開元占経 巻五十
太白占 六
太白の南方七宿を犯す
太白の東井を犯す 一
《海中占》曰:“太白犯東井,人主浮船。”石氏曰:“太白犯東井,將軍惡之。”(宋檀道鸞《晉陽秋》曰:孝武太元五年五月丁酉,太白犯東井、八月己巳,領軍將軍新除太常韓伯卒,安帝元年三月丙辰、太白犯東井、後將軍王國寶於獄賜死、又左將軍王緒斬於市也。)石氏曰:“太白入東井中,大人衛守,國君失政,大臣為亂,兵大起。”(案《晉書天文志》曰:晉永康二年二月,太白出西方,逆行入東井,是時齊王冏起兵討趙王倫,倫滅冏,擁兵不朝,專權淫侈,明年誅死。車頻《秦書》曰:符生壽光三年二月、太白犯東井、太史奏曰:必有暴兵,生日星入井者,必將渴耳,何怪也。時長安謠曰:百里望空城,蔚蔚一何青,瞎兒不知法,仰目不見星。其年符法殺生,而堅代立,是其應也。)
《海中占》にいう、金星が東井宿を侵犯するのは、君主が船に乗って出行することを主る。石申がいう、金星が東井宿を侵犯するのは、将軍の悪む天象である。(原書小注:宋人檀道鸞《晋陽秋》にいう、晋の孝武帝太元五年五月丁酉日に金星が東井宿を侵犯し、八月己巳日に領軍将軍・新任太常韓伯が去世した。安帝元年三月丙辰日に金星が東井宿を侵犯し、後将軍王国宝が獄中で死を賜り左将軍王緒もまた鬧市で斬首された。)石申がいう、金星が東井宿の中に入るのは、大人が宿衛の守御を加強し国君が政柄を失い大臣が乱を作し兵事が大いに起きることを主る。(原書小注:《晋書・天文志》の記載を按ずるに、晋の永康二年二月に金星が西方に現れ逆行して東井宿に入り、当時斉王司馬冏が起兵して趙王司馬倫を討伐し、司馬倫が消滅した後に司馬冏は兵を擁して朝せず権柄を専擅し荒淫・奢侈し第二年に誅殺された。車頻《秦書》にいう、前秦の苻生寿光三年二月に金星が東井宿を侵犯し、太史が上奏して必ず暴乱の兵事があるといい、苻生がいうには星が「井」の中に入るのは水を飲もうとするだけで何か怪しむことがあろうか。当時長安に流伝した歌謡にいう、「百里望空城、蔚蔚一何青、瞎児不知法、仰目不見星」と。その年に苻法が苻生を殺し、而るに苻堅が彼に代わって自立した。これがすなわち応験である。)
郗萌曰:“太白入東井中,先起兵者大敗,天下大水。”(《宋書天文志》曰:晉穆帝昇平三年六月,太白犯東井,四年五月,天下大水之驗也。)郗萌曰:“太白出東方,入咸池,東下行入東井,下不忠,有謀上者。”《荊州占》曰:“太白入東井,將軍有戮死者。”《玉曆》曰:“太白入東井,失道行陽,先起者亡,後發者昌。”郗萌曰:“太白入東井,出入諸侯;兵驚、政急、民流。”《南官侯》曰:“太白入東井,留二十日以上,天下更政,若六畜疾。又曰兵大起,天下易正朔。”(謂留井中)《黃帝占》曰:“太白入東井,為水。”
郗萌がいう、金星が東井宿の中に入るのは、先に兵を起こした一方が大敗し天下に大水を発することを主る。(原書小注:《宋書・天文志》の記載に、晋の穆帝升平三年六月に金星が東井宿を侵犯し、四年五月に天下に大水があった。これがすなわち応験である。)郗萌がいう、金星が東方に現れ咸池星に入り東に下行して東井宿に入るのは、下の人が忠でなく君上を図謀する者があることを主る。《荊州占》にいう、金星が東井宿に入るのは、将軍の中に処死される者があることを主る。《玉暦》にいう、金星が東井宿に入り常道を失って陽位を行くのは、先に手を動かした一方が滅亡し後に発動した一方が昌盛することを主る。郗萌がいう、金星が東井宿に入り諸侯星の間に出入するのは、兵事が驚擾し政事が厳急で百姓が流亡することを主る。《南官候》にいう、金星が東井宿に入り二十日以上停留するのは、天下が政令を更改しあるいは六畜が病むことを主る。またいう、兵事が大いに起き天下が正朔を更換することを主る。(原書小注:これは金星が井宿の中に停留することをいう。)《黄帝占》にいう、金星が東井宿に入るのは、水災を主る。
石氏曰:“太白守東井,為旱。”石氏曰:“太白守東井,十日不下,大臣坐之;三十日不下,神水出,歲多土功。”郗萌曰:“太白守東井、一東一西、一南一北,男子不得耕,女子不得織。”巫咸曰:“太白守東井,邑君失政,大人當之,大臣為盜,有誅者。”又占曰:“太白守東井,為萬物不成,若失火。”郗萌曰:“太白守東井,兵起東南。”石氏曰:“太白入若守東井中,大臣為盜。”郗萌曰:“太白犯乘守井、鉞,為其國內亂兵起。”《黃帝占》曰:“太白入犯井、鉞,為臣誅。”郗萌曰:“太白入若犯鉞,將誅。”石曰:“太白犯守鉞,有兵起,不出其年。”
石申がいう、金星が東井宿に留守するのは、旱を主る。石申がいう、金星が東井宿に留守して十日離れないのは、大臣がこれにより罪を得ることを主る。三十日離れなければ神異の水が涌出しその年に土木工程が多いことを主る。郗萌がいう、金星が東井宿に留守して忽ち東に忽ち西に忽ち南に忽ち北にするのは、男子が耕種できず女子が紡織できないことを主る。巫咸がいう、金星が東井宿に留守するのは、城邑の君が政柄を失い事は大人の身に応じ大臣が盗盗の事を為し誅殺される者があることを主る。また一つの占辞にいう、金星が東井宿に留守するのは、万物が成らずあるいは火災が発生することを主る。郗萌がいう、金星が東井宿に留守するのは、兵が東南に起きることを主る。石申がいう、金星が東井宿の中に入りあるいは留守するのは、大臣が盗盗の事を為すことを主る。郗萌がいう、金星が井宿と鉞星を侵犯・凌乗・留守するのは、その国が内乱して兵が起きることを主る。《黄帝占》にいう、金星が井宿と鉞星に入り侵犯するのは、臣下が誅されることを主る。郗萌がいう、金星が鉞星に入りあるいは侵犯するのは、将帥が誅されることを主る。石申がいう、金星が鉞星を侵犯し留守するのは、兵事の興起がありこの年を出でず。
