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中孚之林(中孚卦六十四林)

汉 · 焦延寿 · 第68巻 / 71

作盤ガイド: 大衍筮法, 六爻納甲の立卦

節 出門蹉跌,看道後旅。買羊逸亡,所謂□走。空手握拳,坐狼為咎。

中孚の節。門を出づれば即ち一跤を絆き、頭を回りて後に落ちたる同伴を張望す。買來の羊はまた跑掉して、いわゆる走脱して影蹤無し。到頭に両手空空としてただ拳頭を攥む。坐して狼の來りて禍患と成るを待つ。この林は門を出でて利あらず財物走失するを主とする。占う者の近日は出行交易すべからず。家中に守るは反って損少なからん。

小過 牧羊稻田,聞虎喧讙。畏懼惕息,終無禍患。(隨之漸,井之否,剝之損)

中孚の小過。稲田の辺に羊を放して、老虎の喧叫の声を聞く。害して息を屏し膽を提げて心に吊ると雖も、最終に並びて禍患に遭わず。この林は虚驚一場にして驚有りて険無きを主とする。占う者の眼前の恐慌は実は其の実害無し。ただ須らく小心謹慎すべく、風声過ぎ去らば自ずから平安ならん。

既濟 龍潛鳳池,箕子變服,陰孽萌作。

中孚の既済。龍は鳳池の中に潛伏して頭を露に肯ぜず。箕子は服色を改換して佯狂し奴と為りて以て紂王の害を避く。事は《史記・宋微子世家》に見ゆ。此は正しく陰邪禍孽の萌生を始むるの時なり。この林は賢者晦を隱して自ら保ち乱象初起するを主とする。占う者は微を見て著を知るべく、早く鋒芒を収斂して以て將來の禍を避くべし。

未濟 國無比鄰,相與爭強。紛紛凶凶,天下擾攘。

中孚の未済。国と国との間に和睦の鄰邦無く、彼此強を爭い勝を闘う。紛紛擾擾として凶険斷たず、天下は動蕩して寧ならず。この林は四鄰交惡して群雄相爭うを主とする。占う者の處する環境は到る處に對手なり。先ず善縁を結び強敵を少く樹るるに宜しく、硬く硬を碰くればただ休止無き紛爭に陷入せん。

福祉日增。

福氣と吉祥とは一天天と増多す。この四字は傳本中に錯簡して此に在り、本は下文《小過》の《乾》「徳を積み仁を累ねて、靈佑順信」の一林の結句にして、「積徳累仁」の两句と連讀して方に全章を成す。今仍ほ源本の次序に依りて錄存し、以て旧本の面目を見ん。

小過之林(小過卦六十四林)

小過 初雖驚惶,後乃無傷。受其福慶,永永其祥。

小過の小過。起初は雖も驚慌失措すれども、後來は却って毫髮無傷なり。反って福沢慶賞を承受して、あの吉祥は長久にして絶えず。この林は先ず驚き後に安んじ、憂を轉じて喜となすを主とする。占う者の憂う事はただ虚驚なり。過ぎて後に但だ害無きのみならず、尚ほ意外の福分有らん。鎮定して應對するに宜しく、自ら陣脚を乱ることなかれ。

乾 積德累仁,靈佑順信

小過の乾。一滴一滴と徳行を積累し仁愛を累聚せば、神靈便ち此の誠順守信の人を保佑す。本林の末句「福祉日增」は傳本中に錯簡して上文《中孚》の《未済》の後に到れり。此の二句と連讀すれば、正しく説く福氣は徳を積むに因りて日漸に増多すると。この林は厚徳にして福を致すを主とする。占う者は持久して善を行うに宜しく、福報自ずから厚からん。

坤 謹慎重言,不幸遭患。周召述職,脫免牢門。

小過の坤。謹慎小心にして言を出だすも持重すれども、仍ほ不幸にして患難に遭遇す。幸いに周公・召公有りて職守を陳述し中より周旋して、終に身を脱して牢門を走出せり。この林は辜無くして累を受けて貴人の營救を得るを主とする。占う者は縦え官非牢獄の厄に遇うとも、ただ平日言を謹み行を慎めば、自ずから面相を出でて援る人肯んずべし。

