獣の咎征
麒麟が執せらる
《春秋合誠圖》曰:“蒼帝將亡,則麒麟見紲。”《公羊傳》曰:“襄公十有四年春,西狩獲麟。麟者,仁獸,有王者則至,無王者則不至,有以告者,有麕而角者。孔子曰:‘孰為來哉?’反袂拭面,涕沾袍,曰:‘吾道窮矣。’”《五經異義公羊說》:“孔子獲麟,天命絕周,天下叛去為賊。”
《春秋合誠図》にいう:蒼帝(東方の帝)がまさに敗亡せんとすれば、麒麟は繩索に拴係せられたる様子を現出す。《公羊傳》に記す:襄公十四年の春、西の辺に狩猟して麒麟を捕獲した(通行本《公羊傳》は哀公十四年に係る)。麟は仁徳の獣にして、聖王が位に在れば即ち来り、聖王が位に在らざれば即ち来らず。人有りて前来して報告していう:麕に似て角を生じたる怪獣を捉えたり。孔子がいう:「それは誰が為に来たるか。」於是衣袖を翻して面孔を擦拭し、眼涙は外袍に沾湿し、いう:「我が道は尽頭に走り至ったり。」《五經異義》の載する所の公羊家の説法:孔子の麟を獲たるは、天命が已に周朝を断絶し、天下の人が紛紛として叛離して乱を作し賊と為るを標志す。
狸力
《山海經》曰:“岠山有獸,其狀如豚有距,其音如狗吠,其名曰狸力,見則其縣多土功。”
《山海經》にいう:岠山上に一種の獣あり、形状は小猪に似て鶏距の如き爪を生じ、叫声は狗吠に似て、名を狸力という。それが一たび出現すれば、その県はまさに土木の工程を大興せんとす。
猾褢
又云:“堯光之山,有獸如人而彘鬣,其名曰猾褢。(滑懷兩音,或曰署袞)其音如斫木。(如人斫木聲)見則其縣有大繇。(謂作役也,或曰其縣亂。)”
《山海經》がまたいう:堯光山上に一種の獣あり、様子は人に似て猪の如き鬣毛を長し、名を猾褢という。原書小注:「滑懐」の両音に読み、一説に「署袞」と読む。それが発する声音は木を砍るに似る。原書小注:人が木材を砍伐する声響の如し。それが一たび出現すれば、その県に大規模の徭役あり。原書小注:繇は即ち労役を指す。別の一説はその県にまさに動乱の発生せんとすることをいう。
朱厭
又云:“小次之山,有獸焉,其狀如猿而白首赤足,名曰朱厭,見則為兵。”
《山海經》がまたいう:小次山上に一種の獣あり、形状は猿猴に似て白頭・紅脚にして、名を朱厭という。それが一たび出現すれば、即ち兵事の発生あるを主る。
犰狳
又云:“餘我之山,有獸,狀如兔,鳥喙鴟目蛇尾,見人則眠,名曰犰狳。(仇餘兩音)其鳴自叫,見則螽蝗為敗。”
《山海經》がまたいう:余我山に一種の獣あり、形状は兎子に似て、鳥の嘴・鴟鴞の如き眼・蛇の如き尾巴を長し、人を見れば即ち躺下して死を装い、名を犰狳という。原書小注:「仇余」の両音に読む。それが鳴叫する声は自らの名字を呼ぶに似る。それが一たび出現すれば、即ち螽斯・蝗虫が灾を成して庄稼を敗壞す。
朱儒
又云:“耿山有獸,狀如狐而魚翼,其名朱儒,自呼,見國有恐。”
《山海經》がまたいう:耿山に一種の獣あり、形状は狐狸に似て魚鰭の似たる翅翼を長し、名を朱儒という。鳴叫するときは自らの名字を呼喊するに似る。それが一たび出現すれば、国中に恐慌の事あり。
蜚
又云:“太山有獸焉,其名蜚,行水則竭,行草則死,見則大疫。”
