噬嗑の林(噬嗑卦六十四林)
萃 三人輦車,東入旁家。主母貪饕,盜我資財。亡失犁牛。
三個の人車を推して東に走り、旁邊の人家に進入す。あの家の主母貪婪にして厭無く、我が資財を偷走し、田を耕る牛すらも丢了。此の林誤りて貪門に入り、財畜俱に失うを主とし、出行と託付とを占問うに皆凶。
升 三鶴南飛,俱就塘池。蝦□饒有,利得過倍。
三隻の鶴南に飛去し、一同に池塘邊に落着す。塘裏蝦蟹豐足にして、獲る所の利本錢の一倍に超過す。此の林地を擇ぶこと宜しきを得、利を獲ること加倍するを主とし、財を求むるを占問うに大吉。
困 鷹棲茂樹,候雀往來。一擊獲兩,利在枝柯。
鷹枝葉繁茂の樹上に棲し、麻雀の來往を靜候す。一次出擊すれば便ち兩隻を捕獲し、利便ち此の枝柯の間に在り。此の林靜を守りて時を待ち、一擧雙收するを主とし、財を求めと謀取とを占問うに皆吉。
井 堯舜欽明,禹稷股肱。伊尹往來,進履登堂。顯德之徒,可以輔王。
堯舜恭敬明察にして、禹と后稷彼らの股肱の臣と做る。伊尹湯桀の間に往返し、終に進身して堂に登りて用ゐられんを見る。徳行顯著の人、王業を輔佐する可し。此の林明主賢臣相い遇うを主とし、仕を求めと賢を薦るとを占問うに大吉。
革 枯旱三年,草萊不生。粢盛空乏,無以供靈。
大旱三年に連なり、野草すらも生長せず。祭祀に用ゐる黍稷空乏して有る無く、神靈を供奉する能わず。此の林天災歲凶し、祭祀繼がざるを主とし、農事と福を祈るとを占問うに皆利ならず。
鼎 方口圓舌,為知樞門。解釋鉤帶,商旅以歡。
方正の口・圓轉の舌、言辭に善くして關鍵門徑に通曉す。人のために鉤帶を解開し糾結を化開し、商旅因りて歡喜す。此の林言を善くして紛を解き、關節に通達するを主とし、交涉と經商とを占問うに皆吉。
震 鳧池水溢,高陸為海。江河橫流,魚鱉成市。千里無牆,鴛鳳遊行。
野鴨の棲息する池水漫溢し、高地もまた汪洋と變成す。江河橫決汎濫し、魚鼈多きこと市集のごとし。千里の內一堵の牆垣をも看不見ず、唯だ鴛鴦と鳳凰と其の間に往來す。此の林水患人居を蕩盡すを主とし、家宅を占問うに大凶、惟だ漁獵反つて獲有る所なり。
艮 烹魚失刀,駕車馬亡。錫刃不入,魴鯉腥臊。
魚を煮えんと要すれど刀を尋着けず、車を駕せんと要すれど馬を丢了。錫做の刀刃鈍くして切入らず、魴魚鯉魚腥臊して食い難し。此の林器具稱せず、事に臨みて備無きを主とし、諸事を占問うに成らず。
漸 戎狄蹲踞,無禮貪饕。非吾族類,君子攸去。
戎狄の人箕踞して坐し、禮節を講せずして貪婪厭無し。《左傳》成公四年「我が族類に非ざれば、其の心必ず異なり」と曰う、君子只だ此のごとき地方を離るるに應し。此の林異類處し難く、早く退避するに宜しきを主とし、交結と合伙とを占問うに利ならず。
歸妹 渡河踰水,狐濡其尾。不為禍憂,捕魚遇蟹。利得無幾。
河を渡り水を越えて、狐狸尾巴を沾濕せしむ、語本《易・未濟》なり。幸いに何の禍患とも算するに足らず、只だ魚を捕えんと想うて螃蟹を撈到し、利を得ること多からず。此の林險を涉りて傷なくして獲る所有限なるを主とし、財を求むるを占問うに平平。
豐 河出小魚,不宜勞煩。苛政害民,君受其患。
河裏只だ些小の魚を出す、力を費して張羅するに値せず。苛刻の政令百姓を殘害し、君と爲る者終に自ら其の禍を受く。此の林小利圖るに足らず、苛政自ら其の咎を貽すを主とし、財を求めと事を治むるとを占問うに皆寬簡に宜し。