太白の輿鬼を犯す 二
甘氏曰:“太白犯輿鬼、質,將戮。”(司馬彪《天文志》曰:“孝安永初三年六月癸酉、太白入輿鬼,為將凶、後中郎將任尚坐賊侵,其年檻車徵棄市也。)《荊州占》曰:“太白入輿鬼,將誅。”陳卓曰:“太白入輿鬼,兵革起。”石氏曰:“太白犯天尸,將軍有憂,其主廢。”齊伯曰:“太白犯入輿鬼,以罪斬大臣,(案司馬彪《天文志》曰:孝桓延熹八年五月癸酉,六月壬戌,太白行入輿鬼,九年十一月,太原郡守劉瓚等坐殺無辜,荊州刺史李隗為賊所拘,皆葉市。永康元年十二月、大將軍寶武、尚書令尹勳,黃門令山冰等皆枉死也。)若五十日不下,且有大喪。”石氏曰:“太白入輿鬼西北,婦人多兵死。”
甘徳がいう、金星が輿鬼宿およびその中間の「質」星(すなわち積尸気)を侵犯するのは、将帥が殺されることを主る。(原書小注:司馬彪《続漢書・天文志》にいう、漢の安帝永初三年六月癸酉日に金星が輿鬼宿に入り将帥に凶があることを主り、後に中郎将任尚が侵吞・劫掠して罪を得てその年に囚車で押解されて京に帰り棄市で処刑された。)《荊州占》にいう、金星が輿鬼宿に入るのは、将帥が誅されることを主る。陳卓がいう、金星が輿鬼宿に入るのは、兵革の興起を主る。石申がいう、金星が天尸星を侵犯するのは、将軍に憂いがありその君主が廃されることを主る。斉伯がいう、金星が輿鬼宿を侵犯し入るのは、罪名に按じて大臣を斬ることを主る(原書小注:司馬彪《続漢書・天文志》の記載を按ずるに、漢の桓帝延熹八年五月癸酉日・六月壬戌日に金星が運行して輿鬼宿に入り、九年十一月に太原郡守劉瓚らが無辜を殺害して罪を得て荊州刺史李隗が賊人に拘執され、みな鬧市で処刑された。永康元年十二月に大将軍竇武・尚書令尹勲・黄門令山冰らがみな冤を含んで死んだ)。もし五十日離れなければ大喪があろう。石申がいう、金星が輿鬼宿の西北部に入るのは、婦人が多く兵禍に死ぬことを主る。
郗萌曰:“太白入輿鬼,為大人卒,事以命終。”(案司馬彪《天文志》曰:“孝質本初元年四月辛巳,太白入輿鬼、閏月一日、孝質帝為梁冀所鴆之驗。)《郗萌占》曰:“太白入輿鬼,歲惡,婦人多懷子而死者。”《荊州占》曰:“太白入輿鬼,亂臣在內,有屠城。”(案檀道鸞《晉陽秋》曰:孝武太元二年四月戊戌,太白入輿鬼,四年二月,襄陽城陷,四月,魏興城崩,五月,彭超攻陷盱眙城。)《南官候》曰:“太白入輿鬼、犯積尸,國有大喪;大兵起,將軍有戰,人多死,白骨滿野,無有葬者;期二年。”郗萌曰:“太白舍輿鬼東北,天下多梟死者;一曰有兵。”郗萌曰:“太白舍輿鬼中央,左右群臣有伏劍,若吞藥而死者。”
郗萌がいう、金星が輿鬼宿に入るのは、大人が猝死し事が性命をもって終わることを主る。(原書小注:司馬彪《続漢書・天文志》の記載を按ずるに、漢の質帝本初元年四月辛巳日に金星が輿鬼宿に入り、閏月初一日に質帝が梁冀に毒殺された。これがすなわち応験である。)《郗萌占》にいう、金星が輿鬼宿に入るのは、年成が悪劣で婦人に身孕を懐いて死ぬ者が多いことを主る。《荊州占》にいう、金星が輿鬼宿に入るのは、乱臣が朝内におり屠城の禍があることを主る。(原書小注:檀道鸞《晋陽秋》の記載を按ずるに、晋の孝武帝太元二年四月戊戌日に金星が輿鬼宿に入り、四年二月に襄陽城が陥落し四月に魏興城が崩毀し五月に彭超が盱眙城を攻陥した。)《南官候》にいう、金星が輿鬼宿に入り積尸気を侵犯するのは、国に大喪があり大きな兵事が興起し将軍が参戦し死人が多く白骨が野に遍くして収葬する人がないことを主り期限は二年である。郗萌がいう、金星が輿鬼宿の東北部に宿留するのは、天下に梟首で処死される者が多いことを主る。別の説では兵事があることを主る。郗萌がいう、金星が輿鬼宿の中央に宿留するのは、君主の左右の群臣の中に伏剣して自殺しあるいは薬を呑んで死ぬ者があることを主る。
郗萌曰:“太白出入留舍輿鬼,五十日不下,民大疾,死而不收。”(案《宋書天文志》曰:孝武孝建三年四月戊戌,太白犯輿鬼,明年夏,京邑疾疫。明帝泰始四年六月壬寅、太白又犯輿鬼、其年普天下大半疾疫也。)《南官候》曰:“太白出入留舍輿鬼,五十日不下,國兵起,開庫發卒。”石氏曰:“太白守輿鬼,有兵災;若旱,多火災,萬物五穀不成。”郗萌曰:“太白守輿鬼傍,萬民當之。”石氏曰:“太白守輿鬼,大人有祭祀之事。”《海中占》曰:“太白守輿鬼,出其南,水;出其北,旱。”《南官候》曰:“太白久守輿鬼,病在女主;其留二十日以上,有喪;期八月。”
郗萌がいう、金星が輿鬼宿に出入して停留し五十日離れないのは、百姓が大いに疾病を生じ死んでも屍を収める人がないことを主る。(原書小注:《宋書・天文志》の記載を按ずるに、宋の孝武帝孝建三年四月戊戌日に金星が輿鬼宿を侵犯し、第二年夏に京城に疫病が発生した。明帝泰始四年六月壬寅日に金星がまた輿鬼宿を侵犯し、その年に普天下の大半の処で疫病が発生した。)《南官候》にいう、金星が輿鬼宿に出入して停留し五十日離れないのは、国中に兵が起き武庫を開き士卒を征発することを主る。石申がいう、金星が輿鬼宿に留守するのは、兵災があることを主る。あるいは旱を主り火災が多く万物・五穀が成熟しない。郗萌がいう、金星が輿鬼宿の傍らに留守するのは、事は万民の身に応ずる。石申がいう、金星が輿鬼宿に留守するのは、大人に祭祀の事があることを主る。《海中占》にいう、金星が輿鬼宿に留守しその南面に出れば水を主りその北面に出れば旱を主る。《南官候》にいう、金星が長く輿鬼宿に留守するのは、疾病が女主の身に応ずることを主る。それが二十日以上停留すれば喪事があり期限は八箇月である。
