震の林(震卦六十四林)
大過 旦生夕死,名曰嬰兒,不可得視。(小畜之升,未濟之乾,震之坤。「視」一作「祀」)
渙の大過。早晨に生れて傍晚に即ち夭亡す。ただ嬰児と喚ぶべく、好く見る一眼すら能わず。この林は大凶にして生機短促、成りて復た毀るを主とし、凡そ新立の事・新生の物は皆存続し難し。占う者の謀る業は根基太だ薄し。切に倉促に発動すべからず。尤も幼小なる者の安危に留意すべし。
坎 子畏於匡,困於陳蔡。明德不危,竟免厄害。(兌之泰,大過之晉,坤之鼎)
渙の坎。孔子は匡地に遭囲して驚を受け、また陳・蔡の間に糧を絶たれ困を受く。然れども徳行は光明にして、終に傾危に至らず、最后に厄難禍害を免除したり。事は《史記・孔子世家》に見ゆ。この林は身が重険に陥るも徳を以て自ら全うすを主とする。占う者は縦え坎陷の中に在りとも、ただ正道を持守せば、終に能く安んじて脱出せん。
離 畏昏潛處,候時昭朗。卒逢白日,為世榮主。
渙の離。昏暗を怕れて潜蔵し、静かに天光の明に転ずる時を等候す。終に朗朗たる白日に遇い、世間の栄顕の主人と成る。この林は韜晦して時を待ちて後に志を得るを主とし、先ず隠れ後に顕るるの吉なり。占う者の眼下は低調に隠忍するに宜しく、光明将に至らんとする時に自然と出頭せん。切に昏暗中に妄動すべからず。
咸 白鳥御餌,鳴呼其子。旋枝張趐,來從其母。(晉之震)
渙の咸。白鳥は食餌を銜え、鳴呼して己が雛児を呼喚す。雛鳥は枝は枝條を繞りて翼を張り、飛びて母に随従す。この林は母子相親しみ、呼応して情あるを主とし、骨肉が団聚し恩養相接するの吉なり。占う者の家中は和睦して長幼相得べし。凡そ召喚・招募・尋親の事は皆回応有らん。
恆 宮商角徵,五音和氣。君臣父子,弟順有序。唐虞襲德,國無災咎。
渙の恒。宮・商・角・徴の諸音は相和し、五音は諧調して和気を生ず。君臣父子は各々その位に安んじ、兄弟は恭順にして次第有り。唐堯・虞舜は相承りてその徳を受け、国中は因りて災禍過失なし。この林は大吉にして上下和順にして綱紀井然たるを主とする。占う者の処する局は安定して序有り。常を守り久しく持するに宜しく、変更すべからず。
遯 季姬踟躕,望子城隅。終日至暮,不見齊侯。(豫之巽)
渙の遯。季姫は徘徊して定まらず、城墻の角楼に在りて思う所の人を張望す。《詩経・邶風・静女》のいわゆる「我を城隅に俟つ、愛して見えず」なり。早より日暮に至るまで等して、終に斉侯に見えず。この林は苦く候して人至らず、良会は空しきに成るを主とする。占う者の約する人は多くは信を失す。別に安排を作るに宜しく、空しく守るに及ばず。
大壯 鬼哭於社,悲傷無後。甲子昧爽,殷人絕祀。(大過之坤)
渙の大壮。鬼魂は社廟に哭泣し、己が後嗣の断たれたを悲傷す。甲子の日に天将に破暁せんとし、牧野の一戦に殷商の宗廟祭祀は此より断絶す。事は《尚書・牧誓》に見ゆ。この林は大凶にして宗祀断絶・家国傾覆を主とする。占う者は力めて根本を保ち慎みて香火を守るべし。凡そ存亡の争有らば、務めてその鋒を避くべし。
晉 天之所予,福祿常在,不憂危殆。(小畜之遯,損之遯,臨之復)
