震の林(震卦六十四林)
中孚 神鳥五彩,鳳凰為主。集於山谷,使年歲育。
震の卦が中孚の卦に変わる。五彩の神鳥鳳凰を以て首と為して、群を成して山谷の中に栖集せり。瑞鳥一たび至れば、年成便ち順遂豊育せり。此の林主として祥瑞降臨して、歲稔して物豊なり、吉なり。
小過 石門晨門,荷蕢食貧。遁世隱居,竟不逢時。(革之旅)
震の卦が小過の卦に変わる。《論語・憲問》に石門の門を守る人と草筐を背負して路を過ぐる荷蕢者を記して、倶に是れ識見高遠にして貧賤に甘んずる隱士なり。彼等世を避けて隱居して、終に為す可きの時に碰上せず。此の林主として才を懐きて遇わず、退隱して貧を守りて、分に安んずれば則ち咎なく、進を求むれば利あらず。末の注此の林《革》の《旅》と文同じを示す。
既濟 □齧齧,貧鬼相責。無有歡怡,一日九結。(□音澗)
震の卦が既済の卦に変わる。牙歯相磨して啮啮として響を作して、窮鬼一個個門に上りて債を索り責問せり。家中毫も歓楽なくして、一天の内心の裏九個の結を打てり。此の林主として貧困交迫して、債主門に臨みて、愁悶解けず、凶なり。原文缺字有り、□を以て之を存し、末の注其の注音を為す。
未濟 白日揚光,雷車避藏。雲雨不行,為止其鄉。
震の卦が未済の卦に変わる。白日光芒大いに盛んにして、雷神の車駕避けて蔵起せり。雲と雨倶に行くを肯ぜずして、別の地方に停まりて來らず。此の林主として陽亢して沢なく、久しく旱し雨せず、望む所の事停滞して至らず、農事に利あらず。
艮の林(艮卦六十四林)
艮 君孤獨處,單弱無輔。名曰困苦,輔心湧泉。碌碌如山。
艮の卦が自ら変じても艮の卦のままである。君主孤零零として独り處りて、勢単く力薄くして輔佐する人なし、此のごとき处境困苦と作す。内心の憂思泉水の如く湧出するも、肩上の重擔仍ほ山の如く堆積せり。此の林主として孤立して援なく、重任身に在りて、労して功少なし、凶なり。
乾 憂驚已深,禍不為災,安全以來。
艮の卦が乾の卦に変わる。憂慮驚恐已に甚だ深しと雖も、然るに禍事終に災害を釀成せずして、平安便ち此れに就りて到來せり。此の林主として虚驚一場にして、険有りて傷なく、憂を轉じて安と為す、吉なり。
坤 穿匏浥水,構鐵熒火。勞疲力竭,飢渴為禍。
艮の卦が坤の卦に変わる。洞を穿けたる葫蘆を用ゐて去りて水を舀い、冷鉄を拿りて彼の螢火のごとき微光を取れば、徒らに疲累して力を用い尽して、反って飢渇に困せられり。此の林主として器を用ゐるに当たらずして、労して功なく、衣食困を受く、凶なり。
屯 蹇牛折角,不能載粟。災害不避,年歲無谷。
艮の卦が屯の卦に変わる。跛脚の牛又た角を折断して、一車の粟米を拉動する能わず。災害躲避し開かずして、一年到頭谷子を收到せず。此の林主として畜力傷損して、運輸通ぜずして、歲歉しく収なし、凶なり。
蒙 邑將為墟,居之憂危。
艮の卦が蒙の卦に変わる。此の座の城邑眼看に便ち廃墟と変成せんとして、裏頭に住するは只だ憂愁と危險有るのみ。此の林主として居る所將に敗れんとして、根基保たれず、宜しく早く遷避すべし、凶なり。
需 根刖樹殘,花葉落去。卒逢火焱,隨風僵仆。
艮の卦が需の卦に変わる。樹根砍傷せられて、樹身殘破して、花と葉倶に凋落せり。末了又た一場の烈火に遇い、風に随いて地に倒伏せり。此の林主として根本已に傷え、再び外禍に遭いて、終に傾覆に至る、大凶なり。
訟 元后貪慾,窮極民力。執政乖劣,為夷所覆。
