乾の林(乾卦六十四林)
需之萃:大口宣舌,神使仲言。黃龍景星,出應德門。與福上天,天下安昌。
需の卦が萃の卦に変わる。大口を張り言辭を宣揚し、神明仲氏を差遣して前來して話を傳えしむ。黄龍と景星と出現し、徳ある者の門に應和す。古人は黄龍・景星を以て太平の祥瑞と爲す。《漢書・天文志》に見ゆ。福氣隨いて上達して天に至り、天下安定昌盛す。萃は聚合で、徳行既に聚れば瑞應自ら來る。占うに祥瑞並び至り、國泰民安なり。大吉。
需之升:凶子禍孫,把劍向門。凶訟歡囂,驚駭我家。
需の卦が升の卦に変わる。兇悍の子・禍を惹く孫、劍を提げて家門に冲り向かう。凶險の爭訟喧鬧休まず、我が一家人を驚駭せしむ。升は上進を主とするも、家教立たざれば子孫反つて禍患と爲る。占うに家門寧ならず、官非纏まる。大凶。
需之困:祝伯善言,能事鬼神。辭祁萬歲,使君延年。
需の卦が困の卦に変わる。祝史伯氏祝禱の辭に擅み、鬼神に侍奉する能くす。彼萬歳の壽を祈求し、君主をして延年益壽せしむ。《詩経・小雅・楚茨》に「工祝告を致す」の語あり。祝官は正に祭祀祝辭を主司する人なり。困は困窮の卦なれど、神明の護佑を得れば困厄解くべし。占うに祈禳効あり、身安く壽永し。吉。
需之井:圭璧琮璋,執贄見王。百里甯戚,應聘齊秦。
需の卦が井の卦に変わる。圭・璧・琮・璋等の玉器を手持ちして見面の禮と爲し、君王を朝見す。百里奚と寧戚、分かれて秦國と齊國とに應聘す。百里奚は秦穆公の五羖大夫、寧戚は牛角を扣きて歌い齊桓公に用ゐられたり。事皆《史記》に見ゆ。井は人を養いてその源竭きざるを主とし、賢者其の所を得れば國家之を用う。占うに才を懷きて遇を得、聘を受けて顯達す。大吉。
需之革:昧旦乘車,履危蹈溝。亡失裙襦,催折兩軸。
需の卦が革の卦に変わる。天未だ明けざるに車に乘りて路を趕り、危途を踏み溝に跌入す。裙子と短襖とを丢し、還つて車軸二本を壓折す。革は變革を主とし、變を急ぎて時を審らかに勢を度さざれば必ず損を受く。占うに行事躁急にして、財を破り身を傷く。凶。
需之鼎:膠著木連,不出牛欄。斯饗羔羊,家室相安。
需の卦が鼎の卦に変わる。膠を以て木料を黏合堅固にせば、牛便ち欄圈を出る能わず。ここに羊を宰し飨を設け、一家人相安じて事なし。鼎は烹飪して人を養うを主とし、之を守るに堅固を以てすれば內外皆安し。占うに成を守りて安を得、家宅和順す。吉。
需之震:卷領遁世,仁德不舍。三聖攸同,周家茂興。
需の卦が震の卦に変わる。古朴の巻領の衣を著て世を避けて隱居し、仁徳の心卻って始終捨てず。太王・王季・文王の三位の聖人守る所相同じく、周家これによって繁茂興盛す。震は動なり。動きて其の徳を失わざれば必ず興る。占うに隱居して徳を守りて後大いに興る。吉。
需之艮:黍稷苗稻,垂秀方造,中旱不雨,傷風枯槁。
需の卦が艮の卦に変わる。黍・稷・禾苗と稻子、正に穗を抽き花を吐くの際に當たり、中途旱に遇いて雨降らず、また風に吹傷せられて枯槁す。艮は止なり。生長して中途に止められれば功簣を虧く。占うに事半途に至りて挫を受け、收成望なし。凶。
需之漸:冠帶南遊,與福喜逢。期於嘉貞,拜為公卿。
需の卦が漸の卦に変わる。衣冠を整え腰帶を束ねて南に遊歴し、福氣喜事と相逢う。美善貞正の道を期望し、終に公卿に拜せらる。漸は循序して進むを主とし、正道を以て進めば位顯要に至る。占うに外出して貴に遇い、仕途昇遷す。大吉。
