美草,鳴喚其友。九族和睦,不憂飢乏。
明夷の卦が蹇の卦に変わる。鹿は肥美の青草を尋ね得て、便ち鳴叫して同伴を招呼して斉しく来りて食せしむ。「呦呦鹿鳴、食野之苹」は《詩経・小雅・鹿鳴》に出る、是れ嘉賓を宴饗するの楽。九族此れによって和睦相親し、再び飢餓匱乏を憂うるに及ばず。主とする所は利を得て人と共享する能く、家族和順の象、大吉である。
解:亡玉失鹿,不知所伏。利以避危,全我生福。甘雨時降,年穀有得。
明夷の卦が解の卦に変わる。美玉を失い獵鹿を走脱せしめ、其の蔵れ在る所を知らず。此の時最も宜しく危険を避けて、始めて性命と福分を保全する能し。後に甘美の雨水時に按じて降下し、年成穀物終に収穫有り。主とする所は先に失い後に得るの象、小さく損耗有り、険を避け静を守りて、反って豊足を獲。