《玉曆》曰:“太白行守輿鬼,成勾巳,若環繞之,國有死王,大臣有戮者;五十日不下,人民死者大半。”《郗萌占》曰:“太白入若守輿鬼,為主憂,財寶出,亂臣在內,若大臣謀,有干鉞棄質者,君貴人憂,金玉用,民多疾;南入為男,北入為女,西入為老人,東入為丁壯;棺木倍貴。”《荊州占》曰:“太白乾犯守輿鬼,隨所守,王者發之,不出七十日,其下國有大喪;陽為人君;陰為皇后;左為太子;右為貴臣。”郗萌曰:“太白輿鬼斗,不出其年,有反臣。”
《玉暦》にいう、金星が運行して輿鬼宿に留守し環繞して「勾巳」の形を成しあるいは一周を繞行するのは、国中に君王の死亡があり大臣の中に処死される者があることを主る。五十日離れなければ百姓が大半死ぬことを主る。《郗萌占》にいう、金星が輿鬼宿に入りあるいは留守するのは、君主に憂いがあり財宝が流出し乱臣が朝内におりあるいは大臣に陰謀があり斧鉞に触犯して屍を刑場に棄てられる者があり君主と貴人に憂いがあり金玉が動用され百姓に疾病が多く生ずることを主る。金星が南面から入れば男子に応じ北面から入れば女子に応じ西面から入れば老人に応じ東面から入れば壮年人に応じる。棺木の価格は倍にして上漲する。《荊州占》にいう、金星が輿鬼宿を干犯し留守するのは、それが留守する部位に随って異なり君王はこれに拠って相応の処置を発布し七十日を出でずその下に対応する国家に大喪がある。陽位は君主に応じ陰位は皇后に応じ左は太子に応じ右は貴臣に応ずる。郗萌がいう、金星が輿鬼宿と相犯して斗すようなのは、この年を出でず反逆の臣があろう。
太白の柳を犯す 三
《南官候》曰:“太白犯柳,有木功事;若名木見伐者。”郗萌曰:“太白入柳、天庫,兵起西北方;又曰大人守禦。”《南官候》曰:“太白入注,兵大起,有益地者。”《海中占》曰:“太白逆行入柳,成鉤巳,下刑上,臣謀主,民有怨仇,多暴死。”《春秋文曜鉤》曰:“殘百姓,誅名臣,則太白入柳。”石氏曰:“太白去柳一尺,國有專臣,專命無忌。”《荊州占》曰:“太白提天相出入,有陰謀。”《南官候》曰:“太白逆乘注,下刑上,民多怨仇暴死者。”又占曰:“太白抵柳,出入,陰謀其主,諸侯應其急。”
《南官候》にいう、金星が柳宿を侵犯するのは、木材で营造する工程があることを主る。あるいは名貴の樹木が砍伐される。郗萌がいう、金星が柳宿・天庫星に入るのは、兵が西北方に起きることを主る。またいう、大人が守御を加強することを主る。《南官候》にいう、金星が注星に入るのは(柳宿は別名「注」)、兵事が大いに起き土地を增添する者があることを主る。《海中占》にいう、金星が逆行して柳宿に入り環繞して「勾巳」の形を成すのは、下の人が上の人に刑を加え臣下が君主を図謀し百姓の間に怨仇を結び暴死する者が多いことを主る。《春秋文曜鈎》にいう、百姓を残害し名望の臣子を誅殺すれば金星はすなわち柳宿に入る。石申がいう、金星が柳宿に距ること一尺のは、国中に権を専らにする臣子がおり独断専行して忌憚がないことを主る。《荊州占》にいう、金星が天相星を挟持してその間に出入するのは、陰謀があることを主る。《南官候》にいう、金星が逆行して注星を凌乗するのは、下の人が上の人に刑を加え百姓に怨を結んで暴死する者が多いことを主る。また一つの占辞にいう、金星が柳宿に抵触してその間に出入するのは、人が暗中に君主を図謀し諸侯がその急難を救応しようとすることを主る。
甘氏曰:“太白守柳,將軍受賀,王者封臣。”石氏曰:“太白守柳,戰大勝,大得地。”《海中占》曰:“太白守柳,兵大起,一歲罷,若小旱,傷五穀。”《南官候》曰:“太白守柳,為反臣中外兵,以德令解之。”《南官候》曰:“太白守柳,兵起,一歲大益也。”郗萌曰:“太白守柳,敵不安。”齊伯曰:“太白守柳,秦兵且至,無王者。”巫咸曰:“太白犯守注,有急兵;若有變更之令,下陵上,君弱臣強,奸臣賊子謀殺其主。”郗萌曰:“太白守柳,人民多狂。”《荊州占》曰:“太白迫守柳、大將軍出。”
甘徳がいう、金星が柳宿に留守するのは、将軍が慶賀を受け君王が臣下を分封することを主る。石申がいう、金星が柳宿に留守するのは、交戦して大勝し大量に土地を取得することを主る。《海中占》にいう、金星が柳宿に留守するのは、兵事が大いに起き一年の後に罷息することを主る。あるいは小さな旱を主り五穀を損傷する。《南官候》にいう、金星が柳宿に留守するのは、反逆の臣が内外を勾結して兵を興し恩を施す政令を用いて化解すべきことを主る。《南官候》にいう、金星が柳宿に留守するのは、兵事が興起し一年の内に大いに增益することを主る。郗萌がいう、金星が柳宿に留守するのは、敵方が安寧を得ないことを主る。斉伯がいう、金星が柳宿に留守するのは、秦兵がまさに到来し国中に真の王者がいないことを主る。巫咸がいう、金星が注星を侵犯し留守するのは、緊急の兵事があることを主る。あるいは変更の政令があり下の人が上の人に凌駕し君主が軟弱で臣下が強横で奸臣賊子がその君主を殺害しようと図謀する。郗萌がいう、金星が柳宿に留守するのは、百姓に狂疾を発する者が多いことを主る。《荊州占》にいう、金星が柳宿に逼近し留守するのは、大将軍が出征することを主る。