需之歸妹:一巢九子,同公共母。柔順利貞,出入不殆,福祿所在。
需の卦が歸妹の卦に変わる。一個の巢裏に九隻の雛鳥を養い、父同じく母同じ。性情柔順にして正を守るに利あり、進入し退出して皆危險なく、福と祿と皆ここに匯聚す。《詩経・召南・鵲巢》は鳥の巢を以て家室に喩う。歸妹は嫁娶を主とし、柔順にして正を守れば家道昌盛す。占うに子孫繁盛し、出入平安なり。大吉。
需之豐:韓氏長女,稼於東海。宜家富主,柔順以居。利得過倍。
需の卦が豐の卦に変わる。韓氏家の大女兒、東海の濱に出嫁す。彼女夫家を和睦せしめ主人を富足せしめ、柔順の徳を以て安んじて其の位に居り、獲る所の利倍を加う。「稼」ここに「嫁」に通ず。豐とは盛大で、賢婦內助あれば家業倍增す。婚姻を問えば賢妻を得、財を求むを問えば厚利を獲。大吉。
需之旅:因禍受福,喜盈我室,所願必得。
需の卦が旅の卦に変わる。禍事に因りて反つて福氣を得、喜慶我が屋舍に充滿し、盼望する所必ず實現するを得。《老子》に「禍兮とは福の倚る所」と曰う、正に此の理なり。旅外に居りて轉機に逢い、逆境反つて順境と成る。占うに禍を轉じて福と爲し、心に想う事成る。大吉。
需之巽:晉平有疾,迎醫秦國。病乃大患,分為兩豎。逃匿膏盲,和不能愈。
需の卦が巽の卦に変わる。晋國の國君病を生じ、秦國に赴きて醫生を請う。病勢竟に大患と成り、二個の小童と化し、膏肓の間に逃蔵し、名醫をも治す能わず。《左傳・成公十年》は二竪膏肓に入り醫緩手を束ねるを載せ、《昭公元年》また秦國の醫和晋侯の疾を診るを載す。巽は順入で、病邪深く入りて極に至れば藥力到達する能わず。疾病を問えば沈疴起ち難し。大凶。
需之兌:牡飛門啟,憂患大解。修福行善,不為身禍。
需の卦が兌の卦に変わる。門閂飛脫し大門敞開し、憂愁禍患大いに消解す。福徳を修積し善事を廣く行えば、便ち自身に禍患を招かず。兌は和悦で、心懷開朗なれば事事順遂す。占うに困局打開し、善を行いて安を得。吉。
需之渙:追亡逐北,至止而得。雉叔相呼,反其室廬。
需の卦が渙の卦に変わる。逃亡を追趕し敗兵を追擊し、目的地に追及して擒獲する所有り。野雉と叔氏と相互に呼應し、一同に自家の屋舍に返回す。渙とは離散で、散じて復た聚れば事得て成る。占うに追尋獲あり、離れて復た合す。吉。
需之節:鳥銘既端,一呼三顛。動搖東西,危栗不安。疾病無患。
需の卦が節の卦に変わる。鳥形の銘器端正に擺放せど、一聲の呼喝三たび顛倒す。東に搖れ西に晃え、危懼戰慄して安寧を得ず。所幸疾病の方に憂患なし。節は度あるを主とし、度を失えば動蕩して寧からず。然れど其の節を守る能ければ、故に病大礙なし。占うに局勢動蕩して身體恙なく、吉凶相い參ず。
需之中孚:龍化為虎,泰山之陽。眾多從者,莫敢救藏。
需の卦が中孚の卦に変わる。竜變化して老虎と成り、泰山の南面に盤踞す。隨從する人多しと雖も、敢えて救助し藏匿する者なし。中孚は誠信相い孚るを貴ぶ。威勢太盛なれば衆人畏懼して親しまず。占うに威重くして孤立し、衆畏れて助けなし。威を省みて徳を修むるに宜し。
需之小過:焱風忽起,車馳揭揭。棄名追亡,失其和節,憂心輟輟。
需の卦が小過の卦に変わる。旋風忽然刮起し、車馬疾馳して顛簸止まず。名聲を抛下して逃亡する人を追趕し、和順の節度を失い、憂心忡忡として自ら止む能わず。小過は只だ小事を行うに宜しく、下に宜しく上に宜しくならず。躁進すれば節を失す。占うに行事度を失い、心神寧からず。凶。