渙の晋。上天の賜与する所の物は、福気と禄位と常に身辺に在り、危険を憂慮するに及ばず。この林は天が其の福を予え根基自ら固きを主とし、安穩にして受用するの吉に属す。占う者の得る所は僥倖にあらず、乃ち分内の応有なり。ただ坦然として承受し、正を以てこれを守れば、自ずから傾覆の患なし。
明夷 比目附翼,相待為福。姜氏季女,與君合德。(節之隨)
渙の明夷。比目魚は両々に相并びて游び、比翼鳥は双々に翼を附けて飛ぶ。彼此依託してこそその福を成す。姜家の小女児は君子と徳行相配す。《爾雅》に比目・比翼は皆双ならずんば行かずと載す。この林は佳偶相得、内外相成るを主とする。占う者は伴を結びて事を共にし、親を議り婚を論ずるに宜しく、独力は支え難くして合すれば即ち福有り。
家人 翕翕□,稍崩墜顛。滅其令名,長沒不全。(泰之謙,否之離,益之坎)
渙の家人。表面上は一団和気にして附和苟同するも、根基は漸々崩塌墜落す。美好の名声は此に就きて泯滅し、長く沈淪して保全を得ず。《詩経・小雅・小旻》は「潝潝訿訿」を譏る。正しく此の苟合の風を指す。この林は門内虚浮にして実ならず終に敗名に致るを主とする。占う者は偽を去り真を存すべく、敷衍を以て家業を維持することなかれ。
睽 折芒蔽目,不見雉叔。三足飛鳥,遠去家室。(師之蒙,坤之同人)
渙の睽。芒草を折りて眼を遮れば、即ち身辺に近在する雉叔を見る能わず。三足の怪鳥は翅を振りて高く飛び、遥かに家室を離れたり。この林は自ら其の明を蔽い親人相失うを主とする。占う者の局面を看清す能わざる所以は、正に自ら遮檔を設ければなり。先ず成見を除去するに宜し。さもなくば骨肉も亦た疎遠に飘散せん。
蹇 羊腸九縈,相催稍前。止須王孫,乃能上天。(豐之升,履之師,蠱之剝,損之屯)
渙の蹇。羊腸の小道は九曲に盤旋し、衆人は互相いに催促して勉强して前に挪動す。須らく王孫の前来して主持するを待ちて、方に能く天に上達せん。この林は路途険艱にして、貴人あらざれば通達し能わざるを主とする。占う者は性子を耐えて一歩々々走るべく、同時に有力者の提携を求むべし。独りで硬闖すれば出頭し難し。
解 坤厚地德,庶物蕃息。平康正直,以綏大福。(泰之解,巽之困,賁之履)
渙の解。大地の徳は寛厚に在り、因りて万物は其の上に繁衍生息す。《尚書・洪範》に「平康正直」と曰う。世に処りて和平にして心地正直なれば、便ち安んじて大福を享く。この林は厚徳にして物を載せ、正を以て安を得るを主とし、難解の後に平順に帰するの象なり。占う者は寛厚にして人を待ち、正を守りて阿らざるに宜しく、福沢自ずから来らん。
損 有莘外野,不逢堯主。復歸窮處,心勞志苦。
渙の損。有莘国の郊野に耕作するも、堯の如き明主に遇わず。ただ窮困の処に帰るのみ、心力交瘁にして志向受挫せり。伊尹は有莘の野に耕し而る後に湯に遇う。事は《孟子・万章》に見ゆ。この林は才を懐きて遇わず、時未だ至らずして空しく心を労するを主とする。占う者は安く守りて時を待つに宜しく、当下に強求するに及ばず。
益 咠長景行,來觀柘桑。止伯自喜,都叔允藏。
渙の益。私語相伝えて而る後に大道に走り、前来して柘樹と桑樹の長勢を察看す。伯氏は留まりて自ずから欣喜し、都邑中の叔氏も亦た収蔵実に豊足なり。柘桑は蚕を養うの本にして、桑を観れば即ち農事を察するなり。この林は正道を循りて実務を察するを主とする。占う者は本業に勤しみ自ら過問せば、即ち收成充盈して家に儲蓄有らん。
