噬嗑の林(噬嗑卦六十四林)
復:羔羊皮革,君子朝服。輔政天德,以合萬國。
離の卦が復の卦に変わる。羔羊の皮革で縫い成した衣裳は、君子が朝に上る礼服である。これを着て朝政を輔佐し天徳に順応して、万国を和合に帰せしむ。《詩経・召南・羔羊》はまさに位に在る者の節倹正直を詠ず。この林は官に居りて正を守り徳をもって政を輔け、四方を協和する能くすることを主とし、大吉である。
旡妄:振鐘鼓樂,將軍受福。安帖之家,虎狼為憂。履危不殆,師行何咎。
離の卦が无妄の卦に変わる。鐘鼓を敲き軍楽を奏すれば、将軍はこれによって福を受く。安分守己の人家は、かえって虎狼を以て憂患と為す。険しき処を踏んで危殆ならざれば、兵を出し師を行うに何の過ちかあらん。この林は行軍征伐して功あり福を受けるを主とし、険境に臨むも災咎なし、ただ家に居る者は外侵に防ぐべし。
大畜:嫡庶不明,孽亂生殃,陳失其邦。
離の卦が大畜の卦に変わる。嫡子と庶子の名分が清らかならず、庶孽が位を争い乱を為して禍殃を生じ、陳国はこれによって其の国家を失った。春秋の時、陳国は屡々公族の争立によって衰亡した。この林は名分が正ならず家内で嗣を争い、終に家を敗り国を亡ぼすことを主とし、大凶である。
頤:鳥驚孤鴻,亂國不寧。上弱下強,為陰所行。
離の卦が頤の卦に変わる。群鳥が孤单の鴻雁を驚き起こし、乱世の国は安寧を得ず。上に居る者は衰弱し下に在る者は強横で、事事皆陰柔の一方に主使される。この林は主弱く臣強く綱紀が倒置して、国家が動蕩することを主とし、凶である。
大過:被繡夜行,不見文章。安坐於堂,乃無咎殃。長子帥師,得其正常。
離の卦が大過の卦に変わる。錦繡を着て夜に路を行けば、衣上の花紋を見る人なし。安穏に堂上に坐するのみこそ、災殃あらざらん。長子に軍隊を統率せしむるは、正に常道に合す。長子帥師は《周易・師》六五に出る。この林は美を暗処に炫ぶは徒労無益にして、静かに本位を守り長を擇びて任ぜば、即ち其の正を得ることを主とする。
坎:六月采芑,征伐無道。張仲方叔,克勝飲酒。
離の卦が坎の卦に変わる。六月芑を采る時節に師を出して、道なき国を討伐す。張仲・方叔の一班の良将が勝ちて帰り来り、宴を設け酒を飲みて功を慶す。《詩経・小雅》に《六月》《采芑》の二篇あり、まさに方叔・張仲の北伐を詠ず。この林は師を興すに名あり将は其の人を得、敵を克き凱を奏することを主とし、大吉である。
咸:昧暮乘車,東至伯家。踰梁越河,濟脫無他。
離の卦が咸の卦に変わる。天色昏暗の傍晚に車に乗りて出発し、東に行きて伯氏の家に到る。橋梁を越え河水を渡り、平安にして険を脱し別の意外なし。この林は暮夜の遠行は険阻を渉るも、終に渡越して事なきを得ることを主とし、驚きあれど険なきに属す。
恆:東風解凍,和氣兆升,年歲豐登。
離の卦が恒の卦に変わる。東風吹き来たり氷雪は消融し、和暖の気が始めて上升すれば、一年の収成は必ず豊足ならん。東風解凍は《礼記・月令》に記す孟春の物候である。この林は時序が暖に回り阻滞が氷釈して、農事人事が皆亨通を得ることを主とし、吉である。
遯:三狸搏鼠,遮遏前後。死於圜域,不得脫走。
離の卦が遯の卦に変わる。三匹の野猫が合力して鼠を撲ち、前後一斉に堵截すれば、老鼠は囲困の圏子の中に死し、逃げ脱ぐことを得ず。この林は身が囲困の中に処り四面受制して、走るべき路なきことを主とし、凶である。
大壯:綏德孔明,履祿久長。貴且有光,疾病憂傷。
