Libo

升 第四十六

汉 · 焦延寿 · 第53巻 / 72

作盤ガイド: 大衍筮法, 六爻納甲の立卦

兌。狐嘈向城,三旦悲鳴,邑主大驚。伏艮為狐、為城,震為鳴,故曰嘈。嘈,啼也。震為旦,數三,故曰三旦。互坎為憂,故曰悲鳴。艮為邑,震為主、為驚,皆用伏象。此必有故事,為今所不能考,或以吳廣詐狐鳴事說之,似非。○宋元本首句多國將有事四字,將林詞奇肆突兀之神全失,故依汲古。

《困》之《兌》:狐狸は城池に対して嗥叫し、一連して三個の清晨は悲鳴し、城邑の主は大いに驚駭す——是れ妖異は警を示すの凶象なり。尚秉和は象を解す:伏艮は狐・城、震は鳴叫、故に「嘈」と言う——「嘈」は即ち啼叫。震は旦、卦数は三、故に「三旦」と言う。互体して坎と成り、坎は憂、故に「悲鳴」と言う。艮は邑、震は主・驚:此れらは皆伏象を取る。尚氏はこの条の背後に必定に故実有るも、如今已に考索するに従わず、人有りて呉広が夜裡に狐狸の叫を假装せしの事を拏りて解すも、看れど合わずと言う。校記:宋刻元刻本は首句の上に「国将有事」の四字を多し、此様なれば林辞の奇崛突兀の神采は全失す、故に汲古閣本に従う。

渙。明德克敏,重華貢舉。放勳徵用,浚哲蒙佑。震為德,艮為明,故曰明德。震為華,正反震,故曰重華。震又為帝,故又曰放勳。○克,汲古作光,依宋元本。言堯舜,天下蒙福。

《困》之《渙》:徳行は光明にして勤勉敏捷、虞舜は因りて荐挙せられ上に到り、帝堯は彼を征召任用し、此の深沉叡智の人は天下をして庇佑を蒙らしむ——是れ賢を挙げて福を受くるの大吉の象なり。「重華」は舜の名号、「放勲」は堯の名号。尚秉和は象を解す:震は徳、艮は明、故に「明徳」と言う。震は華、一正一反の両震、故に「重華」と言う。震はまた帝、故に又「放勲」を取る。校記:「克」の字は汲古閣本が「光」とし、ここでは宋刻元刻本に従う。この条の講ずる所は堯舜相継ぎ天下は福を受く。

節。秋隼冬翔,數被嚴霜。甲兵充庭,萬物不生。雞犬夜鳴,民人擾驚。詳《鼎》之《觀》。○充,汲古作克,依宋元本。犬,宋元本作父,依汲古。人,元本、汲古作大,依宋元。

《困》之《節》:秋天の隼は冬天に到るも還ら盘旋し、屢々厳霜に挨り、兵甲は庭院に堆満し、万物は長じ出でず。鶏犬は夜裡に乱叫し、百姓は驚擾不安なり——是れ兵灾歳凶の凶象なり。尚秉和は取象は詳しく《鼎》之《観》の一条に見ゆと注明す。校記:「充」の字は汲古閣本が「克」とし、宋刻元刻本に従う。「犬」の字は宋刻元刻本が「父」とし、汲古閣本に従う。「人」の字は元刻本と汲古閣本とが「大」とし、此処は宋元本に従う。

中孚。絲紵布帛,人所衣服。摻摻女手,紡績善織。南國饒有,取之有息。巽為絲紵布帛。震為衣,艮手與巽連體,故曰女手。巽為紡績、為織。艮為國,與震連,故曰南國。震生,故有息。

《困》之《中孚》:糸・紵・布・帛は、皆人の身上の穿戴する衣料なり。纖纖の女子の一双の手は、紗を紡ぎ麻を績み一手好布を織る。南方の国は物産豊饒にして、取用の余に還ら増益有り——是れ女工は利を興し家国富饒の吉象なり。「掺掺女手」は語は《詩経・魏風・葛屨》に出づ。尚秉和は象を解す:巽は糸紵布帛。震は衣、艮は手、巽と連なりて一体を成す、故に「女手」と言う。巽は紡績・紡織。艮は国、震と相連なり、故に「南国」と言う。震は生長を主る、故に「有息」(増益有り)と言う。

小過。鳳有十子,同巢共母。仁聖在位,歡以相保,興彼周魯。艮為鳳,震為子,兌數十,故曰十子。艮為巢,巽為母,震為仁、為歡、為周,兌為魯。○三四五句汲古作"歡以相保,富市之地,多財積穀",依宋元本,此似指武王同母兄弟十人,故曰共母。而十人之中以周公為最仁聖,周魯皆賴以興也。

《困》之《小過》:鳳凰に十隻の雛鳥有り、同じく一巢に住み同じく一母より出で、仁徳聖明の人は位に在り、歓歓喜喜として彼此扶持し、周と魯とを振興せり——是れ兄弟同心して家国並び興るの大吉の象なり。尚秉和は象を解す:艮は鳳、震は子、兌の卦数は十、故に「十子」と言う。艮は巢、巽は母。震は仁・歓・周、兌は魯。校記:第三・四・五の句は汲古閣本が「歓以相保、富市之地、多財積穀」とし、ここでは宋刻元刻本に従う。尚氏は此は似て周武王の同母兄弟十人を指すと為し、故に「共母」と言う。十人の中に周公は最も仁聖、周と魯との両国は皆彼を靠りて興起せり。

既濟。雄雞不晨,雌鳴且呻。志疪心離,三旅生哀。此似用遇卦《困》象。巽為雞,震為晨、為雄,震伏,故不晨。巽為雌,兌口為鳴、為呻,坎為心志、為疾,故曰疪。疪痺同,《說文》溼病也。《內經》曰風痛也。亦巽象也。○鳴且,汲古訛雞具,依宋元本。呻,宋元本訛伸,疪作疵,生作出,均依汲古。旅,閭通用。三旅,屈子也。雌鳴指鄭袖。志疪心離,言作離騷。

《困》之《既済》:公鶏は暁を報ずるを肯んぜず、母鶏は却って鳴叫呻吟す。心志は痹塞し情懐は離散し、三閭大夫は此に由りて哀思を生ず——是れ牝鶏は晨を司り忠臣は弃て見るの凶象なり。尚秉和は象を解す:この条は似乎として遇卦《困》の象を用う。巽は鶏、震は晨・雄、震は伏位に処る、故に暁を報ぜず。巽は雌、兌は口、故に鳴・呻と為す。坎は心志・疾病、故に「疪」と言う——「疪」は「痹」と同じ、《説文解字》は湿病と説き、《黄帝内経》は風痛と説く、此も亦巽象なり。校記:「鳴且」は汲古閣本が訛りて「鶏具」とし、宋刻元刻本に従う。「呻」は宋刻元刻本が訛りて「伸」とし、「疪」は「疵」とし、「生」は「出」とし、いずれも汲古閣本に従う。「旅」と「閭」とは通用し、「三旅」は即ち三閭大夫の屈原。「雌鳴」は楚懐王の寵姫鄭袖を指す。「志疪心離」は説くは屈原は因りて《離騒》を写し下ろししと。

未濟。光祀春城,陳寶雞鳴。陽明失道,不能自守,消亡為咎。詳《大有》之《井》。首句汲古作光休出城,依宋元本。明,宋元本作鳥,為作無,均依汲古。元本下多"舉事不成,自取凶咎"二句,依汲古。

《困》之《未済》:春日の城中に於て光明の祭祀を挙行し、陳宝の神は野鶏と化作して啼鳴す。陽気は光明なれど正道に迷失し、能く自ら守らず、終に消亡して灾と成れり——是れ祥瑞は久しく保つ能わざるの凶象なり。「陳宝」は秦文公の時に得し所の神石、祠を立てて祭祀する時は常に雄雉の鳴くが若き有り、《史記・封禅書》に見ゆ。尚秉和は取象は詳しく《大有》之《井》の一条に見ゆと注明す。校記:首句は汲古閣本が「光休出城」とし、宋刻元刻本に従う。「明」の字は宋刻元刻本が「鳥」とし、「為」の字は「无」とし、いずれも汲古閣本に従う。元刻本は此条の下面に「挙事不成、自取凶咎」の両句を多出す、ここでは汲古閣本に従う。