夬 周師伐紂,戰於牧野。甲子平旦,天下喜悅。(謙之噬嗑,節之升)
渙の夬。周武王の軍隊は商紂を討伐し、牧野に決戦す。甲子の日に天剛らかに明け、一戦して定まり、天下の百姓は歓欣せざる無し。事は《尚書・牧誓》《史記・周本紀》に見ゆ。この林は暴を除き悪を決し、一挙して功成るを主とする。占う者の欲する清除の患は決断し了結すべし。行動は速なるに宜しく緩なるべからず。衆望の帰する所なり。
姤 踰江求橘,並得大栗。烹羊食豕,飲食歌笑。
渙の姤。大江を渡りて柑橘を求めに行けば、連れて大きな板栗をも得る。羊を宰し猪を烹げて、飲宴の間に歌い談笑す。この林は外に出でて獲るところあり、意外に兼ね得るを主とし、兼ねて宴楽の喜有り。占う者は遠く行きて物を求めば必ず願いを得、且つ額外にまた収成有り。凡そ交易・宴請・訪友の事は皆吉なり。
萃 敝笱在梁,魴逸不禁。漁夫勞苦,口燋喉乾。虛空無有。(遯之大過)
渙の萃。破れた竹簍が魚梁に横たわり、魴魚が一条づつ溜走して拦むも拦めず。漁夫は忙しくて口乾舌燥となり、到頭、簍の中は空如也なり。《詩経・斉風・敝笱》はこれを以て防閑の厳ならざるを譏る。この林は器具修まらず防守に疏漏ありて獲る所が尽く失わるるを主とする。占う者は先ず自家の漏洞を補うべし。さもなくば労して功なし。
升 生有陰孽,制家非陽。遂受還作,張氏易休。憂禍重凶。
渙の升。家中に陰私の禍根を生じ、門戸を主持する者は正当の男主人にあらず。因りて禍事は往復して断たず、張氏の家は主人を換えたり。憂愁と禍患と重ね畳みて、極めて凶険なり。この林は内乱が権を奪い家主が人に易うを主とする。占う者は内部の隐患が坐大するを防ぐべし。名分を正しく門戸を清むるに宜しく、遅くなれば挽回し難し。
困 絕域異路,多有怪惡。使我驚懼,思我故處。
渙の困。身が極めて遠き異域・陌生の道路に処して、一路上多く怪异凶悪の事あり。我をして驚慌恐懼せしめ、一心に己が旧居を想念す。この林は遠行して険に遇い帰るを思いて得ざるを主とする。占う者は遠く生地に赴くべからず。若し已に外に在れば、早く還るを思うべく、陌生凶悪の境に久しく留まることなかれ。
井 迷行失道,不得馬牛。伯賈□亡,市沒無有。
渙の井。路を迷いて方向を誤り、走失した馬牛もまた尋ね回る能わず。伯氏は行商に虧損して逃亡し、市面は蕭條にして何もかも無くなれり。この林は方向迷失して資本折尽し、凡そ物を尋ね・商いを為し・追討する事は一概に落空すを主とする。占う者は先ず向き去るを辨明すべく、盲目に投入すべからず。市況利あらざれば暫く手を収むるに宜し。
革 雌鸑生鵰,神異興起。乘雲龍騰,民戴為父。
渙の革。雌鳳が雕鳥を生みて、神奇の異象は此に由りて興る。それが雲気に乗じて龍の如く騰飛すれば、百姓はそれを擁戴して父の如くす。鸑鷟は鳳の属にして、《国語・周語》の「周の興るや、鸑鷟岐山に鳴く」に見ゆ。この林は異軍が突出し故を革め新を鼎めて衆心が帰附するを主とする。占う者は非常の遇を望み得べく、一鳴して人を驚かさん。