需之既濟:遊居石門,祿安身全。受福西鄰,歸飲玉泉。
需の卦が既濟の卦に変わる。石門に遊歴安居し、祿位安穩にして身體保全す。西邊の鄰居より福澤を領受し、歸りて玉泉の水を飲用す。《既濟》九五に「東鄰の牛を殺すは、西鄰の禴祭に如かず、實に其の福を受く」と曰う。重んずる所は誠敬にして牲牢の豐厚に在らず。占うに身を安んじ命を立て、福を受け養を得。吉。
需之未濟:登高上山,見王自言。申理我饞,得職蒙恩。
需の卦が未濟の卦に変わる。高處に登り山頂に爬り、君王に見えて自ら陳説す。我に對する讒毀を申辯澄清し、因りて官職を得恩澤を蒙る。未濟は事情尚未だ辦成せざる卦で、自ら陳する能くば未成の者終に成るべし。占うに冤屈雪を得、身を進めて祿を受く。吉。
訟の林(訟卦六十四林)
訟之訟:文巧俗弊,將反大質。僵死如麻,流血濡櫓。皆知其母,不識其父,干戈乃止。
訟の卦が自ら変じても訟の卦のままである。文飾巧僞にして風俗敗壞し、將に質朴の世に返歸せんとす。僵卧の死尸亂麻のごとく多く、流出の血大盾をも浸透す。賈誼《過秦論》に「尸を伏すこと百萬、血を流して櫓を漂はす」の語あり。正に此の等の慘狀を寫す。亂世の中人々只だ母あるを知りて父を識らず、干戈至りて終に停息す。訟は爭訟を主とし、爭い極處に至れば兩敗俱に傷く。占うに大亂の後大治に歸し、先に大凶にして後定を得。
訟之乾:文王四乳,仁愛篤厚。子畜十男,夭折無有。
訟の卦が乾の卦に変わる。周文王四乳を生有し、仁愛の心篤實深厚なり。十個の兒子を養育し、夭折する一個もなし。《淮南子・修務訓》に「文王四乳、これを大仁と謂う」と記す。乾は父道剛健で、徳厚ければ子孫蕃盛す。子嗣を問えば人丁興旺にして育養災なし。大吉。
訟之坤:日入望東,不見子家。長女無夫,左手搔頭。
訟の卦が坤の卦に変わる。太陽山に落つる時東に眺望して、子家の人影を望見ず。長女尚未だ夫婿なく、只だ左手を以て頭髮を搔きて愁う。《詩経・邶風・靜女》に「首を搔きて踟蹰す」の態あり、正に此の般の光景なり。坤は純陰で、孤陰陽なければ婚配成り難し。婚姻を問えば佳期渺茫、行人を問えば音信斷絕す。凶。
訟之屯:東上泰山,見堯自言。申理我冤,以解憂患。
訟の卦が屯の卦に変わる。東に向かい泰山に登り、唐堯に見えて自ら陳訴す。我が冤屈を申辯伸雪し、因りて憂愁禍患を解除す。傳うる所に堯舜東に巡狩して岱宗に至り、訟を聽き疑を決すと。屯は初生艱難の卦で、冤情申訴するを得れば艱難自ら解く。占うに冤を訴えて直を得、憂患消除す。吉。
訟之蒙:奎軫溫湯,過角宿房。宣時布和,無所不通。
訟の卦が蒙の卦に変わる。奎宿と轸宿との間温暖湯のごとく、星次運行して角宿を經て房宿に止宿す。時令を宣明し和氣を布散し、行われざる無し。奎・轸・角・房は皆二十八宿の名で、古人星次に據りて農時を定む。蒙とは昏昧にして啓かるるを待つ。天時の明を得れば通ぜざる無し。占うに時令順遂にして、諸事亨通す。吉。
訟之需:飲船牽頭,雖拘無憂。王母善禱,禍不成災。
訟の卦が需の卦に変わる。船身水に浸りて人に船頭を牽かれて前行す。拘管を受くると雖も憂患なし。西王母祈禱に善く、禍事災難を釀成せず。需とは時機を待つこと。靜に待ちて祈禳の効を俟てば險象自ら消ゆ。占うに小さく拘束あれど終に大害なし。先に憂後に安し。
