噬嗑の林(噬嗑卦六十四林)
大過:府藏之富,王以賑貸。捕魚河海,佈網多得。
坎の卦が大過の卦に変わる。府庫と倉廩は十分に充盈し、君王はこれをもって百姓に賑済し貸与し、また江河大海に出て魚を捕れば、網を下ろして収穫甚だ多し。この林は財貨が豊足で施予に余りあり、漁猟商賈の謀に皆得あることを主とし、吉である。
離:陰生麓鹿,鼠舞鬼哭。靈龜陸處,釜甑塵生。仁智盤桓,國亂無歡。
坎の卦が坎の卦に変わる。陰気が山麓の鹿群の間に滋生し、鼠は舞い鬼魅は夜哭し、霊験ある神亀は陸地に擱置され、鍋と甑は久しく火を挙げず塵埃を積む。仁人智士は徘徊して前に進まず、国中大乱で欢乐なし。鼠舞鬼哭は皆漢人が記した災異の象である。この林は陰邪が道に当たり賢者が困頓し、家に炊食なきことを主とし、大凶である。
咸:風塵坎坷,不見南北。行迷失利,復反其室。
坎の卦が離の卦に変わる。風沙が面に撲し道路は坎坷で、南北の方向さえ弁え難い。出行して路に迷い利を失い、ただ家に折り返すのみ。この林は時局が昏乱して去就が明らかでなく、外に出て一無所得なることを主とし、静守すべく妄動すべからず。
恆:金革白黃,宜利戎市。嫁娶有息,商人悅喜。
坎の卦が咸の卦に変わる。金革と白銀黄金は、辺地の兵器市集に持ち込んで交易し利を得るに最も宜しい。嫁娶の家は丁を添え後嗣あり、商人も心満ちて歓喜する。この林は五金皮革を販運して大いに利を得、婚姻と子嗣が両ながら順遂なることを主とし、吉である。
遯:匏瓜之德,宜繫不食。君子失輿,官正懷憂。
坎の卦が恒の卦に変わる。匏瓜の品性は只だ懸けるに宜しく人の食用に供せず。《論語・陽貨》に孔子が「吾豈匏瓜ならんや、焉んぞ能く繋がれて食われざらん」と嘆じたのは、まさに空しく懸けられて用いられぬを甘んぜぬ意である。今君子は車輿を失い、官長は心に憂愁を懐く。この林は才を懐いて遇われず棄置されて用いられず、また位と勢を失うを主とし、不吉である。
大壯:乘船渡濟,載水逢火。賴得免患,我有所持。
坎の卦が遯の卦に変わる。舟に乗りて済水を渡るに、船に水を載せて偏に火に遇う。幸いに載せた水が正好く火を救い、これによって禍患を免れ、全く己が手中に元より恃む所ありによる。この林は険厄に遇うとも、平日の儲備と憑仗によって化解することを主とし、驚きあれど険なき吉である。
晉:道險多石,傷車折軸。與市為仇,不利客宿。
坎の卦が大壯の卦に変わる。道路は険悪で乱石多く、車は撞壊して車軸が折れる。また市集の人と怨仇を結び、客居して外に在っても安穏ならず。この林は出行が阻害され車馬器物が毀損し、兼ねて人の怨を招き、旅宿に利なきことを主とし、凶である。
明夷:托寄之徒,不利請求。結衿無言,乃有悔患。
坎の卦が晋の卦に変わる。寄居して身を托する人に対しては請托するに宜しくない。しかし衣襟を繫げ口を閉じて言わぬは、かえって悔恨と禍患を留める。この林は人を求めて助けても益なく、一味に緘黙して心跡を申し明かさぬも同じく事を誤ることを主とし、進退の間に皆小咎あり。
家人:三年爭妻,相逐奔馳。終日不食,精氣竭罷。
坎の卦が明夷の卦に変わる。妻室を争うて三年を糾纏し、互いに追逐奔走して歇まず、終日食に遑あらず、精力気血はみな耗竭疲弊する。この林は婚姻の情事によって久訟相争い、神を労し身を傷めて終に得る所なきことを主とし、凶である。
睽:退惡防患,日之中息,解釋倒懸。
坎の卦が家人の卦に変わる。悪人を退避して預め患に防ぎ、日頭が正中に至る時に歇まって一気を休めれば、倒懸のごとき困苦は解脱を得る。倒懸は《孟子・公孫丑上》に出て、困厄が極に至るを形容する。この林は回避と防範に善く、危困は解けて凶より吉に転ずることを主とする。