《山海經》がまたいう:太山に一種の獣あり、名を蜚という。それが水面を走り過ぐれば水は即ち乾涸し、草地を走り過ぐれば草は即ち枯死す。それが一たび出現すれば、まさに大瘟疫の発生せんとす。
象
《運斗樞》曰:“變江淮之祠,斬伐無度,則瑤光不明,象負車奔。象八足,陰敖翔。”注云:“象,太陰之物。八足,是欲行之八方之遠。臣如此,自恣之甚也。”《東觀漢記》曰:“桓帝延熹五年,有驚馬逸象入宮殿,國災。”
《春秋運斗樞》にいう:江淮一帯の祠祀を擅改し、林木を砍伐するに節制なければ、北斗第七星の瑶光は昏暗にして明らかならず、象は車を背負して狂奔せん。象が八隻の脚を生出すは、本より陰類に属して却って傲然として四方を遨游す。注文にいう:象は太陰の物である。八隻の脚を生ずるは、八方の遠き処を走り遍えんと欲するなり。臣子が此の如くなるは、即ち放縦・自恣の極に至れるなり。《東観漢記》に記す:漢の桓帝の延熹五年、驚きたる馬と逃逸したる象有りて宮殿に闖入せり。国家に灾禍あるを主る。
白虎が執せらる 虎が道を断ちて国に入る 虎が人を食ふ 虎が魚を銜ふ 虎が相い食ふ
《合誠圖》曰:“白帝亡,則白虎執。”京房曰:“虎斷道,邊國謀。”又曰:“白虎入國邑,野人為政,危其宗人。”《地鏡》曰:“虎入國,國將空荒。”《京房易傳》曰:“君行無道,將害民庶,虎食人。”《運斗樞》曰:“君失恩於小民,則虎銜魚。”《地鏡》曰:“虎相食,不出三年,國荒。”
《春秋合誠図》にいう:白帝(西方の帝)がまさに敗亡せんとすれば、白虎は擒獲せらる。京房がいう:老虎が道路を攔断するは、辺境の国に陰謀あるを主る。又いう:白虎が国都・城邑に闖入するは、草野の人が起ちて政を執り、君主の宗族に危及するを主る。《地鏡》にいう:老虎が国中に進入するは、国家まさに空虚・荒廃せんとするを主る。《京房易傳》にいう:君主の行事が道なく、まさに黎民・百姓を残害せんとすれば、老虎は人を食う。《春秋運斗樞》にいう:君主が小民に対して恩徳を失えば、老虎は魚を銜えて走る。《地鏡》にいう:老虎が互相呑食するは、応験三年を出ず、国家が荒残す。
虎に牛尾あり口目なし
《河圖說徵示》曰:“主無德,則虎牛尾無口目,名曰亂朝。”
《河図説征示》にいう:君主に徳行なければ、即ち牛尾を拖き、口眼なき怪虎が出現す。この種の怪物の名を「乱朝」と曰い、正に朝政の昏乱の象徴である。
虎に両口あり
《潛潭巴》曰:“有虎兩口,君出走,諸侯絀。”注云:“虎可畏,今復兩口,象大臣欲有所咀嚼也。”《地鏡》曰:“世主方起,大臣遘罪,則虎有兩口。”
《春秋潜潭巴》にいう:両張の嘴を長したる老虎が出現するは、君主の出逃し、諸侯が貶黜を遭うを主る。注文にいう:老虎は本より可怕なるものが、今また一張の嘴を多出するは、大臣の呑噬せんと欲する有るを象徴す。《地鏡》にいう:当世の君主が剛に興起するに、大臣が却って罪を獲り譴を遭うれば、即ち両張の嘴の老虎が出現す。
虎に両足あり
《晉雜事記》曰:“太康六年,南陽獻兩足虎。”注云:“干寶曰:虎,金精;南陽,火也。金入火刑,王室亂妖也。”王隱《晉書》曰:“中宗詔問王隱曰:‘荊州送兩足虎,其徵何為也?’隱曰:‘謹案先臣銓傳,太康時兩足虎,因作詩以諷,銓意以晉金行也,金在西方,其獸為虎,虎有四足,猶國有四方,無半勢而又見獲,將有愍懷之禍也。”