訟之師:鳧得水沒,喜笑自啄。毛羽悅澤,利以攻玉。公出不復,伯氏客宿。
訟の卦が師の卦に変わる。野鴨水を得て其の中に潜入し、歡喜して自ら羽を梳理啄む。羽毛光潤悦澤にして、以て美玉を琢磨するに宜し。然れど主公門を出でて再び回らず、伯氏只だ外に客居して夜を過ごすのみ得たり。《詩経・小雅・何人斯》に「伯氏塤を吹き、仲氏箎を吹く」の歎あり、正に朋友の乖離を傷む。師は衆を聚めて出征するを主とし、其の所を得れば安樂に、其の歸を失せば孤零なり。占うに意を遂げて人事離散す。吉凶相い參ず。
訟之比:水流趨下,欲至東海。求我所有,買魴與鯉。
訟の卦が比の卦に変わる。水低處に向かいて奔流し、一心に東海に流れんと要す。我が有する所の物を尋求し、魴魚と鯉魚とを買來す。比は親附相輔で、勢に順い行えば求む所必ず得。占うに流れに順いて利を得、交易順遂す。吉。
訟之小畜:獐鹿逐牧,安飽其居。反返次舍,無有疾故。
訟の卦が小畜の卦に変わる。獐子と鹿と追逐して食を覓め放牧し、己が居處に安んじて飽足す。住所に返回して安歇し、疾病なくまた變故なし。小畜は小を以て大を蓄う。分に安んじ自ら足れば災なく難なし。占うに生活安穩にして平安事なし。吉。
訟之履:樹植藿豆,不得芸鋤。王事靡盬,秋無所收。
訟の卦が履の卦に変わる。豆苗豆葉を種下すと雖も、草を除き土を松くするに顧みず。《詩経・唐風・鴇羽》に「王事盬ならず」と曰う、公家の差事盡くることなく、秋に至りて何をも收せず。履は禮に循い踐行するを主とし、外に勞役すれば內に荒廢す。占うに公務纏まり、家業荒廢す。凶。
訟之泰:弱水之西,有西王母。生不知死,與天相保。
訟の卦が泰の卦に変わる。弱水の西邊、西王母を住ましむ。彼女生れて死あるを知らず、天地と一同に長存す。《山海經・大荒西經》は西王母の崑崙の丘に居り、弱水其の外を環繞するを載す。泰とは通なり。長生の地を得れば永く虞なきを保つ。占うに長壽安康にして、根基永く固し。大吉。
訟之否:數窮廓落,困於曆室。卒登玉堂,與堯侑食。
訟の卦が否の卦に変わる。氣數窮盡して空落として依る無く、簡陋の屋室に被困す。最終卻って玉堂の上に登り、唐堯に陪して一同に進食す。否極まれば則ち泰來る。困窮到底の後反つて明主に遇う。占うに先に困にして後達し、賤より貴に入る。先に凶にして後大吉。
訟之同人:子鉏執麟,春秋作元。陰聖將終,尼父悲心。
訟の卦が同人の卦に変わる。叔孫氏の車夫鉏商麒麟を捕獲し、《春秋》一書これによって絕筆して其の始元と成る。素王の運將に終盡せんとし、孔夫子之がために傷心す。《公羊傳・哀公十四年》に「西に狩りて麟を獲、孔子曰く、吾が道窮まりぬ」と載す。同人は人と和同するを主とし、聖人時に遇わざれば唯有だ悲歎す。占うに時運將に終わらんとし、志士憾を抱く。凶。
訟之大有:尹氏伯奇,父子生離。無罪被辜,長舌所為。
訟の卦が大有の卦に変わる。尹吉甫と其の子伯奇、父子活きながら分離す。伯奇本來罪過なくして刑戮を蒙るは、全て長舌婦の讒を進ませしに致る。《詩経・小雅・巷伯》は讒人を譏刺し、古注多く伯奇の事を引きて説と爲す。大有本來富盛を主とするも、然れど讒言を聽信すれば骨肉相い殘す。占うに家庭和を失い、冤を蒙りて逐わる。大凶。
訟之謙:播木折枝,與母別離。九皋難扣,絕不相知。