離の卦が大壯の卦に変わる。民を安んずる徳は十分に昭明で、享くる禄位は長久。身份は顕貴にして光彩あるも、ただ身に疾病あるを憂うとす。この林は徳位ともに佳く富貴が長遠なるを主とすれど、疾病に纏わるるを防がねばならず、吉の中に憂いを帯ぶ。
晉:三虎搏狼,力不相當。如摧腐枯,一擊破亡。
離の卦が晋の卦に変わる。三匹の虎が合わせて一頭の狼を撃つは、双方の力量が懸殊なれば、朽ち枯れた木を折るがごとく、たちまちそれを打ち垮す。この林は衆を以て寡を凌ぎ強を以て弱を撃つを主とし、敵を克くこと甚だ易く、用兵と争訟に皆勝利を得、吉である。
明夷:使伯采桑,狠不肯行。與叔爭訟,更相毀傷。
離の卦が明夷の卦に変わる。伯氏を遣わして桑を采らしめんとするに、彼は執拗に往かんとせず。また叔氏と官司を打起して、彼此互いに詆毀し傷害す。この林は兄弟が睦まざるを主とし、差遣は従わず訟争は両敗す、凶である。
家人:抱空握虛,鴞驚我雛,利去不來。
離の卦が家人の卦に変わる。抱くは空、握るは虚で、猫头鹰がまた我が雏鳥を驚かし、利益は一去して再び回らず。鴞は古人が見るに不祥の悪鳥である。この林は得る所が皆虚で家中が驚を受け、財利が流失することを主とし、凶である。
睽:李花再實,鴻卵降集。仁哲以興,隆國不賊。
離の卦が睽の卦に変わる。李樹が花を開きまた第二回の果を結び、鴻雁の卵が降りて聚集す。仁徳明哲の人はこれによって興起し、興隆の国は賊害を受けず。草木の再実と异物の降集は、漢人は皆受命の祥瑞と見做した。この林は祥瑞が疊に現れ賢者が当に興らんとするを主とし、国泰にして患なし、大吉である。
蹇:東山皋落,勇悍不服。金瑛玩好,衣為身賊。絲麻不作。
離の卦が蹇の卦に変わる。東山の皋落氏は勇猛強悍にして、帰服せんとせず。美玉宝器はただ玩賞に供し、華美の衣裳はかえって身を害する物となり、蚕糸麻布も織り成さず。皋落は赤狄の一支で、晋献公はかつて太子申生に命じてこれを討たしめた。この林は外敵が桀驁で、玩好が志を喪わしめ、女紅が廃弛することを主とし、凶である。
解:飛蚊汙身,為邪所率。青蠅分白,真孝放逐。
離の卦が解の卦に変わる。飛蚊が叮きて身を汚し、人は邪佞に牽かれて行く。青蠅は黒白を搅混することが能く、真の孝子はかえって放逐に遭う。《詩経・小雅・青蠅》はまさに青蠅を以て讒人に比す。この林は讒言が政を乱り忠孝が棄てられるを主とし、大凶である。
損:南山大木,丈身六目。制命出文,東里宣敷。尊主安居,鄭國無患。
離の卦が損の卦に変わる。南山の上の大木、一丈の身に六つの節眼を生ず。鄭国の政令は先ず文辞に由りて擬成し、再び東里に住む子産に交わして潤色し宣布せしむ。《論語・憲問》に鄭国が命を為すに「東里子産之を潤色す」と記す。この林は賢臣が筆を秉り政令が体を得て、君安く国寧んずることを主とし、吉である。
益:泉起崑崙,西出玉門。流為九河,無有憂患。
離の卦が益の卦に変わる。泉源は崑崙山より発して、西に流れて玉門関を出づ。九条の大河に分かれて、一路憂患なし。古人は黄河の源が崑崙に出づと信じた。この林は源は遠く流は長く支派が暢達して、行事が順遂にして阻まざることを主とし、吉である。
夬:命短不長,中年夭傷。思及哭堂,哀其子亡。
離の卦が夬の卦に変わる。寿命は短促して長久あたわず、人は中年に到りて夭折損傷す。霊堂上に痛哭せんことを一想するに、兒子の死亡のために哀傷す。この林は寿元が永ならず喪子の痛あることを主とし、人口に損あり、大凶である。
姤:君臣不和,上下失宜,宗子哀歌。