太白の七星を犯す 四
郗萌曰:“太白犯七星,臣為亂。”甘氏曰:“太白入七星,有君置太子者。”郗萌曰:“太白出七星,太子且立。”石氏曰:“太白去七星一尺,國致七十二人。”郗萌曰:“太白提天都,出入,歲旱惡。”《荊州占》曰:“太白經七星,民非吾民;一曰當有詐為王者。”郗萌曰:“太白犯守七星,兵大起,曝巫移市。”又占曰:“太白留七星中央,為天下大憂。”齊伯曰:“太白出入留舍七星,三十日不下,兵且起;六十日不下,必有破國、亡王、死將;八十日不下,三年兵起,期在春;一曰有急令、期不出年。”
郗萌がいう、金星が七星宿を侵犯するのは、臣下が乱を作すことを主る。甘徳がいう、金星が七星宿に入るのは、君主が太子を冊立することがあることを主る。郗萌がいう、金星が七星宿から出るのは、太子がまさに冊立されることを主る。石申がいう、金星が七星宿に距ること一尺のは、国家が七十二位の賢人を招致することを主る。郗萌がいう、金星が天都星を挟持してその間に出入するのは、その年に旱情が厳重であることを主る。《荊州占》にいう、金星が七星宿を経過するのは、百姓がもはや本国の百姓でなくなることを主る。別の説では王と詐称する者があろうことを主る。郗萌がいう、金星が七星宿を侵犯し留守するのは、兵事が大いに起き巫師を曝して雨を求め集市を遷移して災を禳ぐべきことを主る。また一つの占辞にいう、金星が七星宿の中央に停留するのは、天下に大きな憂いがあることを主る。斉伯がいう、金星が七星宿に出入して停留し三十日離れないのは、兵事がまさに起きることを主る。六十日離れなければ必ず国家が破滅し君王が敗亡し将帥が戦死する。八十日離れなければ三年の内に兵が起き時は春である。別の説では緊急の政令があり期限は一年を出でず。
《黃帝占》曰:“太白守七星,不出二十日,有兵。”又占曰:“太白守七星,二十日以上,有急兵。”石氏曰:“太白守七星,兵渡津橋者,大凶。”甘氏曰:“太白守七星,將軍納忠,國君有德。”巫咸曰:“太白守七星,兵大起;又為水,萬物五穀不成。”郗萌曰:“太白守七星,國失政,大人當之。”郗萌曰:“太白守七星,戰大勝,天子益地。”《荊州占》曰:“太白守七星,七日以上,至三十日,大將軍出。”又占曰:“太白守七星,車騎滿野;又曰行天都,王者憂。”《南官候》曰:“太白守七星,為反臣中外兵,以德令解之。”
《黄帝占》にいう、金星が七星宿に留守するのは、二十日を出でず兵事がある。また一つの占辞にいう、金星が七星宿に二十日以上留守するのは、緊急の兵事がある。石申がいう、金星が七星宿に留守するのは、軍隊が渡口・橋梁を渡越し大凶であることを主る。甘徳がいう、金星が七星宿に留守するのは、将軍が忠言を進献し国君に徳行があることを主る。巫咸がいう、金星が七星宿に留守するのは、兵事が大いに起きることを主る。また水災を主り万物・五穀が成熟しない。郗萌がいう、金星が七星宿に留守するのは、国家が政柄を失い事は大人の身に応ずることを主る。郗萌がいう、金星が七星宿に留守するのは、交戦して大勝し天子が土地を增添することを主る。《荊州占》にいう、金星が七星宿に留守するのは、七日以上から三十日までで大将軍が出征することを主る。また一つの占辞にいう、金星が七星宿に留守するのは、車馬・騎兵が原野に満ちることを主る。またいう、金星が天都星に運行するのは、君王に憂いがあることを主る。《南官候》にいう、金星が七星宿に留守するのは、反逆の臣が内外を勾結して兵を興し恩を施す政令を用いて化解すべきことを主る。
太白の張を犯す 五
《春秋文曜鉤》曰:“太白入張,天子以微誅。”巫咸曰:“太白乘犯張,三日以上至七日,將軍內反,賊臣在側。”郗萌曰:“太白提張出入,相自擅,陰謀其主。”《荊州占》曰:“太白提張出入,諸侯應其急。”石氏曰:“太白守張,春旱。”郗萌曰:“太白出入留舍張,兵起於其國。”甘氏曰:“太白守張,其國有兵,謀不成,天下以空發兵;一曰後起,不行。”巫咸曰:“太白守張,必有大水,多水災,萬物五穀不成,民憂食。”《南官候》曰:“太白守張,為反臣中外兵,以德令解之。”《百二十占》曰:“太白守張,先旱後水。”石氏曰:“太白犯守張,兵革滿四野;必有亡國,天下易政。”巫咸曰:“太白守張,下凌上,君弱臣強,奸臣賊子,謀殺其主。”郗萌曰:“太白犯守張,人民多狂。”
《春秋文曜鈎》にいう、金星が張宿に入るのは、天子が暗に人を誅することを主る。巫咸がいう、金星が張宿を凌乗し侵犯し三日以上から七日までのは、将軍が朝内で反逆し人を害する臣子が君主の身辺にいることを主る。郗萌がいう、金星が張宿を挟持してその間に出入するのは、国相が権を擅にして自ら専らにし暗中に君主を図謀することを主る。《荊州占》にいう、金星が張宿を挟持してその間に出入するのは、諸侯がその急難を救応しようとすることを主る。石申がいう、金星が張宿に留守するのは、春旱を主る。郗萌がいう、金星が張宿に出入して停留するのは、兵事がそれが対応する国家に起きることを主る。甘徳がいう、金星が張宿に留守するのは、その国に兵事があり図謀が成し遂げられず天下が徒に兵を興すことを主る。別の説では後に発動した一方が兵を出せないことを主る。巫咸がいう、金星が張宿に留守するのは、必ず大水があり水災が多く万物・五穀が成熟せず百姓が食に愁うことを主る。《南官候》にいう、金星が張宿に留守するのは、反逆の臣が内外を勾結して兵を興し恩を施す政令を用いて化解すべきことを主る。《百二十占》にいう、金星が張宿に留守するのは、先に旱して後に澇することを主る。石申がいう、金星が張宿を侵犯し留守するのは、兵革が四野に満ち必ず国家が滅亡し天下が政令を更改することを主る。巫咸がいう、金星が張宿に留守するのは、下の人が上の人に凌駕し君主が軟弱で臣下が強横で奸臣賊子がその君主を殺害しようと図謀することを主る。郗萌がいう、金星が張宿を侵犯し留守するのは、百姓に狂疾を発する者が多いことを主る。