鼎 迭迭累累,如岐之室。畜一息十,古公治邑。(恆之小過)
渙の鼎。屋宇は層層畳畳として一間に一間を連ね、岐山下の房舎の如し。一頭の牲畜を養えば十頭に繁息し得べし。あれは古公亶父が都邑を営治せし時の景象なり。事は《史記・周本紀》に見ゆ。この林は大吉にして基業興造・財畜倍増を主とする。占う者は産を置き家を興すに宜しく、積む所は必ず厚からん。
震 瘡瘍疥瘙,孝婦不省。君多疣贅,四時作災。
渙の震。身上に瘡瘍疥癬を生じ、痒くて痛くて当たり難く、孝順の媳婦を以てしても照料し周らず。主人の身上にはまた贅疣を長満せり。一年四季皆病を鬧して災を成す。この林は疾病が身に纏いて久しく治せず、且つ家人は力及ばず照拂し得ざるを主とする。占う者は早く医を延いて調理すべく、凡そ小疾有らば拖延すべからず。積みて大患を成すを免れんが為なり。
艮 羊頭兔足,羸瘦少肉。漏囊敗粟,利無所得。(剝之恆,既濟之訟)
渙の艮。羊の頭に兎の脚を配し、痩せ骨嶙峋にして肉幾両もなし。口袋はまた漏るに、装うは仍ほ霉壊の粟米なり。利を得んと想うも終に一獲も無し。この林は形質が称わず積む所が尽く漏るを主とし、凡そ投資・儲蓄・経営の事は皆財を留めず。占う者は先ず漏処を補い住すべし。さもなくば進む多少は漏る多少なり。
漸 孽蔑徙靡,空無誰是。言季不明,樂減少解。
渙の漸。禍孽と軽蔑と輾転として相随い、紛紛擾擾、空落として誰が是に誰が非か辨え難し。話は末を説くに至りて仍ほ明白ならず、歓楽は漸く減じ、疑慮もまた化解し難し。この林は是非混淆して言語明白ならず歓意消退するを主とする。占う者は争議の事に遇えば一時に定論有り難し。暫く置きて論ぜざるに宜しく、久しく待てば自ずから明らかならん。
歸妹 妹貌親熟,敗君正色。作事不成,自為心賊。
渙の帰妹。少女の容貌は親暱熟稔にして、君子の端正の顔色を壊す。因りて作る所の事は成功能わず、実に自ら心里に賊を生じたるなり。この林は私情に耽りて正務を敗壊するを主とする。占う者は自ら心念を反省すべく、児女の私に因りて本業を荒廃することなかれ。さもなくば事を敗る者は人にあらず、乃ち己の心なり。
豐 四馬共轅,東上太山。騂驪同力,無有重艱。與君笑言。(剝之解)
渙の豐。四匹の馬が共に一轅を駕りて、東に泰山を攀登す。赤馬と黒馬とが斉心協力し、再び逾越し難き険阻なく、一路君と談笑して行く。この林は同心協力して険途を平易に化すを主とする。占う者は人と合作すれば重担は分け可く難関は過ぎ可し。凡そ伴を結びて同行し、共に大事を図るは皆吉なり。
旅 陰變為陽,女化為男。治道得通,君臣相衛。(豐之節,未濟之夬,屯之離)
渙の旅。陰気は陽気に転じ、女子は男身と化作す。治国の道は此に由りて通達し、君臣彼此扶衛す。この林は局面が翻転し弱より強に転ずるを主とし、窮極して変じ変じて通ずるの象なり。占う者の眼下の処境は下位に居ると雖も、運勢は大なる転折を将にせんとす。其の時に至りて上下相得、事を謀れば成るべし。
巽 南國少子,才略美好。求我長女,賤薄不與。反得醜惡,後乃大悔。(比之漸,泰之震,漸之困)