井 第四十八

井。躓跛未起,失利後市,不得鹿子。詳《屯》之《困》。○鹿,汲古作麏,依宋元本。

《井》之《井》:絆倒れ跛足して還ら爬り起きる能わず、行市を誤り利益を失掉し、連れて一隻の小鹿も猟せず——是れ行動は時を失し一獲する所なきの凶象なり。この条はただ三句のみ、《易林》の四言四句の通例と合わず、底本は当に脱句有るべく、此処は照録して補わず。尚秉和は取象は詳しく《屯》之《困》の一条に見ゆと注明す。校記:「鹿」の字は汲古閣本が「麏」(獐子)とし、ここでは宋刻元刻本に従う。

乾。左輔右弼,金玉滿堂。常盈不亡,富如厫倉。詳《蒙》之《坤》。○厫,宋元本作敖,依汲古。

《井》之《乾》:左に輔有り右に弼有り、金玉は厅堂に堆満し、常に盈満を保ちて耗散に致らず、富庶なること粮食を装満したる敖倉の如し——是れ賢佐は側に在り家国富足の大吉の象なり。尚秉和は取象は詳しく《蒙》之《坤》の一条に見ゆと注明す。校記:「厫」の字は宋刻元刻本が「敖」とし、ここでは汲古閣本に従う。

坤。雨師娶婦,黃岩季女。成禮既婚,相呼南去。膏澤田裡,年歲大喜。詳《恆》之《晉》。南去,宋本作而歸,汲古作南上,依元本。田裡,汲古作下土,依宋元本。又末句宋元本無,依汲古。

《井》之《坤》:雨師は親を娶り、娶るは黄岩の人家の小女児なり。礼数は完備して婚事は已成り、双双として呼喚し南に往き去り、甘霖は田疇村里を潤沢し、一年の収成は大喜なり——是れ婚成り雨足り歳稔年豊の吉象なり。尚秉和は取象は詳しく《恒》之《晋》の一条に見ゆと注明す。校記:「南去」は宋本が「而帰」とし、汲古閣本は「南上」とし、ここでは元刻本に従う。「田里」は汲古閣本が「下土」とし、宋刻元刻本に従う。末句は宋刻元刻本に无く、ここでは汲古閣本に依りて収入す。

屯。螟蟲為賊,害我嘉穀。盡禾殫麥,家無所得。詳《坤》之《革》。○嘉穀,宋元本作稼穡,家作秋,均依汲古。得,汲古作食。第三句汲古作中留空虛,均依宋元本。

《井》之《屯》:螟虫は盗賊と成り、我が好庄稼を糟蹋し、稲子は喰い光し麦子は啃い尽し、一家人は顆粒の収なく——是れ虫灾は荒を成すの凶象なり。尚秉和は取象は詳しく《坤》之《革》の一条に見ゆと注明す。校記:「嘉穀」は宋刻元刻本が「稼穡」とし、「家」の字は「秋」とし、いずれも汲古閣本に従う。「得」の字は汲古閣本が「食」とし、第三句は汲古閣本が「中留空虚」とし、此の両処は皆宋刻元刻本に従う。

蒙。跛躃難步,遲不及舍。露宿澤陂,亡其襦袴。震為步,坎蹇,故曰跛躃難步。艮為舍,艮止,故不及舍。坎為露、為宿、為澤陂,震為襦袴,坤為亡,故又曰亡其襦袴。

《井》之《蒙》:腿を瘸めて歩を挙げ難く、走ること慢くして宿処に趕かず、只好として水沢の岸辺に露宿し、連れて短襖長褲をも丢せり——是れ路を行きて所を失うの凶象なり。尚秉和は象を解す:震は歩、坎は跛蹇にして行き難しを主る、故に「跛躃難歩」と言う。艮は客舎、艮は止を主る、故に宿処に趕き到らず。坎は露・止宿・沢陂、震は襦袴(短衣と褲)、坤は亡失を主る、故に又「亡其襦袴」と言う。

需。大夫祈父,無地不涉。為吾相土,莫如韓樂。可以居止,長安富有。乾為父,兌言,故曰祈父。陳樸園云:《詩》:"祈父予王之爪牙",《毛傳》:"祈父司馬"也。蹶父為司馬之官,《尚書》稱司馬,亦曰祈父。圻祈古通用。《詩大雅韓奕篇》:"蹶父孔武,靡國不到;為韓姞相攸,莫如韓樂",林所本也。伏坤為土地,艮為居止、為安。乾為富,兌悅,故曰樂。○祈,各本多作行,依汲古。

《井》之《需》:身は大夫たる祈父、一処の地方も走らざるなく、彼は我らの為に田土を相看し、何処も韓地の如く楽しきに如かずと覺え、彼処は以て安居すべく長久安穏にして富足す——是れ地を擇びて所を得るの吉象なり。尚秉和は象を解す:乾は父、兌は言、故に「祈父」と言う。陳朴園は説く:《詩経・小雅》「祈父、予王之爪牙」、《毛伝》は「祈父は即ち司馬」と説く。蹶父は司馬の職を任じ、《尚書》の称する所の司馬も亦祈父と叫び、「圻」と「祈」とは古時通用す。《詩経・大雅・韓奕》「蹶父孔武、靡国不到、為韓姞相攸、莫如韓楽」(蹶父は十分に英武、各国を走り遍らずといえどもなく、女児韓姞の為に帰宿を相看し、韓国より楽しきは莫しと覺え)、正に林辞の本とする所。伏坤は土地、艮は居止・安。乾は富、兌は喜悦を主る、故に「楽」と言う。校記:「祈」の字は各本多く「行」とし、ここでは汲古閣本に従う。

訟。少孤無父,長失慈母。悖悖煢煢,莫與為耦。通《明夷》。坎為孤,震為父,坤喪,故無父。震為長,坤為慈母,坤亡,故失慈母。坤寡,故曰煢煢,故無耦也。

《井》之《訟》:年幼にして怙を失い父なく、長大して又慈母を失い、孤零零として煢煢独立し、作伴すべき一個の人を尋ね得ず——是れ孤苦にして依る無きの凶象なり。尚秉和は象を解す:「通《明夷》」は即ち《明夷》と旁通す。坎は孤、震は父、坤は喪亡を主る、故に「无父」と言う。震は長、坤は慈母、坤は亡失を主る、故に「失慈母」と言う。坤は寡、故に「煢煢」と言い、因りて亦配偶なし。

師。側弁醉客,長舌作凶。披髮夜行,迷亂相誤,亡失居處。艮為冠,二四艮覆,故曰側弁。《詩小雅》:"側弁之俄,屢舞傞傞"。震為客,坤迷,故曰醉客。兌為舌,二至上兌形特長,故曰長舌。震為髮,坤為夜、為迷亂、為亡失。○處,宋元本作止,依汲古。

《井》之《師》:帽子を歪に戴くの醉客と、長舌の人とは風を興し浪を作し、頭髪を披散して夜裡に出行し、昏乱の中に彼此相い耽誤し、連れて住处をも丢せり——是れ酒色昏乱して所を失い禍を致すの凶象なり。尚秉和は象を解す:艮は冠、二爻より四爻に到るまで艮体は倒置す、故に「側弁」(帽子は歪斜)と言う——《詩経・小雅》「側弁之俄、屢舞傞傞」(帽子は一辺に歪み、舞を跳びて已まず)は正に此の付の情状を写す。震は客、坤は迷惑を主る、故に「醉客」と言う。兌は舌、二爻より上爻に到るまで兌の形体は特別に長し、故に「長舌」と言う。震は髪、坤は夜・迷乱・亡失。校記:「処」の字は宋刻元刻本が「止」とし、ここでは汲古閣本に従う。

比。馬驚車破,王墜深津。身死魂去,離其室廬。震為車馬,坎為破,三至五震覆,故馬驚車破。九五為王,坎陷,一陽陷坤水中,故曰王墜深津。坤為死、為身,乾為魂,坤為白色,乾伏,故曰魂去。艮為室。○車破,宋元本作破處,依汲古。第二句依汲古,宋元本作王孫沈溝。死,各本作絕,依局本。第四句宋元本作自為患害,依汲古。汲古末多貞難無虞四字,依宋元本刪。