訟の卦が謙の卦に変わる。樹木を搖動して枝條を折斷し、孩子母親と分別離散す。深遠の九皋叩問し難く、此より音訊斷絕して彼此知らず。《詩経・小雅・鶴鳴》に「鶴九皋に鳴く」の句あり、以て幽遠にして達し難き地に喩う。謙とは卑下して益を受くること。然れど離散の痛は謙徳の化解する所能にあらず。占うに母子分離し、消息隔絕す。凶。
訟之豫:弱雞無距,與鵲格鬥。翅折目盲,為鳩所傷。
訟の卦が豫の卦に変わる。瘦弱の鶏足後の利距なく、偏に喜鵲と格鬥せんと要し、結果翅膀を折り眼睛を瞎し、また斑鳩に傷せらる。豫本來和樂順動を主とするも、强を逞うし爭鬥すれば樂極まりて悲を生ず。占うに自ら量力せず、屢々損傷を遭う。拙を守り爭を避くるに宜し。凶。
訟之隨:甲乙丙丁,俱歸我庭。三丑六子,入門見母。
訟の卦が隨の卦に変わる。甲・乙・丙・丁の諸人、一同に我が庭院に回る。三個の同類・六個の子弟、門に入り母親に拜見す。甲乙丙丁は本來天干の次序で、ここに借りて衆人の依次に至るを指す。隨とは相い隨いて從う。人衆內に歸すれば家道聚合す。占うに人丁歸聚し、闔家團圓す。吉。
訟之蠱:桑葉螟蠹,衣弊如絡。女工不成,絲布為玉。
訟の卦が蠱の卦に変わる。桑葉螟蟲に蛀蝕せられ、衣裳破れて漁網のごとし。女工布を織成さず、絲と布と貴重なること美玉のごとし。蠱は積弊患を生ずるを主とし、蠹害除かざれば百業凋敝す。占うに物力匱乏し、衣食昂貴す。凶。
訟之臨:開牢闢門,巡狩釋冤。夏臺羑里,湯文悅喜。
訟の卦が臨の卦に変わる。牢獄を打開し牢門を敞開し、天子巡狩の時冤を蒙る人を釋放す。商湯夏台を脫出し、周文王羑里を走出し、二位の聖人之がために歡喜す。《史記》は湯夏台に囚われ、文王羑里に囚われて後釋を獲しの事を載す。臨は上に居りて下に臨む。徳澤下達すれば獄囚釋を得。占うに冤獄解を得、久困身を脫す。大吉。
訟之觀:欽明之德,坐前玉食。必保嘉美,長受安福。
訟の卦が觀の卦に変わる。恭敬明察の徳行を具有し、座前珍美の膳食を擺す。必ず美善の名を保有し、長く安寧の福澤を領受す。《尚書・堯典》は唐堯を「欽明文思安安」と稱贊す。觀は觀仰化育を主とし、徳行上に昭著なれば福澤其の身に厚し。占うに徳位相稱い、安んじて厚祿を享く。大吉。
訟之噬嗑:武夫司空,多口爭訟。金火當戶,民不安處,年飢無有。
訟の卦が噬嗑の卦に変わる。武夫をして司空の職を充任せしめ、衆口紛紜として爭執興訟す。金と火と門に當たりて相克し、百姓安居を得ず、年成饑荒にして一の有する無し。噬嗑は嚙合して梗阻を去るを主とし、人を用ゐて當を失せば梗阻愈甚し。占うに官非口舌あり、歳歉れて民困す。大凶。
訟之賁:紫閣九重,尊嚴在中。黃帝堯舜,履行至公。冠帶垂衣,天下康寧。
訟の卦が賁の卦に変わる。紫色の樓閣九重の深き有り、尊嚴の君主其の中に居る。黄帝と堯舜、踐行する所皆至公の道なり。彼ら冠帶を整肅し衣を垂れて拱手すれば、天下便ち安康寧靜す。《周易・繫辭下》に「黄帝堯舜衣裳を垂れて天下治まる」と曰う。賁は文飾を主とし、文明以て止まれば敎化天下に行わる。占うに政通じて人和し、四海康寧す。大吉。
訟之剝:負牛上山,力劣行難。烈風雨雪,遮遏我前。中道復還,憂苦自歡。