艮の卦が訟の卦に変わる。君王貪して厭くことなくして、民力を用いて窮尽せしめり。政に當たる者又た乖張無能にして、終に外族に傾覆せられり。此の林主として上貪くして下困り、政其の道を失して、国傾危有り、大凶なり。
師 北山有黍,使叔壽考。東嶺多粟,宜行賈市。陸梁雄雉,所至利喜。
艮の卦が師の卦に変わる。《詩経・小雅・北山》の詠ずる北山黍稷を生長して、長輩を奉養して之をして高寿せしむ可し。東辺の山嶺粟米を盛産して、正に宜しく前に往きて販売すべし。雄雉高地に於て跳躍鳴叫するは、是れ到る所倶に利喜有るの兆頭なり。此の林主として田産豊足して、經商して利を得て、長者康寧せり、吉なり。
比 高原峻山,陸土少泉。草木林麓,嘉禾所災。
艮の卦が比の卦に変わる。高原と険峻の山地は、土層乾燥にして泉水を少くす。只だ宜しく山林草木を生長するに、好庄稼彼処に種すれば反って害を受けん。此の林主として地稼に宜からずして、処する所其の所を失して、勉强して経営すれば必ず損耗に致る。
小畜 (小畜)辰次降婁,王駕巡狩。廣施德惠,國安無憂。
艮の卦が小畜の卦に変わる。歲星降婁の次に運行するは、正に是れ吉時にして、君王車を駕して四方を出巡せり。一路広く恩徳惠沢を施して、国家安定して憂なし。此の林主として時令宜を得て、上徳政を行いて、出行して功有り、吉なり。原文此処卦名の小注を夾みて、仍ほ其の旧を存す。
履 □轠轠,歲暮偏弊。寵名復棄,君衰於位。
艮の卦が履の卦に変わる。車声轠轠として絶えずして駛過して、一年將に尽きんとして處處凋敝せり。曾ての寵信と名位又た弃置せられて、君主位の上に在りて日に衰頹せり。此の林主として盛りに極まりて衰に轉じ、恩寵終わらずして、位に居る者は勢を失す、凶なり。原文缺字有り、□を以て之を存す。
泰 放銜委轡,奔亂不制。法度無常,君失其位。
艮の卦が泰の卦に変わる。馬嚼を松開して韁繩を丢下して、車馬狂奔して控制するに法なし。法度反復無常にして、君主此れによって君位を丢了せり。此の林主として綱紀廢弛して、駕馭方なく、上位保たれず、凶なり。
否 獨登西垣,莫與笑言。秋風多哀,使我心悲。
艮の卦が否の卦に変わる。独り西辺の城牆に登上して、四顧して談笑する可きの人なし。秋風一片の悲声を送來して、我が心をして酸を發せしむ。此の林主として孤独して侶なく、時序蕭瑟して、憂思遣ること難し。
同人 脛急股攣,不可出門。暮速群旅,必為身患。
艮の卦が同人の卦に変わる。小腿抽緊、大腿痙攣して、門を連ねても出でる能わず。此の時還た傍晚に於て一群の人を招集して伴を結して出行せんとすれば、必ず自身の禍患と為らん。此の林主として身体恙有りて、擧動時を失して、勉强して行えば災を招く、凶なり。
大有 情偽難知,使我偏頗。小人在位,雖聖何咎。
艮の卦が大有の卦に変わる。人情の真偽分辨し難くして、我をして判斷偏頗せしめり。小人高位を竊據して、縦い是れ聖人此の位置の上に處るも、又た怎んぞ責難を受けざるを得んや。此の林主として真偽混淆して、賢路壅塞して、事を處すれば物議を招き易し、宜しく謹慎すべし。
謙 黍稷醇醲,敬奉山宗。神嗜飲食,甘雨嘉祥。庶物蕃茂,時無災咎,獨蒙福祉。
艮の卦が謙の卦に変わる。醇厚の黍稷の酒を用ゐて恭敬に山岳の神を祭獻せり。《詩経・小雅・楚茨》に「神飲食を嗜む」と説きて、神靈享用したる後甘霖嘉瑞を降下して、万物繁茂して、四時災咎なく、独り此の一家福祉を蒙受せり。此の林主として祭祀して神佑を得て、風調雨順して、家門独り福沢を享く、大吉である。
豫 公子王孫,把彈攝丸。發輒有獲,室家饒足。