《晋雑事記》に記す:太康六年、南陽が一隻の両条腿の老虎を進献した。注文にいう:干宝が以為するに、虎は金気の精にして、南陽は則ち火に属す。金が火中に入りて刑克を受くるは、これは王室まさに乱れんとするの妖異である。王隠《晋書》に記す:晋の中宗(元帝)が詔を下して王隠に問うていう:「荊州が両足虎を送り来たるは、これは何の征兆ぞ。」王隠が回答していう:「謹んで按ずるに先父王銓の傳記に、太康年間に両足虎が出現し、彼は因りて詩を作りて諷諫した。王銓の用意の在る所は:晋朝は金徳に属し、金位は西方に居り、配する所の獣は即ち虎である。虎は四隻の脚あり、譬えば国家に四方あるがごとし。今只だ一半の勢を残し、且つまた人に捕獲せられたるは、まさに愍懐太子の如き禍事の発生せんとするなり。」
麈が宮に入る
《晉中興徵祥說》曰:“興寧元年十月,麈入於東海王宮。麈,主也,將為天下主之徵。後哀帝崩,東海王即位。”
《晋中興征祥説》にいう:興寧元年十月、麈鹿有りて東海王の府第に闖入せり。麈は即ち「主」の諧音を取り、これはまさに天下の主と為らんとするの征兆である。後に晋の哀帝が駕崩し、東海王は果して即位した。
麋が国に入る
《京房易候》曰:“麋入都而國虛。”又曰:“麋見於邑,有臣戮。”又曰:“糜入市,邑有憂。”《地鏡》曰:“麋入國,國方見屠。”《洪範五行傳》曰:“莊公十七年冬,多麋。牝獸之淫,莫大於麇。麇,迷也。莊公悅鄭詹之言,取齊淫女。劉歆以為毛蟲之孽,劉向以為麋色青,近青祥。”
《京房易候》にいう:麋鹿が都城に進入するは、国家の空虚を主る。又いう:麋鹿が城邑に出現するは、臣子の誅戮せらるる有るを主る。又いう:麋鹿が集市に闖入するは、城邑に憂患あるを主る。《地鏡》にいう:麋鹿が国中に進入するは、国家が正に屠戮を遭受せんとするを主る。《洪範五行傳》にいう:魯の荘公十七年の冬、麋鹿は甚だ多かりき。雌獣の中の淫乱なるは、麇に過ぐるはなく、麇は即ち「迷」の義である。魯の荘公は鄭詹の話を聴信し、斉国の淫女を娶った。劉歆はこれを毛虫の孽と認め、劉向は則ち麋の毛色が青を発し、青祥の類に近しと認めたり。
候鹿の角解す
《易通卦驗》曰:“鹿者,獸中陽也。獸者,陰,貴臣之象。鹿應陰。解角者,夏至太陽始屈,陰陽相向,君臣之象,今失節不解,陰不變陽,臣不承君之象,故為貴臣作奸。”
易緯《通卦験》にいう:鹿は獣類の中の陽に属する一種である。獣は本身は陰に属し、貴臣の象徴なり、而るに鹿は陰類の中に在りて陽に応ず。所謂「解角」とは、夏至已後に太陽が始めて屈退し、陰陽が彼此交替するに因り、正に君臣の関係の象徴である。今節候は已に至れども鹿が角を脱せざれば、即ち陰が順変して陽に従ふ能わず、臣が君主を承奉する能わざるの象なれば、故に貴臣の奸を作し上に犯すに応ずる。
鹿が宮に入る
《京房易候》曰:“鹿入宮都而國虛。”《論衡》曰:“漢中王築宮樓未成,鹿走上階,其後果薨。”
《京房易候》にいう:鹿が宮城・都邑に闖入するは、国家の空虚を主る。王充《論衡》に記す:漢中王が宮楼を修築して未だ完工せざるに、鹿有りて階梯の上に跑り、後に彼は果して去世した。