訟の卦が剥の卦に変わる。牛を背負い山に向かいて走り、力濟わずして寸步行き難し。狂風雨雪を夾み、我が去路を擋住す。半路上にて只だ折回せざるを得ず、憂苦の餘反つて自ら寛慰を尋ぬ。剥は剥落の卦で、力勝任せざれば及早に退回するに如かず。占うに力を量りて返るを知り、憂中に解あり。先に凶にして後平。
訟之復:褰兔缺唇,行難齒寒。口痛不言,為身生患。
訟の卦が復の卦に変わる。兔子の嘴唇豁裂し、行動艱難にして牙齒寒を受く。嘴痛みて話を説き出す能わず、自身に禍患を招來す。「唇亡びて齒寒し」の理は《左傳・僖公五年》宮之奇の諫に見ゆ。復は一陽來復なれど、缺損身に在れば復と雖も未だ愈えず。占うに口舌の疾あり、苦有りて言う能わず。凶。
訟之無妄:合體比翼,嘉耦相得,與君同好,使我有福。
訟の卦が无妄の卦に変わる。形體相合し雙翼並び飛び、美好の配偶彼此相い得。您と志趣相同じくして、我をして福氣を獲得せしむ。《左傳・桓公二年》に「嘉耦を妃と曰う」と稱す。《无妄》は至誠にして妄ならざるを主とし、情投意合すれば福自然生ず。婚姻を問い合伙を問うに、和順にして福を得。大吉。
訟之大畜:口啄卒卒,憂從中來。喪我寶貝,妻妾失位。
訟の卦が大畜の卦に変わる。衆口啄咬急促休まず、憂愁心裏より生出す。我が珍寶を喪失し、妻妾も皆位分を失す。大畜は蓄聚して固守するを主とし、讒口交攻すれば蓄う所盡く散ず。占うに讒言中傷し、財を破り和を失う。凶。
訟之頤:兩心不同,或從西東。明論終日,莫適相從。
訟の卦が頤の卦に変わる。兩個人心意相同じからず、一個は西に往き一個は東に往く。明明白白に爭論して整整一日、誰も肯んじて誰をも聽かず。頤は正を養うを主とし、志向同じからざれば相い養う能わず。占うに意見相い左にし、合作成り難し。凶。
訟之大過:啞啞笑言,與善飲食。長樂行觴,千秋起舞,拜受大福。
訟の卦が大過の卦に変わる。笑語啞啞、善人と一同に飲食す。長く歡樂して杯を傳え酒を行い、千秋の壽のために起舞し、叩拜して大福を領受す。《震》卦辭に「笑言啞啞」あり、處變して其の常を失わざるを説く。大過は過甚を主とすると雖も、歡會節あれば福澤深厚なり。占うに宴樂福を得、親友和睦す。大吉。
訟之坎:初憂後喜,與福為市。八佾列陳,飲御諸友。
訟の卦が坎の卦に変わる。起初憂愁して後來歡喜し、福氣と一筆の交易を做したるがごとし。八佾の舞行陣を列ね、酒を設けて衆位の朋友を款待す。八佾は天子の樂舞で、《論語・八佾》に見ゆ。坎は險陷なれど、險境過ぎたれば則ち喜慶到來す。占うに先に憂後に樂し、賓朋座に滿つ。吉。
訟之離:西徙無家,破其新車。王孫失利,不如止居。
訟の卦が離の卦に変わる。西に向かいて遷徙して歸るべき家なく、還つて新たに買いし車子を撞壞す。王孫これによって損失を蒙るは、原處に安居するに如かず。離は附麗で、附く所其の地に非ざれば動く輙ち失あり。占うに遷移利あらず、財を破り損を受く。守るに宜しく動くべからず。凶。
訟之咸:鳳凰在左,麒麟處右。仁聖相遇,伊呂集聚。時無殃咎,福為我母。
訟の卦が咸の卦に変わる。鳳凰左邊に立ち、麒麟右邊に守る。仁徳と聖明と彼此相遇い、伊尹・呂尚のごとき賢才一堂に齊聚す。鳳麟並び現るるは、古人之を以て太平の瑞と爲す。咸は交感の卦で、君臣相い感ずれば天下大いに治まる。時世災殃過咎なく、福氣母親のごとく我を護佑す。占うに賢才雲集し、時世清平なり。大吉。
訟之恆:區脫康居,慕仁入朝。湛露之歡,三爵畢恩,復歸舊廬。