旅 偃武修文,兵革休安。清人逍遙,來歸空閒。
武備を停止し文治を修明し、兵甲收藏安放を得。像す《詩經・鄭風・清人》の寫す所の久しく河上に戍する將士も、逍遥して歸來し、閑暇を得享す。此の林兵を偃め民を息め、久役歸を得るを主とし、家國と遠人の歸來とを占問うに皆吉。
巽 九疑鬱林,沮溼不中。鸞鳥易去,君子不安。
九疑山と郁林郡の一帶、低濕にして瘴重く居住に宜からず。鸞鳥すらも輕易に飛走す、君子此に在りて自然安寧を得ず。此の林水土服せず、居處宜ならざるを主とし、遷徙と遠行とを占問うに利ならず。
兌 搏□逢虎,患厭不起。遂至歡國,與福笑語。君子樂喜。
猛獸と搏鬥してまた老虎に碰上し、禍患壓來して爬起す能わざるに幾し。終に歡樂の邦國に到り、福氣と談笑相い對し、君子快樂歡喜す。此の林先に危にして後に安く、否極まりて泰來るを主とし、占問うに先に凶にして後に吉。
渙 狗生龍馬,公勞嫗苦。家無筐筥,折悔為吝。
狗竜馬を生下すのごとき怪異の事出現し、老翁勞碌して老婦困苦す。家中物を盛る筐筥すらも無く、折損懊悔して困吝に陷る。此の林怪異家に見え、貧窘之に隨うを主とし、家宅と生計とを占問うに皆凶。
節 嬰孩求乳,慈母歸子。黃麑悅喜,得其甘餌。
嬰兒乳を吃せんと要し、慈母便ち孩子の身邊に回到す。小鹿もまた歡喜起來して、甜美の食物を得到す。此の林慈愛相い應じ、求む所卽ち得るを主とし、育養と助を求むるとを占問うに皆吉。
中孚 有兩赤鷂,從五隼噪。操矢無筈,趣釋爾射。扶伏聽命,不敢動搖。
兩隻の赤色の鷂鷹有りて、五隻の隼を帶びて一同に聒噪す。箭を手持するに扣弦の箭筈なく、射出せず、只だ趕緊に弓矢を放下するを得。衆鳥匍匐して命を聽き、敢えて亂動せず。此の林外强にして實用なく、勢を以て人を服するを主とし、爭鬥を占問うに徒らに其の表有るのみ、止むに宜しく發するに宜しからず。
小過 伊尹智士,去桀耕野。執順以強,天佑無咎。
伊尹は智慧有る人にして、夏桀を離れて田野に躬耕す、《孟子・萬章》其の有莘の野に耕すを載す。柔順の道を守持して自然に强健し、上天保佑して過錯なし。此の林暗を去りて明に投じ、時に順いて自ら保つを主とし、退處を占問うに吉を得。
既濟 逐鹿山西,利入我門。陰陽和調,國無災殃。長子東遊,須其三仇。二句疑衍文)
山西に鹿群を追逐し、利益之に隨いて我が門に進入す。陰陽調和順暢して、國中災殃なし。長子東に往きて出游し、須く彼が三位の匹配の人を等候すべし。此の林獵獲利有り、國泰く家安しを主とし、財を求めと家國とを占問うに皆吉。末二句疑らく衍文なり。
未濟 龍興之德,周武成福。長女宜家,與君相德。長股遠行,狸且善藏。
竜の騰起する徳行を具備し、周武王因りて福業を成就す。長女家を持するに宜しく、夫君と徳行相配す。長腿の人遠行に善く、狸貓の類則ち隱藏に善し。此の林徳位相い稱い、各々其の宜しきを得るを主とし、家室と出行とを占問うに皆吉。
大畜の林(大畜卦六十四林)
大畜 朝鮮之地,姬伯所保。宜人宜家,業處子孫。求事大喜。
朝鮮あの片の土地、箕子の周室の封を受けて守有する所の地なり。人に宜しく家室に宜しく、世代子孫の産業を安置する可く、事を謀るに大いに喜慶有り。此の林地を得て安居し、子孫託有るを主とし、遷徙と業を置くとを占問うに大吉。