蹇:兩足四翼,飛入家國。寧我伯姊,與母相得。
坎の卦が睽の卦に変わる。二つの足に四つの翼を生やした異禽が家国の中に飛び入り、我が大姐を安撫し、また母女を相睦らかにする。この林は異事が忽然として門に臨み、然れど終に骨肉は団聚し家宅は安寧なることを主とし、吉である。
解:寒露所凌,漸至堅冰。草木瘡瘍,花落葉亡。
坎の卦が蹇の卦に変わる。先ず寒露に欺凌され、漸く堅氷を結ぶ。《周易・坤》初六に「霜を履めば堅氷至る」というは、まさに禍患が漸より成るを言う。草木はこれによって瘡を生じ溃爛し、花は凋れ葉は落つ。この林は寒気が日に盛んとなり積漸して災を成し、小患が終に大禍を醸すことを主とし、凶である。
損:后稷農功,富利我國。南畝治理,一室百子。
坎の卦が解の卦に変わる。后稷が民に耕稼を教えて農功を建て、我が邦国を富ち利あらしめた。南の田畝は整治が当を得て、一家に百の子孫を添えた。后稷は周人の始祖で、事は《詩経・大雅・生民》に見える。この林は農事が豊稔で家道が殷実、人丁が繁盛なることを主とし、大吉である。
益:設網張羅,捕魚園池。網罟自決,雖得復失。危許之患,受其忻歡。
坎の卦が損の卦に変わる。網羅を布きて園池に入り魚を捕えるが、網目は自ら破裂し、捕えたのにまた走がす。一場の懸危の患を経た後、かえって歓喜を得た。この林は器具が牢ならず先に得て後に失うを主とすれど、虚驚が過ぎて終に喜慶あり、失して復た得るの象である。
夬:路與縣休,侯伯恣驕。上失其威,周室相微。
坎の卦が益の卦に変わる。道路と県邑がともに荒廃して停頓し、諸侯方伯は恣意に驕横し、天子は威権を失い、周王室はこれに随いて衰微する。これは東周に王綱が解け紐を失い諸侯が坐大した局面を説く。この林は上下失序して尊者が勢を失い下屬が跋扈することを主とし、凶である。
姤:逐走追亡,相及扶桑。復見其鄉,使我悔喪。
坎の卦が夬の卦に変わる。逃走した人を追い、東方日出ずる扶桑の地まで追い及ぶ。再び故郷に帰るを待つに、ただ我に懊悔と沮喪を教えるのみ。この林は奔波して追索し遠行して労頓し、縱え追い及んでも終に失落することを主とし、徒労して悔を生ず。
萃:履祿綏厚,載受福祉。衰微復起,繼世長久。疾病無危,晉人起告。
坎の卦が姤の卦に変わる。享くる禄位は安穏深厚で福祉を承け、衰敗の後に重新たに振起し、世代相承くること長久。疾病にも危険なく、晋の人が起ち来たりて訊を報ず。この林は衰より盛に転じ家世が綿長で、病める者も愈えることを主とし、吉である。
升:鰥寡孤獨,祿命苦薄。入宮無妻,武子哀悲。
坎の卦が萃の卦に変わる。鰥夫寡婦と孤児独老は禄命が皆苦薄で、家門に入るも妻子の相待つなく、武子は独り哀傷するのみ。この林は孤苦して依る所なく、姻縁は成り難く福禄は浅薄なることを主とし、凶である。
困:山沒丘浮,陸為水魚。燕雀無巢,民無室廬。
坎の卦が升の卦に変わる。大山が淹没し土丘が漂浮し、陸地は魚の遊ぶ所と変わり、燕雀は巣を失い百姓も房屋なし。この林は洪水が天に滔み家園が蕩尽して、人は皆流離して所を失うことを主とし、大凶である。
井:冠帶南遊,與福喜期。遨遊嘉國,拜位逢時。
坎の卦が困の卦に変わる。冠を戴き帯を束ねて南方に遊歴すれば、正好く福喜と相約す。美わしき邦国の中に遨游して、時に逢うて官職を拜せられることを得る。この林は外出して干謁すれば機縁に適逢し、進身して禄を受けるを望むべきことを主とし、吉である。
革:東行亡羊,失其羝牂。少女無夫,獨坐空廬。
坎の卦が井の卦に変わる。東へ行きて羊を失い、牡羊も牝羊も全く見えず、年少の女子は夫なく、独り空屋に坐す。この林は出行して財畜を折損し、婚姻が成らず、孤单落寞たることを主とし、凶である。