熊が宮に入る
《漢書》曰:“昌邑王賀,聞人聲曰熊,視而見大熊,左右莫見,王以問郎中令龔遂,遂曰:‘熊,山野之獸,而來入宮室,王獨見之,此天戒大王,恐宮將空虛之象也。’賀不改悟,後卒失國。”
《漢書》に記す:昌邑王劉賀が人有りて「熊」と喊ぶを聴き、一看すれば果して一頭の大熊を見たるも、左右の侍従は皆見えざりき。劉賀はこの事を把して郎中令の龔遂に問ふ。龔遂がいう:「熊は山野の裏の野獣なり、今却って宮室に闖入し、且つ只だ大王一人のみ見えたるは、これは上天が大王を警戒するにして、恐らくは宮室まさに空虚とならんとするの征象なり。」劉賀は悔改・省悟するを肯ぜず、後に終に封国を失掉した。
狼が国に入り軍を繞る
《呂氏春秋》曰:“亂國之妖,有狼入國。”《京房易候占》曰:“君失春政則蒼狼入於邑,君失秋政則白狼入於邑,君失冬政則黑狼見於邑。”又曰:“狼逐家人犬者,夷狄且來入君邑中。”又曰:“狼鳴於邑中,邑且空;狼伏邑中,有兵。”又曰:“赤狼見於國,不出三年,必有大禍,野人為政。”《抱朴子》曰:“有狼狐繞軍而鳴者,軍敗。”
《吕氏春秋》にいう:乱国の妖異の中に、「狼が国中に進入する」の一項あり。《京房易候占》にいう:君主が春季に施す可き政令を荒廃すれば、青狼は城邑に進入し、秋季に施す可き政令を荒廃すれば、白狼は城邑に進入し、冬季に施す可き政令を荒廃すれば、黒狼は城邑に出現す。又いう:狼が人家の狗を追逐するは、夷狄がまさに君主の城邑の中に侵入せんとするを主る。又いう:狼が城邑の中に嗥叫するは、城邑まさに空虚とならんとするを主り、狼が城邑の中に伏臥するは、兵事あるを主る。又いう:赤狼が国中に出現するは、応験三年を出ず、必ず大禍あり、草野の人が起ちて政を執る。《抱朴子》にいう:狼と狐有りて軍営を繞りて嗥叫するは、この軍隊が敗亡するを主る。
狼が人を食ふ
又曰:“君無道則狼食人。”
《抱朴子》がまたいう:君主の行事が道なければ、狼は人を食う。これは《京房易傳》の説く所の「君主無道なれば則ち虎が人を食ふ」と同一の義例にして、皆上天が猛獣を以て人を噬めて以て人主の暴虐に応験するものである。
狐に一頭両身あり
《災異圖》曰:“王公不祗上命,刻暴百姓,人民吁嗟,則一頭兩身狐見。”
《灾異図》にいう:王公が上の命令を恭敬して奉行せず、百姓に対して苛刻・暴虐にして、人民をして愁嘆連連たらしめば、即ち一箇の頭に両箇の身子の狐狸が出現す。
五狐が室に入り屋に上る
京房曰:“狐逐家人犬者,夷狄且來入君邑中。”又曰:“狐入室,必有大喪,將出室不居。”《地鏡》曰:“狐入室,有暴喪,上屋亦然,以淫危主。”
京房がいう:狐狸が人家の狗を追逐するは、夷狄がまさに君主の城邑の中に侵入せんとするを主る。又いう:狐狸が居室に進入するは、必ず大喪あり、主人まさにこの間の屋より遷出して再び居住せざらんとするを主る。《地鏡》にいう:狐狸が居室に進入するは、暴亡の喪事あるを主り、屋頂上に爬上するも占法は同じく、淫乱の事に因りて君主に危及するを主る。
狸に三頭あり
《河圖說徵示》曰:“狸三頭,名曰孽孽,見則女害。”