乾 金柱鐵關,膠固衛災。君子居之,安無憂疑。
金鑄の柱子・鐵打の關門、牢牢固守して災禍を防ぐ。君子此に住して、安穩して憂慮疑懼なし。此の林防衛堅固にして、內外虞なきを主とし、家宅と守禦とを占問うに大吉。
坤 轉禍為福,喜來入屋。春城夏國,可以飲食。保全家室。
禍事轉じて福氣と成り、喜慶屋の中に進入す。春夏の際城邑豐足にして、安心して飲食する可く、一家の老小を保全す。此の林危を轉じて安と爲し、衣食着有るを主とし、家宅を占問うに吉。
屯 水暴橫行,浮屋壞牆。泱泱溢溢,市師驚惶。居止不殆,與母相保。
洪水暴發橫流し、房屋を沖浮し牆垣を沖壞す。水勢浩蕩漫溢して、市集と軍旅と一片驚慌す。幸いに自家の居處危險なく、還て母親と相互に保全する能くす。此の林外水患に遭うて自身免を獲るを主とし、家宅を占問うに驚有りて險なし。
蒙 虎豹熊羆,遊戲山隅。得其所欲,君子無憂。旅人失利,市空無人。
虎豹熊羆山角に游戲し、各々其の願う所を得、君子これによって憂慮なし。只だ行旅の人利益を失い、市集空蕩して人無し。此の林猛獸志を得、商途蕭條するを主とし、家に居るを占問うに憂なく、經商利ならず。
需 躬禮履仁,尚德止訟。宗邑已安,三伯無患。
親身禮を守り仁道を踐行し、徳義を崇尚して爭訟を止息す。宗族城邑已に安定し、三位の方伯皆禍患なし。此の林徳を以て爭を息め、上下皆安しを主とし、爭訟を占問うに解く可し、吉。
訟 江淮易服,元黃朱飾。靈公夏徵,哀禍無極。高位崩巔,失其寵室。
江淮の一帶服色を改換し、玄黄朱紅を以て裝飾す。陳靈公夏姬と淫亂するに因りて夏征舒の弑する所と爲り、哀禍窮盡なし、事《左傳》宣公十年に見ゆ。身高位に處りて頂上より崩墜し、寵を受くる家室を失う。此の林淫亂して身を亡し、位高くして覆り易しを主とし、家國を占問うに大凶。
師 不虞之患,禍至無門。奄忽暴卒,痛傷我心。(蒙之明夷)
意料到らざる禍患、來るとき並びに尋ぬ可き門徑なし。忽然の間暴病して身亡し、我が心腸に痛徹す。此の林橫禍猝に至り、生死常ならざるを主とし、身體と家人とを占問うに大凶。同辭また「蒙の明夷」に見ゆ。
比 三塗五嶽,去危入室。凶禍不作,桀盜堯服。失其寵福,貴人有疾。
三塗山と五岳を越過し、險地を離れて室內に入居す。凶禍再び發作せず、桀のごとく凶暴・盗賊の流もまた堯の衣冠を穿上して歸化す。只だ昔日の寵遇福氣を失い、貴人還て疾病を染有す。此の林險を避けて安を得て福損有る所を主とし、身安んじて福減ずを占問うに。
小畜 配合相迎,利之四鄉。昏以為期,明星煌煌。欣喜奭懌,所言得償。
男女相配して彼此迎娶し、四方の何れの一鄕に往くも皆利有り。黄昏を期と約定し、啓明星光輝燦爛たり、《詩經・陳風・東門之楊》正に「明星煌煌」の句有り。欣喜快樂して、說く所の話皆應驗を得。此の林婚配禮を成し、言出づれば必ず踐えるを主とし、嫁娶と約信とを占問うに皆吉。
履 三首六身,莫適所閒。更伏搖動,動失事便。箕子佯狂,國乃不昌。
三個の頭六個の身子の怪物、安適にして棲止す可き一處なし。忽伏し忽動き、一動すれば便ち便利を失う。箕子只だ瘋を裝して禍を避くるを得、國家これによって昌盛する能わず。此の林體制乖異にして、賢者退避するを主とし、國事と事を謀るとを占問うに皆利ならず。