鼎:探巢捕魚,耕田捕鰍。費日無功,右手虛空。
坎の卦が革の卦に変わる。鳥巣に入りて魚を捉え、旱田の上に出て泥鰌を撈れば、路数は全然対せず、時日を白白に耗費して毫も効功なく、右手は到頭仍として空空如也。この林は求むる所は其の処に在らず、木に縁りて魚を求めるがごときことを主とし、労して獲る所なし、凶である。
震:東行飲酒,與喜相抱。福為我家,利來從母。水澤之徒,望邑而處。
坎の卦が鼎の卦に変わる。東へ行きて宴に赴き酒を飲み、喜事と相拥する。福気は我が家に帰り、財利は母家の辺より送られ来たり、水沢辺の人は城邑を望見して即ち安頓する。この林は東行に喜宴あり、内親の助けを得て財を進め、居処も安穏なることを主とし、吉である。
艮:妄怒失精,自令畏悔。怡怡之歡,君子無咎。
坎の卦が震の卦に変わる。端なく怒れば精気を耗損し、自ら畏懼と悔恨を招く。若能く和顔悦色にして和楽に相处すれば、君子は過ちなし。怡怡は《論語・子路》に出て、兄弟間の和順を形容する。この林は躁と怒を戒め、和悦をもって人に接すれば災禍なきことを主とする。
漸:白雲如帶,往往來處。飛風送迎,大雹將下。擊我禾稼,僵死不起。
坎の卦が艮の卦に変わる。白雲が一条の帯のごとく、往ったり来たりして聚拢し、狂風が迎送して至れば、大きな氷雹がまさに落ちんとし、我が庄稼を打ち壊し、禾苗は僵れ倒れて再び起つ能わず。この林は天時が利あらず風雹が災を成し、田禾が受損することを主とし、凶である。
歸妹:南至之日,陽消不息。北風烈寒,萬物藏伏。
坎の卦が漸の卦に変わる。南至の日に至り、陽気は初めて生ずるも陰寒は仍として消磨して止まず、北風は凛冽として厳寒にして、万物は皆藏伏する。南至は即ち冬至で、太陽が南行して極に至った日である。この林は時令が厳閉して陽気未だ振るわず、凡事は潜藏して時を待つに宜しく、妄動は利あらざることを主とする。
豐:火中仲夏,鴻雁解舍。體重難移,未能高舉。君子顯名,不失其譽。
坎の卦が歸妹の卦に変わる。大火星が昏れて南天の正中に見え、正に仲夏に当たる時、鴻雁は栖まる所を离散し、身は重くて挪め難く、高く飛ぶこと能わず。君子は却ってこの時に名声を顕揚し、その美誉を失わず。火中は《尚書・堯典》が季節を定めるに用いた星象である。この林は一時行動が滞るも声名は損なわれぬことを主とし、中を守りて誉を得るの象である。
旅:北行出門,履蹈躓顛。踒足據塗,汙我襦褲。
坎の卦が豐の卦に変わる。北へ出門して遠行し、一路磕絆して摔跌し、足を扭して傷つけ、泥地に跌坐して、我が短衣と褲を汚す。この林は出行が順ならず跌仆して受傷し、狼狽して汚損することを主とし、凶である。
巽:輕車醊祖,疾風暴起。促亂祭器,飛揚鼓舞。明神降佑,道無害寇。
坎の卦が旅の卦に変わる。軽車を駕して祖道の祭を行い、酒を酹する未だ畢らざるに狂風が驟り起こり、祭器を吹きて東倒西歪せしめ、塵土は飛揚して鼓舞のごとし。幸いに神明は終に庇佑を降し、路上に盗賊の為害なし。祖は出行前に路神を祭る礼である。この林は臨行に驚擾の変故あるも神助を得て終に平安を獲ることを主とし、先に驚き後に吉である。
兌:酒為歡伯,除憂來樂。福喜入門,與君相索。使我有得。
坎の卦が巽の卦に変わる。酒は「歓伯」と称せられ、憂愁を除き歓楽を帯び来ることが能く、福気の喜事が門に入り、自ら主人に向かって親を求め相就き、我に収穫あることを得さす。歓伯は漢人が酒に起こした雅号である。この林は宴飲して憂を解き、喜慶が門に臨みて実得あることを主とし、吉である。
渙:三足孤烏,虛鳴督郵。司過罰惡,自賊其家。毀敗為憂。