渙の巽。南方の国の年若き男子は、才干謀略いずれも出色にして、前来して我が長女を求娶せんとす。我はその門第の低微なるを嫌いて許配せず、反って娘を醜悪の人に嫁がせ、事後に追悔して及ばず。この林は貌を以て人を取り佳配を錯失するを主とする。占う者は人を択び事を択ぶに、切に外相門面のみを見るを忌むべし。さもなくば悔ゆるに及ばざらん。
兌 昭公失常,季女悖狂。遜齊處野,喪其寵光。(遯之蠱)
渙の兌。魯昭公は挙止して常度を失い、宮中の女子はまた悖乱狂放す。終に斉に出奔して荒野に栖身し、原有の寵遇と栄光とを喪失せり。事は《左伝・昭公二十五年》に見ゆ。この林は位を失い国を去り栄寵尽く失わるるを主とする。占う者は法度を謹守すべく、内闈の乱に因りて根本を動揺することなかれ。
節 文山紫芝,雍梁朱草。生長和氣,王以為寶。公尸侑食,福祿來處。(同人之剝,豐之家人)
渙の節。文山は紫芝を出産し、雍州・梁州は朱草を生長す。これらの瑞草は和順の気に因りて生じ、君王は国宝と視なす。祭祀の時に公尸が勧を受けて食するや、《詩経・大雅・鳬鷖》のいわゆる「公尸燕飲」に就きて、福禄は即ち随いて降臨す。この林は大吉にして祥瑞現れ祭祀に福を得るを主とする。占う者の求むる所は天の佑を邀るを望み得べし。
中孚 牽羊不前,與心戾旋。聞言不信,誤紿丈人。
渙の中孚。羊を牽くもそれを拉して前に動かす能わず、己が心意と背道而馳す。他人の話を聴きてまた信ぜんと肯ぜず、因りて長者を誤騙せり。この林は意願相違して誠信立たざるを主とする。占う者の做す事は處處に別扭にして、且つ勧告を聴かざるに因りて尊長に信を失し易し。虚心に言を納るるに宜しく、方に順に転ずべし。
小過 東山西山,各自止安。心雖相望,竟不同堂。(姤之坤,漸之屯,中孚之賁)
渙の小過。東に一座の山、西に一座の山、各々安く己が位置に処す。心中は彼此遥かに相望して思念すれども、終に同居一堂する能わず。この林は両地に分隔し情は通いながら身は聚まらざるを主とする。占う者と思う所の人とは各々その位有り。勉强して合并すれば反って齟齬を生ず。各々その所に安んじ、遥かに相呼応するに宜し。
既濟 鹿求其子,虎廬之裡。唐伯李耳,貪不我許。(隨之否)
渙の既済。母鹿がその幼崽を尋ねるに、却って虎の巢穴の裏に至る。あの唐伯・李耳はもと虎の別名なり。《方言》に見ゆ。それは食を貪り性を成せば、怎んぞ肯んじて小鹿を我に還さんや。この林は失せる所を尋ねて誤りて険地に入るを主とする。占う者の尋ぬる人の物は已に強横の手に落ち、還を索むる望みなし。早く歩を止め身を保つに宜し。
未濟 三虎上山,更相咆哮。心志不親,如仇與怨。(姤之小過)
渙の未済。三匹の虎が一同に山に上りて、彼此に向かい咆哮して休まず。心志は各々相亲しまず、仇敵怨家のごとし。この林は強者相聚まるも相容れざるを主とし、凡そ合伙・共事・同居の局は皆強を争うに因りて隙を生ず。占う者は同類の強人と共に謀るべからず。各々その是を行えば反って禍を免るべし。
節之林(節卦六十四林)
節 海為水王,聰聖且明。百流歸德,無有叛逆。常饒優足,不利攻玉。所求弗得。(末二句疑衍)
節の節。大海は衆水の王にして聡叡聖明なり。百川は皆その徳沢に帰向し、一条も背離逆流する無し。因りて常年豊饒充足す。ただ玉石を攻治するに利あらず、求むる物は一時に得られず。この林は徳厚く衆帰り根本豊足するを主とし、衆を聚め勢を得るの吉なり。惟だ琢玉の類の精工細務において心に称わざるのみ。