屯 鳥飛鼓翼,喜樂堯德。虞夏著功,要荒賓服。

小過の屯。飛鳥は翅を振り翼を鼓して、唐堯の徳政を歓欣す。虞舜と夏禹とは相継いで功業を建立して、要服・荒服の如き遠方の地を連れても來り賓服して歸順す。要服・荒服は《尚書・禹貢》に見ゆ。この林は大吉にして徳沢遠く播き四方心を歸すを主とする。占う者の行う事は人の擁戴を得、声名は遠處に及ぶべし。

蒙 牙□生齒,室堂啟戶。幽人利貞,鼓翼起舞。

小過の蒙。牙牀の上に新齒を長出し、屋室廳堂は門戸を敞開す。幽居の人は正道を守持するに利あり。《周易・履》九二に「幽人貞にして吉」有り。是に翅を振りて起舞す。この林は生機初めて萌え門戸重ねて開くを主とする。占う者は久しく閉塞の中に處して將に轉機を得ん。ただ正を守り自ら持せば、歓欣の日遠からず。

需 使伯東求,拒不肯行。與叔爭訟,更相□傷。

小過の需。伯氏を差遣して東に往きて求取せしめんとすれば、彼は推拒して肯んじて前往せず。又叔氏と爭執して官司を打ちて、彼此互相に傷害す。この林は使喚して動かず兄弟墻に鬩ぐを主とする。占う者の托する人は調遣を聽かず、家中は還た因りて爭訟を生出す。先ず内部を調和するに宜しく、切に家事を公堂に鬧上することなかれ。

訟 手足易處,頭尾顛倒。公為雌嫗,亂其蠶織。

小過の訟。手と脚とは位置を換え、頭と尾とは顛倒せり。男主人は婦人の活計を做起して、反って養蚕紡織の事を攪乱す。この林は本末倒置して爼を越え庖を代うを主とする。占う者は各々其の職を守り各々其の分に安んずべし。己に属せざる事に插手すればただ局面を乱すに至らん。

師 匠卿操斧,豫章危殆。袍衣既剝,祿命訖已。

小過の師。工匠大師は手に斧頭を執りて、參天の豫章大木は便ち旦夕に危うし。身上の袍服は剥去せられ、俸禄と性命とも便ち此に至りて止まる。この林は大材が伐を遭い位禄俱に失わるるを主とする。占う者が若し才高く顯露せば反って砍伐を招かん。収斂して自ら晦るに宜しく、切に人前に其の材具を逞ることなかれ。

比 天女踞床,不成文章。南箕無舌,飯多砂糠。虐眾盜名,雌雄折頸。(大畜之益)

小過の比。織女神は機前に踞坐するも花紋を織成せず。《詩経・小雅・大東》は南箕星は名は箕と雖も糠秕を簸揚する能わずと説く。因りて飯裏には砂石と糠皮と多し。衆人を虐待し名声を窃取する人は、終に雌雄双双頸を折りて亡ぶ。この林は名有りて実なし世を欺き名を盗む者は必ず敗るを主とする。占う者は務実して自ら持するに宜し。

小畜 大椎破轂,長舌亂國。床笫之言,三世不安。

小過の小畜。大槌は車轂を撃破し、長舌の婦人は国政を攪乱す。《詩経・大雅・瞻卬》に「婦に長舌有り、惟れ厲の階なり」と曰う。牀帷の間の私語は外に傳われり。《左傳》に「牀笫の言は閾を逾えず」と曰う。因りて三代の人皆安寧を得ず。この林は枕辺の讒言が家を敗し国を敗るを主とする。占う者は内言を慎み私語の外泄を防ぐべし。

履 銜命辱使,不堪厥事。中墜落去,更為負載。

小過の履。命を奉じて使を出だすも使命を辱めて、受けたる差事を擔當し起れず。半途の上に垮て下りて、只好く改めて重物を背負うの苦役を做す。この林は才職に稱わず、貴より賤に轉ずるを主とする。占う者が若し能力を超出する任務を接下せば、非但だ辦り成さざるのみならず還た身份を貶損せん。力を量りて受くるに宜しく、勉强して承當すべからず。

泰 三蛇共室,同類相得。甘露時降,生我百穀。

小過の泰。三條の蛇は一室に同處して、同類彼此相安んじ相得べし。甘美の露水は時を按じて降下して、我が百樣の穀物を滋養出す。この林は大吉にして、同類相聚まりて和睦し天時は期に應じて潤澤すを主とする。占う者は同道と共處すれば則ち各々其の益を得、営む所の事も亦た滋長の機に逢いて、収成期すべし。