坎の卦が兌の卦に変わる。三足の孤烏が空しく督郵に向かって鳴きて状を告げる。もとより過失を糾察し悪人を懲辦する差事なのに、かえって自ら一家を害し、毁敗の憂いに落ちる。三足烏はもと日中の神鳥だが、ここでは孤鳴して応ずるものなし。この林は好んで挙訐告発して、かえって自身の門戸を傷つけることを主とし、凶である。
節:三河俱合,水怒踴躍。壞我王屋,民飢於食。
坎の卦が渙の卦に変わる。三条の大河が一斉に汇合し、水勢は暴怒して翻騰し、王屋一帯の房舍を冲壊し、百姓はこれによって飢える。この林は洪水が冲決して屋宇が傾毁し、糧食が断絶することを主とし、大凶である。
中孚:南行棗園,惡虎畏斑。執火銷鋒,使我無患。
坎の卦が節の卦に変わる。南へ行きて棗園に入れば、凶悪の老虎もその斑斕の紋彩を畏れる。火把を執り刀鋒を銷熔すれば、我に禍患なし。この林は威勢と預備をもって凶険を震攝し、患に先んじて防ぐれば、平安を保つべきことを主とし、吉である。
小過:求鹿過山,與利為怨。闇襲不言,誰知其歡。
坎の卦が中孚の卦に変わる。鹿を追わんがために山嶺を翻越し、利を争わんがために怨仇を結ぶ。暗中に襲取して口を閉じて言わざれば、誰か其の中の快意を知らん。この林は利を貪りて暗に其の事を行い、小得あれど怨を身に結ぶことを主とし、長く恃むべからず。
既濟:行旅困蹴,失明守宿。囹圄之憂,啟蟄出遊。
坎の卦が小過の卦に変わる。旅途は困頓窘迫し、天黑れて方向を失い、就きて宿るほかなし。もとより牢獄の憂いあったが、啓蟄に至りて陽気升発し、ようやく出游を得た。啓蟄は即ち驚蟄で、蟄虫が始めて動いて出る時である。この林は先に拘囚困厄を受け、時節の転機を待って後に解脱することを主とし、先凶後吉である。
未濟:據棘履杞,跌刺為憂。夫婦不和,亂我良家。
坎の卦が既済の卦に変わる。手に荊棘を按え足に枸杞の叢を踏み、跌倒して刺に扎されて憂愁を生ず。夫妻は不和で、もと好端端であった一家を搅乱する。この林は処境が荊棘のごとく手に刺さり挙歩が艱難で、また家室の失和に逢い、内外交困たることを主とし、凶である。
離の林(離卦六十四林)
離:時乘六龍,為帝使東。達命宣旨,無所不通。
離の卦が自ら変じても離の卦のままである。時に乗じて六条の龍を駕して馳せ、天帝に代わって東方に出使し、命令を伝達し旨意を宣示して、通じざる所なし。時乘六龍は《周易・乾》彖辞に出る。この林は命を奉じて事を行い通達して阻まず、出使干謁の諸般の事がみな順遂であることを主とし、大吉である。
乾:執轡四驪,王以為師。陰陽之明,載受東齊。
離の卦が乾の卦に変わる。手に韁繩を執りて四匹の黒馬を駕し、君王は彼を尊んで師とする。彼は陰陽の理を洞明し、これによって東方の斉の地に封を受けた。これは呂尚が周室を輔佐して斉に封ぜられたを暗に指す。この林は才学が上に見重んじられて封賞を受けることを主とし、大吉である。
坤:春秋禱祀,解禍除憂,君子無咎。
離の卦が坤の卦に変わる。春秋二季に時に依りて祷告祭祀すれば、禍事を化解し憂患を除去して、君子は過ちなし。この林は神明を敬い事い礼に依りて攘解すれば、災咎は自ら消えて平安無事であることを主とする。
屯:坐朝乘軒,據國子民。虞叔受命,和合六親。
離の卦が屯の卦に変わる。朝に臨み政を理め高車に乗り、邦国を拠有して民を愛すること子のごとし。虞叔は上の命を承けて、六親を和睦相合せしむ。この林は位に居りて勢を得て施政に方あり、家国親族が俱に和順を得ることを主とし、吉である。
蒙:門戶下堂,與福相迎。祿於公室,曾孫以昌。
離の卦が蒙の卦に変わる。門戸を出て堂階を歩み下れば、正好く福気を迎える。公家に在りて俸禄を領受し、子孫後代はこれによって昌盛する。この林は出でて福に逢い進身して禄を受け、沢が後嗣に及ぶことを主とし、大吉である。