乾 虎豹怒咆,慎戒外憂。上下俱搔,士民無聊。
節の乾。虎豹は怒りて咆哮し、須らく外部よりの憂患を謹慎戒備すべし。上上下下皆攪められて騒動安んぜず、士人と百姓は依る所なし。この林は強敵外に在りて挙国寧ならざるを主とする。占う者は意を加えて外来の侵擾を防範すべく、先ず内部の人心を安んじ、切に軽々しく釁端を啓くべからず。
坤 探巢得雛,鳩鵲俱來,使我心憂。
節の坤。手を伸べて鳥巢を掏れば雛鳥を得、斑鳩と喜鵲とが一一斉に飛来して聒噪し、反って我が心中を憂愁せしむ。この林は小利を貪取して糾纏を招来し、得るは失うに償わざるを主とする。占う者は縦え獲る所有るとも、随いて来る麻煩は更に多し。軽重を権衡し、舎る能ければ則ち舎れ、方に煩憂を免れん。
屯 日望一食,常恐不足,祿命寡薄。
節の屯。毎日ただ一頓の飯を喫うを盼ぐのみ、仍ほ常に足らざるを擔心す。見ゆるに俸禄と命分とは皆微薄なり。この林は衣食艱難にして入る所は出る所に敷かざるを主とする。占う者の眼下は正しく窘迫の中に処す。倹省して日を度り入を量りて出を為すに宜しく、大なる開銷と挙動と有るべからず。
蒙 良馬疾走,千里一宿。離逃它鄉,誰能追復。
節の蒙。良馬は疾馳して一夜の間に千里を行く可し。一旦逃奔して別の地方に至れば、誰か復た追い回さんや。この林は人才或いは財物の迅速流失して之を追うに及ばざるを主とする。占う者が若し得力の人或いは緊要の物有らば、須らく早く留め住すべし。一旦手を脱せば便ち再び挽回し難し。
需 鵲巢鳩城,上下不親。內外乖畔,子走失顧。
節の需。喜鵲の築きし巢は斑鳩に占拠せられ、城池は主を易え、上下の間に因りて親しまず。内外は心を離れ背反し、児子は出走して照看する人なし。《詩経・召南・鵲巢》はもと「維れ鵲巢有り、維れ鳩之に居る」を詠ず。この林は基業を人に鳩占せられ家人離散するを主とする。占う者は外人の侵奪を防ぐべく、早く内部を穏住すべし。
訟 雲龍集會,征討西戎。招邊定眾,誰敢當鋒。
節の訟。雲と龍とは風雲際会し、師を興して西戎を征討す。辺地を招撫して部衆を安定すれば、誰か敢えて正面して此の鋒芒を抵当せんや。この林は威勢正しく盛んにして向かう所靡くを主とする。占う者が若し争競の事有らば、気勢は我に在り。果断に出撃するに宜しく、兼ねて招撫を以て輔となせば、勝算頗る大なり。
師 春多膏澤,夏潤優渥。稼穡成熟,畝獲百斛。(臨之明夷)
節の師。春の雨水は豊沛にして膏の如く、夏は滋潤充足し、庄稼は因りて成熟して一亩に百斛の多きを収む。この林は農において大吉にして、時雨調順・收成豊厚を主とする。占う者の営む事は水到れば渠成り、付出すれば必ず厚報有り。尤も耕作・投資・長線経営に利あり。
比 僮妾獨宿,長女未室。利無所得。(豫之益,蠱之履,乾之蒙)
節の比。年幼の婢妾は独り安寝し、家中の長女は未だ出嫁成家せず。因りて何らの利益も得られず。この林は陰陽接せず縁が成らずして生機停滞するを主とする。占う者の求むる事は配合を缺少し、一時に成就し難し。先ず人事の結合を促成し、而る後にその利を図るに宜し。