太白の翼を犯す 六
《荊州占》曰:“太白入翼,天下兵塞。”郗萌曰:“太白出入留舍翼,大風將至;一曰其國不平,若大水出。”《海中占》曰:“太白去翼一尺,(翼,陽也;太白,金,陰也)陰來附陽,秦朝楚。”郗萌曰:“太白舍翼,有客;一曰舍左翼,旱。”《黃帝占》曰:“太白舍右翼,兵起。”郗萌曰:“太白犯守翼,其國失地。”石氏曰:“太白守翼,為萬物不成,人民流亡。”石氏曰:“太白守翼三日以上,大臣不臣;一曰大臣為亂。”巫咸曰:“太白守翼,有反臣中兵也。”郗萌曰:“太白守翼,四夷兵大起,五穀傷風,民多疫。”《玉曆》曰:“太白守翼,有急事,若有大風。”齊伯曰:“太白守翼,臣不承令,人主有憂。”《百二十占》曰:“太白守翼,有兵在西方。”《黃帝占》曰:“太白守翼,易代,臣行主命。”
《荊州占》にいう、金星が翼宿に入るのは、天下の兵禍が壅塞することを主る。郗萌がいう、金星が翼宿に出入して停留するのは、大風がまさに到ることを主る。別の説ではそれが対応する国家が安定せずあるいは大水を発することを主る。《海中占》にいう、金星が翼宿に距ること一尺のは(原書小注:翼宿は陽に属し金星の五行は金に属して陰に属す)、陰が来て陽に依附し秦国が楚国を朝会することを主る。郗萌がいう、金星が翼宿に宿留するのは、遠客の到来があることを主る。別の説では左翼に宿留すれば旱を主る。《黄帝占》にいう、金星が右翼に宿留するのは、兵事の興起を主る。郗萌がいう、金星が翼宿を侵犯し留守するのは、その国が土地を喪失することを主る。石申がいう、金星が翼宿に留守するのは、万物が成らず百姓が流亡することを主る。石申がいう、金星が翼宿に三日以上留守するのは、大臣が臣道を守らないことを主る。別の説では大臣が乱を作すことを主る。巫咸がいう、金星が翼宿に留守するのは、反逆の臣が国中で兵を動かすことを主る。郗萌がいう、金星が翼宿に留守するのは、四方の夷族の兵事が大いに起き五穀が風に損傷され百姓に疫病が多く生ずることを主る。《玉暦》にいう、金星が翼宿に留守するのは、緊急の事がありあるいは大風があることを主る。斉伯がいう、金星が翼宿に留守するのは、臣下が号令を奉行せず君主に憂いがあることを主る。《百二十占》にいう、金星が翼宿に留守するのは、西方に兵事があることを主る。《黄帝占》にいう、金星が翼宿に留守するのは、改朝换代し臣下が君主の命令を代行することを主る。
太白の軫を犯す 七
石氏曰:“太白守軫,其國兵起,得地。”《海中占》曰:“太白犯軫、將軍為亂,其國兵起,臣欲謀君,賊人謀貴人,后死;一曰去之一尺,天下大飢,期不出百八十日。”巫咸曰:“太白入軫中,伺其出日而數之,期二十日,為兵發;伺始入處之率,一日期十日,軍罷。”《黃帝占》曰:“太白犯守軫,兵起西方。”郗萌曰:“太白出入留舍軫;(軫分,為楚府廷;太白,秦國之星也)主金行軫,客兵來過楚矣,必有死主。”
石申がいう、金星が軫宿に留守するのは、それが対応する国家が兵事を興し土地を取得することを主る。《海中占》にいう、金星が軫宿を侵犯するのは、将軍が乱を作しその国が兵事を興し臣下が君主を図謀しようとし歹人が貴人を図謀し皇后が死亡することを主る。別の説では距ること一尺で天下の大飢饉を主り期限は百八十日を出でず。巫咸がいう、金星が軫宿の中に入るのは、それが出る日を観察して推算し二十日を期として兵事の発動があろう。さらにそれが入り始めた位置に按じて比率を推算し一日が十日に対応し軍隊の罷散を主る。《黄帝占》にいう、金星が軫宿を侵犯し留守するのは、兵が西方に起きることを主る。郗萌がいう、金星が軫宿に出入して停留するのは(原書小注:軫宿の分野は楚国の官府・朝廷で金星は秦国の属する星)、金に属する秦の地の星が軫宿に行き到り客方の軍隊がまさに楚の地に打ち到り必ず君主の死亡があることを主る。
《黃帝占》曰:“太白守軫,將軍為亂,車騎出。”甘氏曰:“太白守軫,將軍有憂。”《海中占》曰:“太白守軫,兵車,四夷兵大起。”《南官候》曰:“太白守軫,兵大起,有亡地千里,恐有大喪。”又占曰:“太白守軫,兵謀欲起,人有代上之符;入軫中,兵起,國易政,及有自來侯王,受命於王者;男子有功,封爵之慶;士卒有遠征之役,諸侯應之;魏以位禪晉,時太白入軫中,及留度進過於午之間,二十餘日,晉代吳之二年,太白入軫。”
《黄帝占》にいう、金星が軫宿に留守するのは、将軍が乱を作し車馬・騎兵が出動することを主る。甘徳がいう、金星が軫宿に留守するのは、将軍に憂いがあることを主る。《海中占》にいう、金星が軫宿に留守するのは、兵車が出動し四方の夷族の兵事が大いに起きることを主る。《南官候》にいう、金星が軫宿に留守するのは、兵事が大いに起き千里の土地を喪失し恐らくまた大喪があることを主る。また一つの占辞にいう、金星が軫宿に留守するのは、兵を用いる図謀がまさに発動し人が君上に代わる符命を懐くことを主る。金星が軫宿の中に入るのは、兵が起き国家が政令を更改ししかも自ら行って来て帰附する侯王がおり王者から冊命を受け男子が功勲を建立し封爵の喜慶があり士卒に遠征の労役があり諸侯が兵を出して応ずることを主る。曹魏が帝位を晋に禅譲した時、金星はすなわち軫宿の中に入りしかも停留し行度が前進して午位の間に至り二十余日を歴した。晋朝が呉国に代わった前の二年に金星がまた軫宿に入った。