需:高木腐巢,漏溼難居。不去甘棠,使我無憂。
離の卦が需の卦に変わる。高い木の上の鳥巣はすでに朽爛し、雨漏りして湿潤で居住め難い。ただあの甘棠の木を伐らなければ、我に憂愁あらしめざるを得ん。甘棠は召伯が訟を聴いた処で、《詩経・召南・甘棠》がその遺愛を詠じて人に伐るに忍びなからしめた。この林は旧居が堪え難いも、旧徳の余蔭を存留すれば仍として憂なし、旧を守るに宜しく妄改すべからざるを主とする。
訟:三女為奸,俱行高園。倍室夜行,與伯笑言。不認主母,為設歡酒,冤尤誰禱。
離の卦が訟の卦に変わる。三人の女子が串通して奸を為し、ともに高い処の園圃に走る。家室を背いて夜に出行し、あの伯氏と説笑し、自家の主母を認めず、かえって外人のために歓宴を設ける。この一陥の冤屈怨恨をまた誰に向かって祷告せん。倍は即ち背弃の背である。この林は内室が淫乱で尊卑が失序し、冤を含みて申し訴える処なし、大凶である。
師:漏卮盛酒,無以養老。春貸黍稷,年歲實有。履道坦坦,平安無咎。
離の卦が師の卦に変わる。底漏れの酒器で酒を盛れば物を留め置けず、老人を奉養することができない。しかし春に黍稷を借りて種を下せば、年成の時に果たして収穫あり。平坦な大道を行けば、平安にして過ちなし。履道坦坦は《周易・履》九二に出る。この林は先に耗漏の失あるも、稼穡に勤めば後に獲あり、終に平順に帰することを主とする。
比:松柏枝葉,常茂不落。君子歡寧,日富求樂。
離の卦が比の卦に変わる。松柏の枝葉は四時常青で、曾て凋落せず。君子は歓楽安寧にして、日に富足して其の楽を享く。松柏後凋は《論語・子罕》に堅貞を称許する旧喻である。この林は堅守恒久して家業が日に盛んになり、安楽富足なることを主とし、大吉である。
小畜:夫婦不諧,為燕攻齊。良弓不張,騎劫憂亡。
離の卦が小畜の卦に変わる。夫妻が和睦せざるは、あたかも燕国が兵を興して斉国を打つがごとし。好弓を張らざるも、主将騎劫は憂愁して敗亡す。戦国の時、燕の将騎劫は楽毅に代わって斉を攻め、田単の火牛陣に撃破されて死した。この林は内が和睦せず外にまた人を用いるに当を失して、必ず敗亡を致すことを主とし、凶である。
履:出令不勝,反為大災。強不克弱,君受其憂。
離の卦が履の卦に変わる。発した政令は推行できず、かえって大災を醸成する。強き者は弱きを圧し倒せず、君主はこの憂患を承受する。この林は号令が行われず上下が相持して、主事の人が累を受けることを主とし、凶である。
泰:奔走相錯,敗亂諸緒,民不得作。
離の卦が泰の卦に変わる。衆人が奔走して彼此錯雑し、諸項の頭緒を皆搅敗搅乱せしめ、百姓は安心して労作すること能わず。この林は紛擾して章なく政令が交錯し、事業が停頓することを主とし、不吉である。
否:載璧秉珪,請命於河。周公克敏,沖人瘳愈。
離の卦が否の卦に変わる。車に玉璧を載せ手に玉圭を持ち、河辺に到りて神明に命を請う。周公は誠敬勤敏にして君に代わりて祷告し、年幼の嗣君の病体はこれによって痊愈した。《尚書・金縢》に周公が璧と珪をもって王のために命を請うた事を載す。この林は至誠をもって神に祷れば感通し得ることを主とし、病める者は愈え危難は安に転ず、吉である。
同人:素車為馬,不任重負。王侯出征,憂危為咎。
離の卦が同人の卦に変わる。装飾なき素車に駑馬を配せば、沈重な負載を担うに堪えず。王侯がこのまま兵を出して征伐すれば、憂愁危険が即ち災咎となる。この林は器具も人力も重任に堪えず、勉強して師を興せば必ず禍患あることを主とし、凶である。
大有:大樹之子,百條共母。比之火中,枝葉盛茂。