小畜 四野不安,東西為患。退身止足,無出邦域。乃得全完,賴其生福。(觀之小過,旅之豫,大有之睽)
節の小畜。四方の原野は皆安寧ならず、東辺西辺ともに禍患有り。此の時に身を退きて自ら守り、知足して歩を止め、己が国境を出でざれば、能く周全を保ち得、并せて此に頼りて福気を生出せん。この林は外乱に内静にして退を以て吉となすを主とする。占う者は遠行妄動を切忌すべし。安居して分を守るは正しく身を全うし福を獲るの道なり。
履 長寧履福,安我百國。嘉賓上堂,與季同床。
節の履。長久安寧にして脚は福地を踏み、我が治下の百国をして皆安定を得しむ。嘉宾は堂に登り入りて、主人の幼弟と榻を同じくして夜話す。この林は国泰に家安く、賓主相歡ずるを主とする。占う者の処する環境は安穩にして、兼ねて貴客門に臨み益友を結交するの喜有り。凡待客・議事は皆順なり。
泰 騏驥綠耳,章明造父。伯夙奏獻,衰續厥緒。佐文成霸,為晉元輔。
節の泰。騏驥・緑耳は皆周穆王の駿馬にして、因りて御手造父の名声を彰顕せしめたり。趙夙は功績を進献し、趙衰は彼の事業を承続して、晋文公を輔佐して覇業を成就し、晋国の首輔の臣と為れり。事は《史記・趙世家》に見ゆ。この林は大吉にして家世相承りて君を輔け功を建つを主とする。占う者は業を承けて大名を立つを望み得べし。
否 張陳嘉謀,贊成漢都。主歡民喜,其樂休休。(張良、陳平也)
節の否。張良と陳平とは好謀略を献上し、関中に都を定め漢家の基業を成就するを輔助す。君主は歓欣し百姓は喜悦し、あの快楽は寛舒自得なり。事は《史記・留侯世家》《陳丞相世家》に見ゆ。この林は謀臣得力にして大計底定するを主とする。占う者が若し賢助を得れば便ち事を成すべし。善謀を多く聴くに宜しく、衆心自ずから安からん。
同人 大面長頭,來解君憂。遺吾福善,與我嘉惠。
節の同人。面闊頭長・相貌不凡の一人が前来して、君主の為に憂愁を解く。我に福気と善果とを留め、我に美好の恩惠を賜う。この林は貴人時に及んで出現し憂患得解するを主とする。占う者の困む事は将に人の代わりて難を排する有らん。来人を広く接するに宜しく、貌を以て取ることなかれ。恩惠自ずから至らん。
大有 畏昏不行,待旦昭明。燎獵受福,老賴其慶。(夬之損)
節の大有。天黒を怕るるに因りて貿然として出行せず、天明光あるを待ちて身を動かす。火を挙げて田猟して因りて大に収獲有り。年老の人も此の慶幸に依頼して奉養を得べし。この林は時を択びて動き穏中に福を得るを主とする。占う者は黒を摸して冒進すべからず。時機明朗なるを待ちて再び手を出せば、収獲自ずから豊厚にして、且つ能く家中の長者に恵及せん。
謙 伯去我東,首髮如蓬。長夜不寐,輾轉空床。內懷惆悵,憂摧肝腸。(垢之遯)
節の謙。丈夫は東行して我を離れ去れり。我便ち梳妝する心なく、頭髪は乱れて飛蓬の如し。《詩経・衛風・伯兮》のいわゆる「伯の東するより、首飛蓬の如し」なり。長夜眠り難く、空牀に輾転反側し、心里に惆悵満ちて、憂愁は肝腸を摧折す。この林は別離して思念し独り空房を守るを主とする。占う者は親しむ所の人と暫く聚まり難し。懐を寛げ自ら遣るに宜し。