《荊州占》曰:“太白守軫,將軍有疾。”《玄冥占》曰:“太白入守軫中央,兵起,國易政,亡地千里;若有大喪,士卒有遠征之役,吳楚當受其兵,期二年。”郗萌曰:“太白起左角,逆行至軫,國亡地。”
《荊州占》にいう、金星が「軫宿」に停留して離れ去らないのは、兵を統べる将軍が病に患うことを主る。《玄冥占》にいう、金星が軫宿の正中に侵入し停駐するのは、兵戈が興起し国家が政令を更改し千里の疆土を喪失することを主る。あるいは国喪が発生し士卒が遠征の役を担い呉・楚一帯が真先にこの兵禍を承受し応験の期限は二年である。郗萌がいう、金星が「左角」——角宿の左の一星——から行き起こり逆行して軫宿に到達するのは、国家が土地を喪失することを主る。
開元占経 巻五十一・太白占七
太白の石氏中官を犯す
太白の摂提を犯す 一
《聖洽符》曰:“太白入犯攝提,兵起滿野,強臣謀主。若守衛臣有謀,期二年。”
《聖洽符》にいう、金星が「摂提」に侵入し冒犯するのは——摂提の六星は大角星の左右両側に分列し時節を建立し暦令を頒布する星官である——兵戈が四起して原野に遍き強横の臣子が君位を図謀することを主る。もし金星が摂提に停駐して離れ去らなければ宿衛の近臣が異図を心に懐き応験の期限は二年である。
太白の大角を犯す 二
郗萌曰:“太白守大角,兵大用,有國亡。”《荊州占》曰:“太白守大角,兵大動。”《文曜鉤》曰:“太白守犯大角,天下亂,大兵起,強臣謀主,若貴人被戮,期一年。”《海中占》曰:“太白犯守大角,臣謀主,有兵起,人主憂,王者戒慎左右;期不出百八十日,遠一年。”
郗萌がいう、金星が「大角」に停駐して去らないのは——大角の一星は摂提の間にあり天王の帝廷の座である——大規模に兵を用い国家の滅亡があろうことを主る。《荊州占》にいう、金星が大角に停駐するのは、兵事が大いに動くことを主る。《文曜鈎》にいう、金星が大角に停駐し冒犯するのは、天下の大乱と大軍の興起と強横の臣が君位を図謀しあるいは顕貴の人が殺戮に遭うことを主り応験の期限は一年である。《海中占》にいう、金星が大角を冒犯し停駐するのは、臣下が君主を謀害し兵事が興起し君主がこのため憂愁することを主り、王と為る者は身辺の近臣に対して格外に戒備して慎むべきである。応験の期限は近ければ百八十日を出でず遠ければ一年である。
太白の埂河を犯す 三
巫咸曰:“太白犯守梗河,國有謀兵,四夷兵起,來侵中國,邊境有憂。”
巫咸がいう、金星が「梗河」を冒犯し停駐するのは——梗河の三星は大角の北にあり胡人の兵馬と矛盾の類の兵器を主る。本条の標目は原書が「埂河」と作り通行本は「梗河」と作りここの引文と一致する——国中に兵を起こすことを謀劃する人があり四方の夷狄が兵を興し来て中原を侵擾し辺境地帯に憂患があろうことを主る。
太白の招摇を犯す 四
《聖洽符》曰:“太白犯招搖,邊兵大起,敵人為寇;若守之,敵兵敗,若其王死,期不出三年。”《荊州占》曰:“太白守招搖,旗幟起。”甘氏曰:“太白入守招搖。天下兵大起,非一國,遠夷為亂,欲侵中國,人主有憂,期一年。”
《聖洽符》にいう、金星が「招摇」を冒犯するのは——招摇の一星は北斗の杓端の外にあり梗河と同じく胡兵を主る——辺地の戦事が大いに起き敵人が入侵して寇と為すことを主る。もし金星がその上に停駐して去らなければ敵兵が敗績しあるいは敵国の君王が身を死し応験の期限は三年を出でず。《荊州占》にいう、金星が招摇に停駐するのは、旌旗が竪立し軍隊が開拔することを主る。甘氏がいう、金星が招摇に入り停駐するのは、天下が大規模に兵を興ししかも一国だけでなく遠方の夷狄が乱を作し中原を侵犯しようと企み君主がこのため憂慮することを主り応験の期限は一年である。
太白の玄戈を犯す 五
《聖洽符》曰:“太白犯守玄戈,為邊兵大起,敵人為寇;若守之,敵人敗;若其王死,期不出二年。”
《聖洽符》にいう、金星が「玄戈」を冒犯し停駐するのは——玄戈の一星は招摇の北にあり兵戈に義を取り同じく辺兵を主る——辺地が大規模に兵を興し敵人が入侵して劫掠することを主る。もし金星が久しく留まって去らなければ敵方が戦敗しあるいは敵国の王が身を死し応験の期限は二年を出でず。
太白の天槍を犯す 六
巫咸曰:“太白犯守天槍,邊兵起,槍大用,防戍有憂;若誅邊臣,期不出年。”
巫咸がいう、金星が「天槍」を冒犯し停駐するのは——天槍の三星は北斗の魁の北面にあり長槍の類の兵器を象徴する——辺地が兵を興し槍矛が大量に使用に投入され戍辺の防務に憂患があろうことを主る。あるいは辺地の臣将が誅戮に遭い応験の期限は一年を出でず。
太白の天棓を犯す 七
巫咸曰:“太白犯守天棓,邊夷起,機棓大用,防戍有憂;若誅邊臣,期不出年。”
巫咸がいう、金星が「天棓」を冒犯し停駐するのは——天棓の五星は女床の北にあり棓はすなわち棍棒の類の兵器である——辺地の夷狄が事を起こし弩機・棍棒などの器械が大量に動用され戍守の辺防に憂患があろうことを主る。あるいは辺地の臣将が誅され応験の期限は一年を出でず。
太白の女床を犯す 八
《荊州占》曰:“太白犯女床,凶;若守女床,宮有變害;若被誅。”甘氏曰:“太白守犯女床,兵起宮中,若后有誅,期百八十日,遠一年。”