否 衣繡夜遊,與君相逢。除患解惑,使君不憂。

小過の否。身に錦繍を穿ちながら夜間に出行するは、本より人の見る無きの憾なり。《史記・項羽本紀》のいわゆる「繡を衣て夜行く」なり。不意に竟に君子と相逢して、彼の為に禍患を除去し疑惑を解き、彼をして再び憂愁せざらしむ。この林は暗中に遇合して意外に助を得るを主とする。占う者は顯ならざる時に處すと雖も、仍ほ知音の相賞する有りて、憂疑解すべし。

同人 被髮獸心,難與為鄰。來如風雨,去如絕弦,為狼所殘。

小過の同人。頭髮を披き散らし心は禽獸の如き人は、彼と鄰居を做し難し。來るは狂風暴雨の如く、去るは琴弦驟斷の如くして、終に豺狼に殘害せられたり。この林は處する所人にあらず凶暴防ぎ難きを主とする。占う者は鄰を択び友を択びて居るべく、粗野凶悍の徒を遠離すべし。さもなくば驟來の禍は避くるに避る可からず。

大有 剛柔相呼,二姓為家。霜降既同,惠我以仁。(家人之損,中孚之坎,漸之離)

小過の大有。剛と柔とは彼此呼応して、两つの姓氏は一家を結ぶ。霜降の時に同心相聚まりて、仁厚を以て我に相待す。古礼は霜降を嫁娶の期と為す。この林は陰陽和合して婚姻美満するを主とする。占う者は親を論じ約を締するに皆宜しく、凡そ両方結合の事は皆各々其の恵を得べし。

謙 牛耳聾瞶,不曉聲味。委以鼎俎,治亂潰潰。

小過の謙。牛は耳聾く眼花して、声音と滋味とを分清し得ざらん。而るに烹調の鼎爼を交托せば、結果愈々治めて愈々乱れて、一塌糊涂なり。この林は用う所其の人にあらず托する所其の才にあらざるを主とする。占う者は才に依りて任を授くべし。緊要の事を此の道に通道に通ぜざる人に交すれば、ただ局面を攪りて収拾すべからざらしむるのみ。

豫 低頭竊視,有所畏避。行旅不利,酒酸魚餒,眾莫貪嗜。(鼎之解)

小過の豫。頭を低れて偸々と窺看して、心中に畏懼して回避する所有り。門を出でて遠行すれば順利ならず、備下の酒は已に酸を發し魚は已に腐臭して、衆人誰も肯んじて箸を下さず。この林は心怯く氣短くして備ふる所は時を失するを主とする。占う者は事を行うに既に底氣無く又貨色好からず。先ず整備して停當するに宜しく、さもなくば處處に人の冷落を遭わん。

隨 雨師娶婦,黃岩季子。成禮既婚,相呼南上。膏我下土,年歲大有。(否之坤,恆之晉,豐之比,豐之大過)

小過の随。雨師は新婦を迎娶す。あれは黄岩季氏の女なり。礼成りて婚を完したる後に、彼此招呼して一同に南行す。雨沢因りて我が土地を潤沢して、年成大いに豊収す。この林は大吉にして嫁娶時を得て雨は田疇を潤すを主とする。占う者の婚事は順成して、兼ねて田産豊収・家業増益の喜有らん。

蠱 戴盆望天,不見星辰。顧小失大,遁□牆外。(賁之蒙,巽之漸,益之中孚)

小過の蠱。盆を頭に頂きて天空を仰望すれば、自然に星辰を看る能わず。司馬遷《報任安書》は此を以て二事の兼顧し難きを喩う。只小處を顧れば便ち大處を失い、福、福氣は墻外より溜走せり。この林は自ら遮蔽を設け小に因りて大を失うを主とする。占う者は先ず眼前の障碍を除去して眼光を放開せば、方に芝麻を撿ひて西瓜を丟うを致さざらん。

臨 二人輦車,徙去其家。井沸釜鳴,不可以居。

小過の臨。兩個の人は車子を推して、家を挙げて遷走す。井水沸騰して鍋釜自鳴するに因る。古人は此を大凶の兆と視て、此の地方は再也住む可からず。この林は宅に異兆有りて迫られて遷徙するを主とする。占う者の居る處は已に安穩ならず。異を見れば速かに遷るべく、棧に恋りて去らざれば反って大禍を招かん。