離の卦が姤の卦に変わる。君と臣が和睦せず、上下の分際が皆当を失し、宗族の嫡長子はただ哀傷悲歌するのみ。この林は上下が心を離れ家族が失序し、主事する者が憂愁することを主とし、凶である。
萃:苛政日作,螟食華葉。割下啖上,民被其賊。秋無所得。
離の卦が萃の卦に変わる。苛刻の政令が日一日と出台し、あたかも螟虫が花葉を啃食するがごとし。下民を割剥して上頭を供養すれば、百姓は深く其の害を受け、秋に到りて一穫なし。この林は賦斂が煩重で下を剥りて上に奉じ、民は困し歳は歉することを主とし、凶である。
升:南行載鎧,登履九魁。車傷牛罷,日暮嗟諮。
離の卦が升の卦に変わる。南へ行軍して鎧甲を載せ、一路攀登して九重の高岡を翻る。車は壊れ牛も疲れ垮れ、天色は晩に向かい嘆息嗟怨のみ残る。この林は重を負い遠行して力尽き途窮まり、事は日暮に至りて終に成る所なきことを主とし、凶である。
困:春東夏南,隨陽有功,與利相逢。
離の卦が困の卦に変わる。春は東に往き夏は南に往き、陽気の在る方向に順って事を行えば功を建て、処処に利益と相遇う。この林は時令方位に順応して動けば、天時の相助を得て謀事に獲あることを主とし、吉である。
井:頭尾顛倒,不知緒處,君失其國。
離の卦が井の卦に変わる。頭と尾を顛倒させば、頭緒が何処に在るか理め清らかならず、君主はこれによって国家を失う。この林は本末を倒置し綱紀を紊乱して、上に居る者が失守することを主とし、凶である。
革:言無要約,不成券契。殷叔季姬,公孫爭之。強入委命,不悅子南。
離の卦が革の卦に変わる。言葉に確たる約定なくては、契券を訂成せられず。殷家の叔氏と季姬の婚事には、公孫も来りて争奪し、強いて門に入りて終身を託し去れども、終竟あの子南に中意せず。この語は《左伝》に載する鄭国徐吾犯の妹が婿を擇び子南子皙が相争った旧案を影射する。この林は約定が明らかならず婚事が争われ、勉強して結合しても心甘んぜざるを主とし、凶である。
鼎:缺陷不成,胎卵不生,不見其形。
離の卦が鼎の卦に変わる。缺損残陷あれば器を成すこと能わず、胎は孕まず卵は孵らず、形状さえ見え出でず。この林は根基が残缺で孕育が成らず、謀事に形なく果なきことを主とし、凶である。
震:見蛇交臥,惜蜒畏惡,心乃無悔。
離の卦が震の卦に変わる。蛇が相交わり盤卧するを見て、あの蜿蜒の物を厭い心に畏忌を生ずとも、回避するを知れば心に悔恨を留めず。この林は畏るべき象に遇うも、能く敬慎して躲避すれば咎を招くに至らざることを主とする。
艮:河水孔穴,壞敗我室。水深無涯,魚鱉傾倒。
離の卦が艮の卦に変わる。河堤に洞穴を穿ち、大水が我が房屋を冲毁す。水深くて辺際を望むこと能わず、魚鼈さえ冲られて翻倒す。この林は堤防が潰決して家宅が傾覆するを主とし、水厄の凶である。
漸:五嶽四瀆,地得以安。高而不危,驚懼避患。
離の卦が漸の卦に変わる。五岳四瀆の鎮守あって、大地はようやく安定を得る。高位に処りて傾危なきは、心に驚懼を存せば即ち禍患を躲くことを得ん。この林は根基が穏固なるを主とすれど、常に戒懼を懐くべく、かくすれば高きに居るも険なし、吉である。
歸妹:南至之日,陽消不息。北風冽寒,萬物藏伏。
離の卦が歸妹の卦に変わる。南至の日に到り、陽気は初生するも陰寒は消磨して止まず。北風は骨を刺すごとく厳寒にして、万物は一斉に藏伏す。南至は即ち冬至で、太陽が南行して極処に至る日である。この林は寒気が事を用い生機が深く藏することを主とし、凡事は閉藏静守に宜しく、発動すべからず。
豐:五利四福,俱田高邑。黍稷盛茂,多獲高稻。