訟の卦が恒の卦に変わる。匈奴邊地の區脫と西域の康居、仁徳を慕い入朝して進見す。天子《湛露》の宴を設けて歡洽を示し、三爵の酒畢りて恩意周全なり、隨いて各自故居に回歸す。《詩経・小雅・湛露》は天子諸侯を燕饗するの詩なり。恒とは常久で、遠人を懷柔すれば邦交持久すべし。占うに遠客來りて歸し、賓主歡を盡す。吉。
訟之遁:疾貧望幸,使伯行販。關牢擇羊,多得大牂。
訟の卦が遁の卦に変わる。貧窮に苦しみ僥倖して利を得んことを盼望し、便ち伯氏を打發して門を出でて貨を販らしむ。關卡牢牢欄の裏に羊隻を挑選し、肥大の母羊許多を得たり。遁本來退避を主とするも、退きて生計を經營すれば反つて厚獲あり。占うに經商利を得、求む所望む所を超出す。吉。
訟之大壯:處高不傷,雖危不亡。握珠懷玉,還歸其鄉。
訟の卦が大壯の卦に変わる。高位に身處して傷害を受けず、危險なりと雖も敗亡に至らず。明珠を手握し美玉を懷揣し、平安に己が故鄉に回到す。大壯は剛健正を守るを主とし、高に處りて正を守る能くば傾覆に至らず。占うに高に居りて安を得、財を攜えて里に歸る。吉。
訟之晉:右手棄酒,左手牧牂。行逢禮御,餌得玉杯。
訟の卦が晋の卦に変わる。右手酒杯を放下し、左手母羊を牽きて放牧に往く。路上禮を以て相い迎うる人に遇い、還つて玉杯一隻を饋贈として得たり。晋は上進して福を受くるを主とし、逸を去り勤に就けば賞を獲。占うに勤勉なれば必ず得る所有り、出行して厚遇に遇う。吉。
訟之明夷:養虎牧狼,還自賊傷。大勇小捷,雖危不亡。
訟の卦が明夷の卦に変わる。老虎を豢養し豺狼を放牧し、反つて己が身を傷害す。大勇に憑りて只だ小勝を取るのみ、危險ありと雖も滅亡に至らず。明夷は光明傷つくの卦で、禍患を內に養えば終に自ら其の害を受く。占うに自ら禍患を招きて僥倖に全うすを得。先に凶後に平。
訟之家人:戴堯扶禹,松喬彭祖。西遇王母,道路夷易,無敢難者。
訟の卦が家人の卦に変わる。頭唐堯を頂き大禹を扶助し、また赤松子・王子喬・彭祖これらの長生の士相隨う有り。西行して西王母に遇い、道路平坦にして行き好し、敢えて來りて難と爲す者なし。家人は內治序あるを主とし、聖賢仙眞の助を得れば往くに利あらざるなし。占うに貴人扶持し、行程通達し、壽考綿長なり。大吉。
訟之睽:秋冬探巢,不得鵲雛。銜指北去,愧我少姬。
訟の卦が睽の卦に変わる。秋冬の時節鳥巢を掏めに往くも、喜鵲の雛鳥を捉得せず。只だ手指を含み北に往くよりなく、我が年少の姬妾に愧う。睽とは乖離で、時令對せざれば求む所獲られず。占うに時機合わず、空手して歸り、面上光なし。凶。
訟之蹇:兩羝三牂,俱為代鄉。留連多難,損其食糧。
訟の卦が蹇の卦に変わる。二隻の公羊・三隻の母羊、一同に趕りて代地他鄉に向かわしむ。一路滯留して困難重重、還つて隨身の糧食を損耗す。蹇は跛足行き難きの卦で、遠く行きて接濟なければ愈走るほど愈困す。占うに遠行阻まれ、財を耗し折損す。凶。
訟之解:南徙無廬,鳥破其巢。伐木思初,不利動搖。
訟の卦が解の卦に変わる。南に往き遷徙して居住すべき房屋なく、鳥兒の巢もまた毀壞せり。樹木を砍伐するの際由ならず當初を追想す。此の時軽擧妄動すべからず。《詩経・小雅・伐木》は伐木丁丁を以て興を起し、故舊を追念す。解は險難消散するを主とするも、然れど根基未だ立たざれば妄動すべからず。占うに遷居着く所なく、靜守して時を待つに宜し。凶。