觀 攘臂反肘,怒不可止。狼戾腹心,無與為市。

小過の観。袖子を捋げて手肘を反轉して、怒氣は止めどなく發作す。心腸は狼の如く凶狠乖戾にして、肯んじて彼と買賣を做する人無し。この林は暴戾にして和を傷り衆の與する所無きを主とする。占う者が若し一味に怒を逞しく氣を使わば、必ず孤立援無きに致らん。凡そ交易合作の事は更に須らく心平氣和なるべし。

噬嗑 湯火之憂,轉解喜來。

小過の噬嗑。原有の湯煮火焼の一般の憂患は、眼を轉ずる間に化解開けて、喜事随いて到来す。この林は大憂頓に釋れ凶を轉じて吉となすを主とする。占う者の眼下は正しく焦灼煎熬の中に在り。絶望するに及ばず。轉機は即ち近前に在り。此の一関を忍過せば便ち喜色を見ん。

賁 忠信輔成,王政不傾。公劉肇基,文武綏之。

小過の賁。忠誠守信を憑りて輔佐して王業を成就せば、王朝の政令は因りて傾覆に至らず。公劉は豳地に基業を開創して、文王・武王はそれを安定光大せり。事は《詩経・大雅・公劉》《史記・周本紀》に見ゆ。この林は大吉にして忠信に身を立て先を承け後を啓くを主とする。占う者は誠信を以て人を輔ぐるに宜しく、家業は世代相續くを望み得べし。

剝 登高折木,頓躓蹈險。車傾馬疲,叔伯嗟噓。

小過の剝。高處に攀りて樹枝を折取らんとして、脚下絆倒して険境に踏入す。車は翻覆し馬匹は疲憊して、叔伯たちはただ声を連ねて嘆息するのみ。この林は高を貪りて険を致し行程受挫するを主とする。占う者は攀援して過高く追求して過遠きを宜からず。力を量りて行えば方に傾覆の患を免れん。

復 桑方隕落,黃葉敗散。失勢傾側,如無所立。

小過の復。桑樹は正しく凋落す。《詩経・衛風・氓》に「桑の落つるや、其の黄にして隕す」と曰う。黄葉は敗壞して飄散し、憑恃を失いて歪斜傾側して、直に足を立つる處無し。この林は勢去り人衰え根基穩ならざるを主とする。占う者の倚る勢は正しく消退せんとす。早く別に立足の地を尋ぬるに宜しく、將に傾かんとする處に久しく待つことなかれ。

旡妄 鸞鳳翱翔,集於家國。念我伯姊,與母相得。

小過の无妄。鸞鳥と鳳凰とは空中に翱翔して、最后に我が家国の中に栖落す。我が大姐を思念すれば、彼女は母親と相處融洽せり。この林は大吉にして祥瑞降臨・親人和睦を主とする。占う者の家中に喜慶の兆有りて、兼ねて骨肉団圓・母女相安の楽を得べし。

大畜 陰淫所居,盈溢過度,傷害禾稼。

小過の大畜。陰濕の氣は過盛に聚積して此に在り、雨水は氾濫して限度を過して、庄稼を皆淹壊せり。この林は積蓄過量にして反って災害と成るを主とする。占う者の聚むる物・存する勢は已に承受を超出す。及時に疏泄して減損するに宜しく、さもなくば積み多くして患を成して、反って本業を傷らん。

頤 霄冥高山,道險峻難。王孫罷極,困於阪間。

小過の頤。高山は雲霄に聳入して昏暗明らかならず、道路険峻艱難なり。王孫は走りて筋疲力尽して、半山の斜坡の間に困す。この林は路途険阻して力尽きて中途に在るを主とする。占う者の圖る事は難度が預估を超出す。力を量りて程を分つに宜しく、一鼓作氣に強攀すべからず。以て半道に力竭するを免れん。

大過 和璧隋珠,為火所燒。冥昧失明,奪精無光,棄於道傍。

小過の大過。和氏の璧と隋侯の珠と、烈火に焚焼せられたり。昏暗の中に光沢を失い、精華は奪われて再び光彩無く、終に路旁に丟棄せられたり。二宝の事は《韓非子・和氏》《淮南子・覧冥訓》に見ゆ。この林は大凶にして、至宝が横禍に毀れ才俊が淪落して見棄せらるを主とする。占う者は其の珍しむ所を護惜すべく、尤も火を防防ぎ奪を防ぐべし。