離の卦が豐の卦に変わる。五様の利益、四種の福気が、皆高地城邑の田畝の上に聚集す。黍稷は繁茂に長じ、多くの好稲を収穫す。この林は田産が豊盛で五穀が登熟し、財福が並び至ることを主とし、大吉である。
旅:公孫駕車,載遊東齊。延陵子產,遺我紵衣。疾病哀悲。
離の卦が旅の卦に変わる。公孫が車を駕して、我を載せて東に游んで斉国に至る。延陵季子と鄭国子産のごとき賢者が我に細麻布衣を贈る。《左伝》に季札と子産が一見して故のごとくなり、互いに縞帯紵衣を贈ったと記す。この林は遠游して知己の厚贈に遇うことを主とすれど、身に疾病ありて、喜びの中に悲しみを含む。
巽:蛟虯當道,民困愁苦。望羊置群,長子在門。
離の卦が巽の卦に変わる。蛟龍虬螭が路上に盤踞し、百姓は困頓愁苦す。眼を擡げて遠く望むも、羊群を撇下するよりなく、長子は仍として門口を守る。この林は険物が道に当たり生計が阻まるるを主とすれど、幸いに家中の長子が尚お門戸を守り得て、凶の中に守りあり。
兌:金玉滿堂,忠直乘危。三老凍餓,鬼奪我室。求魚河海,網舉必得。
離の卦が兌の卦に変わる。金玉は厅堂に堆満するも、忠直の士は身を危境に処し、三老は凍え餓え、鬼魅は我が居室を奪う。ただ江河大海に往きて魚を求めれば、網を提げる毎に必ず収穫あり。この林は財は豊かなれど人は安んぜず家宅に祟あり、ただ漁猟の利を経営せば得るべし、吉凶相雑するを主とする。
渙:日入明匿,陽精隱伏。小人心勞,求事不得。
離の卦が渙の卦に変わる。太陽落ち光明隠没して、陽気の精華は潜伏す。小人は徒らに心を労し神を費やせど、求むる事は辦らず。この林は時運が昏暗で陽気の助けなく、営謀が成らざることを主とし、凶である。
節:頻逢招飲,失利後福。不如子息,舊器故杵。申請必得,乃無大悔。
離の卦が節の卦に変わる。頻々と人に請われて飲宴するは、眼前に利を失い福は後に在るを知らざるなり。これらは皆子嗣を生養するに及ばず、家中旧有の器物杵臼の如き実在に及ばず。若し再三申説して請求すれば、終竟得る所有り、また大きな悔恨なからん。この林は浮華の応酬は無益にして、旧を守り実を務め堅く請して捨てざれば、終に得て悔いなきことを主とする。
中孚:南有嘉魚,驚黃取遊。魴鱮詡詡,利來無憂。
離の卦が中孚の卦に変わる。南方に肥美の魚あり、驚を受ければ游動す。魴魚と鰱魚は成群相随いて自ら其の楽を得、利益到來して憂愁なし。《詩経・小雅・南有嘉魚》はまさに君子に酒あり嘉賓式燕の楽を詠ず。この林は漁利が豊足で賓主が相歓し、財を得て憂なきことを主とし、吉である。
小過:黃裳建元,文德在身。祿佑洋溢,封為齊君。
離の卦が小過の卦に変わる。黄裳を身に着け元年を開創して、文徳が一身に集まる。福禄の庇佑は充盈流溢して、封を受けて斉国の君となる。黄裳元吉は《周易・坤》六五に出て、中に居り正を守るの象である。この林は徳位が相称じ封を受け爵を進めるを主とし、大吉である。
既濟:口不從心,欲東反西。與意乖戾,動舉失便。
離の卦が既済の卦に変わる。口に言う所と心に想う所と一致せず、本は東に往かんとして西に走向す。事事皆本意と相違背し、一挙一動皆合宜ならず。この林は言行が相違し事と願とが相違し、動けば即ち当を失することを主とし、不吉である。
未濟:虎狼之鄉,日爭凶訟。叨爾為長,不能定證。
離の卦が未済の卦に変わる。身を虎狼のごとき郷里に処し、日々争闘して凶悪の官司を打つ。長者の位に忝居すれど、案を断じ証を定めること能わず。この林は処境が険悪で訟争が休まず、主事する者に裁断する力なきことを主とし、凶である。