《河図説征示》にいう:野猫が三箇の頭を長すは、名を「孽孽」と曰う。それが一たび出現すれば、女子に因りて引き起こす禍害あるを主る。
獺が魚を祭らず
《通卦驗》曰:“獺不祭魚,國多盜賊。”
易緯《通卦験》にいう:孟春の時節に到りたるに、水獺が捕獲したる魚を岸上に陳列して祭祀の如くせざれば、国中の盗賊衆多なるを主る。獺が魚を祭るは先に薦して後に食し、取る有り譲る有りの義を取る。節候が失常なれば、人心もまた廉恥の言ふ可きなし。
兎に両頭あり
《運斗樞》曰:“女兩舌則兔兩頭。”
《春秋運斗樞》にいう:女人が両面の詞を搬弄し、言語が反覆すれば、即ち両箇の頭の兎子が出現す。兎は陰に属し、婦人と同類なれば、故に婦の言が一ならざれば、兎は便ち両箇の頭を生出して之と相応ず。
兎が雉を生む
《呂氏春秋》曰:“亂國之妖。有兔生雉。”
《吕氏春秋》にいう:乱国の妖異の中に、「兎子が野鶏を生出する」の一項あり。走獣にして飛禽を生出するは、物類がその本性を喪失せるなれば、故に亡国の妖に列す。
兎が宮に入る
《握鏡》曰:“兔上城及入宮中,不出一年,主死。”京房曰:“兔入於王宮,其君亡。”京房曰:“兔無故入宮,宮潰其宮矣,家亦然。”
《握鏡》にいう:兎子が城墻上に爬上し或いは宮中に闖入するは、応験一年を出ず、君主が死亡す。京房がいう:兎子が王宮に進入するは、この君主の敗亡を主る。京房がまたいう:兎子が故なく宮中に進入するは、この宮室まさに潰敗せんとするを主り、尋常人家も亦同じ。
兎が宮城に止まる
又曰:“兔止城上,邑必虛;入宮殿生子,其宮且空,生草木矣。”又曰:“兔無故入宮殿生子者,宮有憂。”又曰:“兔無故宿及守之,其邑君死,兵小行。”王隱《晉書》曰:“王后在薊時,有謠曰:‘出城門,以望戶,中有伏尸王彭祖。’有野狐踞后府門,後為石勒所殺。”
京房がまたいう:兎子が城墻上に停まるは、城邑の必ず空虚なるを主り、宮殿の裏に跑進して崽を生ずるは、この宮室まさに荒空となりて草木の長ずるに満つべきを主る。又いう:兎子が故なく宮殿に進入して崽を生ずるは、宮中に憂患あるを主る。又いう:兎子が故なく此処に住宿して且つ守りて去らざるは、この城邑の君主が死亡し、小規模の兵事あるあらんを主る。王隠《晋書》に記す:王后が薊城に在りしとき、歌謡有りて唱う:「城門を走り出で、門戸を望向すれば、裏頭に王彭祖の屍首の躺れるあり。」また野狐有りて王后の府第の門口に蹲踞せり、後に王后は石勒に殺害せられた。
鼠が群れて行く
京房曰:“鼠群行,有水,期一年。”又曰:“鼠無故群,不居穴,眾聚,居殿中者,其君死。”《地鏡》曰:“鼠無故群行,不畏人,晝為飢,夜為兵。”又曰:“鼠群行入廷,豪侵弱。”又曰:“或道中有兵喪。”
京房がいう:老鼠が成群して出行するは、水災あり、応期一年を主る。又いう:老鼠が故なく一群に聚成し、洞穴の裏に待たず、堆を成して聚集し、甚だしきは殿堂の中に聚居するに至るは、この君主の死亡を主る。《地鏡》にいう:老鼠が故なく成群して出行し、毫も人を怕れず、白天に出現すれば飢饉を主り、夜裏に出現すれば兵事を主る。又いう:老鼠が成群して朝廷に跑進するは、豪強が弱小を欺凌するを主る。又いう:若し是れ道路の中に出現するは、則ち兵禍・喪乱あるを主る。