坎 虞君好田,惠我老親。恭承宗廟,長慍不去,復我內事。

小過の坎。虞国の君は田猟を喜好するも、また我が年老の双親に恵を施す。恭しく宗廟の祭祀を承奉して、心中に長く慍怒を含むと雖も肯んじて去らず、終に我が家の内務を恢復せり。この林は怨を忍び職を守りて終に復位を得るを主とする。占う者の眼下は不平有ると雖も、本分を堅守すれば則ち旧業復るべし。

離 爪牙之士,怨毒祈父。轉憂與己,傷不及母。(謙之歸妹)

小過の離。爪牙を充當する武士は、兵を掌る祈父を怨恨す。《詩経・小雅・祈父》は正しく「祈父、予は王の爪牙」の怨なり。憂患を転じて自己身上に担當せしむ。幸いに傷害は母親に波及せず。この林は怨望上に在りて独り其の咎を任ずるを主とする。占う者は牽累を受くると雖も、家人は尚ほ保全すべし。自ら忍んで以て親を護るに宜し。

咸 倉盈庾億,宜稼黍稷,年歲有息。

小過の咸。粮倉は滿滿と裝え、露天の穀堆は億に至るまで多し。《詩経・小雅・楚茨》に「我が倉は既に盈ち、我が庾は維れ億なり」と曰う。黍と稷とを種植するに宜しく、年成年年に増益有り。この林は農と財とにおいて大吉にして、積儲豊足・逐年増長を主とする。占う者の営む業は穏歩に累積す。耕耨に勤め攢積するに宜し。

恆 窗牖戶傍,通利明光。賢智輔聖,仁德大行。家給人足,海內殷昌。(大畜之升)

小過の恒。窓戸門旁は通透敞亮にして光線充足す。賢能の智者は聖主を輔佐して、仁徳は世に大行す。家家豊足にして人人飽暖なり。四海の内は殷実昌盛す。この林は大吉にして政通して人和し家国俱に興るを主とする。占う者の處する局は豁然として開朗す。賢者の力を借りるに宜しく、長久経営すれば殷富を致すべし。

遯 忉忉之患,凶重與薦,為虎所吞。

小過の遯。憂心怛怛として禍患は接続して断たず、凶険は重重畳畳と壓り來りて、終に老虎に吞噬せられたり。「忉忉」は《詩経・斉風・甫田》に出づ。この林は大凶にして、禍は単に行わず終に吞噬を遭うを主とする。占う者は早く遠遁して険を避くべく、切に遲疑觀望して、坐して凶勢の身に加るを待つべからず。

大壯 水無魚滋,陸為海涯。君子失居,小人相攜。

小過の大壯。水中は復た魚蝦を繁衍せず、陸地は海邊に變成せり。君子は住處を失い、小人は却って群を成し伴を結べり。この林は環境劇變して正邪位を易うを主とする。占う者の處する局面は已に翻轉し、正直の人は一時に所を失う。暫く鋒芒を避けて、群小と相爭わざるに宜し。

晉 九疑鬱林,沮溼不中。鸞鳳所惡,君子攸去。(無妄之巽)

小過の晋。九疑山と郁林郡の一帯は、低窪潮濕にして居處に合せず。鸞鳳を連れても彼の地を嫌悪して、君子是に離去す。この林は水土宜からず賢者遠く避くるを主とする。占う者の在る所或いは往かんと欲する地は並びて自己に適合せず。早く遷離するに宜しく、勉强して留駐すれば反って身家を損せん。

明夷 六翮泛飛,走歸不及。脫歸王室,上其騂特。

小過の明夷。六翮を展開して高く飛び起き、走りて歸るに已に及ばず。終に身を脱して王室に歸附して、赤色の公牛を献上して祭牲と為す。「騂特」は周人の祭祀の尚う所なり。この林は険を脱して正に歸り、進獻して容を取るを主とする。占う者は困頓の中に在ると雖も、ただ正途に歸依して奉獻有らば、仍ほ身を安んじ命を立つべし。

家人 不直莊公,與我爭訟。媒伯無禮,自令壅塞。

小過の家人。荘公は理が虧き正道を占めず。而るに我と爭執して官司を打つ。媒を做す伯氏はまた礼數を守らず。是に事を自ら僵局に弄成せり。この林は曲直明白ならず居間が礼を失して阻塞に致るを主とする。占う者の議る事は中人の不當に因りて卡住せり。別に妥なる人を換えて中より疏通するに宜しく、無理の者と纏訟することなかれ。