《井》之《比》:馬は驚を受け車は摔壊し、君王は深水の渡口に墜入し、身は死し魂は散じ、自己の屋舎を離れ去れり——是れ車覆し人亡ぶるの大凶の象なり。尚秉和は象を解す:震は車馬、坎は破損を主り、三爻より五爻に到るまで震体は倒置す、故に「馬驚車破」と言う。九五の位は王、坎は陥落を主り、一個の陽爻は坤水の中に陥る、故に「王墜深津」と言う。坤は死・身、乾は魂、坤の色は白にして乾は伏位に処る、故に「魂去」と言う。艮は室。校記:「車破」は宋刻元刻本が「破處」とし、汲古閣本に従う。第二句は汲古閣本に従い、宋刻元刻本は「王孫沈溝」とす。「死」の字は各本「絶」とし、ここでは局本に従う。第四句は宋刻元刻本が「自為患害」とし、汲古閣本に従う。汲古閣本は末尾に「貞難无虞」の四字を多出す、ここでは宋刻元刻本に依りて删去す。

小畜。東行述職,征討不服。侵齊伐陳,銜璧為臣,大得意還。通《豫》。震為東、為征討、為陳、為璧,兌為口,故曰銜璧。巽為齊,艮為臣,《左傳》"楚子圍許,許男面縛銜璧"。

《井》之《小畜》:東に往きて巡行述職し、肯んじて帰服せざる邦国を征討し、斉を侵し陳を伐て、対方は口に玉璧を銜えて出降し臣を称え、大いに得意として凱旋せり——是れ征伐して勝を得るの吉象なり。尚秉和は象を解す:「通《豫》」は即ち《豫》と旁通す。震は東・征討・陳・璧、兌は口、故に「銜璧」と言う。巽は斉、艮は臣。《左伝》は「楚子は許を囲み、許男は両手を反縛し口に玉璧を銜えて」出降せしを記す、正に此の一套の降礼。

履。百足俱行,相輔為強。三聖翼事,王室寵光。詳《屯》之《履》。

《井》之《履》:百足の虫は衆足斉しく行き、彼此扶持し因りて強健に、三位の聖人は王事を輔翼し、王室は因りて光を増し寵を受く——是れ同心協力して王業興隆の吉象なり。尚秉和は取象は詳しく《屯》之《履》の一条に見ゆと注明す。

泰。本根不固,華葉落去,更為孤嫗。通《否》。巽隕落,故曰本根不固。兌為華,巽落,故曰落去。巽為嫗,巽寡,故曰孤嫗。

《井》之《泰》:根本は牢固ならず、花と葉とは紛紛として凋落し、末了は孤零零の老婦と成れり——是れ根基は穩かならず終に孤寡に至るの凶象なり。この条はただ三句のみ、四言四句の例と合わず、底本は当に脱句有るべく、此処は照録して補わず。尚秉和は象を解す:「通《否》」は即ち《否》と旁通す。巽は隕落を主る、故に「本根不固」と言う。兌は花、巽は落を主る、故に「落去」と言う。巽は老婦、巽はまた寡を主る、故に「孤嫗」と言う。

否。牧羊稻園,聞虎喧讙。畏懼怵惕,終無禍患。詳《否》之《節》。患,各本皆作焉,依《屯》之《復》校。喧讙,宋元本作喧喧,怵惕作休息,均依汲古。

《井》之《否》:稻田園圃の裡に羊を放し、老虎の喧鬧咆哮を聴き、心裡は害怕し提心吊胆すれど、最終には却って禍患に遭わず——是れ虚驚一場の象なり。尚秉和は取象は詳しく《否》之《節》の一条に見ゆと注明す。校記:「患」の字は各本皆「焉」とし、ここでは《屯》之《復》の一条に拠りて校改す。「喧讙」は宋刻元刻本が「喧喧」とし、「怵惕」は「休息」とし、いずれも汲古閣本に従う。

同人。履位乘勢,靡有絕弊。為隸所圖,與眾庶位。通《師》。震為履、為乘,坤賤,故曰隸。坤為眾庶。與眾庶位,言初得位乘勢,後為皂隸所圖,與齊民等也。

《井》之《同人》:高位を踏み権勢に乗じ、看るに断絶衰敗の虞なきが似たるも、却って下人に算計せられ、平民と同列に落到れり——是れ勢を得て後に位を失うの凶象なり。尚秉和は象を解す:「通《師》」は即ち《師》と旁通す。震は履・乗、坤は卑賤を主る、故に「隸」と言う。坤は衆庶。所謂「与衆庶位」は、説くは起初は位を得て勢に乗ずるも、後来は皂隸の輩に図謀せられ、終に平頭の百姓と異ならざるに至ると。

大有。大輿多塵,小人傷賢。皇甫司徒,使君失家。通《比》。坤為大輿、為小人,艮為塵,故曰大輿多塵。艮為賢良,坤喪,故傷賢。艮為臣,故曰皇甫司徒。震為君,艮為家,震覆,坎失,故曰使君失家。《詩》:"番維司徒,皇甫卿士",皆幽王臣。又"無將大車,祇自塵兮;無思百憂,只自疷兮",又"無將大車,維塵冥冥"。

《井》之《大有》:大車は満路の塵土を揚起し、小人は賢良を残害す。皇甫・司徒の此の班の権臣は道に当たり、君主をして家国を丢せしむ——是れ佞臣は権を当たり賢良は害を受くるの凶象なり。尚秉和は象を解す:「通《比》」は即ち《比》と旁通す。坤は大車・小人、艮は塵、故に「大輿多塵」と言う。艮は賢良、坤は喪亡を主る、故に「傷賢」と言う。艮は臣、故に「皇甫司徒」と言う。震は君、艮は家、震体は倒置し坎は陥失を主る、故に「使君失家」と言う。《詩経・小雅》「番維司徒、皇甫卿士」、此れらは皆周幽王の臣子。又《小雅》「无将大車、祇自塵兮、无思百憂、只自疷兮」(あの大車を推すを去る勿れ、ただ一身の灰を惹く、あの百憂を想う勿れ、ただ自ら病を害せん)、又「无将大車、維塵冥冥」と説く。

謙。安如泰山,福祿屢臻。雖有狼虎,不能危身。○如,宋元本作和,祿作佑,依汲古。坤為安,艮為山,震東,故曰泰山。震為福祿,艮為狼虎、為身,震出,故不能危身。

《井》之《謙》:安穏なること泰山の如く、福禄は一再して到来し、縦れ豺狼猛虎有るも、此の人を傷める能わず——是れ安きこと磐石の如く驚有りて険なきの吉象なり。この条の校記は注の前に写す:「如」の字は宋刻元刻本が「和」とし、「禄」の字は「佑」とし、いずれも汲古閣本に従う。尚秉和は象を解す:坤は安、艮は山、震は東方に居る、故に「泰山」(東嶽)と言う。震は福禄、艮は狼虎・身。震は出を主る、故に危害は身上に到らず。

豫。同氣異門,各別西東。南與凶遇,北傷其孫。艮為氣、為門,正反皆艮,故曰同氣。兩艮相背,故曰異門。震東,坎西,故曰各別西東。震又為南,坤為凶,故與凶遇。坎又為北,坤為死,艮為孫,故曰北傷其孫。孫,與東韻。

《井》之《豫》:同一の気脈なれど不同の門戸を分け出し、各々東西に離散し、南に往きて凶险に遇上り、北に往きて子孫を傷めり——是れ骨肉分張して四方皆凶の凶象なり。尚秉和は象を解す:艮は気・門、一正一反は皆艮、故に「同気」と言う。両艮は背向して立つ、故に「異門」と言う。震は東、坎は西、故に「各別西東」と言う。震はまた南、坤は凶、故に「南与凶遇」と言う。坎はまた北、坤は死を主り、艮は孫、故に「北傷其孫」と言う。「孫」の字は上句の「東」と押韻す。

隨。蜆見不祥,禍起我鄉。行人畏懼,邑客逃藏。《爾雅釋蟲》:"蜆,縊女也,好自經死,故見者以為不祥"。互巽為蟲、為繫,正縊女象也,故曰不祥。艮為我、為邑、為鄉,震為行人、為客,巽伏,故曰逃藏。○蜆,各本皆訛為蜺。祇,宋元本未訛,牟庭謂黃丕烈刊宋本易林私改蜺為蜆,以就爾雅,豈知巽為繩、為繫,正易林用象之神妙,先儒從不知易林之詞皆由象生,故失言如此,且以好古之黃蕘圃何至改古書字乎。第四句宋元本作使命不通,依汲古。