艮の卦が豫の卦に変わる。公子王孫手に彈弓を持して彈丸を捏えて、一發すれば便ち得有り。家の裏此れによって富足有余せり。此の林主として手を挙げて獲を得て、求むる所愿に随いて、家道豊饒せり、吉なり。
隨 陰昇陽伏,舜失其室。元元赤子,相餒不食。
艮の卦が随の卦に変わる。陰気上昇して陽気潜伏して、虞舜のごとき聖人を連ねても己が家室を保つ能わず。黎民百姓、初生の嬰孩、倶に腹を空して吃る可き食なし。此の林主として陰盛んにして陽衰え、家室守を失して、民生飢困せり、凶なり。
蠱 七竅龍身,造易八元。法天則地,順時施恩。引和貴長,以富永存。
艮の卦が蠱の卦に変わる。伝説伏羲七竅通明、龍身人首にして、八卦を創制して《易》の元始と為せり。彼天地の則を效法して、時令に順應して恩徳を施行して、和気を導引して長養の道を尊崇すれば、此れによって富厚長存せり。此の林主として自然に法を秉り、時に順いて事を行えば、家業綿長せん、大吉である。
臨 逐狐東山,水遏我前。深不可涉,失利後便。(姤之巽,漸之夬,蒙之蠱)
艮の卦が臨の卦に変わる。東山に到りて狐狸を追うも、前大水に擋せられり。水深くして徒渉する能わずして、只好く良機を錯失して、退き回りて別に方便を尋るのみ。此の林主として前阻隔有りて、逐う所獲なし、宜しく退くべく強く渡る宜ならず。末の注此の林《姤》の《巽》、《漸》の《夬》、《蒙》の《蠱》と文同じを示す。
觀 銜命辱使,不堪其事。中墜落去,更為負載。
艮の卦が観の卦に変わる。命を奉じて使に出づるも却って使命を辱没して、此の差事を擔起する能わず。半途の中掉下来して、反って変じて別人の累贅と為れり。此の林主として才職に称わずして、命を受けて成らずして、中途失墜す、凶なり。
噬嗑 溫仁君子,忠孝所在。八閏為儀,禍災不起。
艮の卦が噬嗑の卦に変わる。温厚仁愛の君子は、忠と孝倶に其の身の上に在り。八節閏余の数を以て法度と為して、時令を謹守して行えば、災禍便ち興起せず。此の林主として徳行醇正して、擧措度に合して、家国災なし、吉なり。
賁 春多膏澤,夏潤優渥。稼穡熟成,數獲百斛。師行以律,霸功不遠。
艮の卦が賁の卦に変わる。春天雨水豊沛して、夏天潤沢優厚にして、庄稼成熟して、一收すれば便ち百斛なり。《周易・師卦》に「師律を以て出づ」と説きて、兵を用ゐるに紀律有れば、則ち霸業の功も亦た遠からず。此の林主として農事豊収して、兵を挙げて序有りて、功名期す可し、大吉である。
剝 二女同室,心不聊食。首髮如蓬,憂常在中。
艮の卦が剥の卦に変わる。两個の女子一室に同處すは、《周易・睽卦》に「二女同居、其の志同行せず」と説くが如くして、彼此別扭して飯を連ねても喰い下る能わず。頭髪飛蓬の如く乱れて、憂愁常に心間に存せり。此の林主として同處して和せず、家内睦を失して、憂郁解け難し、凶なり。
復 築闕石顛,立本泉源。病疾不安,老孤為鄰。
艮の卦が復の卦に変わる。宮闕を乱石の巔に築きて、根基を泉水の源頭に立てて、地基潮にして固からず。此れによって疾病身に纏りて安寧を得ずして、孤老の人のみ隣居と為せり。此の林主として居處宜を失して、根本牢ならずして、病多くして孤单せり、凶なり。
旡妄 欲避凶門,反與禍鄰。顛覆不制,痛熏我心。
艮の卦が旡妄の卦に変わる。凶险の門を躲开せんと想うも、反って禍患と隣居を做れり。局面傾覆して控制するに法なくして、痛楚心懐を熏灼せり。此の林主として趨避して反って招引と成りて、事勢控制を失して、心痛の凶なり。
大畜 踧行竊視,有所畏避。狸首伏藏,以夜為利。