泰 虎臥山隅,鹿過後胊。弓矢設張,蝟為功曹。伏不敢起,遂全其軀。得我羙章之。(大有之訟)
老虎山角に臥し、鹿其の身後より走過す。弓箭張設して發を待ち、刺猬一團に縮まりて功曹の小吏を充當す。伏して敢えて身を起さず、因りて身軀を保全し、還て我が美好の文彩を得。此の林藏伏して禍を免れ、靜守して全を得るを主とし、占問うに潜藏するに宜しく妄動するに宜しからず、吉。同辭また「大有の訟」に見ゆ。
否 麟鳳執獲,英雄失職。自衛反魯,畏昧不起。福祿訖己。(畏一作晦)
麒麟鳳凰人の捕獲する所と爲り、英雄職位を失う。孔子衞より魯に返り、時局昏暗なるに因りて畏懼して出でず、《論語・子罕》に「鳳鳥至らず」の嘆有り。福祿自己に到りて便ち斷絕す。此の林賢者困に遭い、氣數將に終らんとするを主とし、仕進と家運とを占問うに皆凶。「畏」一本「晦」と作る。
同人 欒子作殃,伯氏誅傷。州犁奔楚,失其寵光。
晋國欒氏禍端を興起し、伯宗一家因りて誅せらる。伯宗の子伯州犁楚國に出逃し、原有の榮寵光彩を失う、事《左傳》成公十五年に見ゆ。此の林權臣禍を構え、良臣奔を出づるを主とし、家國と仕途とを占問うに皆凶。
大有 黃帝出遊,駕龍乘馬。東至泰山,南過齊魯。王良御右,文武何咎。不利市賈。
黃帝出巡遠游し、竜を駕り馬を騎す。東に泰山に到り、南に齊魯を經過す。御に善き王良車右に駕馭し、文武の臣豈に過失有らんや。只だ市集の賣買に利ならず。此の林出行顯赫にして、隨從人を得るを主とし、遠行を占問うに吉、經商利ならず。
謙 齊魯爭言,戰於龍門。構怨致禍,三世不安。
齊國と魯國と爭執下せず、龍門に交戰す。仇怨を結下して禍患を招來し、三代の人安寧を得ず。此の林口舌仇と成り、禍後世に延びるを主とし、爭訟と交惡とを占問うに大凶。
豫 道禮和德,仁不相賊。君子往之,樂有其利。
禮義を講求し徳行を調和し、心仁厚を存して彼此相い殘害せず。君子此のごとき地方に前往すれば、歡樂して獲益有る所なり。此の林風俗醇厚にして、之に往きて利を得るを主とし、出行と交結とを占問うに皆吉。
隨 嫗妒公姥,毀益亂類。使我家憤,利不得遂。
老婦公婆を忌妒し、毀謗多ければ多きほど是非愈々亂る。我が一家をして憤懣不平ならしめ、利益手に到る能わず。此の林內闈和を失い、家事紛亂するを主とし、家宅と財を求むるとを占問うに皆利ならず。
蠱 一巢九子,同公共母。柔順利貞,君子不殆。福祿所在。
一個の巢の裏九隻の雛鳥を養い、同一の父・同一の母なり。《詩經・召南・鵲巢》正に巢を以て室家に喩う。柔順にして正を守れば則ち利有り、君子これによって危險なく、福祿便ち其の中に在り。此の林家門和順し、子孫衆多なるを主とし、家事を占問うに大吉。
臨 崔嵬北嶽,天神貴客。溫仁正直,主布恩德。閔哀不已,蒙受大福。
高峻の北岳恒山、天神と貴客の居る所なり。人と爲り溫厚仁愛・正直邪無くして、主上恩徳を施布す。哀憐の心絕えず、因りて大福を蒙受す。此の林神を敬い徳を修め、天福澤を賜るを主とし、福を祈りと恩を求むるとを占問うに皆吉。
觀 三蛆逐蠅,陷墮釜中。灌沸淹殪,與母長訣。
三隻の蛆蟲蒼蠅を追逐し、鍋の裏に掉進す。沸水一澆せば便ち燙死淹沒し、此れより母親と永別す。此の林微利を逐いて死地に陷るを主とし、貪求の事を占問うに大凶。