《井》之《随》:蜆虫は現身するは不祥の兆、禍事は便ち我が郷里に起る。過路の人は心に畏懼を生じ、城邑の裡の客人は紛紛として躲蔵す——是れ妖虫は凶を示すの凶象なり。尚秉和は象を解す:《爾雅・釈虫》は「蜆は、即ち縊女、自ら縊りて死するを好み、故に之を見る人は以て不吉と為す」と説く。互体して巽と成り、巽は虫・繩繫、正に縊女の象、故に「不祥」と言う。艮は我・邑・郷、震は行人・客、巽は伏位に処る、故に「逃蔵」と言う。校記:「蜆」の字は各本皆訛りて「蜺」とし、ただ宋刻元刻本のみ誤らず。牟庭は黄丕烈の宋本《易林》を刊刻する時に私自に「蜺」を「蜆」に改成し、以て《爾雅》に遷就せしと説く。彼は何処をか知らん、巽は繩・繫と為すは、正に《易林》の用象の神妙の処を。前輩の学者は従来《易林》の辞句は皆卦象より生出するを明白せず、始めて此の種の失言有り。況んや黄蕘圃の如き好古の人を以て、怎ぞ古書の字を改動せんや。又第四句は宋刻元刻本が「使命不通」とし、ここでは汲古閣本に従う。

蠱。養虎畜狼,必見賊傷。無事招禍,自取災殃。艮為虎狼,艮止為畜,巽為盜賊,兌毀折,故曰招禍、曰災殃。○宋元本作"畜狼養虎,無事招禍。必見賊傷,自取災殃",今依汲古。惟必見汲古作還自,與自字義皆重,故依宋元本。

《井》之《蠱》:老虎を養い豺狼を畜すれば、必定に咬傷せられん。端無く禍事を招来し、自ら灾殃を討い来れり——是れ患を養いて自ら害するの凶象なり。尚秉和は象を解す:艮は虎狼、艮は止を主る、故に畜養と為す。巽は盗賊。兌は毀折を主る、故に「招禍」と言い「灾殃」と言う。校記:宋刻元刻本は「畜狼養虎、无事招禍、必見賊傷、自取灾殃」とし、今は汲古閣本の句序に従う。ただ「必見」は汲古閣本が「還自」とし、下文の「自」の字と意思重複す、故に此の両字は宋刻元刻本に従う。

臨。順風吹火,牽騎驥尾。易為功力,因權受福。牽騎,汲古作倖附,依宋元本。○伏遯。互巽為風,艮為火,故曰順風吹火。艮手為牽,乾為驥,艮為尾,故曰牽騎驥尾。巽為權。

《井》之《臨》:風勢に順いて火を吹き、駿馬の尾巴を牽きて跟い随いて走れば、力を省きて易く功効を見、権勢を借りて福気を承受す——是れ力を借りて事を成すの吉象なり。校記:「牽騎」は汲古閣本が「幸附」とし、ここでは宋刻元刻本に従う。尚秉和は象を解す:《臨》の伏卦は《遯》。互体して巽と成り、巽は風、艮は火、故に「順風吹火」と言う。艮は手、故に牽と為し、乾は駿馬、艮は尾、故に「牽騎驥尾」と言う。巽は権。

觀。五嶽四瀆,潤洽為德。行不失理,民賴恩福。詳《頤》之《明夷》。○潤洽,依校,各本作沾濡。

《井》之《観》:五岳と四瀆とは、万物を滋潤するは即ち其の徳なり。行事は常理に違わず、百姓は皆此の份の恩福を仰頼す——是れ徳沢は広く被るの吉象なり。「五岳」は泰山等の五座の名山を指し、「四瀆」は江・河・淮・済の四条の独り海に流入るの大川を指す。尚秉和は取象は詳しく《頤》之《明夷》の一条に見ゆと注明す。校記:「潤洽」の二字は他条に拠りて校定する所にして、各本は原は「沾濡」と作る。

噬嗑。延陵聰敏,樂聽太史。雞鳴大國,姜氏受福。《左傳襄二十九年》:"吳季札聘魯,為之歌,齊曰:美哉,洋洋乎,大風也哉。表東海者,其太公乎"。艮為山、為少,故曰延陵。札號延陵季子也。震為樂,坎耳為聽,離文,故曰太史。伏巽為雞,艮為國,巽為姜。雞鳴,《齊詩》篇名。○樂聽,汲古作聽樂,依宋元本。

《井》之《噬嗑》:延陵季子は聡明敏悟にして、楽官の楽を奏するを聴き太史は旁に在り、一曲の《鶏鳴》は大国の気象を唱い出し、姜姓の斉国は因りて福を受く——是れ音を知り国を識るの吉象なり。尚秉和は《左伝》襄公二十九年を引く:呉国の季札は魯国に到りて聘問し、楽工をして彼の為に各国の詩を歌わしめ、《斉風》を聴きて便ち「美しいや、宏大深遠、真に大国の風。東海の一帯の表率と為す能くは、大概姜太公ならん」と讃嘆せり。象を解す:艮は山・少、故に「延陵」を取る——季札の号は延陵季子。震は楽、坎は耳なれば故に聴と為し、離に文彩有り、故に「太史」と言う。伏巽は鶏、艮は国、巽は姜。《鶏鳴》は《詩経・斉風》の篇名。校記:「楽聴」は汲古閣本が「聴楽」とし、ここでは宋刻元刻本に従う。

賁。神鳥五色,鳳凰為主。集於王國,使君得所。震為神,艮為鳥,離文,故為鳳凰。震為主、為王、為君、為國。○國,宋元本作谷,依汲古。《禮器》云:"升中於天而鳳凰降。"《援神契》:"鳳五色俱備,見則天下安寧"。

《井》之《賁》:神鳥は五色斑斕にして、鳳凰を以て首と為す。彼らは王者の国に聚集し、君主をして各々其の所を得せしむ——是れ祥瑞降臨して国泰民安の大吉の象なり。尚秉和は象を解す:震は神、艮は鳥、離に文彩有り、故に合して鳳凰と成す。震は主・王・君・国。校記:「国」の字は宋刻元刻本が「谷」とし、ここでは汲古閣本に従う。《礼記・礼器》は「上天に向かい功の成れるを報告すれば、鳳凰は便ち降臨せん」と説き、緯書《孝経援神契》は「鳳凰は五色俱全にして、一たび出現すれば即ち天下の安寧を表示す」と説く。

剝。媒妁無明,雖期不行。齊女長子,亂其紀網。此用遇卦《井》象。坎為媒妁,坎隱伏,故無明。震為行,震反,故不行。下巽為齊女,伏震為長子。互離為亂,巽為紀網。○無,宋元本作光,行作得,其作我,均依汲古。

《井》之《剥》:媒を為す人は不明不白にして、已に日子を約定するも成行を成さず。斉国の女子と長子とは、綱紀法度を攪乱せり——是れ婚事は諧わず綱紀敗壊の凶象なり。尚秉和は象を解す:この条は遇卦《井》の象を用う。坎は媒妁、坎は隠伏を主る、故に「无明」と言う。震は行、震体は反転す、故に「不行」。下体の巽は斉女、伏震は長子。互体して離と成り、離は乱を主り、巽は綱紀羅網。校記:「无」の字は宋刻元刻本が「光」とし、「行」は「得」とし、「其」は「我」とし、いずれも汲古閣本に従う。

復。明月作晝,大人失居。眾星宵亂,不知所據。此仍用《井》象。兌為月,離為晝,兌離連體,故曰明月作晝。乾為大人,三陽皆陷陰中,故曰失居。離為星,坎為眾、為夜,故曰眾星宵亂。離為亂也。

《井》之《復》:明月は亮きこと白昼の如く、大人は安居の所を失い、満天の星斗は夜裡に錯乱し、何れに依憑すべきを知らず——是れ陰盛んにして陽は位を失うの凶象なり。尚秉和は象を解す:この条は仍お《井》卦の象を用う。兌は月、離は昼、兌と離とは連なりて体を成す、故に「明月作昼」と言う。乾は大人、三個の陽爻は皆陰爻の当中に陥る、故に「失居」と言う。離は星、坎は衆・夜、故に「衆星宵乱」と言う——離は正に紛乱を主る。

無妄。少康興起,誅澆復祖。微滅復明,享祀大禹。震為君,故曰少康、曰興起。伏坤為惡,故曰澆。坤殺,故曰誅澆,言澆為少康所誅也。艮為祖,震為復,故曰復祖。乾為大明、為王,故曰大禹。按:《帝王世紀》:"后羿之相寒浞,既殺后羿,因羿之室生奡及豷,夏有力,殺夏帝相帝妃,仍氏女曰後緡逃於有仍,生少康,少康長,與夏舊臣靡誅奡,復夏室。"奡即澆也。○第四句宋元本作大禹享祀,依汲古。