艮の卦が大畜の卦に変わる。身を縮めて路を走りて偷偷に張望して、心の裏畏懼する所有りて躲避せり。狸猫頭を低くして潜伏するが如くして、只だ夜色を以て利有るの時と為せり。此の林主として处境須らく隱忍潛蔵すべく、晝に動けば利あらずして暗に行えば全からん可し。
頤 人面鬼口,長舌為斧。斲破瑚璉,殷商絕後。
艮の卦が頤の卦に変わる。人の面孔にして却って鬼のごとき口を生じて、長舌便ち是れ斧頭なり。《詩経・大雅・瞻卬》に「婦に長舌有れば、維れ厲の階なり」と説きて、讒言以て瑚琏のごとき宗廟の重器を砍破するに足りて、殷商も亦た此れによって後嗣を絶てり。此の林主として讒口人を傷めて、宗祀に毀及す、大凶なり。
大過 和氣相薄,膏澤津液,生我嘉穀。
艮の卦が大過の卦に変わる。陰陽の和気相互に交迫して、滋潤の雨露津液を化して、我が田の裏の好庄稼を養出せり。此の林主として気候和順して、生養成有りて、田事豊収せり、吉なり。
坎 銷金鑄兵,雷車不行,民安其鄉。
艮の卦が坎の卦に変わる。金屬を熔して兵器を鑄成するも、雷車のごとき戰陣卻って始終開動せずして、百姓本郷に安居を得たり。此の林主として兵備して用ゐずして、干戈自ら止みて、境内平安せり、吉なり。
離 秦儀機言,解其國患。一說燕下,齊相以權。
艮の卦が離の卦に変わる。蘇秦、張儀機機變の辯辞に憑りて本国の禍患を化解せり。蘇秦一番の游説便ち燕国をして折服せしめて、進みて斉国の相位の權柄を握有せり。此の林主として口舌功を立てて、游説して勢を得て、事を謀れば言を以て取る可し、吉なり。
咸 旦奭輔王,周德孔明。越裳獻雉,萬國咸寧。
艮の卦が咸の卦に変わる。周公旦と召公奭成王を輔佐して、周家の徳政十分に昭明なり。南方の越裳氏遠く道を來りて白雉を献じて、万国倶に安寧を得たり。此の林主として賢臣国に當たりて、遠人來朝して、天下太平せん、大吉である。
恆 弱足刖跟,不利出門。賈市無過,折亡為患。
艮の卦が恒の卦に変わる。脚力本より弱くして又た脚跟を傷えて、門を出でれば大いに利あらず。買売を做すに過失無しと雖も、折本して虧損するに因りて憂患を生ず。此の林主として行動限を受けて、經營虧耗して、宜しく本を守りて遠く圖る宜ならず。
遯 堅冰黃鳥,常哀悲愁。不見甘粒,但睹藜蒿。數驚鷙鳥,為我心憂。(乾之噬嗑之大過)
艮の卦が遯の卦に変わる。《詩経・秦風・黄鳥》黄鳥の哀鳴を詠じて、此処堅氷の時黄鳥長悲すと説く。一粒の好粮を見ずして、只だ地に満つる藜蒿を見、又た屢々凶猛の鷹隼に驚起せられて、人をして心中憂懼せしむ。此の林主として時寒くして食絶えて、常に強者の驚擾を受けて、憂愁安ならず、凶なり。末の注此の林《乾》の《噬嗑》《大過》と文同じを示す。
大壯 魂微惙惙,屬纊聽絕。豁然大通,復更生活。
艮の卦が大壮の卦に変わる。魂気微弱、気息奄奄として、家人古礼に依りて新綿を口鼻の上に放りて察驗すれば、幾ほど呼吸を聞かず。忽然の間豁然貫通して、又た活き轉りて來れり。此の林主として病危くして救を得て、絶處生に逢う、先ず凶にして後に吉なり。
晉 陰生□鹿,鼠舞鬼谷。靈龜陸處(一雲靈鼠陸處,鬼哭鼠舞)釜甑草土。人知敗國,桀亂無緒。
艮の卦が晋の卦に変わる。陰気の生する所の怪鹿出現して、老鼠鬼谷の中に跳舞して、靈龜水を離れて陸地に處りて、鍋甑の中草土を長出す、全く是れ亡国の妖異の兆なり。人人倶に国事將に敗れんとすることを知りて、夏桀の世の如く昏乱して毫も頭緒なし。此の林主として妖異叢生して、政乱れて国危うし、大凶なり。原文缺字と異文の小注有りて、一幷に之を存す。