睽 倉庚多億,宋公危殆。吳子巢門,殞命失所。(「庚」一作「庾」)

小過の睽。倉廩と露囤との中の粮穀は億に至るまで多く、本は豊足の象なり。然るに宋襄公は泓水に傷を受けて危殆となり、呉子諸樊は巢邑の城門の下に箭に中りて殞命して死して歸る所無し。二事は《左傳》に見ゆ。この林は外富して身危しを主とする。占う者は縦え厚積有るとも平安を保ち難し。兵刃を遠く避け身を慎みて守るに宜し。

蹇 失羊捕牛,無損無憂。

小過の蹇。一隻の羊を丟いて一頭の牛を捕獲せば、算來するに既に虧損無くまた憂愁するに及ばず。この林は小失にして大得、失して償う有るを主とする。占う者の眼前は些許の損耗有ると雖も、随後に別に更大の補進有らん。一時の失を懐に介するに及ばず。通盤に算來すれば仍ほ好局なり。

解 夏麥麩□,霜擊其芒。疾君敗國,使我誅傷。(泰之賁)

小過の解。夏の麦子は只麸皮を余し、霜凍は麦芒を打折せり。君主は疾有りて国事敗壞して、我をして誅戮傷害に遭わしむ。この林は収成受損して上其の政を失し、禍は下民に及ぶを主とする。占う者の處する局は根本已に壞れり。早く身を脱するを求むるに宜しく、敗局の中に在りて刑責を承當することなかれ。

損 昧昧暗暗,不知白黑。風雨亂擾,光明伏匿,幽王失國。

小過の損。昏昏暗暗として、黑白是非を分清し得ざらん。風雨交加して擾攘寧ならず、光明は潛蔵して、周幽王は因りて天下を丟せり。事は《史記・周本紀》に見ゆ。この林は大凶にして、是非顛倒して昏乱に亡国するを主とする。占う者は力めて明辨を求むべく、切に昏昧の中に波に随い流に逐うことなかれ。以て同じく覆亡に陷るを免れん。

益 執斧破薪,使媒求婦。和合二姓,親御飲酒。色比毛嬙,姑公悅喜。

小過の益。手に斧頭を執りて柴薪を劈き開き、媒人を遣わして妻室を求娶せしむ。《詩経・斉風・南山》に「薪を析るは之れ如何、斧匪ざれば克たず。妻を取るは之れ如何、媒匪ざれば得ず」と曰う。两姓和合して、自ら車を駕して親を迎へ喜酒を共飲す。新婦の美貌は毛嬙に比すべく、公婆は歓喜す。この林は婚において大吉にして、佳偶成るを得て翁姑意に称うを主とする。

夬 六疾生狂,痴走妄行。北入患門,與禍為鄰。

小過の夬。六種の病氣は交攻して狂乱を生出し、痴痴として奔走して胡乱に行事す。一頭北に闖入して禍患の門に入り、災禍と隣居を做せり。この林は大凶にして、神志守を失して自ら険地に投ずるを主とする。占う者は軽挙妄動を切忌すべく、尤も北行を忌むべし。先ず心神を安定して静守して以て禍を避くるに宜し。

姤 驅羊就群,狼不肯前。慶季愎諫,子之被患。

小過の姤。羊只を驅趕して群に合せしむれども、狼は肯んじて上前せず。慶氏と季氏とは剛愎自用して勧諫を聽かず、燕相子之が権を專らにして終に禍を招けるに如し。子之が燕を乱るの事は《史記・燕召公世家》に見ゆ。この林は異類合い難く諫を拒みて禍を致すを主とする。占う者は虚心に言を納るべく、強いて心を同じくせざる人を合せれば反って大患を生ぜん。

萃 二人異路,東趍西步。十里之外,不知相處。

小過の萃。兩個の人は走る所同ならざる路なり。一は東に疾行し一は西に邁歩す。十里の外に相隔てて、彼此對方の何の處に在るかを知らず。この林は同行して志を異にし終に失散に至るを主とする。占う者は人と事を共にするに若し方向一ならざれば、早晚道を分かち轡を分かたん。早く向き去るを説清するに宜しく、両相いに耽誤するを免れんが為なり。