鼠が却行す
京房曰:“鼠無故卻退而前尾者,邑有憂。”
京房がいう:老鼠が故なく倒退して走り、尾巴を前に朝せしむるは、この城邑に憂患あるを主る。行止が顛倒するは、正に人事の上下の錯位なるこの一点に応ずる。
鼠が朝市に鳴く
京房曰:“鼠無故群相隨,朝夕鳴,邑且為湖澤,期一年至。”又曰:“鼠無故朝時及暮時當朝邑門而泣,邑且空虛。”又曰:“鼠相鬥,其君死。”《地鏡》曰:“鼠無故自向城若市朝而大鳴,皆為兵喪。”又曰:“鼠聚朝廷市衢中而鳴,地方屠裂。”又曰:“鼠泣唶唶,為兵喪,在家人凶。”
京房がいう:老鼠が故なく成群して相い随い、早より晩まで鳴叫するは、この城邑まさに湖沢と変らんとし、応期一年の内を主る。又いう:老鼠が故なく清晨或いは黄昏の時に城邑の門に対して悲鳴するは、城邑まさに空虚とならんとするを主る。又いう:老鼠が互相争闘するは、この君主の死亡を主る。《地鏡》にいう:老鼠が故なく城墻或いは市朝に対して大声に鳴叫するは、皆兵禍と喪乱を主る。又いう:老鼠が朝廷と街市の中に聚集して鳴叫するは、この一方の土地がまさに屠戮・分裂を遭わんとするを主る。又いう:老鼠が唶唶として悲鳴するは、兵禍・喪乱を主り、若し民家に在れば則ち家人に凶あるを主る。
鼠が朝市に舞ふ
京房曰:“鼠無故舞於朝市,其邑有大喪。”又曰:“鼠無故舞邑門外,厥君亡於廷中道上,其邑有大兵。”《地鏡》曰:“鼠無故舞戲,遊走大道,君當之,若家主當之。”
京房がいう:老鼠が故なく朝廷或いは集市の上に舞動するは、この城邑に大喪あるを主る。又いう:老鼠が故なく城門の外に舞動するは、この君主が朝廷の中或いは道路の上に死し、この城邑に大兵あるを主る。《地鏡》にいう:老鼠が故なく舞蹈・嬉戯し、大道上に游走するは、君主がこの灾禍を承当するを主り、若し民間に在れば則ち一家の主に由りて承当す。
鼠が土を積む
京房曰:“鼠無故皆自積土,大水且至,水去,邑飢。”《兵書》曰:“鼠藪軍中,將有謀反意。”又曰:“野鼠在此中者,軍必敗。”
京房がいう:老鼠が故なく皆自ら泥土を堆積するは、大水まさに到来せんとするを主り、水が退去するを待てば、城邑は即ち飢饉を鬧す。《兵書》にいう:老鼠が軍営の中に窩を聚めるは、将領が謀反の意を心懐くるを主る。又いう:野鼠が軍営の裏に出現するは、この軍隊が必ず敗るるを主る。
鼠が木上に巣す
京房曰:“鼠無故巢木上,邑且大水。”《漢書》:“成帝建始四年,長安城南,有鼠銜黃蒿棲柏葉,上民家柏及榆樹為巢,時議臣以為恐有水災,穴而登木,象賤人將為顯貴之位。”
京房がいう:老鼠が故なく樹上に窩を做るは、城邑にまさに大水あらんとするを主る。《漢書》に記す:漢の成帝の建始四年、長安城の南に老鼠有りて黄蒿を銜え、柏樹の葉間に栖み、民家の柏樹と楡樹に爬上して窩を做った。当時政を議する大臣は恐らく水灾あらんと認めた。老鼠は本より地下に穴居すべきものが樹梢に登るは、正に卑賤の人がまさに顕貴の位を窃據せんとするを象徴す。
鼠が木実・五穀を食ふ
《潛潭巴》曰:“鼠食木果,眾臣不任,害賢人也。”《對災異》曰:“人君斥賢任佞,眾讒在朝,而鼠群行,食五穀。”《地鏡》曰:“鼠食木實,上樹,邪臣害賢,俗敗也。”又曰:“人君用刑深刻,吏為陰賊,上下無德,則群鼠害禾穀。”