離の卦が大有の卦に変わる。大樹の生ずる枝條、百根が同じく一つの本幹より出づ。大火星が昏れて見ゆる仲夏の時節に至れば、枝葉は格外繁茂である。この林は根本が壮盛で子孫衆多く、正に興旺の時に当たることを主とし、大吉である。
謙:壅遏堤防,水不得行。火盛陽光,陰蜺伏藏。走歸其鄉。
離の卦が謙の卦に変わる。堤壩が壅塞して水は流れ出ず、火気は熾盛で陽光は強烈なれば、陰虹はただ隠伏して藏匿するのみ。行人はこれによって己の郷里に奔り帰る。この林は陽盛にして陰消し、邪祟は退避す。壅滞あるも人は家に帰ることを得て、先に塞がり後に安んず。
豫:五嶽四瀆,合潤為德。行不失理,民賴恩福。
離の卦が豫の卦に変わる。五岳と四瀆が会合して万物を滋潤せしむるは、これ即ち彼らの德行である。事を行うに常理に違わざれば、百姓は恩を蒙り福を受くることを得る。五岳四瀆は古代国家が常祀した山川の大神である。この林は徳沢が広く被り施政が合理で、衆人が利を得ることを主とし、大吉である。
隨:駕駿南遊,虎驚我牛。陰不奉陽,其光滅蹴。訾之謙謙,奉義解患。
離の卦が隨の卦に変わる。駿馬を駕して南に遊歴するに、猛虎が我が牛を驚かす。陰気は陽気に順承せんとせず、日月の光亮はこれによって黯滅する。若し訾氏のごとく謙にしてまた謙なれば、道義を秉持して禍患を解くべし。謙謙君子は《周易・謙》初六に出る。この林は先に驚擾失序の象あるも、ただ謙退守義を以てのみ災を消すべきことを主とする。
蠱:早霜晚雪,傷害禾麥。損功棄力,飢無所食。
離の卦が蠱の卦に変わる。秋霜が早すぎて下り春雪が晩すぎて落ち、禾苗と麦を皆凍傷せしむ。一年の功夫は白白に費え気力は白白に抛たれ、飢荒を鬧がして食べる物なし。この林は天時が常を失い稼穡が害を受け、労して収穫なきことを主とし、凶である。
臨:岐周海隅,獨樂無憂。可以避難,全身保財。
離の卦が臨の卦に変わる。岐山周原より海辺の一隅に至るまで、独り安楽して憂愁なし。このような所は禍難を避けて身家和財物を保全すべし。岐周は周人の発祥の地で、古人は王気の鍾まる所と為した。この林は地を擇び遠く避ければ禍を免れ、人と財が両全することを主とし、吉である。
觀:陰蔽其陽,目暗不明。君憂其國,求騂得黃。駒犢從行。
離の卦が觀の卦に変わる。陰気が陽気を遮蔽し、目は昏暗にして見ること明らかならず。君主は国事のために愁え、もとより赤色の犠牲を求めたに、得たるは黄色のものであったが、幸いに馬駒牛犢が皆随いて来た。騂は祭祀に用いる赤色の牲である。この林は視聴が蔽を受け求むる所と得る所とが符せざるも、終竟空手に至らざるを主とし、小さな偏差あれど大失なきに属す。
噬嗑:金城鐵廓,上下仝力。政平民歡,寇不敢賊。
離の卦が噬嗑の卦に変わる。金で鋳た城、鉄で築いた外郭に、上下同心協力す。政事は公平で百姓は歓悦し、盗寇は敢えて来り侵害せず。仝は即ち同である。この林は守御が穏固で君民一体となり、外患が侵入する能わざることを主とし、大吉である。
賁:平公有疾,迎醫秦國。和不能治,晉人疑惑。
離の卦が賁の卦に変わる。晋平公が病を得て、秦より良医を迎えた。医和が診視した後に治せないと言い、晋国人は心に満ちて疑惑した。事は《左伝・昭公元年》の医和が晋侯の疾を論じたに見える。この林は病勢が深重で良医も手を束ね、医を求め薬を問うも効験あること難し、凶である。
剝:載堯扶禹,從喬彭祖。西遇王母,道路夷易。無敢難者。
離の卦が剝の卦に変わる。車に堯を載せ禹を扶け、随行するに王子喬と彭祖あり。西に行きて西王母に遇えば、道路は平坦で行きよく、敢えて来りて難する者なし。王子喬・彭祖は皆伝説中の長寿の仙人である。この林は聖賢仙真を伴とするを得、行程は通畅で寿長く阻まざるを主とし、大吉である。