《荊州占》にいう、金星が「女床」を冒犯するのは——女床の三星は紀星の東側にあり後宮の嬪妃・御女を主る——凶を主る。もし金星が女床に停駐して去らなければ宮中に変故の禍害があろう。あるいは人がこれにより誅殺される。甘氏がいう、金星が女床に停駐し冒犯するのは、兵変が宮廷の内に発生しあるいは皇后の一党が誅戮に遭うことを主り応験の期限は百八十日で遠ければ一年である。
太白の七公を犯す 九
石氏曰:“太白犯七公,群臣有誅。”《黃帝占》曰:“太白守七公,為飢;君不安。”石氏曰:“太白犯守七公,輔臣有誅,議臣相疑;若有誅者,人主有憂。”甘氏曰:“太白犯守七公,兵革大起,大臣有誅;若有戮死者,期不出年。”
石氏がいう、金星が「七公」を冒犯するのは——七公の七星は招摇の東にあり天子の三公・宰輔を象徴し政事を議論する官である——群臣の中に誅される人があることを主る。《黄帝占》にいう、金星が七公に停駐するのは、飢饉を主り君主が安寧を得ない。石氏がいう、金星が七公を冒犯し停駐するのは、輔政の大臣が誅され朝政を参議する臣子が彼此に猜疑することを主る。もし果たして誅される人があれば君主もまたこのため憂愁しよう。甘氏がいう、金星が七公を冒犯し停駐するのは、兵戈が大いに起き大臣の中に誅される人があることを主る。もし殺され身を死する人が現れれば応験の期限は一年を出でず。
太白の貫索を犯す 十
巫咸曰:“太白犯守貴索,天下亂,兵起,多有獄事,貴人有死者。”石氏曰:“太白入貫索中,犯乘守,以獄為亂。”《玄冥占》曰:“太白犯守天牢,以獄起兵,大人憂。”
巫咸がいう、金星が「貴索」を冒犯し停駐するのは——ここの「貴索」はすなわち本条の標目の称する「貫索」で貫索の九星は形が連環のようで天上の牢獄である——天下の大乱と兵禍の興起と訟獄の事の頻繁と顕貴の人の中に死亡する者があることを主る。石氏がいう、金星が貫索の中に入りあるいは冒犯・凌乗・停駐してその間にあらば、刑獄が冤濫なために禍乱を釀成することを主る。《玄冥占》にいう、金星が「天牢」を冒犯し停駐するのは、獄訟によって兵事を引き起こし上位に居る大人物がこれを憂えることを主る。
太白の天紀を犯す 十一
《荊州占》曰:“太白守天紀,有兵亂。”石氏曰:“太白守天紀,倖臣執權,有兵起,王者有憂;若犯守,大臣為亂,兵起宮中;若有大旱之災,人民大飢。”
《荊州占》にいう、金星が「天紀」に停駐するのは——天紀の九星は貫索の東にあり綱紀・法度を主り万物の是非を判理する——兵乱があることを主る。石氏がいう、金星が天紀に停駐するのは、寵幸を受ける近臣が権柄を把持し兵事が興起し王と為る者に憂患があろうことを主る。もし金星が冒犯しかつ停駐すれば大臣が乱を作し兵変が宮禁の中に起きる。あるいは大旱の災が発生し百姓が厳重な飢饉に陥る。
太白の織女を犯す 十二
巫咸曰:“太白守織女,后有誅者。”《黃帝占》曰:“太白犯守織女,天下有女憂,有兵起,不出其年。”
巫咸がいう、金星が「織女」に停駐するのは——織女の三星は天紀の東にあり天帝の女で瓜果・絲帛と珍宝を主る——皇后の一系に誅される人があることを主る。《黄帝占》にいう、金星が織女を冒犯し停駐するのは、天下の女子に憂患があろうことを主りしかも兵事が興起し応験はその年を出でず。
太白の天市垣を犯す 十三
《海中占》曰:“太白入天市,國有謀兵,將相有戮死者,期百八十日。”郗萌曰:“太白入天市中,五官有憂;一曰將有憂;一曰大臣戮,若糴貴。”《文曜鉤》曰:“太白入居守天市中,驚國,有謀兵,鐵鉞用,後大起,期不出三年。”巫咸曰:“太白入天市而守之,相坐之,有兵起,貴人有憂;若誅,期二年。”郗萌曰:“太白入,若守天市,諸侯貴人,必有戮者;一曰更幣。”
《海中占》にいう、金星が「天市垣」に入るのは——天市垣の二十二星は環列して墻のようで天子が諸侯を聚集し貨貿を通行する都市で権衡と交易を主る——国中に兵を起こすことを謀劃する人があり将相の中に殺され身を死する人があることを主り応験の期限は百八十日である。郗萌がいう、金星が天市垣の中に入るのは、五官の職に居る人に憂いがあることを主る。別の説では将帥に憂いがある。さらに別の説では大臣が殺されるかあるいは糧価が騰貴する。《文曜鈎》にいう、金星が天市垣の中に入り停居するのは、国を挙げて震驚し人が兵を興すことを図謀し斧鉞・刑殺が頻々と施され此の後大乱が興起することを主り応験の期限は三年を出でず。巫咸がいう、金星が天市垣に入りその中に停留するのは、宰相がこのため罪を得て連坐し兵禍が興起し顕貴の人が憂懼することを主る。もし誅されるに至れば応験の期限は二年である。郗萌がいう、金星が天市垣に入りあるいは停駐するのは、諸侯・貴人の中に必ず殺される者があることを主る。別の説では銭幣の制度を更改しようとする。
太白の帝座を犯す 十四
《海中占》曰:“太白犯帝座,大臣為亂,強臣謀主,有兵;期不出年。”石氏曰:“太白犯帝座,有逆亂事。”
《海中占》にいう、金星が「帝座」を冒犯するのは——帝座の一星は天市垣の正中に居り天帝の坐する位である——大臣が乱を作し強横の臣が君主を図謀ししかも兵事があることを主る。応験の期限は一年を出でず。石氏がいう、金星が帝座を冒犯するのは、叛逆して乱を作す事が発生することを主る。
太白の候星を犯す 十五
石氏曰:“太白犯守候星,諸侯起兵,有千里之行,政令急,民多苦。”《海中占》曰:“太白犯守候星,陰陽不和,五穀傷,人民大飢,有兵起。”