《井》之《无妄》:少康は興起して国を復し、澆を誅滅し、祖業を恢復し、衰微覆滅より重ねて光明に帰り、重新して大禹を祭祀す——是れ中興して国を復するの大吉の象なり。尚秉和は象を解す:震は君、故に少康を取りて「興起」と言う。伏坤は悪を主る、故に「澆」を取る。坤は殺を主る、故に「誅澆」と言う、説くは澆は少康に誅せられしと。艮は祖、震は復、故に「復祖」と言う。乾は大明・王、故に「大禹」と言う。尚氏は《帝王世紀》の記載に按ず:后羿の相国寒浞は后羿を殺掉し、羿の家室を占め、奡と豷とを生む。奡は夏に於て勇力有り、夏帝の相と帝妃とを殺す。相の妃子有仍氏の女后緡は逃げて有仍に回り、少康を生む。少康は長大して、夏朝の旧臣靡と一同に奡を誅滅し、夏室を復興せり。奡は即ち澆。校記:第四句は宋刻元刻本が「大禹享祀」とし、ここでは汲古閣本に従う。

大畜。千門萬戶,大福所處。黃屋左纛,龍德獨有。艮為門戶,乾亦為門戶、為千萬,故曰千門萬戶。乾為大福,艮為屋,震玄黃,故曰黃屋。震為旗、為左,故曰左纛。纛,旗也。震為龍、為德,龍德獨有者,言非天子不能如此也。○左,汲古訛在,有作右,均依宋元本。

《井》之《大畜》:千門万戸の宮室は、正に大福の在る所なり。黄繒を以て蓋と為すの車駕・左辺に旄纛を插すは、唯だ龍徳の人のみ配して擁有す——是れ至貴至福の天子の象なり。尚秉和は象を解す:艮は門戸、乾も亦門戸・千万、故に「千門万戸」と言う。乾は大福、艮は屋、震の色は玄黄、故に「黄屋」(帝王の車蓋)と言う。震は旗・左、故に「左纛」——纛は即ち大旗。震は龍・徳。所謂「龍徳獨有」は、説くは天子を除きて誰も能く此の如くならずと。校記:「左」の字は汲古閣本が訛りて「在」とし、「有」の字は「右」とし、いずれも宋刻元刻本に従う。

頤。乾作聖男,坤為智女。配合成就,長生得所。伏乾為聖、為男,坤為女,坎為水、為智,坤亦為水,故曰智女。乾道成男,坤道成女,故曰配合成就。震為長生。○成就,宋元本作既成,依汲古。

《井》之《頤》:乾は聖明の男子を造出し、坤は智慧の女子を生出し、両下は配合して婚姻を結び、長く生養して各々其の所を得——是れ陰陽配合して生々息まざるの吉象なり。尚秉和は象を解す:伏乾は聖・男、坤は女。坎は水・智、坤も亦水、故に「智女」と言う。《繋辞伝》は「乾道成男、坤道成女」と説く、故に「配合成就」と言う。震は長生。校記:「成就」は宋刻元刻本が「既成」とし、ここでは汲古閣本に従う。

大過。羿張烏號,彀射天狼。鐘鼓夜鳴,將軍壯心。柱國雄勇,鬬死滎陽。通《頤》。坤惡,故曰羿。艮為烏,震為鳴,故曰烏號。烏號,弓名也。艮為天、為狼,天狼,星名。《楚辭》:"青雲衣兮白霓裳,舉長弓兮射天狼。"彀,張弓也。彀射天狼,言羿暴戾也。震為射、為鐘鼓。坤為夜、為軍、為心、為國,艮為柱,故曰柱國。坤為死,正覆艮,故曰鬬死。坤水,故曰滎陽。柱國,房君蔡賜也,見陳涉世家,惟史不言其死處,林蓋別有所據。○彀,汲古訛殷。天,各本皆作驚,柱皆作趙,均依《師》之《否》校,然趙國或為人名,戰死滎陽,未必為訛字。

《井》之《大過》:后羿は烏号の良弓を張り、弦を拉満して天狼星を射に往き、鐘鼓は夜裡に轟鳴し、将軍は豪気満懐なり。柱国は雄武勇猛にして、力戦して滎陽に死せり——是れ武を黷して戦死するの凶象なり。尚秉和は象を解す:「通《頤》」は即ち《頤》と旁通す。坤は悪を主る、故に后羿を取る。艮は烏、震は鳴、故に「烏号」と言う——烏号は良弓の名字。艮は天・狼、天狼は星名、尚氏は《楚辞》「青雲衣兮白霓裳、挙長弓兮射天狼」(今本《九歌・東君》は「挙長矢兮射天狼」と作る)を引きて証と為す。「彀」は弓を拉満する、「彀射天狼」の説く所は后羿の暴戻。震は射・鐘鼓。坤は夜・軍・心・国、艮は柱、故に「柱国」と言う。坤は死を主り、一正一反の両艮、故に「鬬死」と言う。坤は水、故に「滎陽」と言う。柱国は即ち房君蔡賜、《史記・陳渉世家》に見ゆ、ただ史書は并せて彼の死せし何処を記さず、林辞は大概別に拠る所有り。校記:「彀」の字は汲古閣本が訛りて「殷」とす。「天」の字は各本皆「驚」とし、「柱」の字は皆「趙」とし、此の両処は《師》之《否》の一条に依りて校改す、但し「趙国」も亦可能として人名、戦死して滎陽に在れば、未必しも即ち訛字に非ず。

坎。炙魚棝斗,張伺夜鼠。不忍香味,機發為祟,笮不得去。伏巽為魚,下有離火,故曰炙魚。震為棝斗。坎為夜、為鼠,艮止,故曰伺。震發,故曰張。言以炙魚置棝斗之中,至夜引鼠而射殺之也。伏巽為臭,故曰香味。坎為機、為祟,震為發,艮止,故曰笮。笮,音窄,狹也、迫也。○各本祟下多祟在頭頸四字,依《歸妹》之《師》校。棝,各本多作銅,丁雲《說文》棝斗可以射鼠,疑銅為棝之形訛字。愚按:《歸妹》之《師》作枯斗,枯,正棝之音訛字,由此證銅確為棝,丁說是也,故竟從之。

《井》之《坎》:烤魚を棝斗の機関の裡に放ち入れ、機簧を張好して夜裡の老鼠を守候し、老鼠はあの股の香味に受け住えず、機関は一たび発すれば便ち禍祟と成り、夹えられて身を脱する能わず——是れ餌を貪りて身を喪うの凶象なり。尚秉和は象を解す:伏巽は魚、下面に離火有り、故に「炙魚」と言う。震は棝斗(一種の鼠を射るの機具)。坎は夜・鼠、艮は止を主る、故に「伺」(守候)と言う。震は発動を主る、故に「張」と言う。意思は烤魚を棝斗の裡に放ち入れ、夜間に到りて老鼠を引き来りて射殺すと。伏巽は気味、故に「香味」と言う。坎は機関・禍祟、震は発動。艮は止を主る、故に「笮」と言う——「笮」は窄と読み、是れ狭窄・逼迫の意思。校記:各本は「祟」の字の下に「祟在頭頸」の四字を多出す、ここでは《帰妹》之《師》の一条に拠りて校删す。「棝」の字は各本多く「銅」とし、丁氏は《説文解字》に「棝斗可以射鼠」有りて、疑心して「銅」は「棝」の形近の訛字ならんと説く。尚氏は按ず:《帰妹》之《師》の一条は「枯斗」と作り、「枯」は正に「棝」の音近の訛字、此に由りて「銅」は確実に「棝」と作るべきを証すべし、丁氏の説法は対なり、故に径直に採用す。

離。高飛不視,貪饕所在。臭腐為患,自害其身。離為飛、為視,巽伏,故不視。兌口為食,正反兌故曰貪饕。巽為臭腐,伏坎為患。艮為身。○其,宋元本作躬,依汲古。

《井》之《離》:高く飛び起きて前路を看清せず、一味に貪馋して所在を顧みず。腐臭の物は禍患と成り、反って自己を害せり——是れ食を貪りて禍を招くの凶象なり。尚秉和は象を解す:離は飛・視、巽は伏位に処る、故に「不視」と言う。兌は口、故に飲食を主り、一正一反の両兌、故に「貪饕」と言う。巽は腐臭、伏坎は禍患。艮は身。校記:「其」の字は宋刻元刻本が「躬」とし、ここでは汲古閣本に従う。