明夷 鑿諸攻玉,無不穿鑿。龍體吾舉,魯班為輔。舞鳳成形,德象君子。
艮の卦が明夷の卦に変わる。《詩経・小雅・鶴鳴》に「他山の石、以て玉を攻る可し」と説きて、利器を用ゐて玉を琢れば穿透せざる能わざるなし。我龍の形体を擧げて雕琢するに、又た魯班のごとき巧匠の相助有りて、鳳凰翩然として形を成して、其の徳正に君子の象の如し。此の林主として良工の相輔を得て、器成りて徳就きて、事業成有り、吉なり。
家人 山作天時,陸為海口,民不安處。
艮の卦が家人の卦に変わる。山川變異して天時の災に應じて、陸地海口に陷成して、百姓身を安んずる處なし。此の林主として地気大いに変じて、居所傾陷して、人民流離す、凶なり。
睽 東風啟戶,隱伏歡喜。萌庶蒙恩,復得我子。
艮の卦が睽の卦に変わる。東風門戸を吹開して、蟄伏の生物倶に歓喜せり。万物萌生して皆な恩沢を蒙りて、我が失散せる孩子も亦た重新に找回せられり。此の林主として陽和令に當たりて、隱者頭を出だし、失して復た得る、吉なり。
蹇 華燈百枝,植暗衰微。精光欲盡,命如灰麋。
艮の卦が蹇の卦に変わる。華美の燈樹百枝の燭火有るも、却って暗暗處に挿して漸々衰微せり。光焰將に耗尽せんとして、性命燒殘の灰燼の如し。此の林主として外華やかにして内竭きて、氣數將に終らんとし、病を問い寿を問う倶に凶なり。
解 三十無室,寄伯桑中。上宮長女,不得樂同。
艮の卦が解の卦に変わる。三十歲しても還た家を成さずして、長兄の桑田の間に身を寄す。《詩経・鄘風・桑中》に「我を桑中に期し、我を上宮に要す」と説くも、上宮の彼の長女終に彼と同歓する能わず。此の林主として婚姻遲滯して、佳期落空して、孤身偶なし。
損 卵與石斗,糜碎無處。動而有悔,出不得時。
艮の卦が損の卦に変わる。蛋を拿りて去りて石頭と相鬥せば、碎けて渣を連ねても尋ね着かず。一たび動けば便ち悔恨有りて、出行又た其の時に逢わず。此の林主として弱を以て強に敵して、自ら毀滅を取る、妄動大凶なり。
益 尋兵爭強,失其貞良,敗我殽鄉。
艮の卦が益の卦に変わる。動すれば便ち兵を用ゐて強を争い勝を好んで、因って忠貞良善の臣を失して、終に殽山の一帯に於て大敗せり。秦晋殽の戰全軍覆沒するは、便ち是れ此の象なり。此の林主として武を黷して敵を輕くし、賢を失して敗を致し、師を出でば大凶なり。
夬 虐除善疑,難為攻醫。驥窮鹽車,困於御御。
艮の卦が夬の卦に変わる。病人暴躁にして又た多疑にして、医師手を下して診治すること甚だ難し。《戰國策》の記する所の千里馬の鹽車の下に套せられて、坡道に於て力を尽して、車を駕る人に受制するが如し。此の林主として良材下位に屈居して、病有りて医し難く、才展ぶを得ず、凶なり。
姤 操笱搏狸,荷弓射魚。非其器用,自令心勞。
艮の卦が姤の卦に変わる。魚を捕るの竹笱を拿りて去りて狸猫を打ちて、弓箭を扛りて去りて水の裏の魚を射れば、器物用ゐる所路に對わずして、只だ白白と神を労するのみ。此の林主として用ゐる所其の材に非ずして、方法乖謬にして、徒労して功なし。
萃 葵丘之盟,獻晉會庭。見太宰辭,後秦還興。
艮の卦が萃の卦に変わる。斉桓公葵丘に於て諸侯を大會して、周天子宰孔を遣はして胙を賜はしむ。晋献公會庭に趕赴するも、路上宰孔に遇い彼を勧めて會に与らずして返れとせり。此の後秦国却って此れによって漸々興起せり。此の林主として會盟変有りて、遲到する者は利を失して、形勢転じて他人に歸す。
升 臏詐龐子,夷□書木。伏兵卒發,矢至如雨。魏師驚亂,將獲為虜。