《春秋潜潭巴》にいう:老鼠が樹上の果実を啃食するは、衆臣がその職に称せず、賢人を残害するを主る。《対灾異》にいう:君主が賢良を排斥し奸佞を任用し、讒言を進める人が衆多に朝廷に充斥すれば、即ち老鼠有りて成群して出行し五穀を吃掉す。《地鏡》にいう:老鼠が樹上の果実を吃し、樹上に爬到するは、奸邪の臣が賢良を残害し、風俗が因りて敗壞するを主る。又いう:君主が刑を用いるに苛刻・深文にして、官吏が暗中に百姓を残害し、上下ともに徳行を失去せば、即ち群鼠有りて禾穀を糟蹋せん。
鼠が狸を逐ふ
京房曰:“眾鼠逐狸,茲謂有傷,臣代其王,思為亂天闢亡。”又曰:“鼠無故逐狸狗,是謂反祥,臣且殺其君。”又曰:“眾鼠逐狸,殺其君,大臣亡。或曰:諸侯以婦女誅異姓,來相國者也。”
京房がいう:衆鼠が反って野猫を追逐するは、これを「有傷」と謂い、臣子がその君王に取代し、乱を作すを図謀し、上天の立てたる君主を敗亡せしむるを主る。又いう:老鼠が故なく野猫と狗を追逐するは、これを「反祥」と謂い、即ち吉凶の象が顛倒し、臣下まさに君主を弑殺せんとするを主る。又いう:衆鼠が野猫を追逐するは、君主の殺され、大臣の敗亡を主る。別の一説:諸侯が婦女の事を借りて異姓を誅殺し、前来して相国を担任する人がこの象に応ずるを主る。
鼠が闘ひおよび子を生みて子を殺す
《地鏡》曰:“鼠斗宮殿上,為兵喪;自殺其子,亦然。”京房曰:“鼠無故皆自相殺,斬其首道中者,兵作。”又曰:“鼠斗殿上,其君死。”又曰:“鼠生子宮中而不穴,宮且空。”又曰:“鼠無故殺其子,若自出穴,其子死於穴中,其邑且虛。”
《地鏡》にいう:老鼠が宮殿上に争闘するは、兵禍・喪乱を主り、老鼠が自ら亲生の幼崽を咬死するも、占法は亦同じ。京房がいう:老鼠が故なく互相残殺し、頭を咬断して道路の中間に丢くは、兵事の発作を主る。又いう:老鼠が殿堂上に争闘するは、この君主の死亡を主る。又いう:老鼠が宮中に崽を生じて洞を打たざるは、宮室まさに空虚とならんとするを主る。又いう:老鼠が故なく自らの幼崽を咬死し、或いは自ら洞外に爬出して幼崽が洞中に死するは、この城邑まさに空虚とならんとするを主る。
鼠が殿・冠帯・履に穴す
京房曰:“鼠無故穴殿上宮中,其君死。”地鏡曰:“鼠無故常穴人履冠帶,其身危。”
京房がいう:老鼠が故なく殿堂上・宮室中に洞を打つは、この君主の死亡を主る。《地鏡》にいう:老鼠が故なく常に人の鞋子・冠帽と衣帯を咬穿するは、この人自身に危険あるを主る。
鼠が殿上の地を嚙み門戸を穿ち褥席上に宿す
京房曰:“鼠無故齧殿上及寢廟中地,其君死。”又曰:“鼠無故穿殿上及室中,邑舍空。”又曰:“鼠穿門戶,外內通明,大喜。”又曰:“鼠穿門戶,下徹外,有遷者。”又曰:“鼠無故自常宿褥席中,身死。”
京房がいう:老鼠が故なく殿堂上と寝廟の中の地面を啃咬するは、この君主の死亡を主る。又いう:老鼠が故なく殿堂上と居室の中に洞孔を鑽穿するは、城邑の房舎が空虚なるを主る。又いう:老鼠が門戸を咬穿し、内外を貫通して透亮せしむるは、大喜の事あるを主る。又いう:老鼠が門戸を咬穿し、下より直通して外面に至るは、家中に遷徙せんとする人有るを主る。又いう:老鼠が故なく常に被褥・蓆子の当中に睡るは、主人の身の死亡を主る。