咸。鉛刀攻玉,堅不可得。單盡我力,胝胼為疾。詳《坤》之《豫》。第三句依宋元本。單,殫之省文,汲古作盡我筋力。第四句宋元本作齒為疾賊,依汲古。

《井》之《咸》:鉛の鋳たる軟刀を拏りて玉を雕るも、玉は太く堅硬にして、怎様にも雕り動かさず。我が一身の気力を耗盡し、手脚は厚繭を磨き出し病を累い出せり——是れ力は任に勝えず徒労して疾を成すの凶象なり。尚秉和は取象は詳しく《坤》之《豫》の一条に見ゆと注明す。校記:第三句は宋刻元刻本に従い、「単」は「殫」の省写、汲古閣本は「尽我筋力」とす。第四句は宋刻元刻本が「歯為疾賊」とし、ここでは汲古閣本に従う。

恆。方喙宣口,聖智仁厚。解釋倒懸,家國大安。詳《小畜》之《噬嗑》。解釋,宋元本作釋解,依汲古。家,汲古作厯,依宋元本。

《井》之《恒》:方正の嘴・開闊の口、人と為りて聖明にして智有り寛仁篤厚なり。倒悬の如き危難を解開し、家と国とは皆大いに安定す——是れ賢者は難を救い家国は安を得るの吉象なり。尚秉和は取象は詳しく《小畜》之《噬嗑》の一条に見ゆと注明す。校記:「解釋」は宋刻元刻本が「釋解」とし、汲古閣本に従う。「家」の字は汲古閣本が「厯」とし、宋刻元刻本に従う。

遯。蜘蛛南北,巡行罔罟。杜季利兵,傷我心旅。此用遇卦《井》象。巽為蟲,故曰蜘蛛。離南,坎北,離為網罟。艮為少、為木,故曰杜季。艮為刀劍,故曰利兵。坎為心旅。杜季,即杜伯,《史記正義》引《周春秋》云:宣王殺杜伯而無辜,後三年宣王會諸侯,田於圃,日中,杜伯起於道左,衣朱衣冠,操朱弓矢射宣王,中心折脊而死。《國語》則云於鄗。○首二句各木皆作"踟躕南北,誤入喪國",旅作腹,丁雲依《御覽》蜘蛛引校改,旅即膂之省文。

《井》之《遯》:蜘蛛は南北の間を往来し、其の結び下ろしたる羅網を巡視す。杜伯は手に利刃を持ち、我が心脊を傷めり——是れ冤魂は命を索るの凶象なり。尚秉和は象を解す:この条は遇卦《井》の象を用う。巽は虫、故に「蜘蛛」と言う。離は南に居り坎は北に居り、離は網罟。艮は少・木、合わせて「杜季」。艮は刀剣、故に「利兵」と言う。坎は心・脊膂。杜季は即ち杜伯、《史記正義》は《周春秋》を引きて説く:周宣王は故無く杜伯を殺し、三年の後に宣王は諸侯を会合し、圃田に於て打猟し、正午の時分に杜伯は道左より現身し、紅衣紅冠を穿戴し紅色の弓箭を持ちて宣王を射、心口に射中り脊骨を折り断ちて死せり。《国語》は則ち此の事は鄗地に於て発生せりと説く。校記:首の二句は各本皆「踟蹰南北、誤入喪国」とし、「旅」の字は「腹」とす。丁氏は是れ《太平御覧》の引く所の「蜘蛛」の条に依りて校改せしと説き、「旅」は即ち「膂」(脊骨)の省写なり。

大壯。公孫之政,惠而不煩。喬子相國,終身無患。通《觀》。艮為公孫,坤為政。喬,丁雲喬僑通用,鄭子產也。艮為喬木,故取象。坤為國、為終、為身、為患,艮安,故無患。

《井》之《大壮》:公孫僑は国政を執掌し、民に恵を施して煩擾せず。此の喬子は国相を為りて、終身禍患なし——是れ良相の国を治むるの吉象なり。尚秉和は象を解す:「通《観》」は即ち《観》と旁通す。艮は公孫、坤は政。「喬」は丁氏は「僑」と通用すると説き、指す所は正に鄭国の子産(公孫僑)。艮は喬木、故に它を借りて象を取る。坤は国・終・身・患、艮は安を主る、故に禍患なし。

晉。孤矢大張,道絕不通。小人寇賊,君子壅塞。坎為弧、為矢,艮為道路,坎陷,故不通。坤為小人,艮為君子,坎為寇賊、為壅塞。

《井》之《晋》:弓箭は大張し、道路は断絶不通なり。小人は盗寇を做り起し、君子の去路は堵塞せられり——是れ道途は阻塞し賢者は困を受くるの凶象なり。尚秉和は象を解す:坎は弧(弓)・矢、艮は道路、坎は陥落を主る、故に不通。坤は小人、艮は君子、坎は寇賊・壅塞。

明夷。藏戟之室,封豕受福。充澤肥腯,子孫蕃息。坎為戟、為室、為隱伏,故曰藏。坎為豕,震為福、為大,故曰封豕。伏乾為肥腯。震為子、為蕃息。

《井》之《明夷》:戈戟を屋裡に収蔵し、大猪は反って福を承け、水沢は豊足して牲畜は肥壮し、子孫は繁衍して絶えず——是れ戈を止め武を息め蕃衍安楽の吉象なり。尚秉和は象を解す:坎は戟・室・隠伏、故に「蔵」と言う。坎は猪、震は福・大、故に「封豕」(大猪)と言う。伏乾は肥壮。震は子・蕃息。

家人。八子同巢,心勞相思,雖苦無憂。伏震為子,巽數八,故曰八子。離為巢,坎為心、為勞、為憂。

《井》之《家人》:八個の孩子は同じく一巢に住み、心裡は操労して彼此相い挂念し、辛苦と雖も憂患なし——是れ骨肉相い念い苦の中に安を得るの象なり。この条はただ三句のみ、四言四句の例と合わず、底本は当に脱句有るべく、此処は照録して補わず。尚秉和は象を解す:伏震は子、巽の卦数は八、故に「八子」と言う。離は巢、坎は心・労・憂。

睽。循理舉手,舉求取予。六體相摩,終無殃咎。通《蹇》。艮為手,坤為理,二陽分居坤中,故曰循理。艮為舉求、為取予,艮為體,坎數六,故曰六體。重坎,故曰相摩。艮為終。《左傳閔元年》遇屯之比,曰六體不易。六體,即謂坎也。○舉求取予,汲古作典求相予,摩作磨,均依宋元本。殃咎,宋元本作咎殃,不協,依汲古。

《井》之《睽》:条理に順いて手を動かし、求むべきは求め与うべきは与え、六体は交相摩蕩し、最終に災殃過错なし——是れ理に循いて行い平安にして過なきの吉象なり。尚秉和は象を解す:「通《蹇》」は即ち《蹇》と旁通す。艮は手、坤は条理、両個の陽爻は分かれて坤体の中に居る、故に「循理」と言う。艮は挙求・取予。艮は体、坎の卦数は六、故に「六体」と言う。両坎は相重なる、故に「相摩」と言う。艮は終。《左伝》閔公元年は屯之比を占得ししを記し、「六体不易」と説く、あの「六体」の指す所は正に坎。校記:「挙求取予」は汲古閣本が「典求相予」とし、「摩」は「磨」とし、いずれも宋刻元刻本に従う。「殃咎」は宋刻元刻本が「咎殃」とし、音韻は協わず、汲古閣本に従う。

蹇。公子王孫,把彈攝丸。發輒有獲,室家饒足。詳《比》之《小畜》。

《井》之《蹇》:公子王孫は手に弾弓を持ち弾丸を扣し、一たび発すれば便ち斬獲有り、家室は因りて豊足す——是れ游猟して獲有り家道饒裕の吉象なり。尚秉和は取象は詳しく《比》之《小畜》の一条に見ゆと注明す。

解。井渚有悔,渴蜺為怪。不亟徙鄉,家受其殃。坎為井、為渚、為悔,震為蜺,下有離火,故曰渴蜺。坎為怪,《漢書五行志》:"上官桀謀廢昭帝,立燕王,是時天雨虹下屬宮中飲井水竭",《淮南子》:"虹蜺者,天之忌也",故不避則受其殃。○宋元本悔字均缺,依汲古。

《井》之《解》:井辺の水洲は悔咎の兆を透し、干渴の虹蜺は妖を興し怪を作す。若し早く本郷を遷離せざれば、一家人は皆殃に遭わん——是れ天変は警を示し避くるに宜しく留まるに宜しからざるの象なり。尚秉和は象を解す:坎は井・水渚・悔、震は虹蜺、下面に離火有り、故に「渴蜺」と言う。坎は怪異を主る。《漢書・五行志》は「上官桀は漢昭帝を廃掉し燕王を改立せんと謀画し、あの時天上より虹霓を落して宮中に垂れ、井水を皆喝い干せり」を記す。《淮南子》は「虹蜺は上天の忌諱する所」と説く、故に避け去らざれば便ち禍を受く。校記:宋刻元刻本は皆「悔」の字を缺く、ここでは汲古閣本に従う。

損。鄭會細聲,國亂失傾。弘明早見,止樂不聽。《左傳襄二十九年》:"吳季札聘魯,觀樂,為之歌,鄭曰:美哉,其細已甚,民弗堪也,是其先亡乎?