噬嗑 東山西陵,高峻難升。滅夷掘壘,使道不通。商旅無功,復反其邦。
東邊の山・西邊の丘陵、高峻にして攀登し難し。また地勢を鏟平し壁壘を掘開し、道路をして通行する能わざらしむ。商旅一の獲る所なく、只だ本國に返回するを得。此の林道路阻絕し、經營功なきを主とし、出行と財を求むるとを占問うに皆利ならず。
賁 常德自如,不逢禍殃,福祿自來。
恒常の徳行守持自如にして、禍殃に遭遇せず、福祿自然に到來す。此の林常を守りて福有り、求めずして自ら得るを主とし、諸事を占問うに平安、吉。
剝 范子妙材,戮辱傷膚。後相秦國,封為應侯。
范雎才具卓異にして、早先笞辱を受けて幾に命を喪い肌膚俱に傷つきしも。後來秦國の丞相と做り、應侯に封ぜらる、事《史記・范雎蔡澤列傳》に見ゆ。此の林先に辱められ後に顯れ、困にして後に達するを主とし、占問うに先に凶にして後に吉。
復 狼虎結謀,相聚為儔。同齧牛羊,道絕不通。病我商人。
狼と虎と合謀し、聚まりて同伙と成る。一起に牛羊を撕咬し、道路因りて斷絕通ぜず、我が商隊を害苦す。此の林群凶黨を爲し、商途阻を受くるを主とし、出行と經商とを占問うに皆凶。
旡妄 不宜杜公,與我爭訟。媒伯無禮,自令塞壅。
本來杜公のごとき人と相交るべからざるに、彼竟に我と訟を爭起す。媒を做る人失禮無狀にして、自ら壅塞不通を招致す。此の林交る其の人に非ず、婚事訟を生ずるを主とし、爭訟と婚姻とを占問うに皆利ならず。
頤 上天樓臺,登拜受福,喜慶大來。
通天の高台に登上し、禮を行き參拜して福澤を承受し、喜慶大量に到來す。此の林高に登りて福を受け、吉慶門に盈つるを主とし、福を求めと升遷とを占問うに大吉。
大過 三羊上山,東至平康。黃龍服箱,南至魯陽。完其佩囊,執綏車中。行人有慶。
三隻の羊山に登り、東に平安康泰の地に到達す。黄竜車廂の前に駕し、南に魯陽に到る。佩囊完好にして損無く、人車中に在りて車に上るの綏帶を握る。出行の人喜慶有り。此の林行途安順し、物を載せて失なきを主とし、出行を占問うに大吉。
坎 天地閉塞,仁智隱伏。商旅不行,利深難得。
天地閉塞通ぜず、仁人智士隱伏して出でず、語本《易・坤》の「天地閉じ、賢人隱る」なり。商旅往來を停止し、深藏の利益求得し難し。此の林時運壅塞し、賢者當に隱るべきを主とし、財を求めと出仕とを占問うに皆利ならず。
離 延陵適魯,觀樂太史。車轔白顛,知秦興起。卒兼其國,一統為主。
延陵季子魯國に出使し、太史をして彼のために列國の樂を演奏せしむるを請う。《秦風》の裏車聲轔轔・白額の馬の歌辭を聽聞し、便ち秦國將に興起せんとするを斷定す、事《左傳》襄公二十九年季札樂を觀るに見ゆ。秦終に諸國を兼幷し、天下を一統す。此の林微を見て著を知り、大勢測る可きを主とし、遠圖を占問うに吉有り。
咸 櫜戢甲兵,歸放馬牛。徑路開通,國無凶憂。一下有朽牆難鑿,疾病難治。
甲胄兵器を皮囊に收進して藏起し、馬牛を山野に放歸す、《詩經・周頌・時邁》に「弓矢を櫜う」の文有り。道路暢通して阻無く、國中凶險憂患なし。此の林武を偃め農に歸し、天下太平を主とし、國事と出行とを占問うに皆吉。一本此の下に「朽牆鑿き難し、疾病治し難し」の二句有り。
恆 牛驥同堂,郭氏以亡。國破為壚,君奔走趍。