鼠が殿上に交る
又曰:“鼠交殿上,其君死。”
京房がまたいう:老鼠が殿堂の上に交配するは、この君主の死亡を主る。殿堂は至尊の地にして、穢物が却って此に於て淫を行えば、故に占にて君主の喪と為す。
鼠が雑物を嚙む
京房曰:“鼠齧人杖,主被傷。”又曰:“鼠齧馬蹄,行破亡;鼠齧履頭,家有喪,急去之。”又曰:“鼠齧牛角及蹄,不行。”又曰:“鼠齧冠,即其身死,若有喪。”又曰:“鼠齧人帶,有利吏被選斷之獄辭連。”又曰:“鼠齧刀劍,奴妾不祥,後有殃。”又曰:“鼠齧宮府文書,曳尾,官府有赦。”又曰:“鼠齧衣背上,唯有喪。”又曰:“鼠齧上袵,有利囊得財。”
京房がいう:老鼠が人の手杖を咬むは、主人まさに傷を受けん。又いう:老鼠が馬蹄を咬むは、出行の破敗・損亡を主り、老鼠が鞋頭を咬むは、家中有喪を主り、急ぎ鞋を丢棄すべし。又いう:老鼠が牛角と牛蹄を咬むは、車馬が行き通らず、事情が弁じ成らざるを主る。又いう:老鼠が冠帽を咬むは、この人の身死するか、或いは喪事あるを主る。又いう:老鼠が人の衣帯を咬むは、選任せらるる吏員に対して利ありと主るも、却って断案の獄辭の中に牽連さる。又いう:老鼠が刀剣を咬むは、奴婢・姫妾が不祥にして、此の後に灾殃あるを主る。又いう:老鼠が官府の文書を咬み、還りて尾巴を拖きて走るは、官府にまさに赦令あらんとするを主る。又いう:老鼠が衣服の背部を咬むは、只だ喪事あるを主る。又いう:老鼠が衣襟の上部を咬むは、利あり、囊中の財を得るを主る。
又曰:“鼠齧人鼻,且有喪;齧人頭,男子傷,洗浴吉;鼠齧人者,有謀賊人;鼠齧人足,有行事,去而吉;鼠齧人頰,必被辱若喪;齧人手指,奴婢死;鼠齧人耳目,有欲為賊者;鼠齧人髮,是謂御者女子大賊;
京房がまたいう:老鼠が人の鼻を咬むは、まさに喪事あらんとするを主り、人の頭を咬むは、男子が傷を受くるを主り、洗浴を一番すれば則ち吉に転ず。老鼠が人を咬むは、人有りて自らに加害せんと図謀するを主る。老鼠が人の脚を咬むは、出行の事あり、この地を離るれば則ち吉なるを主る。老鼠が人の面頰を咬むは、必ず屈辱を受くるか或いは喪あるべし。人の手指を咬むは、奴婢の死亡を主る。老鼠が人の耳朵と眼睛を咬むは、人有りて賊を作し窃を行わんと欲するを主る。老鼠が人の頭髪を咬むは、これを「御者」の応と謂い、女子有りて大害と為るを主る。
鼠齧人織布帛傷衣,喪;鼠齧祭物,家喪;鼠齧宮中樹木枝葉,家有賊;鼠齧床蓆中央,夫婦雜敘。鼠為怪凶者,傷丈夫,為之燒鐵門戶,無咎。”《地鏡》曰:“鼠齧人衣,有鬥爭事。”
老鼠が人の織る布帛を咬み、衣服を咬壞するは、喪事あるを主る。老鼠が祭祀に用うる供物を咬むは、家中有喪を主る。老鼠が宮中の樹木の枝葉を咬むは、家裏に盗賊あるを主る。老鼠が床蓆の正中を咬むは、夫婦の間の尊卑が錯乱するを主る。老鼠が怪を作して凶象を成すは、男主人を傷るあらん。この種の情形に遇えば、焼き紅せし鉄を用いて門戸を烙て以て禳解せば、即ち灾禍なからん。《地鏡》にいう:老鼠が人の衣服を咬むは、争闘・訴訟の事あるを主る。