《井》之《損》:鄭(即ち鄶)地の楽声は細弱にして、国政は昏乱して傾覆に致る。見識弘通の人は早々に苗头を看出し、音楽を中止して再び聴き続けず——是れ楽を聴きて政を知り微を見て著を知るの象なり。尚秉和は《左伝》襄公二十九年を引きて証と為す:呉国の季札は魯国に到りて聘問し、周楽を観賞し、楽工は彼の為に《鄭風》を歌い、彼は「美しいは美しいも、ただ細弱なること太だ甚し、百姓は受け堪えず、此は大概最先に国を亡ぼすならん」と曰く。本片の源文は此に到りて截断し、季札の此段の話の後半および本条の注文の其余の部分は、下一片の開頭に接続す。

自鄶以下無譏焉",林全用其意。坤為鄭會,《左傳》作鄶,《毛詩》作檜。會,蓋其省字。震為聲,坤柔,故曰細聲。坤為國、為亂、為傾,艮為明弘。明猶弘通,諝,季子也。震為樂,兌為耳、為聽,艮止,故不聽。○會細,汲古作澮有,釋文同,依宋元本。

これは上一片の末尾の《井》之《損》のあの条の林辞の注文の後半。《左伝・襄公二十九年》の引く所は呉公子季札が魯国に到りて楽を観し、《鄭風》を聴きて其の音調は細碎にして太だ甚く百姓は受け堪えず鄭国は恐らく先に亡ぶならんと説くを記し、《鄶風》以下の楽歌を聴き了れば、便ち再び評論を加えず。焦延寿の「鄭会細声、国乱失傾、弘明早見、止楽不聴」の一条は、通篇用うる所は即ち季札の楽を観ししの此段の話の意思。尚秉和は随後に逐句に卦象の来暦を指出す:坤は鄭・会——「会」の此の国名は《左伝》は「鄶」と写し、《毛詩》は「檜」と写す、「会」は当に省筆の字なるべし。震は声音、坤の性は柔弱、故に「細声」と言う。坤は国・乱・傾覆。艮は明・弘、「明」は即ち弘通の意思、「諝」(智謀有る人)の指す所は正に季札。震は音楽、兌は耳・聴聞、而るに艮は静止を主る、故に「不聴」と言う。校記:「会細」の二字は汲古閣本が「澮有」とし、陸徳明の《経典釈文》の載する所は相同じ、此処は宋刻本・元刻本に従う。

益。穿室鑿牆,不直生訟。褰衣涉露,雖勞無功。《詩召南行露篇》:"厭浥行露",又云"誰謂雀無角,何以穿我屋?誰謂鼠無牙,何以穿我墉"。艮為室、為墉,艮手,故曰穿鑿。正反震,故曰生訟。坤為邪,故曰不直生訟。震為衣,坤為水,故曰露。艮手震行,故曰褰衣涉露。坤為勞,坤喪,故無功。○露,汲古作河,非,依宋元本。

《井》之《益》——《易林》の体例は毎一卦の下に六十四条の林辞を繫げ、条首に標出する卦名は変成する所のあの卦、「之卦」と叫び、占して到る所の本卦は則ち「遇卦」と叫ぶ、本条は即ち《井》が《益》に変ず。尚秉和の用うる所の卦象は大半は《説卦伝》に見えず、是れ彼が《易林》の用象の中より輯め出したる「逸象」、即ち経外に散佚する卦象。林辞は言う:房屋に洞を穿ち墻壁に孔を鑿き、行事は正直ならず因りて官司を惹出し、衣裳を撩り起して露水を蹚り過ぐるも、白く辛苦の一場にして功効なし——是れ徒労して訟を招くの凶象なり。前半は《詩経・召南・行露》の語意を用う、あの詩は「厭浥行露」(道上の露水は湿渌渌たり)と説き、又「誰謂雀无角、何以穿我屋、誰謂鼠无牙、何以穿我墉」(誰か言わん麻雀に尖嘴なしと、然らば怎様にして我が屋頂を啄穿する、誰か言わん老鼠に利牙なしと、然らば怎様にして我が墻を打通する)と説く、正に屋を穿ち墻を鑿きて訟を致すの本事。尚秉和は象を解す:艮は室・墉(墻垣)、艮はまた手、故に「穿鑿」と言う。本卦の下体は震、三至五爻は又合して艮と成り、艮は正に震を倒したる様子——卦体を上下顛倒して看て得る所の象を「覆象」と叫び、震の覆象は即ち艮、一正一倒の両震は相向し、「正反震」と称し、両造は相対して争執の如く、故に「生訟」と言う。坤の性は邪曲、故に「不直生訟」と言う。震は衣、坤は水、故に「露」を取る。艮は手・震は行、合わせて便ち「褰衣渉露」。坤は労苦を主り、坤はまた喪亡を主る、故に労して功なし。校記:「露」の字は汲古閣本が「河」とし、対ならず、此処は宋刻本・元刻本に従う。

夬。脫卵免乳,長大成就。君子萬年,動有利得。震為卵,今陽長至五,故曰脫卵。艮為乳,艮伏,故免乳。乾為長大、為成就、為君子、為萬年。○首句汲古作胎卵胞乳,非,依宋元本。

《井》之《夬》:雛鳥は卵殻を脱出し幼子は乳哺を断ち、此に就きて長大して材と成り、君子は万年の寿を享け、一挙一動みな利を得る有り——是れ成長して遂ぐるを得るの吉象なり。尚秉和は象を解す:震は卵、《夬》卦の陽気は已に第五爻に長じ到り、五陽は下に在りて一陰を逼る、故に「脱卵」と言う。艮は乳、此の卦は艮は伏位に処りて現れず、故に「免乳」、即ち哺乳を脱離すと言う。乾は長大・成就・君子・万年。校記:首句は汲古閣本が「胎卵胞乳」とし、対ならず、此処は宋刻本・元刻本に従う。

姤。五心乖離,各引是非。莫適為主,道路塞壅。巽卦數五,伏坤為心、為乖離。乾為言,兌亦為言,兌背乾,故曰各引是非。《夬九四》云"聞言不信",林用象所本也。震為侯、為主、為道路,震伏,故曰莫適為主。乾實,故壅塞。

《井》之《姤》:五個の人の心思は乖違離散し、各々一套の是非を引き出し、帰属すべき一個の正主なく、道路は因りて堵塞不通なり——是れ衆心は一ならず事は主する所なきの凶象なり。尚秉和は象を解す:巽の卦数は五、伏坤は心・乖離、合わせて「五心乖離」。乾は言語を主り、兌も亦言語を主り、而るに兌と乾とは背向して処る、故に「各引是非」と言う。《夬》卦の九四爻辞「聞言不信」は、正に焦氏の此条の取象の依据。震は諸侯・主・道路、此の卦は震は伏位に在る、故に「莫適為主」、即ち従い適う所なく主宰なしと言う。乾体は充実、故に道路は壅塞す。

萃。百柱載梁,千歲不僵。大願輔福,文武以昌。艮巽為樑柱,下坤為多,故曰百柱。坤為車,故曰載。坤為千歲、為僵,艮堅,故不僵。伏乾為大、為福,坤為文,伏震為武、為昌。

《井》之《萃》:上百根の柱子は大梁を扛負し、千年も亦傾倒せず。大願は扶助と福佑とを得、文治武功は因りて昌盛す——是れ根基は穩固にして福沢綿長の吉象なり。尚秉和は象を解す:艮と巽とは皆梁柱の象を取り、下体の坤は衆多を主る、故に「百柱」と言う。坤は車、車は能く負載す、故に「載」と言う。坤は千歳・僵僕、而るに艮の性は堅実、故に傾倒に至らず。伏乾は大・福、坤に文采有り、伏震は武・昌盛。