耕牛と駿馬と槽を同じくして共處し、賢愚分れず、郭氏これによって滅亡す。《管子》郭君の善を善して用ゐる能わず惡を惡して去る能わざるを載し、遂に亡國に至る。國破れて後廢墟と化し、國君倉皇奔逃す。此の林人を用ゐること明ならず、國を亡して位を失うを主とし、家國を占問うに大凶。
遯 大尾小腰,重不可搖。棟撓壤壞,臣為君憂。湯火之言,消不為患,使我復安。
尾大にして腰細く、沉重にして搖動する能わず。屋梁彎曲して牆壁塌壞し、臣子國君のために憂慮す、「棟橈」の語《易・大過》に出づ。あの湯のごとく火のごとき危言終に消解し、禍患を成さず、我をして重ねて安寧に歸らしむ。此の林尾大掉かざるの危にして終に化解を得るを主とし、占問うに先に憂えて後に安し。
大壯 太乙置酒,樂正起舞。萬福攸同,可以安處。保我齯齒。一下有暗空無餌,不利為旅。
太乙尊神酒宴を設し、樂正節に應じて起舞す。萬福一同に聚集し、人安然として自處する能くし、高壽の者の重生の齒牙を保有す。此の林神庥降臨し、壽考安康を主とし、家宅と身體とを占問うに皆吉。一本此の下に「暗空餌無く、旅と爲すに利ならず」の二句有り。
晉 飲酒醉酗,跳起爭鬥。伯傷叔僵,東家治喪。
酒を飮みて大醉して酒瘋を撒起し、跳起して打鬥す。兄長傷を受け叔父倒斃し、東隣人家喪事を辦起す。此の林酒後徳を失い、鬥毆して禍を致すを主とし、宴飮と爭鬥とを占問うに皆凶。
明夷 陵險難登,澗中多石。車馳□擊,重載傷軸。擔負善躓,跌踒右足。
山陵險峻にして攀登し難く、澗谷の中亂石多し。車子奔馳して磕碰斷えず、載せること太だ重くして車軸を壓傷す。擔を挑ぐ人屢々絆倒し、跌きて右脚を扭傷す。此の林路險くして載重く、行けば必ず損を受くるを主とし、出行と負荷の事とを占問うに皆凶。
家人 爭訟不已,更相諮詢。張李弱口,被髮北走。一下有耳順從心,躬行至仁。不須以兵,天下太平。
爭訟完まること沒く、雙方輪番に四處求告す。張氏と李氏と皆口舌怯弱にして、只だ頭髮を披散して北に逃走するを得。此の林訟に纏はりて了無く、理屈して敗走するを主とし、官非を占問うに利ならず。一本此の下に「耳順は心に從い、躬行は仁に至る。兵を以てする須からず、天下太平」の四句有り。
睽 心志無良,傷破妄行。觸牆抵壁,不見戶房。先王閉關,商旅委棄。
心志正ならず、胡亂に行事して傷損破敗を致す。東に撞き西に碰えて牆壁を見るのみ、門戸房舍を尋着けず。古禮冬至先王關を閉じ商旅行わず、語本《易・復》の大象なり、商を行くの事只だ作罷するを得。此の林心邪にして路塞がり、行止俱に廢するを主とし、出行と經商とを占問うに皆凶。
蹇 鸋鴂鴟鴞,治成御災。綏德安家,周公勤勞。
鷦鷯と鴟鴞と辛苦して巢を營し、修治完成すれば便ち風雨の災を抵禦する能くす、《詩經・豳風・鴟鴞》正に其の未だ雨せざるに綢繆するを詠む。徳を以て安撫して家室をして安定せしむ、正に周公の勤勞のごとし。此の林預め綢繆を爲し、勤勞して家を保つを主とし、守禦と家事とを占問うに皆吉。
解 清人高子,久屯外野。逍遙不歸,思我慈母。
清邑の將士と主帥高克、長久城外の曠野に屯駐す。河上に逍遥して師を回らすを肯んぜず、心中家中の慈母を思念す、《詩經・鄭風・清人》正に此の事を詠む。此の林久しく戍して歸を思い、家有りて回り難きを主とし、遠行と軍に從るとを占問うに別離を主とす。