艮の卦が升の卦に変わる。孫臏詐を設けて龐涓を誘い馬陵道に入れて、樹皮を削去して木の上に字を題して記を為せり。伏兵驟然として發して、箭矢雨の如く落下して、魏軍驚乱して、主將擒えられて俘と為れり。此の林主として謀を用ゐて敵を制して、伏して後に動けば、師を出でば勝を得ん。若し龐涓の位に居れば則ち大凶なり。原文缺字有り、□を以て之を存す。
困 南行出城,世得大福。王姬歸齊,賴其所欲。以安邦國。
艮の卦が困の卦に変わる。南に往きて城を出でて行けば、一世倶に大福を得ん。王室の女兒斉国に出嫁して、此の門の親事に靠りて各々其の愿を遂げて、邦国此れによって安定せり。此の林主として南行して喜有り、親を結びて利を得て、家国两安なり、吉なり。
井 冬采薇蘭,地凍堅難。雖利奔走,暮無所得。(堅難一作冰堅)
艮の卦が井の卦に変わる。冬天薇菜と蘭草を采るに去れば、地凍えて又た硬くして挖り難し。縦い奔走に勤むと雖も、天黒く到れば仍ほ一の獲もなし。此の林主として時令合わずして、労して功なく、財を求めて遂わず。末の注「堅難」一本「氷堅」と作るを載す。
革 王喬無病,狗頭不痛。亡破失履,乏我欲速。
艮の卦が革の卦に変わる。仙人王子喬本より病痛なくして、狗頭も亦た疼を覚えず。可なりしも鞋子破れて丢了して、快くせんと想うも亦た快くする能わず。此の林主として本身恙無しと雖も器用缺有りて、速を欲して反って遲りて、事小滯有り。
鼎 宛馬疾步,盲師坐御。自不見路,中止弗到。
艮の卦が鼎の卦に変わる。大宛の良馬走ること飛ぶが如く快きに、車を駕る者は却って瞎眼の車夫なり。自己道路を見る能わずして、半途停下して終に到る能わず。此の林主として良材にして明主を失して、託する所人に非ずして、中道に廢す、凶なり。
震 求我難國,亡去我北。憂歸其城,反為我賊。
艮の卦が震の卦に変わる。危難の邦に到りて所須を求取するも、彼の人却って我が北辺より逃走去れり。心を憂忡忡として彼の城の中に回れば、反って我を害する仇敵と成れり。此の林主として求むる所人に非ずして、恩反って怨と成りて、交結して害を生ず、凶なり。
漸 比目四翼,安我邦國。上下無思,為我嘉福。
艮の卦が漸の卦に変わる。比目の魚両々として并行して、比翼の鳥四翼齊び飛ぶは、正に是れ上下相和の象にして、以て我が邦国を安定するに足れり。君臣の間猜疑の心なきは、便ち是れ我が大福なり。此の林主として内外協同して、和衷して済を共にす、吉なり。
歸妹 八材既登,以成嘉功。龍降庭堅,國無災凶。
艮の卦が帰妹の卦に変わる。《周礼》の載する所の珠、象、玉、石、木、金、革、羽の八種の材料斉備して用う可くして、於是美好の功業を成就せり。又た庭堅のごとき賢人降生して政を輔きて、国の中災凶なし。庭堅便ち是れ皐陶の字なり。此の林主として材備わりて人を得て、功成りて国安んず、大吉である。
豐 消弊穿空,家莫為宗。奴婢□走,子西父東。為身作凶。
艮の卦が豊の卦に変わる。家業消耗敗壞して空を穿き底を見るに到りて、一家の中事を主る可きの人なし。奴婢四散して逃走して、兒子西に往き父親東に往けり。此の林主として家道敗落して、骨肉離散して、自ら凶禍を招く、大凶なり。原文缺字有り、□を以て之を存す。
旅 鳥舞國城,邑懼卒驚。仁德不修,為下所傾。
艮の卦が旅の卦に変わる。怪鳥国都の城の上に盤旋起舞して、全城惶惧、突然大驚せり。只だ上に在る者仁徳を修めざるに因りて、終に下面の人に顛覆せられり。此の林主として妖異警を示して、徳を失し衆を失して、位保つ能わず、凶なり。