井。營城洛邑,周公所作。世逮三十,年厯七百。福佑豐實,堅固不落。坤為城邑、為世、為年,震為周、為公,數三,坤數十,故曰世逮三十。震數七,坤數百,故曰年厯七百。伏乾為福佑、為實,伏艮為堅。《左傳》周公城洛邑卜世三十,卜年七百。○逮,汲古訛連,依宋元本。

本条の条首は「井」と標作すも、《易林》は毎卦の下の六十四林は本卦を以て首と居り其余は卦序に依りて排列し、此処は上は《萃》を承け下は《困》に接す、次序に按ずれば当に《升》なるべし。注文は又坤を以て主象と為し(《升》の上体は正に坤)、底本の「井」の字は疑わく「升」の訛ならん、今は照録して改めず。林辞は言う:洛邑の城池を営建するは、周公の規画興造する所なり。卜して伝世三十代を得、国を享くること七百年。福佑は豊厚充実して、根基は堅固にして敗落せず——是れ基業久長の大吉の象なり。尚秉和は象を解す:坤は城邑・世・年、震は周・公。震の卦数は三、坤の卦数は十、三と十と相乗ず、故に「世逮三十」と言う。震の数は七、坤の数は百、故に「年歴七百」と言う。伏乾は福佑・充実、伏艮は堅固。《左伝》宣公三年は王孫満の話を載す、成王は郟鄏に鼎を定め、世を卜ること三十・年を卜ること七百と曰く、正に周公の洛を営むの旧典。校記:「逮」の字は汲古閣本が訛りて「連」とし、此処は宋刻元刻本に従う。

困。從叔旅行,食於東昌。嘉伯悅喜,與我芝酒。通《賁》。艮為叔,震為從、為行旅,故曰從叔行旅。震為食、為東、為昌。東昌,齊地名。震為伯、為嘉、為喜,坎為酒,巽為芝,艮為我,故曰與我芝酒。此似有故實,俟考。

《井》之《困》:叔父に跟い随いて一道に門を出でて遠行し、東昌に於て進食し、嘉伯は歓欣喜悦して霊芝美酒を拏りて我を款待す——是れ行旅は款待を得るの吉象なり。尚秉和は象を解す:「通《賁》」は説くは《困》と《賁》とは「旁通」す、即ち六爻の陰陽は全部互換して両卦は相通じ、象を取る時は旁通の卦の象を借用すべし。艮は叔、震は随従・行旅、故に「従叔行旅」と言う。震は飲食・東・昌、「東昌」は斉国の地名。震は伯・嘉美・喜悦、坎は酒、巽は芝草、艮は我、故に「与我芝酒」と言う。尚氏はこの条は似て某の桩の史実を用いしも、一時還ら考え出ださずと言う。

革。牛耳聾蔽,不曉聲味。委以鼎俎,方始亂潰。通《蒙》。坤為牛,坎為耳,坤閉,故耳聾。巽為味,震為聲,坤閉,故不知聲味。震為鼎俎,離為亂。○潰,汲古作憒,依宋元本。牛,汲古作失,未知孰是。

《井》之《革》:牛の耳は又聾え又塞がり、声音と滋味とを分辨せず。烹调の鼎俎を它に交付せば、事情は此に乃ち溃乱を始めり——是れ托する所は人に非るの凶象なり。尚秉和は象を解す:《革》と《蒙》とは旁通す。坤は牛、坎は耳、坤は閉塞を主る、故に耳は聾える。巽は気味、震は声音、坤は閉す、故に声味を辨え出ださず。震は鼎俎、離は乱を主る。校記:「溃」の字は汲古閣本が「愦」とし、此処は宋刻元刻本に従う。「牛」の字は汲古閣本が「失」とし、尚氏は如何なるか対なるを知らずと言う。

鼎。娵訾開門,鶴鳴彈冠。文章進用,舞韶和鸞。三仁翼政,國無災殃。詳《坤》之《明夷》。

《井》之《鼎》:娵訾の星次は一たび到れば、門戸は随いて洞開し、鶴は唳り高鳴し賢士は冠上の塵土を弾去して出仕を准備す。文采有る人は進用を得、《韶》楽は舞を起し鸞鈴は相い和し、三位の仁人は朝政を輔佐し、国家は災殃なし——是れ賢才は位に在るの大吉の象なり。「娵訾」は十二星次の一つ、亥位に配し、正に歳首開泰の時に当たる。「弾冠」は漢代の王吉と貢禹との典故を用う、友人は位を得れば便ち冠を弾きて相い待つ。「三仁」は殷末の微子・箕子・比干を指し、《論語・微子》は「殷有三仁焉」と称す。取象は詳しく《坤》之《明夷》の一条に見ゆ。

震。游魂六子,百木所起。三男從父,三女隨母。至己而後,各得其所。震為遊、為子,坎為魂,數六,故曰游魂六子。震為木、為百,數三。互坎艮,皆男象,而震為父、為從,故曰三男從父。伏巽,互離兌,皆女象。巽為母,故曰三女從母。離卦數三也。巽居己方,至己而反者,言震巽相反覆,震究為巽與震相反也。○反,汲古作足,非,依宋元本。

《井》之《震》:游魂の卦は六子を生出し、百木は此に由りて発生す。三個の男卦は父卦に跟従し、三個の女卦は母卦に追随し、巳位に到りて而る後に折返し、各々其の所を安んじ得——是れ各々本位に帰るの和順の象なり。底本の第五句は「至己而后」と作り、尚氏の注文と巻末の仵道益の跋語の引く此条の林辞とは皆「至巳而反」と作る。「己」は当に「巳」、「后」は当に「反」の訛なるべし、今は仍お底本に照りて録す。尚秉和は象を解す:震は游・子、坎は魂、坎の卦数は六、故に「游魂六子」と言う。震は木・百、卦数は三。本卦の二至四爻・三至五爻の合して成る卦を「互体」と叫び、此処は坎と艮とを互い出だし、坎・艮は皆男卦の象、而るに震は父・従、故に「三男従父」と言う——震・坎・艮は正に乾の三個の男卦。震の伏する所は巽、巽卦の互体は又離と兌とを出だし、離・兌は皆女卦の象、巽は母、故に「三女従母」と言う、離の卦数も亦是れ三。巽は十二辰の巳位に居る、「至巳而反」は説くは震と巽とは互いに反復を為し、震は推究して極処に到れば便ち巽と成り、両卦は正に相反すと。校記:「反」の字は汲古閣本が「足」とし、対ならず、此処は宋刻元刻本に従う。

艮。南山蘭茞,使君媚好。皇女長婦,多孫眾子。《左傳》:"鄭文公有妾曰燕姞,夢天與之蘭曰:蘭有國香,人服媚之",艮納丙,故曰南山。震亦為南。震伏巽,故曰蘭茞。震為君,伏兌為媚好,伏巽為皇女、為長婦。艮為孫子,重艮,故曰多、曰眾。○首二句汲古訛為"兩山萠使,苲君好",依宋元本。

《井》之《艮》:南山の上に蘭草と白芷とは生い、君子をして人の愛悦を招かしむ。皇家の女児は元配長婦を為り、児孫は衆多なり——是れ佳偶にして子多きの吉象なり。尚秉和は象を解す:《左伝》宣公三年は鄭文公に燕姞と叫ぶ妾有りて、天使の彼女に蘭花を賜えるを夢見、「蘭に国香有り、人は之を服して媚びる」(蘭に一国の香有り、之を佩戴する人は人の愛悦を招く)と曰くを載す、後に鄭穆公を生み、林辞は正に此の事を用う。「納甲」の法に按じて艮は丙を納め、丙は南方に属す、故に「南山」と言う。震も亦南方を主る。震の伏する所は巽、巽は草木、故に「蘭茞」と言う——「茞」は即ち白芷。震は君、伏兌は媚好、伏巽は皇女・長婦。艮は孫・子、本卦は上下に艮を重ねる、故に「多」と言い「衆」と言う。校記:頭の二句は汲古閣本が訛りて「両山萠使、苲君好」とし、此処は宋刻元刻本に従う。

The original text is in the public domain. The Japanese is a machine-assisted translation of this library’s own Chinese paraphrase, checked against a fixed glossary so that technical terms match the definitions used elsewhere on this site. It is a reading aid and does not replace the original.

Hexagrams in this volume