升 義不勝情,以欲自營。睹利為躬,折角摧頸。

小過の升。道義は私情に壓り勝る能わず。ただ欲望に憑りて己の為に経営す。利益を一見すれば便ち身上に往きて攬る。結果角を折断して頸項を摧傷せり。この林は私を徇り利を逐いて自ら傷残を取るを主とする。占う者は義を以て欲を制すべく、利を見れば先ず其の害を思うべし。一味に貪求すれば必ず重創に致らん。

困 騷騷擾擾,不安其類。疾在頸項,凶危為憂。

小過の困。騒動擾攘して、同類の間に安寧を得ず。病痛は頸項要害の處に生じて、凶険危殆として人をして憂愁せしむ。この林は内外安ならずして病は緊要の處に在るを主とする。占う者は頸項肩背の疾に留意すべく、早く医に就くべし。事を處するも亦た須らく要害の制せられんことを防ぎ、先ず其の枢紐を固むるに宜し。

井 三河俱合,水怒湧躍。壞我王室,民困於食。

小過の井。三條の大河は一斉に汇合して、水勢は暴怒して翻騰涌躍す。我が王室宮城を衝毀して、百姓は因りて粮を缺き困を受く。この林は水において大凶にして、洪涝災を成し根基毀れらるを主とする。占う者は水患と衆力の汇聚して成る衝撃とを防ぐべし。早く堤防を築き粮を儲えて以て荒歉に備うるに宜し。

革 陽曜旱疾,傷病稼穡,農人無食。

小過の革。烈日は曝曬して旱情迅猛なり。庄稼は傷を受け病を致して、農人は因りて飯を喫う無し。この林は亢旱災を成し耕作収無きを主とする。占う者の営む事は枯竭の運に遇上す。水源を尋ね生路を覓るに宜しく、切に坐して天時を待つべからず。別に活計を謀じて以て荒年を度るべし。

鼎 流浮出食,載豢入屋。釋轡繫馬,西南廡下。

小過の鼎。水上に食物漂り來りて取る可く、又飼養の牲畜を裝載して屋に進めり。韁繩を解きて馬を西南邊の廊廡の下に拴す。この林は食を得畜を得て安頓所あるを主とする。占う者は衣食に落着有りて、行旅は脚を歇むるを望み得べし。凡そ儲備を置辦し人馬を安頓する事は皆宜しく、尤も西南の方向に利あり。

震 門戶之居,可以止舍。進士不殆,安樂相保。

小過の震。此は門有り戸有りの居所にして、止まりて住宿を安頓すべし。賢士を進用して危険有るべからず。衆人は安楽として彼此保全す。この林は身を安んずる地を得て人を用うるに咎無きを主とする。占う者は安心して居を定むべし。凡そ人才を招納し同伴を結交する事は皆穏妥可靠なり。

艮 過時不歸,雌雄苦悲。徘徊外國,與母分離。(咸之遯,豫之大壯)

小過の艮。約定の時を過するも仍ほ歸らず、雌雄双鳥は苦苦として悲鳴す。人は異国に徘徊して定まらず、母親と両地に分隔す。この林は期を逾えて歸らず母子相離るるを主とする。占う者の盼む人は一時に返り難く、自身も亦た外に滞留するの象有り。先ず音信を通じて以て親心を慰むるに宜し。

漸 中田有廬,疆埸有瓜。獻進皇祖,曾孫壽考。

小過の漸。田中に搭好の廬舎有り、田界の上に瓜を種う。《詩経・小雅・信南山》に「中田に廬有り、疆埸に瓜有り⋯⋯皇祖に献じて、曾孫寿考ならん」と曰う。それらを先祖に進献して、曾孫因りて長寿す。この林は大吉にして農事成る有りて祖を祭りて福を得るを主とする。占う者は本業に勤しみ且つ先人を敬奉せば、寿考の慶を獲べし。

歸妹 失時無友,覆家出走,何如喪狗。

小過の帰妹。時機を錯過して又朋友無し。家業傾覆して只出走するに、あの狼狽の状は喪家の犬の如し。孔子は曽て自ら「累累として喪家の狗の若し」と比す。見《史記・孔子世家》。この林は時運両失して歸依する所無きを主とする。占う者は早く援手を結交して時機を把握すべし。さもなくば一旦傾覆せば便ち身を容るる處無からん。

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