豫 朽條腐索,不堪施用。安靜候時,以待親知。
節の豫。朽壊の枝條・腐爛の繩索は皆用に派せず。此の時はただ安静に時機を等候して親友故交の前来を待つのみ宜し。この林は器具人力皆堪えるに足らず、勉强して事を行えば必ず意外を生ずを主とする。占う者は収斂静守して人の相助を待つべし。自ら単幹し或いは旧物旧法を用ゆるは皆靠り難し。
隨 比目四翼,相倚為福。姜氏季女,與君合德。(煥之明夷)
節の随。比目魚は双を成し、比翼鳥は四翅相并びて、彼此依倚してこそその福を成す。姜家の小女児は君子と徳行相合す。この林は佳偶天成にして相互に依托するを主とする。占う者は配合の人を尋求するに宜しく、婚姻・合伙の事は皆吉なり。独り行えば則ち福薄く、相随えば則ち福厚し。
蠱 履階升墀,高登崔嵬。福祿洋溢,依天之威。
節の蠱。台階を踩んで丹墀に登り、一歩々々高く昇りて巍峨の処に至る。福気と禄位と充盈洋溢して、全く上天の威霊庇佑に憑るのみ。この林は歩々高升して位望日に隆らかなるを主とする。占う者は仕進に望み有り。倚る所は人力にあらずして時運なり。天を敬し正を守るに宜しく、福禄長く保つ可し。
臨 奢淫吝嗇,神所不福。靈祗憑怒,鬼瞰其室。
節の臨。奢侈放縦にして且つ人に対して吝嗇なる者は、神明は福を賜わず。地祇は之が為に震怒し、鬼魅は彼が屋室を窺伺す。揚雄《解嘲》に「高明の家、鬼其の室を瞰む」有り。この林は徳行虧ありて冥譴を招致するを主とする。占う者は奢を戒め吝を戒め行事度有るべし。さもなくば災禍暗中に窺伺せん。
觀 大步上車,南到喜家。送我狐裘,與福載來。(中孚之泰,未濟之坤)
節の観。大步を邁ぎて車子に登り、南に至りて喜事を辦する人家に往く。主人は我に狐皮の裘衣を贈り、福気を連ねて一斉に載せ帰れり。この林は出行して礼を得贈を受け福を獲るを主とする。占う者は南方に往き或いは喜慶の約に赴けば必ず収獲有り。凡そ走動交際は皆吉にして、兼ねて財を得物を得るの喜有り。
噬嗑 東行西步,失次後舍。乾侯野井,昭王失居,與彼作期,不覺至夜。
節の噬嗑。東に走り行くもまた西に一歩を迈み、脚歩錯乱して宿処の後に落つ。魯昭公は出奔して乾侯の野井の地に客死し、己が居所を喪失せり。人と日期を約するや、知らず知らず已に夜に至る。事は《左伝・昭公三十二年》に見ゆ。この林は行止が序を失い国を去り所を失うを主とする。占う者は出行には次第を守るべく、期を誤り宿を誤ることなかれ。
賁 喜樂踴躍,來迎歡客。鵲巢百兩,以成嘉福。多獲利益。
節の賁。歓喜雀躍して、門を出でて前来の道賀の客を迎接す。《詩経・召南・鵲巢》に「之の子の帰るや、百両之を御る」と曰う。百輛の車馬は親を迎え、美好の福分を成就して、因りて多く収獲と利益と有り。この林は婚慶において大吉にして、嘉礼順成・賓客盈門を主とし、兼ねて財利を得べし。
剝 非理所求,誰肯相與。往來不獲,徒勞道路。
節の剝。求むる事は情理に合せず、誰か肯んじて汝に応答应んや。来来去去に一獲も無く、白白と路上に奔波す。この林は非分を強求して處處に碰壁するを主とする。占う者の図る事は本身脚を立て難し。縦え腿を跑断すとも成り難し。先ず求むる所が合宜なるやを反省し、弦を改め張を更ぬれば方に出路有らん。