石氏がいう、金星が「候星」を冒犯し停駐するのは——候の一星は帝座の東北にあり職は陰陽を伺察し雲気を观望することにある——諸侯が兵を起こし千里の遠征の役があり政令が苛急で百姓が多く困苦を受けることを主る。《海中占》にいう、金星が候星を冒犯し停駐するのは、陰陽が失調し五穀が損を受け百姓が大飢饉に陥りしかも兵事が興起することを主る。
太白の宦者を犯す 十六
石氏曰:“太白守宦者,凶。”甘氏曰:“太白犯宦者,左右輔臣有謀,若戮死,期不出年。”
石氏がいう、金星が「宦者」に停駐するのは——宦者の四星は帝座の西南にあり宮禁に侍奉する内臣である——凶を主る。甘氏がいう、金星が宦者星を冒犯するのは、君主の身辺の輔弼の臣が暗中に図謀しあるいは殺戮に遭って死ぬことを主り応験の期限は一年を出でず。
太白の斗星を犯す 十七
石氏曰:“太白守斗星者,凶。”
石氏がいう、金星が「斗星」に停駐して離れ去らないのは——この斗は天市垣の内の斗五星を指し軽重を称量し量器を平準することを主り北斗・南斗と区別がある——凶险の象である。
太白の宗正を犯す 十八
石氏曰:“太白守宗正,左右群臣多死者;若更政令,人主有憂。”
石氏がいう、金星が「宗正」に停駐するのは——宗正の二星は帝座の東南にあり宗室の事務を掌管する官である——君主の左右の群臣に死亡が多いことを主る。あるいは政令が頻繁に変更し君主がこのため憂愁する。
太白の宗人を犯す 十九
石氏曰:“太白犯宗人,親族貴人憂,若有死者;一曰主親有離絕。”
石氏がいう、金星が「宗人」を冒犯するのは——宗人の四星は宗正の東にあり宗室の礼儀と親疏の次序を掌管する——皇親・宗族の中の貴人が憂懼しあるいはその中に死亡する人があることを主る。別の説では君主の親属の間に乖離・決裂して往来を断絶する事があろう。
太白の宗星を犯す 二十
甘氏曰:“太白犯守宗星,宗室之臣,有分離者。”《玄冥占》曰:“太白觸抵宗星,倖臣有誅者,期二年。”
甘氏がいう、金星が「宗星」を冒犯し停駐するのは——宗の二星は候星の東にあり宗室の支属を象徴する——宗室の出の臣子の中に分離・疏遠される人があることを主る。《玄冥占》にいう、金星が宗星に触撞し抵犯するのは、寵を受ける近臣の中に誅される人があることを主り応験の期限は二年である。
太白の東咸・西咸を犯す 二十一
石氏曰:“太白守東西咸,女主憂誅,若貴女有戮死,期二年。”《荊州占》曰:“太白守東西咸,憂兵起。”石氏曰:“太白守犯東西咸者,為臣不從令,有陰私。”
石氏がいう、金星が「東咸」「西咸」に停駐するのは——東咸・西咸は各四星で房宿の上に夾処し淫佚を防閑する門戸である——女主が憂懼して誅されあるいは身分の尊貴な女子が殺され身を死することを主り応験の期限は二年である。《荊州占》にいう、金星が東咸・西咸に停駐するのは、兵事の興起を憂えることを主る。石氏がいう、金星が東咸・西咸に停駐し冒犯するのは、臣下が君命を奉行せず暗中に別の隠私の勾当があることを主る。
太白の天江を犯す 二十二
陳卓曰:“太白守天江,暴水為害,不出其年。”巫氏曰:“太白犯守天江,天下有水;若入之,水齊城郭,人飢亡,去其鄉。”(《宋書天文志》:晉穆帝永和十一年八月巳未,太白犯天江,占曰:河津不通,昇平元年,慕容遂臨漳有幽並青冀之地,緣河諸將漸奔散,津河隔絕矣。)
陳卓がいう、金星が「天江」に停駐するのは——天江の四星は尾宿の北にあり江河と津渡を主る——暴漲の洪水が災を成すことを主り応験はその年を出でず。巫氏がいう、金星が天江を冒犯し停駐するのは、天下に水患が発生することを主る。もし金星が天江の中に侵入すれば大水が城郭と斉しくなり百姓が飢饉のために流亡し止むを得ず故郷を離れる。原書小注が《宋書・天文志》を引く——晋の穆帝永和十一年八月巳未日に金星が天江を冒犯し占辞に黄河の津渡が通じなくなろうといい、升平元年に至って慕容氏が臨漳を拠有し幽・并・青・冀の諸州の地を占取し黄河に沿って布防する各路の将領が相ついで潰散・奔逃し黄河の津渡はこれより断絶した。
太白の建星を犯す 二十三
陳卓曰:“太白犯建星,大臣相譖。”郗萌曰:“太白入建星,外國使來見主;出建星,主遣使至國,期皆三十日。”《黃帝占》曰:“太白守建星,滿二十日,必大赦。”巫咸曰:“太白入建星,若守之,兵起,關道不通;若有外國使來者,期一年。”
陳卓がいう、金星が「建星」を冒犯するのは——建星の六星は南斗の北にあり天上の都関で旗鼓と門戸を象徴する——大臣の間が互いに讒毀することを主る。郗萌がいう、金星が建星に入るのは、外国の使者が来て君主を朝見することを主る。金星が建星を離れるのは、君主が使者を派遣して他国に出使させることで、二つの状況の応験の期限はみな三十日である。《黄帝占》にいう、金星が建星に停駐して二十日に満てば必ず大赦を頒行する。巫咸がいう、金星が建星に入りあるいはその中に停駐するのは、兵事が興起し関隘・道路が阻断して通じないことを主る。あるいは外国の使者が到来し応験の期限は一年である。
太白の天弁を犯す 二十四
甘氏曰:“太白犯天弁,若守之,則囚徒兵起;一曰五穀不成,糴大貴,人民飢。”
甘氏がいう、金星が「天弁」を冒犯するのは——天弁の九星は建星の北にあり集市を掌管する官吏の戴く弁冕で市肆の交易を主る——あるいは進んでその中に停駐すれば囚徒が暴動し兵禍が興起することを主る。別の説では五穀が欠収し糧を籴う価格が暴騰し百姓が飢荒に陥る。
